R-指定 crystal-z『Sai no Kawara』を語る

R-指定 crystal-z『Sai no Kawara』を語る ACTION

R-指定さんが2020年7月15日放送のTBSラジオ『ACTION』の中でcrystal-z『Sai no Kawara』を紹介していました。

(R-指定)いつもこの時間は健康HIP HOPをお届けしているところですが、今日はせっかく私が来たので。ちょっと松永の代打をするということになりまして。番組スタッフの方から「この曲、ちょっと紹介したいんですけど」みたいな提案をいただきまして。それがですね、crystal-zさんの『Sai no Kawara』というちょっと前からすごい話題になっている楽曲なんですよ。

YouTubeにアップされたことになってすごい話題になった楽曲なんですけど。いわゆる、表現としてはあれですかね? Lo-Fiヒップホップというような言い方もされるんですけど。結構きれいめなチルっぽいビートの上に、ちょっとポエトリーリーディング……いわゆるものすごい激しいリズムを刻むラップというよりかは語りに近い感じでラップしていくっていう。だからすごいストーリーテリング、物語を語るヒップホップの楽曲の歌い方にすごい適してるんですけど。

その様相で進めていく音楽なんすけど。パッと聞きはラッパーとして音楽の道を頑張って進んでる若者が、ちょっとそこのラッパーとしての1個の夢を一旦、横に置いておいて、もうひとつの目標である医学部受験っていうのを志すという。そういう風なこの実際に歌っている人の話なんですね。

で、その苦悩とで成功をつづってるかのようなんですよ。一見ね。でも、終盤でちょっとね、サンプリングで流し込まれるニュースの音声でちょっとドキっとするような展開になるという。まあ、もうこれを聞いてもらった方がいいんですかね。

(幸坂理加)聞いてみたいです。

(R-指定)では、crystal-zさんで『Sai no Kawara』です。

crystal-z『Sai no Kawara』

(R-指定)では、crystal-zさんで『Sai no Kawara』でした。これ、どういうことか?っていうと、この歌で歌われてるこの方は2018年頃から2019年にかけて、世間を騒がせた医学部の不適切入試事件。それで実際に年齢などを理由に(合格するだけの成績であったのもかかわらず)不合格にされた方なんですよ。それで、その大学を提訴した方なんですね。で、その方が元々ヒップホップをやっていて、いいところまで行きかけて。でもそれを一旦、置いておいて大学受験をして人生を方向転換しようとして。

その目標を追いかけていたのに「年齢」を理由に不合格にされていたということで、この大学を提訴した。そして、自分が元々やっていた表現方法。自分が今までもうひとつの夢として追っかけていた表現方法で、ある意味一矢報いるじゃないけども。まあ、まさしくこれはめちゃくちゃヒップホップなやり方なんですよね。このヒップホップっていうのは実際、この「当事者性」みたいなものがすごい大事で。言ったら事件の被害者じゃないですか。被害者が自分の言葉でそういう被害にあったということを……まあ、直接的ではないんですけどね。

ヒップホップの「当事者性」

「自分がいかに夢を追いかけていて。あなたたちは『年齢』という理由で簡単にパッと不合格にしていたけども、そこに至るまで、自分がどれだけいろんなもの諦め、いろんなものを葛藤して、大学を受験するために勉強して一喜一憂してきたのか? あなたたちからしたら『年齢』というひとつの勝手な価値基準でしかないかもしれないけど……」っていう。すごいそれが真に迫ってくるというか。

それでサビのね、「順調じゃなくていいから、天才じゃなくていいから、堂々巡り」っていうここの部分で頭文字を取ると、まあその大学の名前になっているとか、そういうような仕掛けとかも入ってまして。だから実際、なんというか、これがまた放送の冒頭のオープニングトークで話した髪型のツーブロックが校則で禁止されている理由の話にも通じるんですけど。見た目とか年齢とか性別とかいうところで、いかにまだ人を判断しているか? そういうところにつながるという。

(幸坂理加)なんかテストの意味って何だろう?って考えてしまいますね。

(R-指定)そうそう。結局、実力なんて見てないんですよ。なんとなくの、その別の要素とか。そういうものをやっぱり見てるんだ、みたいなのもあるし。僕もね、そんな詳しくないんで言えないんですけども。まあ、でもそういうのが分からないようなやつにでも、考えさせるきっかけをくれるという意味ではものすごいヒップホップな作品というか、現象やなとは思いますね。

で、「この曲を紹介しましょうよ」っていうスタッフさんからの案があって。「他にもこういう、はっとさせられるような曲ってありますか?」みたいなことを聞かれて。まあ、いっぱいあるんですけど、紹介できるのはなんだろう?って考えて。ひとつ、思いついたのがニッポニア・ニッポンというアーティストの『怠け者』っていう曲なんですけど。

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