加藤浩次さんが2020年9月9日放送のニッポン放送『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』に出演。佐久間さんと自身の出演した番組などを振り返りながら、テレビが過剰にエスカレートしていった時代とその構造について話していました。
緊張したけど、凄く嬉しい回でした。加藤さん、やっぱり面白くて格好良かったです。
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— 佐久間宣行 (@nobrock) September 9, 2020
(佐久間宣行)メールが来ています。東京都の方。「僕が『本能のハイキック!』で忘れられないシーンは、劇団ひとりさんが『背中に刺青を彫る』という企画で中継に行ったのですが、彫り進めている途中であまりの激痛にひとりさんが泣きながらリタイアしたシーンです」。めちゃくちゃだな! めちゃくちゃな番組ですね(笑)。
(加藤浩次)本当だね……だから、なんだろうな? ちょうどあの『本能のハイキック!』とかの時って、ロウソクがさ、最後に消える前にボーッ!って1回、火がデカくなるじゃない? そういう状態だったんだろうね。テレビ業界も。
(佐久間宣行)はいはい。もうめちゃくちゃでしたよ。『本能のハイキック!』っていう番組もそうだけど、極楽さんがやってた『極楽とんぼのバスコーンだろ!!』。マッコイさんとやったテレ朝の深夜番組なんだけど。『極楽とんぼのバスコーンだろ!!』で山本さんが振り回したバトンかなんかがスプリンクラーに当たって、スプリンクラーが全部流れて、番組が1000万単位で払うことになったから、各局に「スプリンクラーがあるところでは暴れないように」っていう(笑)。
(加藤浩次)フハハハハハハハハッ! そんなお達しが?
(佐久間宣行)お達しがテレ東にまで来るっていう(笑)。
(加藤浩次)まあ、六本木だからね。近いからね(笑)。
(佐久間宣行)ありましたよね? 山本さんが振り回した何かがスプリンクラーに当たって(笑)。
(加藤浩次)あれはね、山本を守るわけじゃないけど、事故なのよ。あれは企画としてやっていて、別に怖そうと思ってなくて。暴れるっていうそのシーンの中で当たっちゃったっていうやつだから。あれは事故だからね、山本さんは悪くないんだけど。でもだから本当にそういう……何か今、できないことが「いい」とは俺、言わないんだけど。全然、それがやりたいとかっていうことも今はもう別にないだけど。なんかもう、「ギリギリまでやっちゃえ!」みたいなところが締め付けに入っていったんだろうなとはちょっと思うんだよね。
(佐久間宣行)ああ、分かります。はい。
(加藤浩次)もうちょっとあの当時、まあまあ、僕らだけじゃないけど。イケイケどんどんな感じがもうちょっと抑えられてれば、もうちょっと違った風になったんだけども。行きすぎたから、やっぱりみんなが抑えだすというか。世の中自体も「そこはもうやりすぎだろう」って言いだすというね。だからそこが一番ダメなところなんだよな。
(佐久間宣行)コンプラとはまた別ですもんね。
(加藤浩次)別、別。
(佐久間宣行)コンプラで何か傷つく人がいるから表現を変えていくというのは当然。だし、その方が面白くなることもあると思うけど。それと企画を攻めなくなることは別ですもんね。
(加藤浩次)全然別。だからそこを……なんだろうな? だから、その刺青を彫るとかもさ、まあまあ、コントよ? 言ったらね。コントなわけよ。劇団ひとりが本当に刺青を彫るわけはないんだから。でも、何個かは……まあ和彫りでやったのか電動のでやったのか俺は今、覚えてないけども。刺しているよね?
(佐久間宣行)刺してますね。絶対にね。刺すは刺しますよね。
(加藤浩次)何針かは行っているよね? でも、そこがダメなんだよ。
(佐久間宣行)ダメなんだけども、そこが面白いんですよね。
(加藤浩次)そうなんだよね。
(佐久間宣行)だから、彫らないんだけどもひと針、ふた針行くのが面白いんですもんね?(笑)。
(加藤浩次)そう。ぶっ刺しているから、「いたい!」っつって泣いたり、やめるとかって言ったりするコントに入れるっていうのはあるんだけども。でもやっぱり、あの時にやっぱり……なんだろうな? おごっていた部分もあるのかな? 番組を作ってる側も。やっている側も。俺らも。
(佐久間宣行)あと、だから「ここは洒落だってわかるでしょう?」っていう風に僕らが思っていたというか、思いすぎていたところが、それを洒落だと思われない人が増えてきちゃったのと。あとはSNSもひっくるめて、洒落だとわかんない人たちの意見も同じぐらい、全部見えるようになっちゃったっていうのもありますよね。
SNSで可視化される
(加藤浩次)そこをさ、ふと振り返った時にね、「ああ、こんなに不満に思ってたんだ」って。当時、SNSとかないから。テレビ局に苦情の電話をするっていう。でも、苦情の電話をするってなったら結構なカロリーじゃない? で、みんな電話はなかなかしないじゃない? やっぱり相当気合い入っているやつじゃない? 局に電話するなんて。でも今はもうSNSで普通に「あれはちょっと見ていられなかった」みたいなことって、感想をバンバン入れれるわけでしょう?
それを入れれるっていうことはさ、時代はグラデーションで変わってくるからさ。一気にバーンとは変わらないから。その当時、SNSが出た時にはやっぱり「あれ、ちょっと見てられなかったわ」みたいな意見がパパパパッて出だしたわけね。それが出たということは、やっぱり俺らがやってる時も「あれはちょっと見てられなかったな」って……たとえば俺が爆裂お父さんをやっていて。爆裂お父さんってあれ、コントじゃない?
(佐久間宣行)アイドルの顔を踏んでいた時ですね。
(加藤浩次)アイドルが来て、アイドルに対して僕がなんか納得しなくて、怒ったりしたら(アイドルをジャイアントスイングしてその間に)そのCDが回る。CDの曲がかかって、その曲の宣伝になりますよという企画じゃない? で、その間に俺がどんどんどんどん疲れていって、エネルギーがなくなっていって。アイドルは回されて、アイドルも痛い思いもしているんだけども、「もっとお父さん、回してください」って言って。それ俺がどんどん負けていくという企画のコンセプトよね。
加藤浩次の爆裂お父さん好きだった pic.twitter.com/Nuy2EPIBSN
— ネッツィ (@nenane__) June 24, 2020
(佐久間宣行)で、その構造は大抵の人はわかるんだけど……わからない人もたくさんいますもんね。
(加藤浩次)うん。で、そのコンセプトだけでやっていればよかったんだけども、やっぱりそのアイドルのね、顔を踏んだというか、まあ最初キャメルクラッチぐらいかな? 女子アナの高島彩アナの顔をキャメルクラッチしたりとか。そういうところから始まって。なんかそこが俺も普通になっちゃっていたんだろうね。で、その流れでやっぱり顔を踏んだりとか、靴下を噛み切ったりとか……なんか、人ってエスカレートするものじゃない?
(佐久間宣行)はいはい。企画はそうですえん。
(加藤浩次)で、その時にはもうね、元々SNSはなかったんだけどもできてきた頃で。やりながら、SNSは出てきたわけね。やっぱり「やりすぎだよ」「ちょっと嫌悪感を感じるよ」っていう人らがいたということなんだよね。
(佐久間宣行)はいはい。そうですね。まあ、毎回いたのはいたんでしょうね。
(加藤浩次)そう。いたんだよ。いたのに、そこの声が耳に入らないから、どんどんどんどんもう、「もっと! もっと!」って。あれ、スタジオって恐ろしいもんでさ、やっぱりさ、技術さん含め、スタッフ含め。「加藤、そんなもん?」みたいな雰囲気に……。
(佐久間宣行)わかります、わかります。そうです。
(加藤浩次)そうでしょう? そういう空気、作るでしょう? 佐久間くん。
(佐久間宣行)そういう空気、作っちゃうんですよ。で、結局、だから「演者が勝手にやった」ってことはなくて。演者は目の前のスタッフ……要はディレクターと技術に笑ってほしくてやるから。だから、本当にそれは連帯責任だとは思います。何か起きたら。
(加藤浩次)で、佐久間くんもそんなキラキラした目で「いや、これ面白くないですか?」って。それでやる気になるんだよ!
(佐久間宣行)手を叩いて笑うしね。
(加藤浩次)笑ってくれるしさ。そしたら「もっと! もっと!」ってなって。麻痺するんだよね。だから俺、「昔はよかった」とはあんまり思わないんだよね。
「昔はよかった」とはあまり思わない
(佐久間宣行)わかります。昔は昔で、もっとこの時に軌道修正というか。もしくは、痛みとバランスを取れる企画にしていたら「急に叩かれた」なんてことはないってことですよね。
(加藤浩次)ないない。そういうこと。やっぱりどんどんエスカレートしていって。それでやっぱり怪我人が出たりとか。そういうことになっちゃうんだよね。
(佐久間宣行)だから、「なんか急にうるさくなったな」みたいなことを言う人はいるけど、それは違うと僕も思います。
(加藤浩次)そう。だから「昔みたいなこと、やりたいっすね」とかって言うディレクターは俺、信用しないよ。
(佐久間宣行)フハハハハハハハハッ! ああ、それはね、若林くんも言ってました。「『めちゃくちゃやっちゃいましょうよ!』ってタレ打ちで言ってくるディレクターはだいたいちゃんとしてない」って言ってました(笑)。
(加藤浩次)フハハハハハハハハッ! そうなんだよ。そこはやっぱり、抑えなきゃいけないんだよね。
(佐久間宣行)それで、その中で面白いこともまだ全然ありますからね。
(加藤浩次)絶対にあるよね。
<書き起こしおわり>