武田砂鉄さんが2020年6月2日放送の文化放送『大竹まことゴールデンラジオ!』に出演。大竹まことさんとブルーインパルス、専門家会議議事録未作成、持続化給付金業務の委託業者サービスデザイン推進協議会、布マスク配布、東京高検・黒川検事長の処分など安倍政権のプロセスの不透明性について話していました。
(武田砂鉄)今日も安倍政権の対策がいろいろと不透明だというお話をしたいんですけれども。先週の金曜日に「医療従事者に敬意を示そう」ということで都心上空をブルーインパルスが飛行したっていうことがありまして。まあもちろん、このコロナ禍と向き合っている医療従事者に対して頭が下がりますけれども。官邸の屋上からこのブルーピンパルスの飛行に手を振っている安倍さんみたいなものを写しているっていうことは、支持率の低下を気にしたパフォーマンスなんじゃないかな?っていう感じもして。
ある記事では「安倍首相 ブルーインパルスに拍手」なんていうタイトルの記事も出てましたけれども。こういうニュースにどれぐらいの意味があるのか?って僕はよく分からないですけれども。
安倍晋三首相は29日、航空自衛隊の「ブルーインパルス」が東京都心の上空を飛ぶ様子を首相官邸の屋上から眺めました。飛行は新型コロナウイルス感染症の治療に当たる医療従事者らに敬意と謝意を示すのが目的。首相は10分間ほど屋上にとどまり、編隊に拍手を送りました。 https://t.co/azL4UpwsM6
— 時事ドットコム(時事通信ニュース) (@jijicom) May 29, 2020
これ、ブルーインパルスが都心の状況を飛行するのは64年の東京オリンピックと、あとは2014年の国立競技場のお別れイベント以降3回目っていうことらしいんですけれども。
(大竹まこと)ああ、そうなんだ。
(武田砂鉄)僕は医療用マスクを空から配るのかな?っていうのを思って……まあ、これは皮肉ですけれども。こうやってね、コロナの患者を抱えている病院は軒並み赤字が続いていて。しかもボーナスもカットになるなんていうことを言われている中で、医療従事者がこういう苦境にあるのにまなぜこういうパフォーマンスが行われたか?っていうのを追うということは僕は重要なことだと思うんですけれど。これが誰の発案で、どういう風に行なわれたのか?っていうことを河野防衛大臣がですね、その当日の直前の会見でこれを問われて「やることがやるということが大事なので、プロセスはどうでもいいだろう」っていうことを仰ったんですね。これ、僕はびっくりしたんですけれども。
(大竹まこと)随分と乱暴な意見だね。
医療事業者への感謝と敬意を示そうと、航空自衛隊のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」が、都心上空を飛行しました。実施の経緯については「プロセスはどうでもいい」(河野太郎防衛相)と、明かされないままです。https://t.co/oCHR0MjPst
— 毎日新聞 (@mainichi) June 1, 2020
(武田砂鉄)「プロセスはどうでもいい」って非常に乱暴だと思うんですけども。この発言が批判を浴びると河野さんは昨日、ブログで書きまして。ブログですからね? 防衛大臣なのに。芸能人じゃないだから。で、そのブログの中で「中には『こんなことにいくら予算をかけたんだ?』というご批判めいたメールもありました。ブルーインパルスの燃料費、スモークに使う発煙油、随伴機と整備員を輸送するコスト、合計して約360万円です」という風に値段を明らかにして。「今回、都心上空を飛ぶと決めたプロセスを明らかにしないのはけしからんというメールもありました。今回の決定は、私から、航空幕僚監部に対し、医療従事者への敬意と感謝を示すためにブルーインパルスを飛行させることができないか検討するように指示を出し……」という風に書いていて。
でも、実際に当日河野さんはTwitterでハッシュタグで「#みてくれ太郎」っていうのを作って。つまり「ブルーインパルスの写真を送ってくれ。ハッシュタグとともに掲載して自分に見せてくれ」っていうことをやっていた。目的は「医療従事者の敬意」であるはずなのに……このあたりの話をすると「でも、医療従事者が喜んでいるんだからいいんじゃないか?」っていうような言葉が出てくるんですけれども。何か僕、そういう「現場は頑張ってるんだ」っていうことでこの手の出来事の異論を封じ込めるっていうのはあんまりよろしくないなと思うんですけれども。
「プロセスはどうでもいい」「#みてくれ太郎」
ブルーインパルス、写真撮っていたら、ぜひ、アップしてください。#みてくれ太郎 で。
— 河野太郎 (@konotarogomame) May 29, 2020
(大竹まこと)結局これ、誰が決めたんですか? 河野さんが「やれ」って言ったんですか?
(武田砂鉄)河野さんが「決めた」っていう風に言っているんだけども。それで安倍さんは首相官邸の屋上に上がって10分、手を振っているわけですよね。つまり「パフォーマンス性があっただろう」ってことは容易に想像できるわけなんですけど。この間、その「現場」が言い訳に使われてるなっていうことを感じることが多くて。先月25日の安倍さんの記者会見で江川紹子さんが「日本はなぜ、やることなすこと遅いんですか?」っていう風に聞いたら、安倍さんが「反省すべき点は多々ありますが、今回その中においても地方公共団体の皆さんは頑張っていただいてる」とか。
「我々もなかなか時間がかかってるのではないかとご批判をいただく度に、現場の状況がどうなっているんだということを常に我々もやり取りをしている」とか。「もちろん現場も一生懸命、急にこうした危機の中で、給付の対象が相当大きなものになるということで頑張ってもらっていることは感謝してます」って言うんだけど……別にこちらは「政権の対応」を聞いているんであって。「現場は頑張ってますか?」っていうことを聞いていないわけですよね。
(大竹まこと)現場はどこも大変ですよね。
(武田砂鉄)大変ですよね。それを「現場は頑張っている」っていうことに変換してるってことが多いんじゃないかなと思って。
(大竹まこと)これだけ遅いので、「一体どこが目詰まりしてるのか?」っていうことをはっきりしてほしいなと思っているという。
(武田砂鉄)そうですよね。その詰まってるところを解消するのはもちろん「上の役割」なので。「現場が詰まってます」っていうことを言ったって何の解決策にもなってないんですけれども。やっぱりこの河野さんが言った「プロセスはどうでもいい」っていうことがすごく頭に残っていて。なぜか?っていうとこの数ヶ月、ずっと軽視されてきたのはプロセスなんじゃないかな?って思うんですよね。
(大竹まこと)そうですね。誰がどうしたのかがわからないですね。
(武田砂鉄)先週来、話題になってるのがコロナウイルスの専門家会議の議事録が残されてない件。これに対して批判が集まってますけど。菅官房長官、「これは特に残さなくていいんだ。議事の概要を作成してるからガイドラインに沿ってるぞ」っていうことを最初は言ってたわけですけれども。でもよく振り返ってみれば、3月には新型コロナウイルスの感染拡大を「歴史的緊急事態」っていうものに初めて指定して。3月2日の参議院予算委員会では加藤厚生労働大臣が専門家会議については「速記を入れて一言一句残します」ということを宣言してるわけですね。
(大竹まこと)速記は入れてるんだ?
(武田砂鉄)速記は入れているみたいですね。
政府の専門家会議 2回分は速記録もなし 新型コロナウイルス | 注目の発言集 | NHK政治マガジン https://t.co/CqZnVx5Dni
「これに関連して、加藤厚生労働大臣は参議院厚生労働委員会で、これまで15回開かれた会議のうち、初回と3回目は、速記録がないことを明らかにしました。」— みやーんZZ (@miyearnzz) June 7, 2020
(武田砂鉄)だからまあ、その後で菅さんは「速記は入れているんで。これから専門家から要望するのであればやります」というような言い方に徐々に変わってるんですけど。そもそも専門家会議の尾身茂副座長は5月29日の会見で「『ぜひ国としてもちゃんと(議事録作成を)検討してほしい』という声は専門家から上がっている」ということをおっしゃっているんですね。
議事録作成「政府が決定」 専門家会議座長ら説明―新型コロナ:時事ドットコム https://t.co/7imjs4iur3 @jijicomより
『さらに、29日の会議で委員の一人から議事録作成について「ぜひ国としてもちゃんと検討してほしい」との発言があったことを明かした。』— みやーんZZ (@miyearnzz) June 7, 2020
で、この数ヶ月、安倍さんの会見を思い出すと、ぶら下がり会見とかも含めて、とにかくよく「専門家の皆さんの意見を聞いて……」っていうことを言ってるわけですよね。で、その専門家が言ってきたことをあらゆるものの論拠にしてきたところがあるわけですけれども。それなのに、その専門家の意見が議事録として記録されてないっていうことは、これから何かが起こったとか、これまで何が起こったかっていうことを検証するつもりがなかったんじゃないか?っていう風に思われてもしょうがないわけですよね。
(武田砂鉄)専門家会議がいろいろ検討して、「こういう風に思います」という提言をしても、その提言を受け入れるかどうかは別の話ですからね。それをこういう話があって。まあ極端なことを言えば、「それ(専門家会議の提言)はそれとして私はこういう風にします」とも言えるわけですからね。専門家会議が何をどうして、どういう意見があって……っていうのは詳らかにしてもらわないと、その提言から実際の決断までのプロセスも分からないという話になりますよね。
(武田砂鉄)そうなんです。そして今、話題になっているのは……一部で話題ですけども。菅官房長官の「意志があれば道あり」というタイトルのブログで2012年の投稿にこういうのがあって。「議事録も作成しない誤った政治主導」というタイトルでブログを書かれていて。これは民主党政権時代の記事なんですが。
「公文書の作成は、政党の主義主張とは全く関係のない、国家運営の基本です」「民主党は野党時代に政府の文書管理の不備を責め、情報公開を声高に叫んでいました」「議事録作成という基本的な義務も果たさず、『誤った政治主導』をふりかざして恣意的に国家を運営する民主党には、政権を担う資格がないのは明らかです。国会の審議で厳しく質してまいります」という風におっしゃっているんですけども。まあ、ご自身が今、議事録を作っていないというこの皮肉が今、2012年のブログから掘り起こされて話題になっていますけども。
「議事録も作成しない誤った政治主導」(2012年1月28日)
菅義偉「公文書管理法では、記録を「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」とし、意思決定に至る過程の文書を作成することを義務付けています。」『議事録も作成しない「誤った政治主導」』
(2012/1/28) https://t.co/eqKfsuSFBd… #ss954 #radiko #tbsradio— 河村書店 (@consaba) June 4, 2020
(大竹まこと)まあ、どの党でもいいけどさ、国の歴史だからね。
(武田砂鉄)そうですね。
(太田英明)菅さんに関して言うと桜を見る会の推薦者、誰の推薦で何人参加したのか?っていう聞き取りを内閣官房、内閣府の職員にしたということでそれを国会で発表したんですけど。そのメモ、文書が残ってないということも今日、明らかになりましたね。
桜を見る会の推薦者内訳、聞き取り記録残さず 菅長官https://t.co/aWHSkpR16u
首相主催の「桜を見る会」をめぐり、菅義偉官房長官は1日午前の記者会見で、昨年11月に国会で答弁した推薦者の内訳について、自らが事務方に聞き取りを行った際の記録を残していないことを明らかにした。
— 朝日新聞名古屋編集局 (@asahi_nagoya) June 1, 2020
(武田砂鉄)今日の朝日新聞に出てましたけれども。そのことに関して、共産党の小池さんが「国民にあんまり知られたくないようなことについて記録を作らないというのが安倍政権の習性なのか?」っていうような皮肉も言ってますけれども。まあ、こういうことばっかり続いていて。とにかく、プロセスが見えない。で、この最新の不透明ネタと言えば、やっぱり持続化給付金。中小企業に最大200万を支給するという持続化給付金ですけれども。この一般社団法人サービスデザイン推進協議会という、この存在が不透明だという風に言われてるわけですけれども。
国からその769億円の委託費をもらって、その97パーセントが電通に流れている。で、流しただけなのに差額の20億円がその謎の組織に心に入ってるという。流してるだけで20億円ですからね。すごい話ですよね。で、その事業の再委託を受けた電通がさらに人材派遣のパソナであるとか、IT業のトランスコスモスっていうところに外注をしていたということが分かって。で、これがどういうことをやってるのか?ってことを電通やパソナに聞くと「これは経産省の事業なんでコメントは控えます」っていうような言い方をして。経産省に聞くと「これは業務全体のコーディネートをやってもらっているんだ」という。つまり、何をやってもらってるかというのが両方から出てこないということなんですね。
(太田英明)これ、法人を電通とパソナとトランスコスモスが作って。それを電通に委託して。電通からまたパソナとトランスコスモスに再委託するっていう、すごい構図になっているんですよね。
一般社団法人サービスデザイン推進協議会問題
#東京新聞
「持続化給付金」事業を受託したサービスデザイン推進協議会は、設立から4年で14事業を計1576億円で経産省から受託
うち9件を電通やパソナに再委託
残り5件にも事業の大半を外注した例#脱法内閣 pic.twitter.com/0O8JyxbRlh— ラナンキュラス(川上 真二) (@Lanikaikailua) May 31, 2020
(武田砂鉄)すごい構図ですよね。僕はムーディ勝山さんっていう芸人さんが好きで。『右から来たものを左へ受け流すの歌』っていうのがありましたけども。まさにそれでサービスデザイン推進協議会に20億円発生しているっていうので。すごい話ですよね。右から左に仕事を流しただけで20億円がなくなっているわけですから。
(武田砂鉄)なんでこういう……まあいろんなね経済政策が出ましたけれども。その1個1個、どうせそれをメディアは検証するに決まってるわけで。どうしてこういうことになったのか? 誰がやってるのか?っていうことを検証されるという前提でこういうことが1個1個、明らかになってきて。全部、「不透明だよね。何をやってるんだろうな?」っていう不信感がずっと募ってるわけですよね。何かひとつのことをやると、かならずこういったことが出てくるというのが続いていて。
(大竹まこと)どれもこれも全部。
(武田砂鉄)全部ですよね。僕、2週間前にもここで言いますけど。まだ我が家には布マスクが来てないんですよ。
(太田英明)うちにも来てないです。
(武田砂鉄)来てないですか。まあ、別にほしいとも思っていないんですけども。
(大竹まこと)すいません。うちには届いていました……。
(太田英明)おっ、上級国民?(笑)。
(大竹まこと)どういうこと?(笑)。
(武田砂鉄)まあ上級国民に布マスクが来るのなら、上級のナメられたもんですけどね。
(大竹まこと)というか、勝手にポストに入ってるんだよね。
(はるな愛)今日、してます?
(大竹まこと)いや、してない。
(武田砂鉄)でも、この布マスクの説明も最初は「マスクの品薄」のための対策だったんですけども。ここ最近、徐々に「再流行への備え」ということに変わってきて。これ、「布マスクを配布する」って言ったのが4月1日。緊急事態宣言を発出したのが4月7日だったので。だいぶ先の未来を見ていたんだなっていう感じがしなくもないんですけども。でも、これって要するに「失敗でした」っていうことを言えばそれなりに国民も受け止め方は変わると思うんですが。
どんどん変わる布マスク配布目的
「アベノマスク」配布枚数は計画量全体の約25%にとどまり、政府は目標の「5月中の配布完了」を断念しました。https://t.co/7QFKFvNnhO
— 毎日新聞 (@mainichi) May 28, 2020
(大竹まこと)「布マスクは世の中にマスクを流通させる、需給改善の要因になった」っていう……。
菅官房長官 アベノマスクで「需給改善に非常に効果」 配布継続示す https://t.co/GcKxbLyR3e
— 毎日新聞ニュース (@mainichijpnews) May 20, 2020
(武田砂鉄)そういう言い方もしてますよね。それでによって流通しているマスクの値段がいい値段に収まったみたいな。ならばもう、配らなくていいっていう、そういうことに本来はなるはずなんですけどね。でもこういう、もちろんこういった緊急事態なんで。いろんな対策をして、失敗することだってたくさんあると思うんですけれども。こういう布マスクひとつを取ってみても「こういう意味があるんですよ」っていうその意味をどんどんどん更新していっちゃって。ある種、認めない。「これはあんまり良くない施策でした」っていうことを絶対に言わないんですよね。
(大竹まこと)その前にこのマスク配布は誰がどこでどうやって決められたのかも分からないんですよね。
(武田砂鉄)そうですよね。
(太田英明)そうですね。プロセスもはっきりしないですよね。で、また対策を打った時の記者会見で安倍さんの言い方が「世界最大レベルの給付」とか。誰に何を誇ってるのかな?っていう。別に国民はそういうことを聞きたいわけじゃないんだけどな……っていうね。
(武田砂鉄)そうですね。だからその東京高検の黒川検事長を懲戒にしたかったのに訓告になった件とかもそうですけれど。全部、そう。何かが起きるためにプロセスが曖昧になるっていうのは僕、やっぱりそれは国民を軽視してるってことにどうしてもなってしまうと思うんですよね。
(大竹まこと)あと、さっきの話だけどそれを民間に委託して。中で20億円がそこの会社に残るって……この緊急事態で一刻も早く配らなくてはいけない給付金でどこかが儲けたっていうことになりますか?
(太田英明)疑念がありますよね。ちゃんと説明してほしいですよね。「そうじゃないんだ」という風に。
(武田砂鉄)疑われてるんだったらば、どうしてこういうことになったのかを答えればいいんだけども。それに対してはあまり答えずに「ムニャムニャ」っていう感じで終わらせてしまう。それがもうあらゆる施策で行われてるっていう感じがするんですよね。
(大竹まこと)うーん……。
<書き起こしおわり>