DJ松永さんが2021年5月4日放送のニッポン放送『Creepy Nutsのオールナイトニッポン0』の中で新潟のラッパーUSUさんの復帰作『GHOST』について話していました。
(DJ松永)ちょっとね、ここで新潟の先輩の曲をかけたいんですよ。USUさん。
(R-指定)USUさん!
(DJ松永)ラッパーの。USU aka SQUEZ。
R-指定」新潟のレジェンドですよ。
(DJ松永)そう。新潟のレジェンド! 新潟のヒップホップシーンの本当に顔役。で、一番のMC、レジェンドラッパーなんですよね。NITE FULL MAKERSっていうヒップホップグループがいて、その中のフロントマンなんですけども。俺がDJを始めてクラブとかに出始めたぐらいの頃ですかね? もうその時、新潟のクラブ、もうなくなってしまったけど、フェイズっていうクラブだったり、プラハっていうところとか。いくつかあって。結構、大きい規模のところもNITE FULL MAKERSがやればパンパンになるみたいな。すごい、ちょっとバブルだったんだよね。今では考えられないぐらい、NITE FULL MAKERSはとてつもない人気を誇っていてさ。NITE FULL MAKERSをやれば超満員だし。クラブに行かない高校生とかでもちょっと感度の良い人はNITE FULL MAKERSを知っているみたいな。
(R-指定)だって大阪でも「新潟といえばNITE FULL MAKERS、USUさん、TOTOROWさんたちだ」って。
(DJ松永)SWAMPさんとかね。結構大所帯のクルーなんだけども。本当に唯一、全国と渡り合えるラッパー。それこそUSUさんはB BOY PARKとかにも出ていたりとか。
(R-指定)MCバトルの常連やったもんな。
(DJ松永)それこそ、『フリースタイルダンジョン』とかにも1回、出ていたけども。あとはやっぱりSEEDAさんとかBRON-Kさんとかさ、TARO SOULさんと。結構もう全国トップレベルのアーティストと客演して。で、その客演をゲストで新潟に呼んでパーティーを開いて……みたいな感じで。なんか本当に新潟の真ん中、中心、メインストリームのトップの人だったんですよね。で、新潟もね、シーンがいくつかあるんですよ。
それでUSUさんは新潟県の新潟市。一番大きい街の顔役なんだけど。あと、俺のいた長岡。長岡は……長岡にもそのメインストリームっぽい箱と、あとアンダーグラウンドな箱があるんだけども。レグノとかブラザーとかね。それこそ、レグノは割とメインストリームなパーティーをしていて。ブラザーっていうのはちょっと、まあ殿町っていう長岡の唯一の繁華街があるんだけども。そこの端っこにある、なんか大人な不良が集まるバーがあるんだけども。それこそ、そのブラザーには小松とかテークエムも1回、ライブしたことあるんだよ。
(R-指定)ああ、そうや! 俺もその話、聞いたことある。
(DJ松永)俺もDJを始めた頃にずっとそこでお世話になっていてさ。あとは魚沼っていう、それこそ米どころですけど。田舎のシーンですけど。そこは、なんですかね? スモーキーな街なんですけども。
(R-指定)スモーキーな街(笑)。
(DJ松永)で、上越はレゲエが強いみたいな。Rは会ったことないけど、テラジマさんっていうまた上越の顔役みたいな人がいるんだけども。あとはSHIBA-YANKEEさんとかもそうだよね。まあ、いくつかシーンがあるんだけども、やっぱりそのトップはUSUさんなんだよね。で、ワーッと人気でガンガンに活躍して、そこからね、なんかバブルがちょっと弾けたんだよね。新潟のクラブシーンの。で、やっぱりクラブに通う人たちもどんどん少なくなって、新潟のヒップホップシーンがちょっと萎んでいったのよ。で、前みたいな状況じゃなくなったんだよね。USUさんも。それで、そこからソロの活動に移るんだけども。ある時から、それがとんでもないリリースのペースになったの。「なんかめっちゃ出すな!」って。「あれ? 先月曲出したのに、今月も? あれ? 先週出していたのに今週、また出すの?」みたいな。
(R-指定)ああ、ちょっと普通じゃないペースで?
(DJ松永)普通じゃないペースで。それで全部ミュージックビデオも、みたいな。で、なんかもう息継ぎなしで曲を作ってはリリースみたいな。心配になるぐらいにブワーッと出していて、それが高まって頂点まで行ったところでパーンってUSUさん、辞めちゃったんですよ。
(R-指定)ああ、せやね。「引退します」って。
(DJ松永)それが2年半前なんだよね。2年半前、辞めて。で、この間、復活したんだよね。で、そのUSUさんが復活した時の曲をちょっとかけたいと思っていまして。
(R-指定)熱いね! そのシーンとか全部近くで見てきて……っていう松永さんが。
(DJ松永)そう。USUさん。あの顔役のUSUさんが、正直病んだのよ。病んでパーンって辞めて。それで、まあ、あの人はそれこそボースティングの人なのよ。ボースティングが似合う、そしてボースティングを聞きたいタイプなラッパーだったんだけども、もう完全に内省的に。もう初めて、自分の弱みをこんなにさらけ出すようになったっていうのが結構俺はすごい新鮮というかさ。
(R-指定)俺も松永さんに聞かせてもらって。めちゃくちゃちょっと……。
(DJ松永)びっくり。ちょっと俺的にすごいセンセーショナルというかさ。
(R-指定)やのに、やっぱり相変わらずバリラップ上手い。
(DJ松永)上手いよね。いや、そうなんだよね。やっぱり結局、華があるんだよね。じゃあ、その曲を聞いてもらいます。USUで『GHOST』。
USU,DJ TAGA『GHOST』
(DJ松永)お聞きいただいたのはUSUで『GHOST』だったんですけれども。うーん。やっぱり俺、USUさんはこの新潟の顔役張ってるっていう責任を誰よりも背負っていたから。結構それに悩まされたっていうのはすげえあるんだろうなと思って。
(R-指定)なるほどな。
(DJ松永)そう。だからやっぱり弱みを見せれなかった。で、周りの若手とかの音源、めちゃくちゃ聞いていたらしいんだよ。で、聞くたびに本当に不安になって。で、つらくなって。で、その気持ちをなんとかしずめるために曲を書き続けたんだって。書いて、リリースをしてる間はなんかやっぱりやってる気持ちになって。それで生み出してるから、なんとか気持ちが保てていたんだけど、でもそれがパンクしてパーンとやめちゃったわけですよ。
(R-指定)なるほどな。
(DJ松永)だから、あの弱みを見せなかったUSUさんがサビ前で「あふれる嫉妬 俺がヒップホップ」ってこれ……。
(R-指定)いや、すごいライムやな。これはすごいフレーズですね。
(DJ松永)これ、すごいよね?
(R-指定)でも、ホンマにそう。俺もめちゃくちゃ気持ち、わかる。「あふれる嫉妬 俺がヒップホップ」って、それはやっぱり全員が……若手もベテランもそうですけども。嫉妬があふれるからこそ、そしてかつ、自分のことを認めさせたいからこそ、「俺がヒップホップ。お前よりも俺がヒップホップ」っていう風につい、なることなんですよ。
(DJ松永)「これはまさしくUSUさんだ」と思って。やっぱり自分のこの嫉妬を認めた上で、「でもやっぱり俺が新潟で一番ヒップホップだ」っていう誇りがあるわけですよね。で、この自分の弱い部分と、その自分の今までのその誇りと自信。その両方が入っているのがすごくいいなと思って。サビでね、「突然現れた見えないゴールが 分かるよな 俺のスキル Still Dopeさ」って。で、「俺が病んでるって? そう。俺は病んでる」っていうのが「うわっ、言った!」みたいな。
やっぱり新潟にいて、そのUSUさんの話とかってみんなするのよ。「USU、最近なんか病んでるらしいよ」みたいな。その「USUが病んでいる」みたいな話。その回ってくる言葉がやっぱり本人の口から語られるってのはすごいびっくりしたしさ。この「誰にも負けないフロウとライム口ずさんでいる」でまた踏んでいるんだけども。やっぱり、なんですか? グッと来るんだよね。やっぱり本当は自信があるし……。
(R-指定)やし、やっぱりこの落ちた出来事とか。で、自分で自分の内面をえぐるっていうのを、ホンマにこれはシンプルなラッパーの方法なんですけども。それをライムすることで。その「俺は病んでる」っていうのと「フロウとライム口ずさんでる」っていう、このライムにすることで踏み越えていく。ラッパーは乗り越えていくんですよね。
(DJ松永)なるほどね。やっぱりサビの最後のさ、「毎日7つのタブレットを飲み 隠れず明日を探しもがくぜ」って……なんか「この人、すごいことを言ったな」って。
(R-指定)せやな。実際のUSUさんの……。
「この人、すごいことを言ったな」
(DJ松永)そうよ。でもさ、本当にたぶん新潟シーンをよく知る人だったらより刺さると思うんだけども。バースの中で「危険なラップゲーム 誰かに任すって 2年が経っても誰かいたか?」っていうのは……やっぱりいないのよ。俺、新潟シーンをずっとチェックしてるけど。やっぱり出てこないのよ。USUさん以上のラッパーっていうのはいまだに出てこないんですよ。あの人以上にスターはいなくて。やっぱりUSUさんが辞めたことに対してやんや言う人もいて。また始める人のことに対してやんや言う人とかもいるんだけど。でも、よく考えたらラッパーってそういうもんっていうか。ジェイ・Zとかだってさ、そういうことじゃん?
(R-指定)そうよ。ラッパーの「辞める」っていうのはホンマにそれ、戻ってくる確率の方が高いし。
(DJ松永)そう。だから辞めたい時に辞めて、戻ってきたい時に戻ってくればいいじゃん?
(R-指定)そう。だから実際にその人生の浮き沈みがそのまま曲になるから。なんというか、今は向き合えないっていうことはあるんですよ。だから俺の仲間もそういうのが多いし。「今はちょっと音楽に向き合えない」っていう。でも、そこで得たなにかがまた、さらにヤバい音楽として返ってくるものなんですよね。ラッパーは。
(DJ松永)しかもこのUSUさん、よりこういう、その感情の浮き沈みがある過程にもね、NITE FULL MAKERSのメンバーにHilcrhymeのTOCさんがいたのよ。これも因果なもんなんだけど。そのNITE FULL MAKERSの全盛期。TOCさんがいて。で、TOCさんはNITE FULL MAKERSから抜けるんですよ。抜けて、新潟のクラブシーンが縮小していくタイミングでTOCさんはHilcrhymeとしてボーン!って国民的ヒットを生み出して、大スターになっちゃうんだよね。そこから、縮小していく中のNITE FULL MAKERSの歌詞。
TOCさんが抜けた後の曲の中でTOCさんをディスるようなラインがあったりするわけですよ。そこが仲違いをして。で、そういう道を歩んで。その後、2人は雪解けというか、絆を戻すんだけどもさ。まあ、あの人の人生はいろいろとあるなと思うんですよね。でも、本当にさっきも言ったけど、いつ辞めてもいいし、いつ戻ってきてもいいと思うし。でも本当にまた戻ってきてくれたからこそ、やっぱりこういう……俺、すげえいい曲だなと思うの。そんな曲が聞けたなって。
(R-指定)もちろん間接的に新潟のシーンについて松永さんから聞いている俺ですら、そうやから。松永さんからしたら、やっぱり地元のこのヒーローのさ、この帰ってきたっていうのはかなり来るよね?
(DJ松永)かなり来る。俺、正直これ、毎日聞いてる。死ぬほど聞いているよ、本当に!
(R-指定)めちゃくちゃいい曲!
(DJ松永)皆さん、ぜひ聞いてみてください。USUで『GHOST』でした。
<書き起こしおわり>