渡辺志保さんがblock.fm『INSIDE OUT』の中で20才の若さで亡くなったラッパー、XXXテンタシオンについて話していました。
(渡辺志保)オープニングはこのXXXテンタシオンの話をしたいと思います。みなさん、この『INSIDE OUT』をチェックしているような方であればご存知だと思うんですが。先週、アメリカ時間の月曜日、午後4時。6月18日の午後4時。日本時間になおすと6月19日の朝6時とかそれぐらいだったかと思うんですけども。XXXテンタシオンが地元近くのフロリダ、ブロワードカウンティというところで撃たれて、ほぼ即死状態だったという。享年20才。
ちなみに同じ日にピッツバーグのラッパー、ジミー・ウォポも銃弾に倒れるという事件があって本当に1日に2人、ラッパーが命を落としてしまうという最悪な日になってしまったんですが。事件自体に関してはたぶんみなさん、すでにご存知だと思いますのでここでは詳しくは話しませんが。バイク屋さんで買い物を終えたテンタシオンが何者かに金品を奪われそうになって。で、銃で撃たれてしまった。で、私が今日見たニュースではもともとは殺人目的ではなくて、あくまでも強盗目的だった。それでアクシデントというか誤って発砲をしてしまったんじゃないかという風にも報道されていましたけども。
いま、22才の黒人男性の容疑者が1人逮捕されたという状態だということですね。これからもっと詳細は明らかになっていくとは思うんですけども、そういった状況。ちなみに今日、アナウンスされていましたが、今週6月27日には地元のフロリダのスタジアムでオープン・キャスケット・メモリアルが開かれる予定ということです。オープン・キャスケットっていうのは棺のことで、棺の顔の部分が開いた状態で、みなさんがそこで最後のお別れの挨拶をするためのイベントが開かれるという。ちなみにイベントでは携帯電話は禁止という風にも言われておりましたね。
で、XXXテンタシオンなんですけども、本当に最初に『INSIDE OUT』で触れたのはたぶん『Look At Me!』がドレイク絡みでヒットした時ぐらいのタイミングかなと思うんですけど。
その時には『Look At Me!』がドレイクの『KMT』っていう曲にそっくりだということでテンタシオンが「俺の名前をクレジットしろ!」とかドレイクに対して攻撃を仕掛けていたようなところで。
で、その後もテンタシオンといえば暴力沙汰や妊娠していた元カノに暴力をふるったんじゃないかとか。その他にも裁判沙汰や逮捕沙汰でもちきりみたいな。良くも悪くも話題でもちきりみたいな方でしたし。あとは「フェミニズムは支持しない」とか、そういう意見を言ったり、同性愛者の方にも嫌悪感を示すような感じの行動や発言があったりして。で、うーん……本当にコントラバーシャルよね。良くも悪くも論争を巻き起こしたようなアーティストだったかなと言えると思います。
で、私も今回、この事件を受けて彼の生い立ちのこととかニュースの記事を読んだりしたんですけど。知らなかったんですがテンタシオンの母親のクレオパトラさんという方はテンタシオンを生んだ時にはまだ17、8才だったみたいで。地元マイアミの新聞紙に6月上旬に発表されたテンタシオンのインタビューで語ったところによると、彼は小学生の頃から同級生の女の子に暴力をふるったりして先生からお咎めを食らっていたわけなんですが、そうしたことには理由があって。自分のお母さんの気を引くために友達に暴力をふるったと言っているんですよね。
で、それを家に帰ってお母さんに「俺は今日、あいつとケンカした。あいつのことを殴ってやった」って言うとお母さんが反応してくれるからっていう。で、お母さんは10代でテンタシオンを生んでシングルマザーで育てていたんですけども。それもすごい悲しいなと思ってしまうし。コダック・ブラックも若くしてラッパーとして成功しつつ、それと同時に何度も刑務所に入ったりなんかもしていて。本当、去年にブレイクしたテイ・ケイとかもそうですけど。やっぱり暴力沙汰、裁判沙汰、逮捕劇とラッパーの人気が図らずしも……っていうか、彼らは図ってやっているのかもしれないけど、過激になればなるほど人気が出てしまうということになってしまっているよねって、去年からすごく感じてしまっています。
貧富の差が激しいフロリダ
でも、そういった彼らがすごく犯罪に走ってしまうのを「なんでそんなに思慮が足りないんだ?」とか「バカだな」みたいに言うのではなく、本当にさっきのテンタシオンの生い立ちに関係あるように彼らをそうさせてしまう、なにかしらバックグラウンドに要因がある。特にフロリダ……コダック・ブラックとかリル・パンプ、このテンタシオン、スキー・マスク・ザ・スランプゴッドとかが生まれ育ったフロリダっていうのはドレイクの『God’s Plan』のビデオを見ればわかるように貧富の差がめちゃめちゃ激しいんですよね。
めっちゃ豪華なリゾートエリアがあるし、でっかいディズニーランドがある。と、同時に、低所得者層に向けたプロジェクト(団地)があったり、若者の犯罪が絶えないとかそういう地域でもある。なので今回のテンタシオンの事件というのはそういうのをすごく顕著にあらわしている事件になってしまったなというのが私の考えでもありますね。で、本当にSNSでなんでも簡単に炎上しちゃうから……それも今回、感じちゃいましたね。最初に「容疑者じゃないか?」って言われた2人の黒人のラッパーの男の子とかもいますけど。
彼らは最初は面白がってポストしたのかもしれないし、たまたまポストしたInstagramのストーリーに拳銃が写っていて。かつ、場所もテンタシオンが撃たれた場所とすっごい近いということで「犯人なんじゃないか?」ってワーッと責められて炎上して。彼らはもちろんストーリーとかで謝っていたけど、なかなかそれでも収拾がつかないようなことになってしまったりとか。それもまたすごく考えさせられる一側面だったかなと思いますし。
なのでちょっと……先週土曜日の某ラジオ番組でも話したんですけど。いま、トリッピー・レッドとテカシとか、チーフ・キーフとテカシとかもすっごい一触即発みたいになってしまっていますけども。これ以上、命を落とすようなことは絶対にあってはならないと思いますし。そうした側面だけで過激に過激になっていく若者のラップシーンっていうのはすごく恐ろしい部分もあるなと何度も考えてしまいました。で、このXXXテンタシオンに関しては私もリアルサウンドという音楽Webサイトでちょっと長めの記事を書かせていただいたので、そちらもぜひ読んでいただきたいなと思いますし、みなさんの考えなんかも聞きたいなという風に思っています。
XXXTentacionは前向きに歩みを進めようとしていたーー若きラッパーが遺した作品の意義 https://t.co/vKIvyy2e9v @realsoundjpさんから
— みやーんZZ (@miyearnzz) 2018年6月26日
で、今日はそのオープニングチューンにコダック・ブラックとやった『Roll In Peace』をかけようかなとも思ったんですが……。
やっぱりここはテンタシオンの今年リリースされた『?』というアルバムの中から私がいちばん好きな曲をかけたいと思います。この曲は『Moonlight』という曲なんですけど、バースの最初が「俺はもうスミフンウェッスンはいらない」っていうバースで始まるんですけど。そのスミフンウェッスンっていうのは銃なんですよね。ブルックリン出身の同名のラップグループもいるんですけど、銃のメーカーがスミフンウェッスンっていう会社でして。
で、「銃はいらない。かわりにナイフであいつらをやっつけるんだ」みたいなリリックがあって。そんなことをラップしていたテンタシオンが銃弾に倒れてしまうとは、本当になんて皮肉なんだろうという風にも思いますし。改めて本当に彼のご冥福を祈りたいなと思います。というわけでここでオープニングチューンを聞いてください。XXXテンタシオンで『Moonlight』。
XXXTentacion『Moonlight』
(渡辺志保)はい。いまお聞きいただいておりますのはXXXテンタシオンが今年発表したアルバム『?』から『Moonlight』。(ツイートを読む)「愛情って大きいですね。『フロリダ・プロジェクト』を見ようと思っいた矢先だったので、心して見ようと思いました」と。そう。私も『フロリダ・プロジェクト』をまだ見ていないので見たいなと思っているんだけど……。なんかさ、日本向けの予告とかを見るとすっごいマジカルファンタジーみたいな感じになっているから。美しいところばかりが描かれてるんだったらちょっと複雑だなと思いながらまだ見ていないんですが。でも『フロリダ・プロジェクト』は私も見ようと思っていました。
あと、フロリダのこういう場面を映像として見るのであれば、私は映画『ムーンライト』を……いまかけた曲と同じタイトルですが。2年前にアカデミー賞をとった『ムーンライト』を見ることをすごくおすすめしたいなと思います。
(ツイートを読む)「もう1週間たつんですね。亡くなると美談の方が多く語られている感じがするなと思うこともありましたが、犯罪歴などにも背景がいろいろとあったんですね」と。そうなんですよね。犯罪歴もそうだし、彼はずっと自分の元カノにDVで訴えられていたけど、その元カノも途中で訴えを取り下げたりしているんですよね。プラス、テンタシオンは「フェミニズムには反対だが、自分もDVで傷つけられた女性のために寄付をしたい」って言ったりとか。記事にも書いたけど、お母さんとチャリティーイベントをやるんだっていうことをかねてからツイッターやインスタで言っていたりもしていて。
本当に本当にいまからっていう時だよね。絶対に。まだハタチだし。だから本当に悔やまれるなという風に思います。
<書き起こしおわり>