高橋芳朗さんが2021年2月16日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で欧米ポップスとK-POPのフェミニズムについてトーク。BLACKPINK の楽曲の失恋からの立ち直りというメッセージについて話していました。
(高橋芳朗)最後、3つ目のテーマはこちらです。失恋。失恋によってこう低下した自尊心の回復を題材にした曲ですね。
(宇多丸)前にもヨシくん、そういう流れがあると解説してくれましたね。
(高橋芳朗)ここ数年、欧米の女性アーティストが扱うトピックでたぶん一番人気な感じですね。
(宇垣美里)へー。それこそ、テイラー・スウィフトがよく歌っているイメージがありますね。
(高橋芳朗)そうですね。テイラーも元カレを題材にした曲はずっと多かったですよね。ただここ数年、特に多くなってきていて。代表的なヒット曲としては、ここもやっぱりリゾが出てくるんですけど。リゾの『Truth Hurts』。それからアリアナ・グランデのこの番組を取り上げました『thank u, next』。これ、2曲とも全米チャートで1位になっていますね。
(高橋芳朗)で、この流れに先鞭をつけたのがイギリスのデュア・リパで。2017年の『New Rules』っていう曲。あとは2018年の『IDGAF(I don’t give a f*ck)』。あとは2020年の今、後ろで流れている『Don’t Start Now』。
Dua Lipaの失恋ソング
(高橋芳朗)彼女の代表的なヒット曲は全部、失恋から立ち直ろうとしている女性の姿を描いてるんですよ。で、デュア・リパもさっきのメーガン・トレイナーやアレッシア・カーラと同じようにグラミー賞で最優秀新人賞を取っているんですね。で、来月3月に開催される第63回グラミー賞ではこの今、かかっている『Don’t Start Now』が最優秀レコード賞と最優秀楽曲賞。主要部門では2部門にノミネートされていて、結構な有力候補なんじゃないかなと思いますけど。で、この欧米の流れを踏まえてその失恋からのリカバリーをテーマにしたK-POPとして紹介したいのが、BLACKPINK ですね。
(宇垣美里)やったー!
(高橋芳朗)やったー! 1月31日にオンラインライブを成功させたばかりですね。BLACKPINK 。ご覧になられましたか、宇垣さん。
(宇垣美里)私、見てないです。見なきゃ……。
(高橋芳朗)で、ここで紹介したいのは彼女たちの昨年のヒット曲で『Lovesick Girls』です。アメリカのビルボードのワールドデジタルソングチャートでこの曲も1位になっていますね。で、BLACKPINK はその世界的にブレイクした2019年の『Kill This Love』という曲。これ、日比麻音子さんが「鼓舞ソング」と仰ってましたけども。
(宇垣美里)言ってた!(笑)。
(高橋芳朗)この曲も失恋で負ったダメージからの再起をテーマにしているんですね。
(宇垣美里)まさに鼓舞される(笑)。上がる!
(高橋芳朗)これ、曲調的にも鼓舞されますよね。上がりますよね。まあ、自分を傷つける恋を葬って……まさに『Kill This Love』して本当の自分を見つけ出そうっていう、そういう歌なんですね。で、これから聞いてもらう『Lovesick Girls』も失恋の痛みをポジティブなパワーに変えていこうという歌なんですけど。まあ『Lovesick Girls』っていうと「愛の病に取り憑かれたガールズたち」みたいなタイトルで連帯感を打ち出しているが今っぽいというか。シスターフッド感があるっていう感じもするし。まあ、実際に非常にアンセム感が強い曲調・内容になっている曲です。では、聞いてください。BLACKPINK で『Lovesick Girls』です。
BLACKPINK 『Lovesick Girls』
(高橋芳朗)BLACKPINK 『Lovesick Girls』を聞いていただいております。
(宇垣美里)これ、全然毎日聞いている曲でした(笑)。
(宇多丸)そうか。それでイントロを聞いて「あっ!」って言っていたんだね(笑)。
(宇垣美里)そう(笑)。すいません(笑)。
(高橋芳朗)これ、みんな……宇垣さんもそうだし、日比さんも好きだし。熊崎くんもめっちゃ聞いているって言っていたし。やっぱりBLACKPINK は人気が高いですね。
(宇垣美里)かっこいい! まさにガールズクラッシュ。「かくありたい!」っていう感じ。かっこいいですよ!
(高橋芳朗)「かくありたい」(笑)。
(宇多丸)でも本当にさ、失恋というトピックでやった時にさ、要するにひと昔ふた昔前に想像されるものとも180度違うっていう感じだよね。
(高橋芳朗)もう完全にこういう鼓舞する曲になっているっていう。で、さっき言い忘れたんですけども。デュア・リパってBLACKPINK ともコラボしているし、TWICEともコラボしているんですよ。だから、サウンド的にもメッセージ的にも今、デュア・リパがひとつの指標になっているようなところはあるのかなっていう感じがしますかね。
(宇多丸)だから、あれだね。急速にK-POP側ももちろんサウンドとか、いろんなクオリティーだけじゃなくてアティテュードっていうか。その面でもグイグイ、そこの進化もということですね。
(高橋芳朗)さっき紹介したITZYの英語バージョンのEPもそういう構成だったし。これまで異常にフェミニズムとか女性のエンパワーメントに比重を置いていく曲が増えてくるんじゃないかなっていう感じですね。
(宇多丸)前に……BTSの話をしている時かな? ちょっと前の話。これから先、アメリカ進出をする時に、ある種のその政治的旗色とかを曖昧にしたままできる時代じゃないから。そこでひとつ、1段階あるって言ってたけど。まさにそのモードを着々と……っていう感じだよね。いや、すごいわ。さすが。それぞれのアーティストごとでもね。
(高橋芳朗)ちゃんとカラーがあるのがいいですよね。
(宇多丸)ねえ。このグループはこういうことを一貫してやってるみたいな感じになってるのがもうすごいね。
(宇垣美里)だからこそ応援できるとか、だからこそ好きっていう。その新しい「好き」の入り方もできてくるでしょうし。
(高橋芳朗)ここ最近で沼に落っこちた人、本当に大勢いるみたいですね。K-POPのこういうガールグループの沼に。
(宇多丸)さすがださ。あと、ストレートに表現としてかっこいいっていうのはもちろん大前提として。
(高橋芳朗)このへんのアーティストが世界に進出した時、どういうリアクションを得るのかはまた、このコーナーでは機会があるごとに取り上げたいなと。
(宇多丸)すごく面白いと思う。だからそのアジア人女性の……それこそ世界にあるアジア人女性のステレオタイプイメージっていうのも当然、強固にあるわけだから。そこをぶち破るひとつの契機にもなり得るだろうし。
(宇垣美里)そうですね。それを聞いて、もちろんその日本の私たちだって「ああ、もっとこういう風になっていいんだ!」ってね、元気をもらえるわけですし。
(高橋芳朗)まさにエンパワーメントされますよね。
(宇多丸)だし、エンターテインメントのモードが変わると、こっちの意識のモードもちゃんと変わるじゃない? だからやっぱりそこはすごい重要だよね。本当にね。素晴らしい。
(高橋芳朗)今、本当にK-POP、楽しいです。
<書き起こしおわり>