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町山智浩『82年生まれ、キム・ジヨン』を語る

町山智浩『82年生まれ、キム・ジヨン』を語る たまむすび
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町山智浩さんが2020年7月28日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で映画版『82年生まれ、キム・ジヨン』について話していました。

(町山智浩)で、今日紹介する映画のその『82年生まれ、キム・ジヨン』という映画はですね、この『はちどり』の監督のその後を描いたものに近いんですよ。だって、『はちどり』のキム・ボラ監督は83年生まれですから。このキム・ジヨンさんは82年生まれなんですよね。で、これはその『はちどり』のヒロインが現代で何をしてるか?っていうことが描かれるような映画なんですね。はい。監督は違う人で、原作者も違うんですけど。これ、原作小説は2016年に大ベストセラーになったんですよ。

(赤江珠緒)読みました。

(町山智浩)ああ、そうですか。どうでした?

(赤江珠緒)もう読んで、「うわっ、そうか韓国、2016年でこの状況か!」というのが……うん。日本も同じようなところもあるし。まだまだここまで下がるかっていうのも感じましたね。

(町山智浩)そうですね。この本はね、韓国で「女性の気持ちを代弁してくれた!」って言う人と、「これは男性に対する憎悪なんだ!」って言う人たちとの間で大論争になって。K-POPのアイドルの女の子が「この本を読んでるわ」って言っただけでもう「男を憎んるんじゃないか!」みたいな感じで炎上したりね。まあ大変な社会問題になったんですけれども。

で、この話はどういう話か?っていうと、原作の話をしますと……まず、2歳の子供という一番面倒くさい子供がいる82年生まれのキム・ジヨンさんという女性が主人公で。旦那さんは結構いいところに勤めてるサラリーマンなんですね。で、お正月に旦那さんの実家に帰ったら、またその実家で義理のお母さんの食事を作ったりするのをこのキム・ジヨンさんが手伝わされたりしてるんですけど。

そうしたら、突然このキム・ジヨンさんが義理のお母さんに対して「うちの娘のジヨンも実家に帰らせてくださいよ」って言い始めるんですよ。つまり、ジヨンさんのお母さんになっちゃうんですよ、そこで。「夫の実家にばっかり帰って、うちには全然来ないですよ」とか言い始めちゃうんですよ。

(赤江珠緒)そう。周りは「完全に変な言動をしている」ってなって、びっくりしちゃうんですよ。

(町山智浩)そう。で、本人は意識を失っちゃっていて全然覚えてないんですけど。で、どんどん次々と別の人格になっていって、しゃべり始めるんで、旦那さんが精神科医に相談に行くっていうのが小説の冒頭なんですね。で、中身の方はほとんどこのキム・ジヨンさんが生まれてから現在に至るまでのことがずっと書かれてるんですよ。

そこですごくこの本、小説っていうかジャーナリズムに近い感じで、そのキム・ジヨンさんがあったこと、体験したことが値的データで裏付けされるという非常に奇妙な小説になっています。

(赤江珠緒)そうですよね。だから終わり方も、何かちゃんとストーリーとしてここで完結っていうのじゃなくて、「今現在はこうなんです」みたいになって。バンッて感じでしたもんね。

韓国の男女格差

(町山智浩)結末がないんですよね。小説の方は。で、たとえばもう生まれた時のことから始まっていて。まず、そのキム・ジヨンが生まれた時に、みんながっかりするんですよ。「女かよ」って言うんですよ。それで「女だけど、まあ次は男を産んでね」とか言われるんですよ。お母さんが。で、韓国では男の子が生まれると、がっかりなんですね。ひどい時には事前に赤ちゃんの性別が女性だと、中絶されるという事態に……これまあ、中国でも1人っ子政策の時に生まれた女の子を捨ててたって話を前にしましたけれども。『一人っ子の国(One Child Nation)』っていう映画の話をね。

(山里亮太)ありましたね。あれは怖かった……。

町山智浩『一人っ子の国(One Child Nation)』を語る
町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で中国の一人っ子政策についてのドキュメンタリー映画『One Child Nation』を紹介していました。

(町山智浩)そう。あれが韓国でも実は行われていたという。で、今後は学校に行くと、これは日本もそうですけど。学校の出席簿ってなぜか男子が先ですよね? 男女別で。あれ、たぶん韓国と日本ぐらいですよ。あとイスラム教の国々は教室が男女別ですけどね。そういうところだけなんですよ。アメリカ、出席簿はありますけど、男女関係ないんですよ。

(山里亮太)名前順だ。

(町山智浩)普通にアルファベット順ですね。男女を分ける理由って、分からないんですよ。

(山里亮太)言われてみれば……。

(赤江珠緒)そういうね。分かるっていうか、思い当たることは日本にもいっぱいあるんですよ。

(町山智浩)いっぱいあるんですよ。そうなんですよ。で、この小説の中では2005年の、つまりキム・ジヨンが就職する時の就職の女子採用率が29.6パーセントしかなかったっていうんですけども。それでキム・ジヨンさんは就職に苦労するわけですよ。それで自分より成績が悪くても、男子の方が就職をしやすいんですね。就職率的にね。で、今度は育児休暇でも、女性が育児休暇を半分も取っていない。

そして今度、就職してずっと働いてても女性管理職の比率が、これは2014年なんですけれども。18.37パーセントしかない。女性で管理職になる人が18パーセントしかいないわけですよ。だから、就職してこのまま働いていてもどうなるのか?って話になって。で、彼女は子供が生まれて、会社を辞めざるをえなくなってくるんですね。それで、今度はじゃあ旦那が働くのか? 女性が働くか?っていう話になるんですけど。その時に女性が働き続けて旦那が育児を担当するっていうことも考えられるですけども、それがやっぱりできない理由っていうのが出てきて。それは男女の賃金格差が大きいからなんです。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)男性の賃金が100なのに対して、女性は63パーセントしか、同じ仕事をしてても給料がもらえないという。これはね、日本の方がちょっと良かったんですね。75パーセントぐらいだったんですよ。女性が。まあ、あんまり変わんないですけども。

(赤江珠緒)そうですね。

(町山智浩)で、そういうようなことがずっと数字で示されていくんですよ。この『82年生まれ、キム・ジヨン』という小説は。で、先ほどから赤江さんが「日本も変わらない」ってずっと言ってるんですけど。日本も変わらないんですよ。

(赤江珠緒)そうですよね。私が生まれた時もやっぱり親戚とかが「男の子がよかったな」って言ってましたもんね。

(町山智浩)そう。言っちゃうんですよ。ひどい話ですよね。で、この小説が書かれたその2016年当時のジェンダーギャップ指数という、これは世界中で調べられてるんですけれども。男女の賃金格差とか、その管理職の男女比とか、教育格差とか。国会議員や政治家の男女比率とかを全部総合して点数を付けていって。完全に平等だと「1」なんですよ。で、このジェンダーギャップ指数、韓国は「0.65」ぐらいなんですね。2016年の時点で。それで日本はどのぐらいかというと、「0.66」で韓国とほとんど変わらないんですよ。韓国よりはちょっと上で。それで中国が「0.67」ぐらいなんですよ。これ、日本、韓国って世界のランキングで110位以下なんですよ。

(赤江珠緒)うわあ……。

(町山智浩)で、その他の110位周辺の国々を見ると、イスラム教国ばかりなんですよ。

(赤江珠緒)そういう状況なんですね。なんかもう常識というか、当たり前みたいに。生まれた時からそうなっているからね。みんなそこまで疑問には思っていなかったですけども。

(町山智浩)実はイスラム教国みたいなランクにいるんですよ。日本、韓国、中国って。それは中国から始まった「家制度」と絡んでいて。その家制度っていうのは「家」……まさにその家督とか、家の土地を相続するのは長男という決まりがあったからなんですよ。

(赤江珠緒)「家長」みたいなね。

家制度と男女格差

(町山智浩)そうそう。その相続制度がずっと引き継がれてるんで、男子しかまあんまり喜ばれないっていう。で、うちなんか親父が韓国だったんで、その家系図があるんですけども。その家系図に女性の名前は載ってないんですよ。「継承するものがない」っていう考え方なんですよね。で、戸籍制度っていうのをも中国から来て、日本と韓国にはあるんですけど。

あれも完全にその家制度っていうものを記録するためのものなんですよね。あれがあること自体が非常に差別の始まりなんですけども。だから、そういったことがずっと描かれていくのが『82年生まれ、キム・ジヨン』という小説なんですけれども。それで結婚したら結婚したいで、「子供を作れ、作れ!」って言われるでしょう? プレッシャーがあって。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)それで「子供ができないんなら、役立だ!」みたいなことを言うわけですよ。親戚とかが。で、旦那が「子供を作ろうよ」って言う時、「子供が生まれたら、育児や家事を僕も手伝うから」って言うんですよね。「いや、『手伝う』ってなに、それ?」っていう話ですよね。

(山里亮太)ああ、そうか。

(町山智浩)そう。主体になってないんですよ。それで、がっかりするんですよ。あと、この仕事が全然なくて、子育てばっかやってるからこのキム・ジヨンさんはノイローゼみたいになってくるんですね。で、「ちょっとパン屋さんで働きたいわ」っていう風にこの映画の中では言うんですけど。そうすると旦那さんが「えっ、金に困ってないだろう?」って言うんですよ。でも、そうじゃなくて。世の中と分断されてしまって。「○○ちゃんのお母さん」とか「○○さんの奥さん」としか言われないから、「キム・ジヨン」っていう1人の人として社会と接したいから働きたいわけですよね。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)でも、旦那さんはそれが分からないから、「金には困ってないだろう?」とか言っちゃうんですよ。そういうのはずっと続いてくるんで、彼女はとうとう精神的に壊れちゃうんですよ。という話が、この『82年生まれ、キム・ジヨン』なんですけども。これね、さっき「結末がない」っていう話だったんですけどもね。

(赤江珠緒)そうなんです。

(町山智浩)これ、「こういうことがあって、この人は壊れました」で終わってしまうんですよ。小説の方は。でもこれね、映画版はね、「じゃあ、どうすればいい?」っていう話になっているんですよ。

(赤江珠緒)本当に? それが付いてくるのね。

(町山智浩)これが付いてるんですよ。で、これね、監督はね女性なんですね。キム・ドヨンさんという方なんですけども。彼女が女性の立場というよりはこれ、小説の方ではほとんど描かれていない男性の立場も考慮して作られているんですよ。それで、小説の方は「男性憎悪じゃないか?」って論争が起こっちゃったんですけども。でも、「そうじゃなくてやっぱり乗り越えていくには、夫婦として乗り越えていかなきゃならないんだ」という話になっていますよ。映画版は。

(赤江珠緒)ふーん!

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