安住紳一郎さんが2007年8月にTBSラジオ『安住紳一郎の日曜天国』で話したトークの書き起こし。高校野球中継フリークの安住さんが、高校野球中継名物解説者、原田富士雄さんと鍛治舍巧さんについて語っていました。
(安住紳一郎)先週の水曜日、高校野球の決勝戦がありましたけれども。先週、私が熱く高校野球、いや、もとい、高校野球中継について語ったわけですが。
(中澤有美子)そうでした。
(安住紳一郎)2週続けて高校野球の話もなにかな?と思ったんですけれども。やはり、高校野球、いえ、もとい、高校野球中継ファンの私としてはですね、この高校野球の決勝戦をですね、中継する側、あるいは中継する身、あるいは中継スタイルに則って、ちょっとみなさんにお話したいなという情熱を、どうにも抑えることができません!
(中澤有美子)はい!(笑)。
(安住紳一郎)あの、先週もお話したと思うんですが、本当に、高校野球も好きなんですが、それ以上に高校野球を中継するテレビとかラジオが好きで。よく見てるんですが。先週の水曜日、ちょっとお昼、まだ仕事がなくてですね。近所にちょっと自転車で買い物に出かけた帰りにですね、『おっ、高校野球、決勝戦だな、今日』なんて思ってですね。時計をパッと見たら、もう1時5分になっていてですね。
(中澤有美子)ああ、はい。
(安住紳一郎)このまま急いで自転車を飛ばして帰っても、20分くらいかかってしまうので。これは前半のハイライトを逃してしまうと焦った私はですね、近くの駅前の漫画喫茶に入りまして、そこで高校野球の決勝戦を観戦したんですが。いいゲームでしたねー!中澤さんはご覧になりましたか?
(中澤有美子)実はちょっと用事があって見られなかったんで、ダイジェストだけ。
(安住紳一郎)ああー、そうですか・・・
(中澤有美子)すいません(笑)。
(安住紳一郎)あれはね、ダイジェストで見ると感動が伝わりきらないと思いますね。もう、押しに押されていた佐賀北高校。もう、実力通りで行くと、たぶん広陵高校に12対0ぐらいで負けててもおかしくないゲームだったんですよ。
(中澤有美子)ふーん。
(安住紳一郎)それが、8回の表。突如として押し出しを含めて満塁ホームランで逆転。5対4という。ねえ。こう、ね。プロ野球選手になるための、体のゴツい選手を揃えた広陵高校に対して、体が一回り小さい県立高校の佐賀北高校が、しのぎにしのいで最後、ねえ。審判の誤審にも助けられながら(笑)。問題になりましたけども。高校野球は審判に文句を言ってはいけませんからね。
(中澤有美子)ねえ。
(安住紳一郎)うん。昔、あれですよ。ワンバウンドでフェンスを越えたエンタイトルツーベースのボールをホームランと判定されて、なにも言えなかったっていう時代もあったんですよ。ええ。ということでね、高校野球は審判に何も言っちゃいけないということなんですけどもね。
(中澤有美子)うん。
(安住紳一郎)感動があったわけなんですが。しかし、それはあくまでオーソドックスな野球の見方ということですよね。ここからお送りするのは、高校野球中継フリークの私の見方でございます。
(中澤有美子)(笑)
(安住紳一郎)『NHK 今日を読む』のコーナーです。テレビで見ていたんですけども、やはりNHKのテレビの中継というとですね、やはり野球解説者。この存在をなくしては語れないわけなんですね。
(中澤有美子)ふんふんふん。
(安住紳一郎)ご覧になっていて、野球の解説者。あんまり印象に残らないとみなさん、思うんですけども。これはでもですね、中継フリークから言わすならば、この野球解説者。高校野球の解説者はですね、決勝戦は誰か?と言われるとですね、誰もが、ファンとしてはですね、かならず原田富士雄さんを挙げるわけですね。
(中澤有美子)ほー。
名解説者 原田富士雄
(安住紳一郎)ええ。原田富士雄さんという方が、いま結構解説者では第一人者なんですが。決勝戦もNHKは解説 原田富士雄、実況は竹林アナウンサー。このコンビで来たわけですよ。
(中澤有美子)割と毎年、そんな感じなんですか?
(安住紳一郎)毎年っていうかですね、だいたい毎年の流れを見ていると、『あっ、今シーズンは竹林・原田ペアだな』っていうのが分かるんですよ。
(中澤有美子)あっ、わかるんですね。
(安住紳一郎)わかるんですね。ええ(笑)。たぶん、オールドファンの方は池西増夫・西田アナウンサーコンビとか、たぶんね、覚えてらっしゃる方は多いと思うんですけども。今年はたぶん竹林さんに、原田さんだな!っていうのこれ、想像ついているわけです。
(中澤有美子)そうなんだ(笑)。
(安住紳一郎)で、私もテレビ見たら、『あっ、やっぱり原田だ!』と思って。
(中澤有美子)『当たった!』って思って。
(安住紳一郎)フリークから言わすと、原田さんのことは『富士雄ちゃん』って呼んでるんですけども。
(中澤有美子)ああ、そうなんですか(笑)。かわいい。
(安住紳一郎)『ああ、やっぱり富士雄ちゃんだな、決勝戦は。今年』なんて思って聞いているわけなんですけども。この原田富士雄さんっていうのはですね、NHKの解説者の中では非常に温厚な語り口ではありながら、比較的辛口な批評もたまに繰り出して、視聴者の人をびっくりさせるという富士雄ちゃんなんですけども。
(中澤有美子)そうなんですか(笑)。
(安住紳一郎)人呼んで、『甲子園のセルジオ越後』って呼ばれてるんですが。ええ。
(中澤有美子)へー(笑)。
(安住紳一郎)結構淡々と・・・NHKのね、高校野球の中継なんで、そんなに選手自体を悪く言ったりはすることはないんですが。時折ピリリとした辛口コメントをすることで有名なんですよ。
(中澤有美子)へー。
(安住紳一郎)『うーん、これでは勝てません』とかね。
(中澤有美子)(笑)
(安住紳一郎)『再三申してますけども、この変化球に手を出してはいけないのです』とか。こう、ピリリとした感じなんですよね。うん。『佐藤くん、この場合はバントの構えは必要ありませんね』とかね、結構ビシビシッと言ってるくね、富士雄ちゃんなんですけどもね。
(中澤有美子)否定はするんですね、ええ(笑)。
(安住紳一郎)そんな原田富士雄さんの解説で決勝戦が始まったわけなんですけども。原田富士雄さんのいちばんの見せ場は、試合終了後だったんですよ。広陵高校の野村投手がね、ホームランを打たれて、うなだれて。試合終了後、ベンチの人間と、あまり言葉を交わすことなく、淡々と動作を続けている中で、実況の竹林さんが『打たれた広陵ピッチャー野村に涙はありません』って言ったの。うん。
(中澤有美子)うーん。
(安住紳一郎)結構泣いてる選手が多かったんだけど、野村投手は泣いてなかったの。結構淡々としてたのね。で、竹林アナウンサーは『打たれた野村に涙はありません』って言ったら、そこで富士雄ちゃんがですね、これまで結構辛口で有名だった富士雄ちゃんがですね、『はい。彼は泣く必要はありません』って言ったの。かっこよくない!?もう、私そこで号泣。ブワーッ!
(中澤有美子)あー・・・
(安住紳一郎)『彼は泣く必要はありません』っつったの。うーん。『彼は負けてはいません。敗者ではないのです』。富士雄ちゃん、かっこよくない?
(中澤有美子)へー!
(安住紳一郎)これまでさ、恐ろしいほどに理路整然としていた解説が、最後の最後には負けた投手を指して『負けていない』というこの理不尽な哲学!もう、泣いちゃって。私。よかったですねー。淡々とした人が急に、『彼は泣く必要はありません』って。びっくりしちゃった。帝国海軍にいるのかと思っちゃった。俺。はあーっ!と思っちゃってですね。ええ。
(中澤有美子)へー。
(安住紳一郎)でも、この日の富士雄ちゃんはちょっと違いましたね。急にあの、思い出話をね、し始めたりして。やはり劇的な決勝戦のゲームに、やはりさすがの富士雄ちゃんもちょっとね、心が少し踊ったのかな?っていう風に思ってましたけどね。うん。私がもし女性だったら、この日の富士雄ちゃんに抱かれてもいい!とすら思いました。ええ。
(中澤有美子)(笑)。そんなに?
(安住紳一郎)よかったですねー。原田富士雄さんの解説。これまで、もう辛口なほどに理路整然だった解説者が急に優しくなっちゃう。抱かれてもいい!と思いましたね。ええ。
(中澤有美子)(笑)。ググッと。
(安住紳一郎)ググッと来ましたね。ええ。そして、高校野球フリークだとするならば、原田富士雄さんと同時にもう一人、名前を挙げるとするならば、辛口の原田さんに対し、一方、癒やしの巨匠と言われている鍛治舍巧(かじしゃたくみ)さんね。
(中澤有美子)へー。
(安住紳一郎)もうこれ、名前聞いただけで私なんか震えちゃうんですけども。
(中澤有美子)ああ、そうなんですか。
癒やしの巨匠 鍛治舍巧
(安住紳一郎)あの、刀鍛冶の鍛冶に、学び舎の舎。それに、大工さんの巧ですね。で、鍛治舍巧。ねえ。1回では聞き取れないキャッチーなお名前もまた魅力なんですけどね。
(中澤有美子)ええ、ええ。
(安住紳一郎)小さい頃、『今日の解説は鍛治舍さんです』って言われて、私はなんか、『えっ?今日の解説は歯医者さんですか?』って思ったりもね、したこともあるんですけども(笑)。
(中澤有美子)(笑)
(安住紳一郎)この人の解説からはですね、アルファ波が出ていると言われるぐらいですね、癒し系の語り口なんですよ。
(中澤有美子)あっ、そうなんですか。
(安住紳一郎)『どうもプロ野球中継と違って高校野球中継を見ていると、眠くなってしまうな』って思う方、多いと思うんですけども。これは、昼間に延々と中継をしてるからではなくてですね、鍛治舍巧さんの解説からアルファ波が出てるからなんです!
(中澤有美子)(笑)。そうなんですかー!
(安住紳一郎)この方のね、解説は本当にあの、朴訥とした語り口ながらですね、口癖はですね、『いいですねー。いいですよー。いいですねー』っていうですね、鍛治舍節なんですよ。
(中澤有美子)(笑)
(安住紳一郎)『はい、いいボールですね』『はい、ピッチャーいいですよー』っていうですね。『内野の連携プレー、非常に鍛えられてますね。いいですねー』っていうね。鍛治舍巧さん。
(中澤有美子)そうなんですねー(笑)。
(安住紳一郎)『いいですよー、川口くん』っていうね。ええ。
(中澤有美子)へー。褒めて、褒めて。優しいんだ。
(安住紳一郎)本当に聞いてるとね、なんか自分までうれしくなってくる解説なんですけどもね。鍛治舍巧さん。ぜひ、みなさんも来シーズン、チェックしていただきたいなと思うんですけども。
(中澤有美子)そうですね、ええ。
(安住紳一郎)しかもですね、驚くべき。この人は社会人チーム松下電器の監督をしていた人なんだけれども、その後、監督を引退した後は松下電器にサラリーマンとして普通にね、仕事を続けていたそうなんですけども。その後、なんとなんと、このプラス思考が見事な成果を発揮しまして。現在、鍛治舍巧さんは松下電器の役員なんです!
(中澤有美子)はい、そうなんですか!
(安住紳一郎)すごくない?
(中澤有美子)本当ですね。
(安住紳一郎)高校野球の解説者にして、一流メーカーの役員だよ?世界の松下ですから。売上四兆円を超えると言われる、あの松下電器。従業員30万人ですって。その役員だよ?取締役だよ?
(中澤有美子)すごいんだ!
(安住紳一郎)すごくないですか?高校野球の解説もする取締役。びっくりだよ。島耕作みたいな感じだと思うんですが。
(中澤有美子)そうですね!かっこいい!
(安住紳一郎)かっこいいですよねー。甲子園に来る時は、女性秘書が横でスコアを取っているらしい。
(中澤有美子)本当ですか?
(安住紳一郎)嘘です!
(中澤有美子)あっ・・・(笑)。気をつけてください、みなさま(笑)。
(安住紳一郎)俺はね、その事実を知った時に、一昨年ぐらいに知ったんですが、もうびっくりしちゃって。すごいよね。『いいですよー。いいですねー』って。うーん・・・
(中澤有美子)(笑)
(安住紳一郎)『いい企画ですよー』ってね。『本当に鍛えられてますね。首都圏営業チーム。いいですねー』とか、会社で言ってるんじゃないですか?
(中澤有美子)そうですね(笑)。
(安住紳一郎)『本来の出来では、家電、ないんですけどね。よくね、バックの半導体が盛り立ててますね!』なんて。
(中澤有美子)(笑)
(安住紳一郎)『いいですよー。いいですよー。松下電器』。
(中澤有美子)『新製品の売上、いいですねー』。
(安住紳一郎)『売上、いいですねー。まだまだ、諦めてはダメですよ。最後まで、がんばってほしいですね。半導体チーム』。
(中澤有美子)(笑)
(安住紳一郎)いいですねえ。すごいね。鍛治舍巧さん。役員ですって。うらやましいなと思いましたけどもね。あ、うらやましいなじゃあないな。すごいなと思いましたけどもね(笑)。
(中澤有美子)(笑)
(安住紳一郎)そんな目で、甲子園を見てみるのも楽しいかなと思いましたけども。
(中澤有美子)本当にそうですね。
(安住紳一郎)やはりね、原田富士雄さん。『彼は泣く必要はありません』。よかったですねー!もう、あれを聞けただけで私はこの夏、満足です。
(中澤有美子)はあー。
(安住紳一郎)みなさんもどんな思いでね、高校野球をご覧になったでしょうかね。まあ、見てない方はチンプンカンプンだと思いますけどもね。
(中澤有美子)ああ、見逃してとても残念な気がしました。いま、お話を聞いて。
(安住紳一郎)ちょうどあの、先々週ぐらい、焼き物の町、有田町が不況のどん底だってお話をしたと思いますが。その時にちょうど、佐賀県。有田町も佐賀なんで、佐賀に行ったんですよ。で、地元の人に、『高校野球、甲子園1回戦。佐賀北が勝ったんですよ』って話をちょうど私もしてたので。ちょっと注目はしてたんですけども。そのチームがね、優勝したということで、もう本当に私も急に佐賀北びいきになってしまいましたけどもね。
(中澤有美子)へー。
(安住紳一郎)またピッチャーの久保くんがね、佐賀県出身のはなわさんに似てたりね。あと、江頭2:50さんもね、佐賀の出身なんですが。ライトを守っていたのが江頭くんっていったり。
(中澤有美子)そうですか(笑)。
(安住紳一郎)なんか急に親近感がわいちゃったりね、して見てましたけどもね。
(中澤有美子)ねえ。特待生なしで、見事優勝という。
(安住紳一郎)はい。まあ広陵とかね、帝京もがんばりましたけども。本当に、いろいろなことを高校野球を見て私は再び確認させていただきました。
<書き起こしおわり>