安住紳一郎さんが2020年10月4日放送のTBSラジオ『日曜天国』の中ではじめてパイプオルガンのコンサートに行った際の模様をトーク。そこで考えたことを話していました。
(安住紳一郎)さて、先月ですね。9月19日からイベント・スポーツの観客の上限が変更になりました。皆さんもニュースで聞いたと思いますけれども。現在はスポーツイベントは主要の50パーセントまでということで。プロ野球の試合のニュースなど見ましても、お客さんが一気に増えたことを実感しますし。大声を出さないイベント……伝統芸能などは満席でもOKということになっているようです。が、満席までお客さんを入れてやってるとこは少ないようですけどね。
これを受けまして演劇・コンサートなども自粛期に比べると再開するところが出てきたということになっているようですが。私もそんなニュースを聞きまして、柄にもなく「ちょっとコンサートに久しぶりに行ってみたいな」っていう気持ちになりまして。先週、コンサートに行ってきました。
(中澤有美子)そうですか。
(安住紳一郎)もともとは4月、5月に予定されてたものがやっぱり延び延びになって。ちょうどホールが空いてるようなところに不自然極まりないような曜日とか時間に。空いてるところを狙ってやっぱりプロモーターの人が入れてくるのか、契約があるのか分かりませんけれども。平日の午後3時からとか、そういう普段だとね、なかなか埋まらないようなところも結構埋まってたりして。「へー」と思ってましたけども。私も特に用意してたわけでもないので、なんとなくインターネットでババッと見て、面白そうなところを……と思って行ってみたんですけれども。私、先週パイプオルガンのコンサートに生まれて初めて行ってきました。
(中澤有美子)へー!
(安住紳一郎)よく分かりませんけれども。とにかく、なんか生の音楽を聞きたいわっていう気持ちが高まって。普段だったらたぶん「行こう」とは思わないんだと思うんですけれども。「パイプオルガンのコンサートで俺、1人で行くんだ。俺は……変わってるな」と思いながら(笑)。うん。なんかやっぱりCOVID-19の影響が俺にもあったんだな、なんて思って。急に47になってパイプオルガン。行ってきましたよ。
(中澤有美子)素敵(笑)。あら、荘厳な……。
(安住紳一郎)そうね。なかなかチャンス、ないですもんね。今はクラスターなどあったら困るので、入り口。入場する時は携帯の電話番号を書いて。「もし誰か発熱者が出た場合は連絡します」というような誓約書みたいなものも書いて。しっかりね。
(中澤有美子)席の場所とかも。
(安住紳一郎)席の場所とかもちゃんと書いて。で、そのコンサートもたぶん4月ぐらいに予定されてたもので、延びに延びて。プロモーターとか興行師とか出演者の方も大変だろうと思いますけども。なんかやっぱりちょっと強引な日程でやってるなっていう感じでしたね。お客さん、やっぱり少なくて。もう、ねえ。失礼を承知で言いますけども。本当にもうガラガラ。ガラのガラのガラコンサート。うん。全然笑えないけどね。でも、よかったです。
やっぱり人は人から熱をもらうということが改めて実感しましたね。いい景色を見て、ペットと遊んで心癒されるっていうことは分かりますけども。熱をもらうのはやっぱり人からですよね。なんとなくそんな感じがしました。築地とかね、豊洲で買物をするってのは何となく、品物がいいっていうのもありますけども。その向こうに働いている人の姿があるから、やっぱり熱を感じるんだし。
デパートで心踊るのは、置いている品物が立派だからっていうのもあるけれども、やっぱりね、そこには洗練された定義さんがうやうやしく鞄を出してくれるから。だからその鞄がより輝いて見えますもんね。そんな気持ちになりました。
オルガニストが両手両足を使って音を出してくれて。やっぱりぐっときましたね。ヨーロッパ戦線で傷付いた連合国軍の兵士のような気持ちになっちゃってね。で、なんかオランダの崩れかけている教会のベンチに腰かけて一眠り取っている兵士な気分になっちゃってね(笑)。
(中澤有美子)フフフ、ほう……(笑)。
ヨーロッパ戦線で傷付いた兵士の気分に
(安住紳一郎)ほら、感受性が強いから(笑)。何となくイメージできるでしょう? なぜか私、枢軸国側の子孫なんだけど。なぜか連合国軍の兵士になっちゃって(笑)。だからイメージがね、それしかないんだよね。パイプオルガンのイメージがね(笑)。ヨーロッパ戦線で傷付いた連合国軍の兵士になっちゃってね。イメージはアメリカの空挺師団みたいな感じ?
で、崩れかけた教会のベンチに腰かけてくつろいでいたら、そこの修道女の人が何か賛美歌を歌ってくれるみたいな感じのイメージ? 「これは幻聴か?」みたいな感じで癒される的な感じ。うまく説明できないけども。よかったわー(笑)。
(中澤有美子)うんうん(笑)。
(安住紳一郎)「よかった」っていう感じ、伝わってます?(笑)。
(中澤有美子)きっと、伝わっている(笑)。
(安住紳一郎)本当? 伝わっているかな?
(中澤有美子)ふーん。染み入ってきたんですね。
(安住紳一郎)染み入っちゃったのね。そう。ただ、やっぱり人間の出来には限界がありますわね。やっぱり途中でちょっと飽きちゃいましたね(笑)。
(中澤有美子)フフフ(笑)。
(安住紳一郎)最初の方はよかったんだけどね。「あら? 知らない曲が続いている……」なんて(笑)。まあ、そうなりますわね。ちょっとね、短めでよかったんですけども。ちょっと長かったから。そんな感じでしたね。飽きてきちゃって……。
(中澤有美子)コラッ!(笑)。また言う!
(安住紳一郎)自分の座ってる席の前がずっと空いていて。「へー」と思って。ちょうど木目調のいい椅子が広がっているホールなんですけども。それで「やっぱり空いているな。そして、みんなが間隔を離して座っているから、いつもと感覚が違うな」なんて思って。自分の列が、ちょうど傾斜がついているので少し半分俯瞰になるような感じで見えてるんで。
「自分の前は……1、2、3、4……」なんて数えちゃって。そしたら、ちょうど自分の前が開いてるんで、後頭部が見えてる70歳ぐらいの男性の人なんですけど。「その人までちょうど9席、空いてるな」なんて思って。そんなことを不意に考えていて数えちゃったら、「9マス? これ、自分が香車だったらあれ、向こう側の香車だな」なんて思っちゃったりして(笑)。
(中澤有美子)フフフ(笑)。あらららら。将棋になっちゃって(笑)。
(安住紳一郎)将棋に見えてね。人間って不思議なもんだね。パイプオルガンの演奏を聞きながらね。で、皆さん考えたことありますか? 将棋ってね、結構駒の気分になって考えるとめっちゃ怖いですよ。「右前のベレー帽をかぶったご婦人が角だったらね、ギャッ!ってこっちに来るんだな。この距離、角だったら来るんだ!」と思って。うん。
(中澤有美子)ああ、そうか。斜めに来るから。
(安住紳一郎)斜めに来るから。「角とか飛車とかってやっぱりすげえな!」って思って。まあ、香車もね、まっすぐ飛んでくるんだけども。でも、角の感じ。で、ちょっと縦、斜めがずれているからさ。で、また角の感じでご婦人が座っていてさ。あれ、向こうの角だったらこっちにまっすぐ……一気に来るでしょう? だって。ガッ!って。
で、また棋士の人がさ、「死力を尽くす盤面でした」とかコメントしてるからさ。「これ、駒の立場だったらたまらねえな!」って思って。いや本当よ。たまに山形の天童でさ、人間将棋とかやるけどさ。あれはほら、なんか1マス1マスゆっくり立ち上がってやるけどもさ。将棋で角とか、ねえ。
(中澤有美子)手で持ち上げて、一気に来ますね(笑)。
(安住紳一郎)そうでしょう? 「34角(シュパーン!)」って来るでしょう? 「この距離を……すげえな。人がぶっ飛んでくるんだな」って思って。「飛車、すごいな」とかさ。で、自分が歩だとしたらさ、自分の前に相手の金とか来たらさ、真ん前にこっちを向いて金の人が座っているわけでしょう? 「うわっ、すごいストレス!」とか思って。
(中澤有美子)フフフ、本当ですね(笑)。
将棋の駒の気持ちになる
(安住紳一郎)ねえ。向き合っちゃうんだから。圧がすごい。自分の前の席が金で自分の右前に銀とかがいたりして。「いや、もう耐えられない……胃に穴が開いちゃう」って。パイプオルガンの演奏、よかったわー。
(中澤有美子)フフフ、いい時間でしたね(笑)。
(安住紳一郎)いい時間だった。いろいろと考えたね。うん。最近はなんか指定席の場合も市松模様でね、座っていくっていう劇場が多かったりしまして。前横がいなくて。逆に見やすいっていう人がいて。むしろこれが元に戻って満席になった時は少しストレスを感じるんじゃないかっていうぐらい見やすいなんて言ってますけどもね。まだまだ万全ではないですし、皆さんの考え方いろいろあると思うので。お出かけになりたい、お出かけしたくない。いろいろ意見があると思いますけども。もし、お出かけになってコンサートなど行くようなことがありましたら、予備知識としていかがでしょうか? 私の将棋の話、余計だったかしら?
(中澤有美子)すごいよかったと思います。
(安住紳一郎)ああ、そうですか? 本当にそう思ったんですね。へー!
(中澤有美子)そういう風に思考があちこちに飛びますよね。連合国軍の兵士から将棋の駒に。ねえ。
(安住紳一郎)そう。まあ、ちょっとほら、連坊国軍の兵士になっていたから。ちょっとそういう戦い的なものに対して思考が飛んだのかなと思いましたですね。なので私はパイプオルガンを見るともう今、将棋の盤面が浮かぶんですよね。
(中澤有美子)フフフ(笑)。
(安住紳一郎)はい、話、終わりました。
<書き起こしおわり>