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渡辺志保 Netflix『ボクらを見る目(When They See Us)』を語る

渡辺志保 Netflix『ボクらを見る目(When They See Us)』を語る MUSIC GARAGE:ROOM 101
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渡辺志保さんがbayfm『MUSIC GARAGE:ROOM 101』の中でNetflixのドラマシリーズ『ボクらを見る目(原題:When They See Us)』を紹介していました。

(渡辺志保)続いては特集コーナー。ここでのパートはNetflixムービー『ボクらを見る目』についてお届けしたいと思います。オリジナルタイトルは『When They See Us』というタイトルでして。以前も映画のタイトルだけはこのトークコーナーでもしゃべったことがあると思うんですけども。今年の5月31日に世界一斉配信されたドラマシリーズです。で、現在この『ボクらを見る目』がですね、Netflixの最高再生回数を叩き出しているというもう本当に必見のドラマシリーズになってます。全4話ですね。

だいたい60分から、最後の4話目は90分あるのでドラマシリーズにしては短いが映画として見ると超長編という感じです。どんな内容かと言いますと、14歳から16歳愛の黒人少年たちが無理やり嘘の自供をさせられまして冤罪によって少年院や刑務所に送られてしまった。実話を元に女性映像監督であるエイヴァ・デュヴァーネイが映像化し、自ら脚本なども手がけたという感じです。

で、もうちょっと詳しくストーリーについてご説明しますと、これは実話なんですね。既に解決済みの事件ですのでネタバレも何もないと言いますか。もうちょっと事のあらましを説明しますと、事件が起きたのは1989年。ニューヨークはマンハッタンのセントラルパークで白人女性が何者かによってレイプされ、瀕死の状態で見つかりました。その時、ちょうど容疑者として浮かび上がったのがハーレムに暮らす少年たちです。事件があった時間帯にハーレムに住む小学生や中高生の子供たちがちょうどセントラルパーク付近に大勢集まり騒いでいたんですね。

で、検事であり女性への性犯罪を担当していたリンダ・フェアスタインはほぼランダムと言っていいような方法で少年たちを逮捕。その後、長時間にわたり食事も与えずトイレにも行かせず、嘘の供述をさせ結果、逮捕。その後、5人はそれぞれ裁判にかけられるが物的証拠も何もないのに結果、5人には有罪判決が下ってしまったという実際にあった事件を元にした映画シリーズです。

で、実際にね、この作品がNetflixで公開された後に、この映像監督のエイヴァ・デュヴァーネイ、あとこの作品のプロデューサーも務めているオプラ・ウィンフリーが司会を務めて、この映画に出演した俳優さんたち。そして実際に冤罪で刑務所に送られてしまった5人の少年たち……もちろんいまはみなさん、成人されて大人になっておりますが、その5人。「セントラルパーク5」という風に呼ばれるんですけども、そのセントラルパーク5のみなさんを呼んでトークセッションのイベント開いているんですね。その様子も全てNetflixで無料で見ることができますので、ぜひそこまで合わせて見てほしいなという風に思います。

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エイヴァ・デュヴァーネイ監督作品

で、まずこの映画監督のエイヴァ・デュヴァーネイという方なんですけれども、彼女の名前を聞いたことがある人もいるかもしれません。あの日本でも公開されましたけれども、公民権運動時代のキング牧師について描いた『グローリー/明日への行進』という映画があるんですけれども、それを手がけた女性映画監督ですね。ぜひぜひ『ボクらを見る目』と一緒に見ていただきたいなと思います。

そしてもう一作、彼女の代表作というのがありまして。こちらもNetflix限定で公開されているドキュメンタリー映画なんですけれども、『13th -憲法修正第13条-』というちょっと固いタイトルなんですけども『13th』。そういったドキュメンタリー映画があります。これは第89回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー映画賞にもノミネートされているという。で、この映画の内容なんですけど、なぜアメリカの黒人男性は不法に投獄されてしまうのかという問題を奴隷制まで遡って、深く検証していく内容なんですね。

で、オバマ大統領のコメントなんかで始まるんですけれども。よくアメリカのヒップホップのシーンを追っていると、ラッパーが刑務所から出てきて出所を祝うというニュースであるとか映像を見たことがあると思うんですけれども。なぜ、彼らが出所を祝うのか? この『13th』を見ると本当に深く理解することができると思います。勘違いしないでほしいのは、ただ彼らが犯罪を犯したことを祝っているのでは決してなくて、すごくアメリカって歪んだシステムというか。もし同じね、たとえばひとつの軽い暴行罪で捕まったとしても、白人と黒人・その他の有色人種の方だと、やっぱり受ける罪の重さが如実に違ったりするんですよね。

あの2年間の服役で済むところを10年間の服役の刑が課せられたりとか、そういう非正義的なことを被ってしまう可能性というのが本当にそのへんに転がっていて。そこを乗り越えたっていうことでみなさん、出所を祝うわけなんですよ。なのでそういったことがこの『13th』を見るとよくわかると思います。

で、あとやっぱりめちゃめちゃライティングであるとか映像そのものもすごく綺麗ですし。4話までありますから第1話目の最初のシーンなんかはですね、本当にかつてのいわゆるアメリカのフッドムービーを思わせるようなちょっと牧歌的なオープニングでもありまして。ニューヨークのハーレムに住んでる子供たちの様子にそれぞれフォーカスしながらエイヴァ・デュヴァーネイが映像を撮っていくわけなんですけども。そこで流れてる音楽もスペシャル・エドとかあとパブリック・エナミーの『Fight the Power』とかね、そういった曲が流れてて。なんかそういった風景もいいなというような感じです。というわけでここでちょっと1曲、エピソード1で流れて印象的だったこの曲をお届けしましょう。1988年にリリースされましたエリック・B&ラキムで『Microphone Fiend』。

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Eric B. & Rakim『Microphone Fiend』

はい。いま聞いていただいておりますのはエリック・B&ラキムで『Microphone Fiend』。そんな感じでね、すごいそのハーレムのビビットな感じとか、そのハーレムという街が持つパワーなんかも随所随所にこの映画から感じられるところだと思うんですが。まあね、ちょっと見てやっぱりすげえと思ったのは、その少年たち。「子役」と呼ぶのはちょっと成長してますけれども、やっぱり少年たちを演じた役者さんの男の子たちの演技力が本当にすごい。

で、最初の取り調べのシーンなんかもですね、さっき申し上げた通りずっとトイレにも行けず、食事も与えらず……っていう感じで。誘導尋問みたいにされるんですよね。自分にはしていない犯罪なんだけど、「こいつとこいつで足を押さえて、こいつが上に乗っかったんだろ?」みたいなことを検事さんに言われて。「うん、そうです」みたいな感じで、そうやって嘘の供述が作られていくわけなんですけれども。本当にね、胸が引き裂かれるような感じがしましたし、それぞれの役者さんの演技力にすごく引き込まれたところでもあります。

で、そのオプラ・ウィンフリーとエイヴァ・デュヴァーネイが主催したそのトークセッションによると、やっぱりみんなそれぞれその元になった実際のセントラルパーク5のお兄さんたち……実在の人物とお会いして、そこでトークの指導であるとか、実際にどういう経験をしたとか、そういったことを話し合う時間を設けてから実際の撮影に挑んだということです。で、いちばんすごいのは、その子供時代と青年時代で役者さんが変わるんですけど。唯一、コーリー・ワイズというセントラルパーク5のメンバー。彼だけは逮捕された時に16歳だったんですね。

で、16歳で逮捕されると、もう青年扱いになるそうなんですよ。で、そのコーリー・ワイズ役に関しては子役さんを用いずに全部1人の男性俳優さんが子供時代からその出所後の成長した時代までを演じ抜いておりまして。それがジャレル・ジャロームくんという俳優さんなんですけれども。あのアカデミー賞を取ったバリー・ジェンキンス監督の『ムーンライト』という映画がありますが、『ムーンライト』で高校生時代のブラックが思いを寄せていた男の子役で出てたんですよね。このジャレル・ジャロームが。

で、そのジャレル・ジャロームの演技は本当にすごすぎて。で、みんな他のメンバーは未成年だから少年院に送られるんですけど、このコーリー・ワイズだけが青年の刑務所にいきなり送り込まれてしまって。まだ16歳ですよね。で、やっぱりお母さんと一緒に暮らしているような子供がいきなり大人の男の人ばっかりがいるジェイルにブチ込まれてしまったということで。そこでの緊張感であるとか絶望感であるとか、そういったことを本当にありありと演じておりまして。本当にこう、インセインって言いたくなるような、正気の沙汰でいられなくなるようなシーンもきっちり演じていて。非常に最後も涙が止まらないような感じでした。

そこもみなさんね、非常に注目して見ていただきたいし。この作品がきっかけで実際にその嘘の供述をさせて犯人をでっち上げた検事、リンダ・フェアスタインさんっていう女性の方。この人も実在の人物なんですけれども。彼女なんかは検察官を退任後に犯罪小説ですごいセレブっていうか注目された女性らしいんですけれども。いまはですね、もう「そいつを引きずり下ろせ!」みたいな感じの署名運動なんかも始まりまして。出版社が彼女との契約を破棄したとか、そのいくつかNPO団体の代表なんかも務めていたそうなんですけれども、その役職を降りたとかね、実際にそういった動きが始まっております。

で、このリンダ・フェアスタイン自身も「この作品はすごく事実を捻じ曲げていて、誇張をしていて。私に対しすごい名誉毀損である」っていう風に言っているんですけれども。なんか逆にね、このリンダ・フェアスタインが関わってきた事件が再度見直されて、また何かそこで大きな動きがあるんじゃないかなという風にも思っております。で、やはりテーマとしてはですね、非常に司法制度の歪みが可視化されているという風にも印象を受けました。

それがもちろんテーマでもあるんですけれども。それでいまですね、たとえばヒップホップシーンを通しても、昨年ミーク・ミルというラッパーがね、彼も実際に逮捕されて、不当な扱いを受けて、その後に釈放をされましたけれども。

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ミーク・ミルの逮捕と不当な投獄

やっぱりアメリカって人種によって正義がどういう形でどれだけ分配されるかっていうのがね、非常に変わってくる、異なる社会なんですよね。で、貧しいマイノリティーの方たちとか社会的弱者の方たちっていうのは犯罪を犯しても……さらには今回の『ボクらを見る目』のセントラルパーク5みたいに犯していなくても、きちんとした弁護士をつけることができず、また人種でプロファイリングされて裁判でも正当な判決を受けることができず、結果不当な判決が下ってしまうとか。そういったことが本当にいまも変わらずにあるっていうことなんですよね。

で、いまアメリカではですね、「Prison Reform」と言いまして。刑務所とか、それにまつわる制度、司法の改革が盛んに叫ばれているところでもあります。で、ミーク・ミルもこのPrison Reformに対して、昨年からいろいろ意見を表明してるところであります。で、ドラマでも実際に黒人、そしてラティーノというだけで容疑をかけられて、そのまま無理やり事実をねじ曲げられて投獄されてしまうという風に描かれておりますが、この作品は1989年が舞台ですけれども、やっぱりこの実際のセントラルパーク5のみなさんもですね、「30年経っても全然状況は改善されてません」という風にもおっしゃっておりましたし。まだまだ壁は厚いなという風にも思えます。

さらには、やっぱりこうやって人種であるとか肌の色、国籍、そして話す言葉とかバックグラウンドなんかで他人を区別することとかね、ちょっと扱いを変えてしまうということは決してしてはならないし、非常に愚かなことだなという風に強く感じましたね。で、それって映画とかドラマの中で描かれている遠い国の昔の出来事ってわけじゃなくて、そのままいまの日本の社会にもスライドすることができると思いますし。私としてはいまの日本の社会も多様性を認めて、みなさん平等にいい暮らしができるっていうことでは決してないと思うんですよね。そういったことは本当に即刻、改善されてほしいなっていう風に思います。

で、最後にみんなが無実が晴らされて釈放されて、ハーレムの街で拍手喝采を受けながらスピーチするようなシーンもあるんですけど。個人と社会をどう変えていくかみたいな、そういうことも非常に考えさせられました。で、1人で刑務所にブチ込まれて、そこで状況を改善するっていうことは非常に非常に難しいことでありますけれども、何か他のパワーが作用すると、その事態が好転するかもしれないってことはありえますよね。かつ、社会を変えるって1人じゃ難しいけど、やっぱり選挙っていうシステムがありますから。そこを通じて行動で社会を変えていくとかね、その一翼を担うことができるのだな、みたいなことを。参院選の選挙も迫っておりますので、そんなことを非常になんか深く深く感じたドラマシリーズでした。

もう泣けるし……感動の涙もあるし、その痛々しい、痛ましい涙もありますし。これはぜひぜひ、まだ見てませんという方がいらっしゃいましたら、そろそろ学生さんなんかは夏休みに入る時期だと思いますので。これ1本見たらもう、論文とか何枚でも書けちゃうような感じがしますのでぜひぜひ、夏の課題図書みたいな感じで見ることをお勧めします。それ以外のもちろん学生さんじゃない方も、時間を割いてぜひ見てみてください。というわけでここでこの『ボクらを見る目』のエンドロールで流れる1曲をお届けしましょう。Nipsey Hussle『Picture Me Rollin』。

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Nipsey Hussle『Picture Me Rollin』

<書き起こしおわり>

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