オークラと佐久間宣行 バカリズムを語る

オークラ バナナマンと東京03のネタ作りの違いを語る 佐久間宣行のオールナイトニッポン0

オークラさんが2020年11月25日放送のニッポン放送『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』に出演。佐久間さんとバカリズムさんについて話していました。

(オークラ)一応今回もね、新しいのを持ってきたんですよ。前回、話したの前提に今回、その続きを……。

(佐久間宣行)じゃあちょっと一応、目次を読んで。それから何を聞きたいかを……1、バカリズムの戦い方。2、コントユニット青春記。3、東京03飯塚の責任感。4、『ゴッドタン』テレビお笑い奮闘記。5、神になった第六世代。7、コント作家とは。これ、どうしようかな? どれから行きます? これはでも……順番で行きますか。じゃあ、ひとつ目。バカリズムの戦い方から行きましょうか?

(オークラ)バカリズムっていうのは僕……これ、本当みんなも今、知ってると思いますけど。一番、芸人としてシビアな戦い方をしている。

(佐久間宣行)いや、本当、本当。

(オークラ)僕は元々、バカリズムと出会いが1995年。たぶん25年ぐらい前なんですけど。当時、みんなボケ・ツッコミっていうダウンタウンのフォーマットの漫才しかしていなかったんですよ。

(佐久間宣行)僕らの世代はダウンタウンの影響下にあったんですよね。

(オークラ)で、そんな中、あのダウンタウンの漫才のフォーマットをやりながら、テレビでは『ごっつええ感じ』がやっていたじゃないですか。1995年ってその頃で。それで『ごっつええ感じ』ってその頃から演出が変わるんですよね。途中で。

(佐久間宣行)ええと、小松さん?

(オークラ)そう。小松さんになった時代。小松さんの時代になってから、おそらくですよ。これは本人が聞いたわけじゃないですけど。元々『夢で逢えたら』のタイプのコントだったものから、たぶん……小松さんってそとばこまちじゃないですか。

(佐久間宣行)その小松さんっていうすごい優秀なフジテレビの演出家の方なんですけど。元劇団そとばこまちっていうところの出身なんですよね。だから、演劇系にすごい造詣が深い人が『ごっつええ感じ』に入ったんですね。

(オークラ)それで当時、小松さんとよくコンビを組んでいた作家で三木さんっていう人がいて。シティボーイズの。

(佐久間宣行)シティボーイズの三木聡さん。

(オークラ)そのへんがイニシアチブを取るようになってからですけど、『モンティ・パイソン』系のシステムを使ったコントを『ごっつええ感じ』がやるようになるんです。

(佐久間宣行)『ごっつええ感じ』の中で。松本さんのセンスと三木さんとかのが少し合わさって。まあ、ベースは全部松本さんなんだろうけど、見せ方のセンスとかね。

(オークラ)それで僕がいまだに覚えているのが「匠の人」っていうコントがあって。「匠の人」っていうタイトルだけで、何かの匠の人なんですけど、何の匠かが一切わからないんですよ。

(佐久間宣行)ああ、あった、あった!

(オークラ)それでその当時、僕は『モンティ・パイソン』とか知らなかったから。「Silly Walk」とか、ああいうタイプのコントを知らなかったので。

(オークラ)高校時代にそういうのを見た瞬間に「なんだ、これは!」って。

(佐久間宣行)いや、衝撃だったよね。前衛芸術だったよね。

(オークラ)要はシステムを作るわけで。振りとオチとかじゃなくて。で、そういうものを僕は当時、すごい見まくっていて。自分の中では分析できたと思っていたんですよ。

(佐久間宣行)ああ、「もしかしたら日本でこの世代で俺が一番、松本人志と三木がやっていることを理解してるぞ」って?

(オークラ)その時はそう思ったんですよ(笑)。

(佐久間宣行)地方の高校生が思うやつね。フハハハハハハハハッ! 「松本のセンスがわかってんの、俺だけじゃね?」って(笑)。

(オークラ)だから当時、僕が……芸人だった頃ですけども。よく分からない棒グラフを書いて、それについて延々説明するんですけど。会議とかしてるんです。それでも、何のグラフなのかは分からないみたいなのをよくやってたんですよ。

(佐久間宣行)なるほど。もう完全な直系の(笑)。影響受けまくりのやつね(笑)。

(オークラ)直系の、影響受けまくりの。そして、それが分かっていて。でも、そういうネタってボケとツッコミとは違うので、「笑いどころがここですよ」ってちゃんと言わないから、正直そんなに笑いに繋がらないんです。だから、意外にみんなやろうと思ってもできなかったりするんですけど。それを僕が一番理解してると思っていた時に……ある時、まだ映画学校を卒業したばかりの19ぐらいのめちゃめちゃかわいらしい子が、俺よりも美しくやってるんだよ(笑)。

(佐久間宣行)フハハハハハハハハッ! 2個下ぐらいの? オークラさん、21、2ぐらいだからめちゃめちゃ尖っている頃でしょう?(笑)。

(オークラ)めちゃめちゃ尖っていましたね。

(佐久間宣行)かわいい顔をした升野さんともう1人の相方が組んだコンビが……もう理想だったんでしょう?

バカリズムが自分の理想のネタをより上手くやっていた

(オークラ)あれはいまだに覚えているけども。「恥ずかしい大会」っていうのがあったんですよ。それの優勝インタビューなんですけど。チャンピオンへのインタビューをするんですけども。「あの大会は恥ずかしかったですね」「はい。恥ずかしかったです」「特にあの時のあれは一番恥ずかしかったんじゃないですか?」「あれは恥ずかしかったです」って。延々と「恥ずかしかった」っていうフォーマットで話していくんですけども。それ、ウケていたかどうかは分からないですけど、俺からしたら……。

(佐久間宣行)もう雷?

(オークラ)そう(笑)。「おおっ! 俺よりもきれいに作っている!」って(笑)。

(佐久間宣行)「俺のやりたいこと、全部やられている!」っていうやつね(笑)。

(オークラ)それでもうびっくりして。その日、すぐに今のバカリズム、ヒデのところに行って。「分かってんね!」って(笑)。

(佐久間宣行)フハハハハハハハハッ! ああ、でも一応まだライバル感は崩さず?

(オークラ)俺の方がちょっと先輩だし。年上なんで(笑)。

(佐久間宣行)「負けた」って気持ちもありながらも、「お前、わかってんな」って?(笑)。ショックが、あれだね。バナナマンを見てパフォーマンス力に絶望的な差を感じたんですよね。まず。

(オークラ)そこはもう絶望的な差を感じましたし。でも「そこは俺のジャンルじゃない」っていう。

(佐久間宣行)そう思ったんでしょう? 「だから俺はあのパフォーマンス力じゃなくてシステムとか、そういうところでだったらこの世界でもやっていける」と思ったわけでしょう? それで、出会ったバカリズムを見て、後輩なのに鮮やかに……(笑)。

(オークラ)そう。美しく作っているって思って。だから自分のこのシステム能力をもっと跳ね上げさせなきゃいけないと思って、バナナマンと組んだんですよ。

(佐久間宣行)ああ、そうか!

(オークラ)人間芝居と僕の持っているお笑いのこの……。

(佐久間宣行)システムというか。あとはアーカイブ力というか、知っているものね。

(オークラ)というのをすごい思っているんですけど。でも、僕はすごいその当時からバカリズム、天才だと思っていたんです。天才だとは思ってたんですけども、その時代。1995年ってまさしく『電波少年』とか。

(佐久間宣行)そうだね。ドキュメントバラエティーが始まって大ブームの頃だもんね。

(オークラ)しかも『電波少年』って今、考えたら恐ろしいシステムですけど。T部長が行くじゃないですか。「あなた、テレビ出たいですか?」ってまず最初に言うじゃないですか。「テレビに出たいんだったら、これをやってください」って。今、考えるとなかなかの番組じゃないですか?(笑)。

(佐久間宣行)そうね。今、考えるとね。でも、やっぱり今、『電波少年』の影響下にある藤井健太郎くんとか、『水曜日のダウンタウン』とか。ああいうバラエティーを作ってる人ってやっぱり『電波少年』好きだもんね。

(オークラ)好きだと思います。もちろん面白かったし、僕もすごい憧れていたんですけれど。芸人っていうのはそうやってテレビマンにいじられるもんだっていう公式があったじゃないですか。その時に、実は僕もバナナマンも……まあバカリズムもそうなんですけど。そこに反して、ステージ上の『ごっつええ感じ』とかああいうものから影響を受けているような、ああいうネタをやることが素晴らしいと思ってたんで。なかなかそういう人たちに認めてもらえなかったですよ。「テレビを否定してるんでしょ?」って言われたこともありますよ。

(佐久間宣行)すごいざっくり言うと「かわいげがない」って思われたんですよね。でも一時期、やっぱり「テレビで売れるためには、かわいげが必要」と言われた時期があったもんね。

(オークラ)そこにみんな融合していったのに、バカリズムは一切融合しないんですよ。

(佐久間宣行)まあ、見たことないですよ。升野さんが何かで折れたところは見たことがないです(笑)。

(オークラ)そうなんですよ!

(佐久間宣行)出会ってから今まで、1度も折れたところを見たことないです(笑)。

(オークラ)で、しかもだからこそ全然、売れなかった……「売れない」っていう言い方はあれなんですけども。もちろんライブシーンでは評価されましたけど。

(佐久間宣行)もちろん、力量に見合った売れ方はしてないけど。でも、正直だけど、「そういう気がないんだろうな」とは思っていたもんね。

(オークラ)『レッドカーペット』なんですよ。バカリズムが火がついたのは。「トツギーノ」からです。で、「トツギーノ」……『レッドカーペット』自体がたしか2006年からなんですよ。で、僕ら第5世代と呼ばれてる人たちは、『オンエアバトル』終わりの2003年ぐらいにだいたい火がついているんですよ。

(佐久間宣行)アンタッチャブルとか、そういうところ?

(オークラ)そういう人たち。だいたいそこから火がついてるのに、バカリズムだけなぜか行かなかったんですよ。でも2006年、「トツギーノ」でバーン!って火がつくじゃないですか。普通、芸人って1個パッケージができたら、それを押すじゃないですか。だってみんな、見せ方を……「俺の見せ方ってこうなんですよ」とかがあるわけじゃないですか。

(佐久間宣行)はんにゃは「ずくだんずんぶんぐんゲーム」やっていたし。フルポンはウザい先輩やってたし。

作り上げたシステムを捨てる

(オークラ)でもあの人はシステムを作り上げることがあの人の宿命というか。だから、すぐにトツギーノは捨てて、今度は違う県に握り方を作ったりしましたけども。とにかく、新しいパッケージっていうかシステムを作るんですよ。でも新しいシステムを作るとどんどん、何て言ったらいいんでしょう? 記憶に残らないっていうか、扱い方が分からないから。いわゆるクリエーターの作業なんですよね。それって。

(佐久間宣行)そうだよね。作品を作っては投げていくっていう。しかも、真似できないもんね。他の人たちが。

(オークラ)そうなんですよ。しかもIPPONグランプリとかああいう大喜利でも普通、だいたいキャラクターに沿った答えを出すとウケやすいじゃないですか。「この人ってこういうキャラだから、こういう答えを出すと面白いな」って。

(佐久間宣行)だし、そのキャラクターが浸透してると、それを裏切っても面白いしね。

(オークラ)そう。でもバカリズムはそれをやらないんですよ。大喜利のお題に対して、ちゃんとした答えを出すじゃないですか(笑)。こんな戦い方、ありますか?

(佐久間宣行)本当、そう思うよ。荒れ地で1人で戦うっていう。

(オークラ)全部、その都度その都度とくって。しかも今、ドラマもやっているじゃないですか。ドラマ、バカリズムのドラマってすごいシステマティックじゃないですか。1個、ルールを作って、その中でやっていくじゃないですか。それで今、こんだけのやつをやっている。これ、本当に化け物以外の何者でもないっていう。佐久間さんのラジオのジングルでも行っていますけども、あの人があれぐらいやるんだったら、こっちも何も文句を言えない。やらざるを得ないっていう。

(佐久間宣行)だからバカリズムはそれで逆に「『ここで一生添い遂げる』っていうタイプのスタッフがないままここまで来たのは寂しい」とは言ってたけど。でもやっぱりそれは自分でやれるっていうその力量がすごいからねっていうね。

(オークラ)そうなんですよ。このラジオでもほら、「大事な時に使ってくれない」みたいなこと、言っていたじゃないですか。あれは単純にバカリズム、嫉妬しているだけですから(笑)。

(佐久間宣行)いや、そうだよね。だって『ウレロ』をやっていて、オークラさんとか土屋くんっていう作家がめちゃくちゃ面白いと思って脚本を書いてくるんだけども。毎回、7話ぐらいに出演者脚本回というのを作るんですよ。そん時にバカリズムが8分ぐらいの早見あかりと2人でやるコントを毎回、書いてくるのね。それが死ぬほど面白くて。

(オークラ)そう。面白い。

(佐久間宣行)で、それが届いた月曜日ぐらいから、俺とオークラさんの間で「読んだ? あれ、読みました? 升野さんの?」って。それで升野さんから「直すところあったら言ってください」って来るんだけど。どうかっこつけて返したらいいのかがわからないっていう(笑)。升野さんは、たとえば『マジ歌』でも「何か気になるところとか、直すところがあったら言ってください」って言われるんだけど。ねえんだけど、「何も気づいてない」とも言えないし……。

(オークラ)「ない」って答えるとサボってるんじゃねえかと思われそうで……(笑)。

(佐久間宣行)そうそう(笑)。毎回、あるのよ。バカリズムのネタを受け取った時の受け取り方問題っていうのが(笑)。

(オークラ)すごい難しい。

(佐久間宣行)そう。難しいですよね。面白いから。っていうのがあるなっていう。だからバカリズムが一番、もうオークラさんが出会った19の時からその戦い方が変わってないまま。変わってないまま、しかも何かに迎合することなく売れたっていうことですね。

(オークラ)あれはすごいですよね。

<書き起こしおわり>

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