宇多丸 ZEEBRA ダースレイダー クラブ規制 改正風営法成立を語る

宇多丸 ZEEBRA ダースレイダー クラブ規制 改正風営法成立を語る 宇多丸のウィークエンド・シャッフル

ZEEBRAさん、ダースレイダーさんがTBSラジオ『タマフル』に出演。クラブ規制を緩和する、改正風営法が成立したニュースについて、その意味や今後の課題などを宇多丸さんと話していました。

(宇多丸)で、ですね、その日本のヒップホップ、クラブ事情に関係して、ちょっと大事なお知らせがございまして。先週、こんなニュースがございました。『ダンス営業の規制を緩和した改正風営法が17日、参議院の本会議で可決され、成立いたしました。大音量で音楽を流して客に踊らせ、お酒も提供するクラブのうち、一定の明るさを確保したお店は24時間営業を可能とし、ダンス教室は許可制を廃止する。来年6月までに施行される見通し』という、こういうのがね、成立したということでございます。以前、この番組でもね、特集コーナーで詳しく解説していただきましたが、この問題について、今夜は2人の特別解説員をお招きいたしまして、この大きな変化、大きなビッグターン、迎えております。この問題についてうかがっていきたいと思います。ダースレイダーさん、そして後ほどライブもやっていただきますZEEBRAさんです。

(ZEEBRA)よろしくお願いします。

(ダースレイダー)よろしくお願いします。

(宇多丸)まずはちょっと、お疲れ様でしたというべきか・・・

(ZEEBRA)はい。まあ、まだいろいろあるんですけどね。とりあえず、一段落ということですね。

(宇多丸)で、どの段階まで来たのか?というか。どう変わったのか?

どう変わったのか?

(ダースレイダー)現状まず、おかしい法律があるぞってことにみんなが気づいていろいろアクションをしてきたっていうのが、いままでこの番組でも紹介してもらっているんですけども。まあ、その中でやっぱり『ダンス』っていう言葉でいろいろ規制をしていくことに関しては、やっぱりみんな、これは違和感があるだろうと。

(宇多丸)おかしいじゃないかと。

(ダースレイダー)なので、まずはその風営法っていう法律の中からダンスというものはとりあえず取ろうっていうのがまず、最初に起きたことで。で、そのダンスっていう言葉を取った結果、じゃあその取ったところをどうする?っていう結果生まれたのが、『特定遊興飲食店』っていうカテゴリーで。で、これが、実は今後ナイトクラブと言われるものとかがここで、特定遊興飲食店としてやっていってほしいと。

(宇多丸)特定遊興・・・遊興っていうのは、遊び興じる。

(ダースレイダー)で、特定遊興飲食店っていうのは風営法から外れたカテゴリーで、その許可を取れば朝まで営業ができますというものです。ただし、その朝まで営業できるし、そこにナイトクラブを含むっていうことは確実なんですけど、『その他遊興』っていう言葉がなにを表すの?っていうことが、実は決まっていないんです。

(宇多丸)もちろんダンスが含まれるっていう意味でやっているんだけど・・・

(ダースレイダー)そうですね。ナイトクラブはそこに入るだろうと。

(宇多丸)でもここに、遊興ってね、遊び興じるものはいろいろ・・・

(ZEEBRA)まあ、基本的にはいままで考えていたのは、それこそライブも遊興であれば、たとえばお笑いだとか、マジシャンのマジック。とにかくだからエンターテイメントってことだよね。それに関しては、もともとは遊興だろうということで、話はなっていたんだけど。それをいま、ここに当てはめてしまうと、いままでOKだったものがダメになりすぎてしまうと。

(宇多丸)あの、許可を取らずになんとかやっていたところとかも、引っかかることになってきてしまう。

(ダースレイダー)いままでも、実は遊興は、バーとかでは遊興はしちゃいけませんと。ただし、それに対しての罰則はなかったんですね。

(宇多丸)ふんふん。

(ダースレイダー)あくまでもバーをやりますっていった届け出をする際に、『遊興はしていない』っていうことで届け出をしていたのが、今度は許可をもらうってことになっていて。で、許可をもらうとなると、許可を取らずにやると罰則になる。ついてしまう。その罰則が結構ヘビーで。で、そうした場合、じゃあいままで普通にやっていたお店も、その特定遊興飲食店っていう許可を取らないと、じゃあ営業できないのか?とか。

(宇多丸)うんうん。

(ダースレイダー)うちはどうなんだ?とか。で、遊興っていうのも、具体的に何かを指してはいないんですけども、店側が客を楽しませるような行為をしていることを基本的には遊興と考えるということだけは言われていて。じゃあ、それってなあに?みたいなので、国会でも、落語はどうなんだ?ピアノの弾き語りはどうなんだ?とか。日本舞踊はどうなんだ?とかっていうようなのをすごい出てきていて。そこが実は決まっていませんというのがまず、ポイント1の難しさで。

(ZEEBRA)あとは、あれだね。酒が絡む。

(ダースレイダー)そうですね。そこがポイントでもあるんだけど。その遊興をすることにおいてプラス、お酒を提供しているってことが、やっぱりそこにかかわる。3点セットで、夜・朝まで、お酒、遊興っていう3点セット揃った場合は許可が必要ですよっていう。

(ZEEBRA)そうなんだよね。そういうことなんです。

(宇多丸)ああー、なるほど。

(ZEEBRA)で、行くと、たとえばいままでも深夜までやるライブっていうのがあったと思うし、その中でも、お酒が出るところもあったと思うし。ただ、そういったことまでが、その理屈で行くとダメになってしまうんじゃないか?とか。それはちょっとなんか、ねえ、元も子もない。

(宇多丸)逆にちょっと厳しくなっちゃうような点があると、元も子もないので・・・

(ダースレイダー)まあ、いまの状態で言えば、逆に深夜でなければ、もうかなりの、いろんなことができるようになるね。

(ZEEBRA)あ、そうですね。

(ダースレイダー)逆に。年齢制限とかも、普通の飲食店としていろんなことができるようになるので。

(宇多丸)ダンスそのものはね。

(ダースレイダー)ただ、あくまで深夜帯になにかをやろうとした場合には、お酒と遊興と深夜っていうのが揃うと、結構これ、考え方によっては厳しくなってないか?っていう状況なんですね。あとは、その特定遊興飲食店っていうのはどこでやっていいんですか?っていうのも。

(ZEEBRA)場所の問題もね。

(ダースレイダー)場所の問題もあって。それも実は、国としてはこのタイミングで法改正をしたことによって、夜の経済の活性化を使用と。

(宇多丸)当然、東京オリンピックとかにね、備えて。

(ダースレイダー)見据えて。外国人がいっぱい来る。お金を落としてくれるだろうっていう経済的な効果も当然考えて。で、今回、建築基準法っていうのも風営法と同時に改正されていて。いままでナイトクラブを作る基準っていうのは厳しい基準があったんですけども。今後は、劇場だったりライブハウス等が作れる場所であれば、ナイトクラブも作っていいよという風に建築基準法がだいぶ規制緩和されていて。

(ZEEBRA)そうそう。

(ダースレイダー)いろんなところにクラブ作っていいですよっていうのが国の方針なんですけど。だけど、行政の、取り締まる側は、『いや、いままでダメだったのを朝までやってよくしたんだから、その代わり場所は制限しろ』という考え方をしていて。

(宇多丸)ああ、そこはせめぎ合いがあるんだ。

(ダースレイダー)で、それに関してどれぐらい制限するか?っていうと、いままでも実は条例によって1時までやっていい場所っていうのはあって。大規模繁華街っていう場所なんですけど。そこを基本として考えましょうっていうのが、警察がいま言っていることで。でもそうすると、実は六本木だけ取り上げても、いま普通に風営法取って営業している店のうち3割ぐらいしか許可が取れなくなっちゃうんです。

(宇多丸)ああー。場所の限定のあれで。

(ダースレイダー)で、それ以外は無許可でやるのか、どうするのか?っていうので、割とそこは大問題になっていて。で、これって各都道府県で、条例でここまでやっていいよっていうのは細かく決まっているため、それによってかなり、いままでやっていた店ができなくなるのって規制緩和じゃなくない?っていう議論が出ているッて言う。

(宇多丸)ああ、そう。じゃあすぐに、これで万々歳ってわけじゃなかったと。

(ダースレイダー)では、ないですね。

(ZEEBRA)まあ基本、施行までに1年かかるんで。その間に、いろんなことをちゃんとまとめて行きましょうってことでの、ちょっとした見切りみたいな部分もあるんだけど。まあ、俺なんかは性善説かな?ってところもあって。正直、そのね、国もね、経済の活性化のために始めていて。わざわざ首を締めることは、その後結局みんながね、ふざけんな!って怒るだけだから。そんなことしないと思うっていう性善説ですね。あくまで。

(宇多丸)うんうん。

(ZEEBRA)ただ、それをもう、悪く取ろうと思えば、もう規制がどんどん厳しくなって。それこそ言論統制みたいなレベルのことまで、なんとなくイメージできちゃうことでもあるから。だから、それに対してすごく反発する人がいるのも当たり前だと思うんだけど。まあ、ねえ。だとしたら・・・っていうことだと。

(ダースレイダー)どう捉えるか?っていう話でもあって。で、まあ僕らがいろいろこう、話に行ったりとかした結果、まあ政治家であろうと警察であろうと、実は話は聞いてくれて。で、やっぱりいままではまったく無理だっていう前提だったのが、じゃあ変えましょうっていうことになったってことは、やっぱり働きかけてアクションとリアクションっていうのがちゃんとあるってことがわかったので。

(ZEEBRA)そう。ちゃんとしたね、なんて言うのかな?まあ、曲でね、なんだかんだって言ってそれで終わりではどうにもなんないわけですよ。だからやっぱり我々は、本当に政治家の方々。それこそ警察庁だとか、いろんなところに直接働きかけてやれば、ちゃんと・・・当たり前のプロセスをあれしていけばできるんだなっていうことは今回、ひとつわかったことではあるんだけど。

今後のスケジュール

(ダースレイダー)で、タイムスケジュール的にも実は、施行まで1年。この法案が可決されましたって、来年の6月ぐらいにスタートするんですね。で、それまでにいま決まっていないことをどれだけ決められるか?っていうのがポイントになってくるんですが。それの、まず政令っていうのを指定していくのが9月。そして条例が各都道府県で審議されるのが12月なんですね。

(宇多丸)うんうん。

(ダースレイダー)だからその、審議されるタイミングに、どれだけ自分たちの思っていることが、ここがこうなるとこうなるっていうような実例のパターンをいくら提示できるか?で、どれだけ自分たちにとってポジティブな方向に持っていけるか?っていうのはこれからスタートしてるっていうタイミングなので。なんかいまもうダメだ!っていうよりは、じゃあどう動かしていくか?考えようっていうタイミングだと思います。

(ZEEBRA)そうですね。

(ダースレイダー)で、それを考えるために、実はこの間も210人、東京ではDJが集まって。で、DJとしてやっぱりナイトクラブを職場としているDJ多いので、どうしていくかを考えようっていう動きだったり、あるいはそのクラブユーザーも含めて、クラブっていう場所の可能性とかポテンシャルをもうちょっとみんなで考えようよっていう集まりがあったり。で、そういったことを警察とか、あるいは地方自治体の議会とかに持っていってプレゼンするっていうアクションをどれだけとれるか?っていうのがかなり大事になってくるっていうところですね。

(ZEEBRA)そうですね。

(宇多丸)これ、そういう諸々の動きとか、今後の情報というか推移みたいなのを知りたければ、どこにアクセスすればいいんですか?

(ZEEBRA)ええと、まあ一応うちらの『クラブとクラブカルチャーを守る会』のホームページは新しい情報を常にアップしてますんで。そこを見ていただければ、ある程度シュアなインフォメーションは出ていると思うんですけど。

(宇多丸)そのね、いろんな業界の人っていうか、いろんなお店の人も、たぶんこれからさらにさ、いろいろ意見とかもね。

(ダースレイダー)そうなんですよ。遊興とかっていう網をいまの状態のままだと、うちは入るの?とか、うちは大丈夫なの?っていうのが、いろんな業界の人が心配もしていると思うので。で、実際そういったところにヒアリングとかをして、法律を決めているわけでは実はないっていうことも認めちゃっているので。だったらこういった人にも話を・・・ライブハウスをやっている人や、夜、落語の寄席をやりたいって言っている人の話は聞いたんですか?とか。いろいろ話を聞かなければいけないっていう。

(ZEEBRA)芸者さんとかね。それもたとえば、12時をすぎたら、もうダメなわけですよ。舞を踊っては。

(宇多丸)たしかに、本当だ。

(ZEEBRA)そういうことなんです。だから、そういうことまでちゃんと考えないと、日本のもともとある文化まで触しかねないという話ですよね。

(宇多丸)ちょっとね、まだまだ実は結構たいへんなところっていうのが。

(ダースレイダー)むしろ、結構その『スタートラインに立った』っていう言い方をしている人も多いぐらいで。

(ZEEBRA)そう。

(宇多丸)とは言え、さっき言った法律が、実際に働きかけて変わったってこれ、やっぱり思い返してみると、僕らが始めた頃はそこに関してはハナから諦めているじゃないけど。もう、想像もしなかったことじゃないですか。だからそうやって、調整は必要だろうけれども。っていうだけで、相当なんか、未来に希望がある話っていうか。

(ZEEBRA)いや、本当そう。だからそれは、もうヒップホップだけに関わらず、もうレゲエだったりハウスだったりテクノだったり、いろんなジャンルの。もうそれこそ、アニソンをプレイする人たちから、いろんなジャンルのDJだったり店だったり。そういったところが一緒になってこうやって動くと、まあこれだけの、日本でもパワーを持てるんだなっていうのはものすごく感じたし。

(宇多丸)うん。

(ZEEBRA)あの、なんだろうな?まあよかったのはね、利権がないっすよね。正直、ここにはあまり利権がそれほどないんですよ。その、これを禁じることによる利権っていうのがそれほどないから、まあ変えやすかったかな?というのは思う。

(ダースレイダー)実はアンダーグラウンドで、金もないのに好きでやっている人の集まりなんで。やっぱりどうしても、ここで甘い汁を吸おうにも、音楽業界でいま甘い汁を吸おうってあんた、頭おかしいの?っていう話になるわけで(笑)。

(宇多丸)まあ逆にね純粋な人たちが動いているから。

(ダースレイダー)まあ、ピンチはチャンスっていうことなんですね。

(宇多丸)たしかに。今どき、音楽業界入ってくるやつは本当に音楽好きっていう話は、よく出てくるけど(笑)。

(ダースレイダー)愛の人たち(笑)。

(ZEEBRA)間違いない(笑)。

(宇多丸)いやいや、でも本当にあの、じゃあもちろん油断せずにとか。もちろんここで終わりっていうのがない話ではあろうから。今後もなにか動きがあったら、もちろんお招きして。

<書き起こしおわり>

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