R-指定 RHYMESTER『Once Again』日比谷野音コラボリリックを解説する

R-指定 RHYMESTER『Once Again』日比谷野音コラボリリックを解説する Creepy Nutsのオールナイトニッポン0

Creepy Nutsのお二人が2021年4月27日放送のニッポン放送『Creepy Nutsのオールナイトニッポン0』の中で主催で開催したイベント『日本語ラップ紹介ライブ in 日比谷野音』でのRHYMESTERとの『Once Again』での共演時のリリックを解説していました。

(DJ松永)で、Rのバースはすごいことを言っているなって思ったけど、やっぱりちゃんと聞けてなかったわけ。で、Dさんもやっぱり現場だと隅々まで聞けない。でも、ライブってさ、歌詞だけ冷静に聞ける環境じゃないわけよ。その音圧とか、音全体で食らうものだから。それがライブだから。歌詞の一言一句を当日、理解するっていうのが難しいので……今、私の手元にRさんのフリースタイルの書き起こしがあります!(笑)。

(R-指定)おい、恥ずいって! フリースタイルやねんから!

(DJ松永)フハハハハハハハハッ! ごめん、ちょっとさっき、携帯で……これは、すいません。で、ちょっと質問をしていくから(笑)。どういうことかって。「恥ずかしい」とかはちょっと1回、忘れてもらって。1回、感情を無にしてもらって。じゃあ、ちょっと読み上げますね。

(R-指定)読み上げる?

(DJ松永)「明日から『歌っている場合じゃない』んだそうだ ならマイクロフォン使って大脱走だ 柄悪いかどうかだけじゃ測れん価値 聞こえたろ? 令和の大麻合掌が 根こそぎ持っていったあの一番鬼のせいで狂った一ラップジャンキー」。

(R-指定)はいはい。

(DJ松永)「まだだ、まだだぞ まだだ、まだだぞ あの頃じゃねえ 今、響かせる野音 14歳……」。

(R-指定)ちょっとこれ、半分ぐらいでよくない? 全部読み上げる?

(DJ松永)まあ、せっかくだから。「あの頃じゃねえ 今、響かせる野音 14歳 部活帰りの夕焼け 敗者復活戦 1バース目 24歳 クラブ帰りの朝焼け 敗者復活戦 2バース目 数パーセント覆すマイスタイル 前略 ブルーなケツしたナイスガイ でも俺たちのルーツはあくまであんたらとは言っておきたいぜ、パイセン」。

(一同)(拍手)

(R-指定)いやいや、ありがとうございます。ありがとうございます(笑)。

(DJ松永)皆さん、ありがとうございます。今ね、スタンディングオベーションをされていると思いますけども。まあ、1行目からちょっと質問をしていくんですけども。すいません。「明日から『歌っている場合じゃない』んだそうだ」っていうこれ、ちょっと聞き覚えのあるラインなんですけども?

「明日から『歌っている場合じゃない』んだそうだ」

(R-指定)はい。これは『そしてまた歌い出す』というRHYMESTERの『POP LIFE』に収録されている楽曲で。

(DJ松永)なるほど!

(R-指定)で、これはちょうど3.11があった時、いろんな自粛ムードがある中で、「ライブなんかしてる場合じゃない」って言われた時のRHYMESTER側からの回答。「今やもう『歌っている場合じゃない』んだそうだ」っていう。だからこそ、歌うんだっていうような曲なんですけども。ちょうどその次の日からまた緊急事態宣言が出されるという。翌日から、ライブができなくなるっていうことやから、入りは「明日から『歌っている場合じゃない』んだそうだ」みたいな感じで始めようかなって。

(DJ松永)ここ、個人的にもグッときたところであって。なぜなら、俺はさっき、文脈スクラッチをやったって言いましたよね? Dさんのは『K.U.F.U.』のバースを使いましたけども、宇多さんのバースはその曲のを使ったんですよ。で、「ならマイクロフォン使って大脱走だ」っていう。これ、ライターの高木さんが「この『大脱走』って、ECDさんの曲名から取っているんじゃないか?」って言っていて。で、そのECDさんは『さんぴんCAMP』の主催者なんで。そういう文脈なのでは?っていう考察がありましたが……。

(R-指定)これはホンマにフリースタイルなんで。そこはたまたま韻で……だから、奇跡的にっていうか、「『ない』んだそうだ」「大脱走だ」っていうところで踏もうと思ったら、後からそれを言われて「ホンマや」ってなったぐらいで。

(DJ松永)だからもう文脈の方からRに寄ってきています(笑)。

(R-指定)フハハハハハハハハッ! すごいやん(笑)。

(DJ松永)お前が追いかける前に、もう文脈が……文脈に愛されし男! 文脈を愛し、文脈に愛された男んですよ!

(R-指定)俺はじゃあ、そう言わされたっていうこと?(笑)。

(DJ松永)言わされました! Rは自覚なく、もう脊髄で文脈がこっちから出たわけですから。もう文脈側がRを回収したという、この逆転現象(笑)。R、あなたはただの容器です!

(R-指定)じゃあ、アカンやん!

(DJ松永)文脈を収納する、容器です! 文脈器!(笑)。文脈器です(笑)。で、3行目。「柄悪いかどうかだけじゃ測れん価値」。こちらは?

(R-指定)これはね、厳密に言うと「『ない』んだそうだ」「マイクロフォン使って」「大脱走だ」「柄悪いかどうか」ってこれ、全部韻的にも気持ちいい感じで。「柄悪いかどうかだけじゃ測れん価値」「聞こえたろ 令和の大麻合掌が」って。これはそれこそLibeRty Doggsが曲の中で言っているメッセージですよね。「柄悪いけどいいやつら」って。

(DJ松永)で、その次の「聞こえたろ 令和の大麻合掌が」っていう。こちらは?

(R-指定)こちらはですね、般若さんが元々所属していたグループ、妄走族の伝説の楽曲なんですよね。初期の伝説の楽曲『大麻合掌』っていうのがあるんですが、そういうようなメッセージを若手たちも引き継いでいるという。だからこのリバティの歴史と、それこそ般若さんがいた妄走族みたいな、この大状態の、それこそ柄悪いけど音楽に対して熱い想いを持ってるやつらの歴史が曲の意味合い的にもガッと重なったっていう。

(DJ松永)たしかに令和の『大麻合掌』だよね。LibeRty Doggsの楽曲っていうのは。で、その次の行ですよ。「根こそぎ持っていったあの一番鬼のせいで狂った一ラップジャンキー」っていう。こちら、どういうことですか?

(R-指定)こちらはその『大麻合掌』っていうのを歌っていた妄走族の中で般若さんは「一番鬼」と呼ばれていたんですね。まあ、言うたら特攻隊長として妄走族の中に般若さんはいた。その一番鬼に俺は根こそぎ持っていかれた。で、『根こそぎ』っていうのも般若さんがソロで出したセカンドアルバムのタイトル。で、「一番鬼のせいで狂った」の「○○のせいで狂った」っていうのは般若さんの『最ッ低のMC』っていう曲の「ギドラ ブッダ 雷 ペイジャー オレが狂ったのは奴らのせいさ」っていう。だから俺はその一番鬼のせいで狂った一ラップジャンキーという。

(DJ松永)皆さんね、俺なんかはもう前半だけであまりのその文脈の多さで胸焼けがしているんですけども。まだ、後半あります! すでに文脈の多さで胸焼けがしていると思いますが。後半の1行目。「まだだ、まだだぞ」という。こちらは?

「まだだ、まだだぞ」

(R-指定)これはRHYMESTERが『さんぴんCAMP』に出た時、その場で初披露した『耳ヲ貸スベキ』という曲。それをかけるタイミングじゃないところでちょっと先走ってDJ JINさんがかけようとした時にMummy-Dさんが後ろを向いて「まだだ、まだだぞ!」ってちょっと1回、出し惜しみをして。煽ってから『耳ヲ貸スベキ』を初披露した時の、まあ日本語ラップ界隈では伝説的なMCのフレーズなんですよ。「まだだ、まだだぞ!」って。

(DJ松永)そう。みんな真似したんだから。「まだだ、まだだぞ!」って。もう日本語ラップヘッズなら全員が知っている名フレーズだから。

(R-指定)ライブのMCで真似したことがあるやつはたぶんね、何人かおるはずなんですよ。

(DJ松永)そこを野音であなたは……。

(R-指定)そう。「まだだ、まだだぞ まだだ、まだだぞ あの頃じゃねえ 今、響かせる野音」っていう。この「あの頃じゃねえ」はまた般若さんの楽曲のタイトルで。「あの頃じゃねえ 今、響かせる野音」っていうのは『さんぴんCAMP』の時の伝説にすがっているんじゃなくて、今のこの日本語ラップシーンを野音で響かせようみたいな内容も入っていますね。

(DJ松永)ちょっと身震いしますけども。で、続いて。こちら、俺が一番グッと来たところですね。「14歳 部活帰りの夕焼け 敗者復活戦 1バース目 24歳 クラブ帰りの朝焼け 敗者復活戦 2バース目」っていう。これ、ヤバいんだよね。

(R-指定)これはRHYMESTERの『敗者復活戦』っていう曲があって。1バース目ではMummy-Dさんがサッカー部のベンチやったけど、その悔しさを胸に音楽で活動する。2バース目では宇多丸さんがラッパーとして人気があったけど、売れなくなってしまって、周りに置いてかれてる。どうしよう、この現状……でも、諦めずに最後の力を振り絞ってリリック帳にペンを取って書き出すところで終わる曲が『敗者復活戦』なんですよ。

(R-指定)で、1バース目の部活のくだりは14歳の中学生のラップにハマりたての俺にめちゃめちゃ響いて。悔しいけど、部活で俺もベンチやったから。部活で試合には出られへんけど、でも好きな音楽を見つけたから、そっちにのめり込もうっていう、まさしくDさんみたいな思いを14歳の時にして。で、24歳。ラッパーとしても仕事があるかないか。フリースタイルのバトルでは有名だけど、音楽では食えてないぞ、みたいな時にめちゃめちゃ響いたのが宇多丸さんの2バース目。10年越しにRHYMESTERはこれ、2度殺しに来るんですよ。

(DJ松永)そう(笑)。これ、昔からRは言っていたんだよね。

(R-指定)昔から言っていた。10年経って、こっちのバースの響き方もまた変わった、みたいな。

(DJ松永)これを本人の目の前で言っていたのよ。俺、この数行……もう自伝です!

(R-指定)フハハハハハハハハッ!

(DJ松永)これ、自伝。短いな? 短い。でもR、これ自伝だから。もう。お前、すごいよ! 1曲の中のバースの数行でお前、自伝を書いたから。これはすごいよ。感動した。お前の自伝を読んで俺はあの日、泣いたわけだ。すごい。で、その次が「数パーセント覆すマイスタイル 前略 ブルーなケツしたナイスガイ」っていう。これは?

(R-指定)これはすごい小さい可能性。俺らみたいなやつらがヒップホップの中で成功するなんて……というような。それを覆してきたのが言うたら俺らのスタイルなんかなって。だから「マイスタイル」。で、「前略 ブルーなケツしたナイスガイ」っていうのはこれ、RHYMESTERの『前略』という曲がありまして。そのサビのフレーズのまんまですよ。「ブルーなケツしたナイスガイ」って未来の自分から過去の自分への手紙なんですよ。だからさっき、14歳、24歳とかでうまくいかん状況を未来の俺は覆している。「聞いているか? 前略、ブルーなケツした10年前、20年前のお前?」っていう風に、過去の自分へのメッセージみたいにもなっているのかなっていう。

(DJ松永)『敗者復活戦』もそうだけどさ、『前略』もさ、めちゃくちゃ泣けるのよ!

(R-指定)めちゃくちゃ泣ける曲。

(DJ松永)俺らみたいなやつらは絶対に泣ける曲なんだよ。もうあんなの、ヤバいんだから。

(R-指定)そうなんですよ。

(DJ松永)で、最後に「でも俺たちのルーツはあくまであんたらとは言っておきたいぜ、パイセン」ってね。(拍手)。

(R-指定)フハハハハハハハハッ!

(DJ松永)ありがとうございました! こういうことになっております! こういうことになっているんで。よろしくお願いします、すいません! こんな感じで今回はやらせてもらいました!

(R-指定)いや、伝わってくれて嬉しいし、いいんやけど……そのいじり方するんやったらお前、泣きそうになってどないすんねん?(笑)。

(DJ松永)フハハハハハハハハッ!

(R-指定)解説して……松永さん、来てるやん? なんなん?(笑)。

(DJ松永)おい……いじってるなんて、心外だよ!(笑)。ラブ……ラブのみ!

(R-指定)ラブで進行してくれてるねんけど、松永さんが俺の解説を聞きながら、なんか自分でも来ているっていうのが……(笑)。

(DJ松永)お前、自分の自伝だと思って書いたバース……俺の自伝でもあるのよ! すごいな。リスナーみんなの自伝をお前は書いたわけだから(笑)。RHYMESTERから受け取った自伝を自分なりに書き直して、俺らに渡してくれたな。ありがとう。

(R-指定)いや、そうやな。うん(笑)。

(DJ松永)ありがとうございます。

「俺たちのルーツはあくまであんたらとは言っておきたいぜ、パイセン」

(R-指定)でも俺は言うたらそのバース……「俺たちのルーツはあくまであんたらとは言っておきたいぜ、パイセン Like This」ってバースを締めた時、やっと松永さんが袖で見ていた感じの……「おっ、涙腺が来た!」っていうか。その、カマされたことにカマし返した瞬間。それで肩の荷が下りて。宇多さん、Dさん、松永、JINさんの感じを見て「おおっ! 今、めっちゃいい空間におれる!」って。

(DJ松永)いい空間になった。あの後、RHYMESTERと俺らでMCしたけどさ、俺は感動しすぎちゃって全然しゃべれなかったわ。

(R-指定)せやな。

(DJ松永)俺、もうフワフワしちゃって。「どうしよう?」みたいな。ちゃんとしゃべりだしたら絶対に涙腺崩壊するから。恥ずかしいのでしゃべらないっていう……(笑)。

(R-指定)俺も緊張していたし。松永さんと同じような感情やったから、もうほとんど宇多丸さんにしゃべってもらって。

(DJ松永)そうそう。それで本当、あの人は匠だから。最高のMCだから。本当に。いやー、最高の1日だったね。

(R-指定)あんなご褒美みたいな1日。楽しかったし。

(DJ松永)本当に感謝しかないよ。本当に幸せだった。

(R-指定)幸せでしたね。

(DJ松永)『Once Again』、聞きます? それでは、聞いてください。RHYMESTERで『Once Again』。

<書き起こしおわり>

Creepy Nuts『日本語ラップ紹介ライブ in 日比谷野音』を振り返る
Creepy Nutsのお二人が2021年4月27日放送のニッポン放送『Creepy Nutsのオールナイトニッポン0』の中で主催で開催したイベント『日本語ラップ紹介ライブ in 日比谷野音』の模様を振り返っていました。
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