（渡辺志保）なるほど、そうかそうか。で、YouTube版も本当に最後、生々しいというか、そういった映像プラス音声に切り替わるところがありまして。そこでたぶん多くのリスナーの方はハッとして、「ああ、こういう背景があったんだ」っていう風にそこで気づくっていう形にもなっておりますので。ぜひ、あの両方のストーリーをそれぞれ楽しんでいただきたいなという風にも思います。
で、私がこの曲『Sai no Kawara』というタイトルそのものも非常によくできてるなっていうか、よく思いついたなという風に思うポイントではあるんですけれども。YouTubeで公開されているミュージックビデオが勉強をしている……ちょこちょことその変化はありますが、基本的にcrystal-zさんが机に向かって勉強してるシーンにフォーカスをしたミュージックビデオになっている。
で、その勉強しているシーンっていうのはここ数年、特にYouTube上とかそれこそサブスクリプションサービスで盛り上がりを見せているLo-Fiヒップホップのムーブメントに通じるところがあるなという風に思って見ていたんですけれども。そのへんはどれぐらい意識したというか、なぜあのアイデアが浮かんできたのかな？っていう風にちょっと思ったんですよね。
Lo-Fiヒップホップ
（crystal-z）もちろんあのYouTubeチャンネルはよく見ていて。まあ見ていた時に、自分は結構妄想するんですけど。この子も不正入試被害者で、24時間、何年間も永久に勉強させられてるのかな？って。
（渡辺志保）ああ、たしかに。女の子だったしね（笑）。なるほど！
（crystal-z）っていうのから着想して、拝借したって感じですかね。サンプリングですね。
（渡辺志保）たしかに。で、このコーナーの冒頭で読み上げたメールにもありましたけれど、やっぱりこういう事件の当事者の方が「ラップ」という形で声をあげて世の中に発信をするのって、なかなかこれまでに例がなかったことじゃないかなと思いますし。そもそもこの、自分の努力ではどうにもならないことを、いとも簡単にそのハードルごと、ずらされてしまうというか、なくなってしまう。
自分の努力だけではどうにもならないところで、「もうだ無理だよ。ダメだよ」っていうことが裏で決まっちゃってるっていうのは、それは本当に視野を広げるとヒップホップの文化の成り立ちにも大きく影響していることかなという風にも思うんですよね。なので、繰り返しますけれども本当にこの曲をリリースするのに非常に勇気が必要だったんじゃないかなとも思いますし。
私がこの『Sai no Kawara』を聞いて、まず本当に勇気をもらったというか。「勇敢だな」って思った。それが本当に最初の感想でもありますし。非常に大げさに言うと、日本のヒップホップシーンにおいても非常に大きな1歩になったんじゃないかなという風にもう勝手に感じております。
（crystal-z）ありがとうございます（笑）。
（渡辺志保）すいません。なんか感想みたいな感じなんですけど（笑）。
（crystal-z）いや、嬉しいです。自分、基本的にヘッズなんで。いろんなストーリーテリングの曲とか、当事者性のある曲っていうのは自分も聞いてきた中で、今までにない形で1曲……まあ自分が本当に好きな形のヒップホップかどうかっていうのはまた別の話なんですけど。今回出した曲はかなりのテーマとか、そういう制約の中で。
そのLo-Fiビーツを使ったり、ストーリーテリングのラップの手法にしたりっていうところで、制約がある中でそういうものを実現したひとつの方法論の提示っていうか。そういう意味合いが結構強いので。だから実際にヒップホップヘッズだったり、その関係者の人にどう伝わってるか？っていうのは未知数な部分があったので。ちょっとまあ言ったら「道具」として利用してるっていう部分もあるので。そこは……でもこうして渡辺志保さんのラジオにも呼んでいただいて。
（渡辺志保）恐縮です。
（crystal-z）フフフ（笑）。なんかある程度、そういう風に分かってくれてる人は分かってくれてるのかな？っていう手応えは感じてますね。
（渡辺志保）ありがとうございます。ちなみに今後の音楽活動っていうのは考えていらっしゃいますか？
今後の音楽活動
（crystal-z）うーん……まあ、過去作を、前のクルーの作品だったり、自分がパーソナルに作ってきた曲とかをリリースしてもいいですし。この『Sai no Kawara』のパート2みたいな。「Every song has sequel.」っていう『Luv(Sic)』メンタリティーで作ってもいいし。うん。『ロード』みたいに13章ぐらいまで作ってもいいですし（笑）。
（渡辺志保）フフフ（笑）。なるほど。
（crystal-z）でもまあ、全くリリースしない可能性もあるしっていう感じですかね。
（渡辺志保）うんうん。今はね、本当にご自身の生活も。お勉強もあるだろうし。
（crystal-z）そうですね、はい。
（渡辺志保）ありがとうございます。でも本当にこの1曲だけでね、「幾層にもいろんなリリックの意味が重なり合って」っていう風にも冒頭でも言いましたけれども。本当にこう、1回聞いただけじゃわからないですし、何度も何度も聞いて。聞く度に新しい発見があるような曲にも仕上がってるなと思いますので。
かつ、2パターン結末も用意されているということですので。もしも今日、この曲を初めて知ったという方は繰り返しますが、またいろんな方法で。そしていろんな気持ちでこの楽曲を受け止めてもらうことができるのかな？っていう風にもあの思っております。というわけで今日はゲストにcrystal-zさんをお迎えしてお話を伺いました。本当にどうもありがとうございました！
（crystal-z）ありがとうございました。
＜書き起こしおわり＞
