R-指定とDJ松永 宇多丸の天才性を語る

R-指定とDJ松永 宇多丸の天才性を語る サウンドクリエイターズ・ファイル

R-指定さんとDJ松永さんが2020年9月6日放送のNHK FM『サウンドクリエイターズ・ファイル』の中でRHYMESTER宇多丸さんの天才性について話していました。

(R-指定)今回はね、それぞれのルーツについて話していますが。ここではCreepy Nutsのアルバム『かつて天才だった俺たちへ』に因んで「天才」について考えてみたいと思います。まあ、正直我々はここまでの活動とか人生でたくさんの天才に出会ってはいますよね。

(DJ松永)本当。しかも、やればやるほど残っている人は天才しかいないよね。

(R-指定)今までご紹介してきた曲の人たちなんかも当然、全員天才ですからね。

(DJ松永)そうそう。でさ、俺は他局でラジオやってるんですよ。それでゲストでさ、那須川天心さんが来たんですよ。天才が。

(R-指定)天才やん!

(DJ松永)でも「天才、言うこと違うな」とか思った。だってあの人って16歳のまず、ベルトを取ったんですよ。それで今、6本ベルト持っているんだよ? それで8月18日に22歳の誕生日迎えたばっかりで。

(R-指定)まだ22なんや!

(DJ松永)すごくない? あの人。それでさ、「どういうモチベーションで頑張ってるのか?」みたいな話とかもしたんだけどさ。普通はさ、頂点を取ったりしたら活動がゆるんでしまったりだとかさ。自分と誰かを比べて……それこそライバルとかを見つけて切磋琢磨したりだとか。何か挫折をして、それに向かって努力して頑張るとかなんだけども、あの人はそれがないんですよ。

(R-指定)はあ?

(DJ松永)ライバルはいないし、本当に負けると思っていないわけですよ。その状態で比較なしで……それでゼロの状態で、周りになにもない状態で自分を高められるらしくて。それって、すごくない?

(R-指定)「こいつに勝つぞ」って歯を食いしばるとかじゃなくて、ナチュラルに自分自分自身で、自分の中で消化して強くなっていく?

(DJ松永)消化してどんどん強くなっていくんだって。もう、それがすげえなとか思って。普通の人ってそれ、できないじゃないですか。

(R-指定)できないですよ。やっぱり明確ななんかがあったりとか……。

(DJ松永)そうそうそう。だからすごいなと思った。

(R-指定)めちゃくちゃ天才やん……。

(DJ松永)でも、音楽とかで言うと、やっぱり俺とRさんがよく言ってるのは、まあ宇多丸さんなんですよね。

(R-指定)RHYMESTERの宇多丸さんね。で、宇多丸さんはあんまりその天才性みたいなのは表に出さへんし。「そうじゃないよ」って言ってくれるんですけど……なんというか、ラッパーとしてももちろんすごいんですけど、人間単体としてあの人は天才なんですよね。

(DJ松永)そうそうそう。

(R-指定)だから全然……俺も正直ね、RHYMESTERの影響を受けているからそういう部分、あるけど。宇多丸さんなんかすごい言うたら卑屈やったり謙虚やったりするのはずっと昔からそうやし。「いえいえ、すいませんね……」「いや、私なんかね……」とかずっと言ってるんですよ。昔から。で、それを見るたびに俺と松永は「宇多丸、いい加減にしろ。お前は天才だ」って言うんですよ(笑)。

「宇多丸、いい加減にしろ。お前は天才だ」

(DJ松永)フフフ、言うね。キャッチを考えて、ウタさんにいつも投げているんですよ(笑)。いや、ウタさん、すごいんですよね。あの人、何がすごいかって当たり前の能力も全部すごいけど、あの人は情熱とか探求心とか好奇心がすごいんですよ。あと、知識欲とか。それから、感動力。何にでも感動できる。だからあの人、映画をさ、評論する作品は毎回4回ぐらい見てさ、大学ノートを1冊使うっていうじゃない? あれはさ、とてつもなく映画が好きで、映画に感動できないと無理なんですよ。そしてそれがいい映画でも悪い映画でも……。

(R-指定)そう! あのね、おもろい映画でも何回も見るってすごいけど。あの人は「これ、嫌い」とか「これは全然おもろない」っていうやつも何回も見るもんな。

(DJ松永)それもさ、「どう面白く批評するか?」っていうことに情熱が向いている。それがすごい。普通は、何回も見れないじゃん。見たくても、その「いい評論するために何回も見よう」って思ってしまっては体が続かないんだけど。

(R-指定)だからホンマに楽しめているんやと思う。あの人の「すごいかっこいいな、こういう大人でありたいな」って思うのは、あんま好きじゃない映画とか、「おもろない」って思ったものを面白く説明できるんですよ。ということは、おもろないものを面白く楽しめてるんですよね。たぶん細部まで見て。

(DJ松永)そうそうそう! だから結局、ちゃんと自分が「面白くない」と思った映画にも愛があるんですよね。

(R-指定)そう。全部に愛があるんですよね。

(DJ松永)めちゃくちゃ愛があって。あの人、人と接する時も本当に愛があふれていて。めちゃくちゃジェントルマンじゃないですか。

(R-指定)超紳士。

(DJ松永)それであの人、ラジオを帯でやってるじゃないか。もう結構長いこと、あの人はラジオをやっているよ? で、いろんなスタッフが関わってるじゃないですか。あの人がメインパーソナリティーをやって。そのスタッフでウタさんの悪口を言っている人、誰もいないみたいよ。これ、すごい。なかなかいないよ。どんなにいい人でも。

(R-指定)そんだけやっていたらね、多少の誤解とか生まれるはずですよ。

(DJ松永)それがすごい。そういうのも才能……その、意識だけじゃあどうにもなんないところだったりするんですよ。で、もうあの人さ、すごいスケジュールで動いているじゃないですか。RHYMESTERは去年、47都道府県でライブをやりました。毎日、帯でラジオをやっています。曲も、アルバムをコンスタントに出してます。あの人、連載も持ってます。テレビのコメンテーターもやっています。

それでコメンテーターってさ、ちゃんとその時代時代の価値観も全部インプットしていて。それを咀嚼して自分の考えとしてアウトプットするっていう。それだけでも……コメンテーターをやるだけでも、その作業で24時間が終わるじゃないですか。でもそれもちゃんと……ヒップホップって結構保守的な音楽だったりするじゃないですか。思想とかがさ。

(R-指定)まあね。

(DJ松永)そういうところもあるんだけど……でも、ウタさんはこのヒップホップの倫理観とかさ、世間一般の価値観とか合わないところもちゃんと踏まえつつ、でもその世間との価値観もすり合わせなながら、ちょうどいいところを突いたコメントするんですよ。それってなかなかできないし。すごい……1日24時間じゃ説明できないような膨大な仕事量とクオリティーを叩き出し続けてるってことはあの人、そもそも体力がすごいわ。

(R-指定)そう。その知的欲求、好奇心、感動力。全部を支える体力やな。それでないと全部できへんもんな。

(DJ松永)そう。だからあの人、本当に多才でいろんな才能を持っているけれども。一番その幹を支えているのは、すごいバカみたいなあれだけど。体力があるんだよ。

(R-指定)せやねん。やっぱりタフなんよ。たぶんね、日本語ラップ界で一番タフやな。人間として。それは別に体育会系やったわけじゃないやん? なんやけど、めちゃくちゃタフやねん。

(DJ松永)タフなんだよ。だから天才も、結局タフじゃないと続かないんだよね。

(R-指定)わかるわかる。まあ、脆い天才もおるけど、あそこまで走り続けれるってことはタフな天才やねんな。

(DJ松永)そうそう。だからいろいろ更新し続けるし、天才的なアウトプットし続けられる。それで天才として周りから見られる。

(R-指定)だって変わり続けるってのもタフじゃないと無理やもんな。

(DJ松永)無理無理無理! 変わり続けるのは体力がいるよ。

(R-指定)だって正直、ヒップホップの大好きな面、保守的な面も愛しつつ、世間の倫理観も……ってすごいバランス感覚やと思う。俺、宇多丸さんのお悩み相談……女性のお悩み相談の連載とか、毎回すごいなって。

(DJ松永)すげえ! あの人の、すげえ!

(R-指定)で、正直言ったら結構俺、そこの「自分の価値観をピッとしないと……」とか「こういう考えは改めないと……」っていうのはだいたいは俺、宇多丸さんの影響やもん。

(DJ松永)わかる。で、あの人さ、もう50を超えてるんだよ。で、ヒップホップ界でスーパーレジェンド。ナンバーワン・レジェンドと呼んでも差し支えないぐらいのレジェンド。

(R-指定)正直、変わる必要ないもんな。そこまで行ったら。

(DJ松永)なのに、謙虚であり続けられるのは本当にすごい。で、お悩み相談とかもさ、結構えぐるような質問が来るんだけど、ウタさんはさ、1回そこで反省したりするんだよ。

(R-指定)全部、受け止めるねんな。あの人、すかさんよな。

すかさないで全部受け止める

(DJ松永)すかさない。全くすかさない。すかさないのって、すごいよ。マジでかっけーよ。かっけー! 50歳を超えてあれはマジでかっこいい。俺らもなんかピッとする。が、マジで更新し続けないといけないし、新しく出てくるこれからの価値観だっだりさ、時代の移り変わりだったりさ。若手が表現してくる作品だったりみたいなものに謙虚であり続ける必要がマジであるなとか思うよ。

(R-指定)「やっぱり真正面で全部受け止めなアカンねんな」っていうのはウタさんを見ていて思うよ。

(DJ松永)本当に思う。あと、俺らに優しいんだ。

(R-指定)優しいねん。どんだけ……ねえ。

(DJ松永)どんだけいい人なんだよ、あの人。すげえ……。

(R-指定)好き!

(DJ松永)フハハハハハハハハッ! 宇多丸、好き!

(R-指定)宇多丸、好き!って、なんや、この話(笑)。いや、でもホンマに天才。じゃあ、ちょっと聞いてもらいましょう。やっぱりRHYMESTERの「変わり続ける」っていう意味で『Still Changing』とか。

(DJ松永)いいね! 『Still Changing』のウタさんバース!

(R-指定)最高!

(DJ松永)あの人は言葉選びがすごいんだよ。本当に。

(R-指定)だからウタさん、もうひとつこれ、全然そういう意味じゃないですけども。やっぱりRHYMESTERのすごいところは、そういう人間的な天才・宇多丸っていうのを音の面で支える、俺の中では日本で一番ラップが上手いと思ってるMummy-Dさん。俺の中の「日本人のラッパーでラップが一番上手い人、誰?」って言われたら、Mummy-Dさんを出すんですよ。

(DJ松永)Rさんは昔から言っていて。「ラッパーの能力の5角形が一番あるのは誰か?」って言ったら、Mummy-Dさんだと。

(R-指定)ラッパーの5角形。声の良さ、リリックの内容・歌詞の面白さ、韻の固さ、フロウのバリエーション、ライブ。ということで言っても全部でMummy-Dさん。もうホンマに……。

(DJ松永)やっぱり結局RHYMESTERだよな。それが『Still Changing』って言っているんだから、勘弁してほしいよ。

(R-指定)たのむで!

(DJ松永)フフフ。じゃあ、聞いていただきましょうか。RHYMESTERで『Still Changing』。

<書き起こしおわり>

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