R-指定『8 Mile』を語る

R-指定『8 Mile』を語る サウンドクリエイターズ・ファイル

R-指定さんが2020年9月20日放送のNHK FM『サウンドクリエイターズ・ファイル』の中で映画『8 Mile』を紹介していました。

(R-指定)それで次もまたシネマファイルなんですけど。でも、言うても松永さんもたまに見るやん? 映画を。

(DJ松永)たまにね。

(R-指定)どんなんを見ます?

(DJ松永)どんなのを見たかな? 最近、なにを見た? 最近は俺……まあちょっと去年かな? 初めて『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を見させていただいて。

(R-指定)フフフ、去年初めて?(笑)。

(DJ松永)ありがとうございます! サウンドクリエイターズ。ファイルの1週目で俺、「デロリアン」って3、4回言ったと思うけど(笑)。

(R-指定)フハハハハハハハハッ! 見たてホヤホヤやから、たとえですぐに出てくるからね(笑)。

(DJ松永)マジで。「有名らしいな。見てみるか」と思って『1』を見てみたら「ふぁっ……お、おもしろーい!」ってなって。もう『1』『2』『3』を一気観よ。めちゃくちゃ面白い!

(R-指定)フハハハハハハハハッ! あれ、めっちゃおもろいやろ?

(DJ松永)皆さん、おすすめです!

(R-指定)見とかなヤバいって。正直な。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。

(DJ松永)『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。あれ、面白いよ?

(R-指定)いや、全員知ってんねん(笑)。めちゃくちゃおもろいからな。

(DJ松永)まあ、そんぐらい私、映画を見てこなかったんです。だから……でも、ヒップホップを題材にした映画って結構あるもんね?

(R-指定)結構ある。だからそれこそ逆に言うと、ラッパーって映画好きな人が多いから。宇多丸さんは突出しているけど、みんなやっぱり曲の中で何かしら映画ネタが出てくるんですよ。で、その『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のデロリアンとかも、それこそ俺の仲間のテークエムも『DELOREAN THREE』っていう曲を出していたりするし。

(DJ松永)ああ、かっこいいよね。

(R-指定)で、逆に言うと松永さんが言った通り、ヒップホップを題材にした映画もたくさんあるんですよ。『Juice』とか『ドゥ・ザ・ライト・シング』とか。そんな中でも、やっぱり日本の我々世代のラップをしている人間が確実に通ったし、確実に影響されたし、今でも大好きな映画……まあ、『8 Mile』。

(DJ松永)『8 Mile』ね!

(R-指定)正直、エミネムの『8 Mile』。こんなもん、全員が見たんですよ。全員が見たし……あれ? お前、まさか……?

(DJ松永)ちょっとあの、『8 Mile』を見ないのがかっこいいと思って……(笑)。

(R-指定)お前っ! こいつ……このガキが!

(DJ松永)「このガキ」(笑)。お前、漫画の読みすぎ(笑)。

(R-指定)なんで見てないんよ、『8 Mile』を!

(DJ松永)あ、明日見る、明日見る。今日見る(笑)。

『8 Mile』を見ていないDJ松永

(R-指定)もう絶対に見いひんやんけ、こいつ(笑)。でも、正直ね、たしかにそんぐらい……「見てないのがかっこいい」って思うぐらい、みんな見てるのよ。ど真ん中すぎて。で、俺なんかは出会ったタイミングがホンマにラップにハマりたてで。みんなが見てるっていうのは知らん状態。「俺だけがラップを知っている」っていう状態の時に『8 Mile』に出会ったから速攻で見たんですよ。

見たら、半分がエミネムの半自伝的な映画なんですよね。ホンマにお金もないようなトレーラーハウスに暮らしてる白人の少年が、白人っていうことだけでも逆に不利になるというような不思議なのヒップホップという文化にのめり込んでいって。お金もない最悪の状態からラップ1本で成り上がっていくというね、すごい夢のある話やし。で、MCバトルのシーンがすごい多用されてるんですけども。やっぱりそれを見て俺は「MCバトルしたい」って思いましたもん。中学生の時に。「かっけー!」みたいな。

(DJ松永)それに感化されて実際にマイクを手に取った人って本当にいっぱいいるんだろうな。世界中にいるんだろうな。

(R-指定)世界中におるし。で、やっぱり『8 Mile』の時のラップバトルのエミネムの歌詞も超かっこよかってんな。なんか相手のやつとかに「お前らは2パックの物真似だ」みたいに言う時に「1 Pac, 2 Pac, 3 Pac, 4」みたいな。「いろんなやつがいるぜ」みたいな。たぶん「パック品でセールされている」みたいなのとかかっていたりして。超うまいんですよね。

そういうのとかも見て「うわっ、かっけー!」みたいなのを思いながら、やっぱりはじめて俺はフリースタイルをしてみたわけなんですけども。やっぱり当然、全然できへんみたいな。それで練習していって、高校生の時にMCバトルとかに出たりするんですけども。やっぱり『8 Mile』みたいにうまいことはいかんわけですよ。普通に超負けるし。あんだけエミネムぐらいロックできるなんてことはないんやなと思ってたんですけど。なんか人生でMCバトルで優勝したりとかしていくうちに、「ああ、こういうことか」って。そのエミネムが味わっていた感覚というか。

で、俺もホンマに金のない時期に、俺は怠け者なんで。バイトとかもロクにせずに金がなくなってきたらMCバトルに行って、なんとか優勝して賞金もらうみたいなことでしのいでたわけですから。まさか自分がホンマに『8 Mile』みたいな状態をやるとは思ってなかったんですけど。そんな感じもあって、やっぱりいまだに思い入れある映画ですね。

(DJ松永)そうか。しかもね、それこそ主題歌を本人が歌ってるんだよね。

(R-指定)そう。主題歌がこれ、エミネムの中でも大ヒットした曲『Lose Yourself』という、いまだにヒップホップとかラップってなったらこの曲が使われることが多いですよね。

(DJ松永)本当ですよ。なんか本当にヒップホップの認識が『Lose Yourself』で止まってる人が多いです(笑)。

(R-指定)多いし、何が腹が立つって我々Creepy Nutsのラジオを担当してる作家とかスタッフ陣が全員、ヒップホップといえばこの曲を流すねん。まだやってんのか?っていう。言うてるやろ、そうじゃないって!

(DJ松永)「えっ、ヒップホップってこれですよね?」って(笑)。

(R-指定)フフフ、でも、そんぐらいね、この『Lose Yourself』っていう曲にはね、ヒップホップのいいところが全部詰まってます。成り上がりイズムやし、すごい最低な状況から抜け出そうとする根性もそうだし。とにかく音のあおりたてるような、熱くさせるような格好よさ。で、ラップの格好よさ。全部詰まってますよ。正直、『Lose Yourself』に。ベタ中のベタと言われても、それを突破できるぐらいの破壊力がこの曲とこの映画にはあるんですよね。

(DJ松永)たしかに。まあベタになる所以はそれこそ、それだけ素晴らしかったからベタになるうるわけだもんな。

(R-指定)それで俺らCreepy Nutsもさ、俺がMCバトル。UMBという大会で3連覇して。Creepy Nutsが曲を作るっていう段階になって、俺がMCバトルで勝って。まあ、あんまり自分で言うのもあれやけど。要は……まあ「日本のエミネム」みたいなところ、あるやん?(笑)。

(DJ松永)フハハハハハハハハッ! 皆さん、恥ずかしいやつが目の前にいます(笑)。

(R-指定)まあ、正直俺って日本のエミネムやん?

(DJ松永)あっ、腹をくくった! 急に腹をくくった(笑)。

(R-指定)どう考えても、どう照らし合わせても、日本でエミネムっぽいっていうのは俺しかおらんのっ! だからー!

(DJ松永)フフフ、駄々こねてる時点で終わりよ。エミネムじゃないよ。「俺ってエミネムなのーっ!」って(笑)。

(R-指定)いや、エミネムも結構曲の中で駄々こねてるで(笑)。「前の俺のアルバムをクソって言った評論家、全員死ね!」っていうような曲をいっぱい書いているから(笑)。いまだに。

(DJ松永)最高(笑)。

(R-指定)だからそういう面も含めてCreepy Nutsで『刹那』っていう曲を作ったじゃないですか。俺がMCバトルに向かう時、超精神的に追い込まれていた状況をそれでも「戦うぞ!」っていう、その状況を曲にしたりとか。そういうのがあるぐらい影響されてますから。

(DJ松永)エミネムは偉大ですよね。

(DJ松永)じゃあ、ちょっと聞いてもらいましょうか。映画『8 Mile』の主題歌。エミネムで『Lose Yourself』。

Eminem『Lose Yourself』

(R-指定)お送りしたのはエミネムで『Lose Yourself』でした。最高やな。この「♪♪♪♪」っていうあのイントロから……だって俺、中学生の時にマジで歌いたかったから。英語全然わからへんけども。全部聞きながら、1秒1秒を止めながらカタカナで書き起こして。嘘英語で『Lose Yourself』を1バースだけは歌えるようになりましたからね。「ヒズパームズアスウェッリ、ニーズウィーク、アームザーヘビー」って。

(DJ松永)ダセえ(笑)。

(R-指定)(カタカナラップを歌い続ける)。ずっとやっていたから。

(DJ松永)ハズい(笑)。俺、それさんざん聞いたわ。それこそさ、俺が板橋の六畳一間のアパートに住んでいた時、Rさんがよく来て泊まったり、同居していたりとかっていう時があったけどさ。もちろん金もない中さ、俺が水道光熱費を払っているわけだけどもさ。Rさんが1時間半ぐらいシャワーを浴びているんですよ。俺が「水道代……」って思いながらイライラしながら……。

(R-指定)俺は風呂とかそういう行動が全部遅いし長いんで。シャワーとかも1時間半ぐらい浴びているんですよ。ずっと。

(DJ松永)ちょっとね、病気なんで(笑)。

(R-指定)ちょっとご病気で。持病でね(笑)。

(DJ松永)それで1時間半ぐらいシャワーを浴びているんですけども。俺がイライラして耳をそばだてるとRさんが「ヒズパームズアスウェッリ……♪」って『Lose Yourself』を歌ってんだよ(笑)。

(R-指定)ずっとシャワーを浴びながら……俺、なんでそんなシャワーが長いかっていうと、何回もやり直すんですよ。シャンプーして、洗い流して。その洗い流し方が気に入らんかったらもう1回、1から体を洗ったりして……っていう。で、その中でぼーっとして何もしない時間とかあるんですよ。「一旦、落ち着こう」みたいな。で、「もう1回、最初からやり直そう」とか。で、これじゃ埒が明かない。一生風呂から出られへんぞ。全然気に入った泡の立ち方、落とし方ができへんっていう時は自分を奮い立たすために「ヒズパームズアスウェッリ、ニーズウィーク、アームザーヘビー♪」って言いながらもう1回、泡を立てるねん(笑)。

(DJ松永)毎日戦いすぎ(笑)。

(R-指定)で、体中が泡だらけになったところでサビで「ユベラ、ルーズ・ユアセルフ、インザミュージック、ザモーメン♪」って……。

(DJ松永)それで「シャーッ!」ってやって(笑)。

(R-指定)「ユベラネバレリゴーゴー♪ ユオリゴワンショッ♪」ってやってんのよ。

(DJ松永)俺、そのスタジオ代、払ってるからな?(笑)。

(R-指定)フハハハハハハハハッ! スタジオなん、あれ? あの風呂場、スタジオ?

(DJ松永)あのいいリバーブが効くスタジオ代、俺が払っているから。

(R-指定)あそこで歌ったの、めっちゃ気持ちよかった(笑)。

(DJ松永)あれ、いいでしょう? またご利用ください(笑)。

(R-指定)フハハハハハハハハッ!

<書き起こしおわり>

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