渡辺志保『Sai no Kawara』crystal-zインタビュー書き起こし

R-指定 crystal-z『Sai no Kawara』を語る MUSIC GARAGE:ROOM 101

(渡辺志保)今回の『Sai no Kawara』のリリックの中にも、私も「おっ!」という風に思ったんですけど。バイト先の塾に辞表を出したっていうくだりがあって。「お別れは英語の授業でかけた『I Used to Love H.E.R.』」っていう。そこもすごい、なんていうか自然にそういったフレーズを挟み込んでいて、かなりイケてるなという風に勝手に思っちゃったんですけれども。この曲はもう言わずもがな、コモンの『I Used to Love H.E.R.』ということで合っていますか?

(crystal-z)そうですね。

(渡辺志保)で、実際に授業で?

(crystal-z)その授業をしたっていうのも事実で。生徒には……中学生ぐらいだったと思うんですけども。ちょっと早いかなとも思うんですけど。まあ中3とかで。「『This is a pen.』から始まる英語学習があってもいいけど、『Fワード』から始まる英語学習があってもいいじゃん」っていう話をして。

(渡辺志保)大胆!

(crystal-z)まあ、自分はそうやって英語を勉強して、割と結果も出たと思うんですけど。それを伝えたくて、それをやって。まあ、ちょっと塾のバイトはあんまり馴染めなくて。正直。まあ、こんな感じなんで(笑)。

(渡辺志保)それは、どういうところが馴染めかったんですか? 私は塾のバイトを経験したことがないんですけど。どういうところで馴染めなかったんですか?

(crystal-z)やっぱりみんなの見ている世界が狭いかなっていう。「学歴」とか「勉強ができる」っていうのは人の一側面でしかないはずなのに。もっと、「優しさ」とか、まあヒップホップの知識とか、いろいろあると思うんですけど。それの中で一側面だけを極めて重く捉える先生方と、そしてそれを真に受ける生徒みたいな感じで。中学校と小学校の授業をそれぞれ1年ちょいぐらいやってた程度なんですけど。バイトの中ではあんまりやってなかった方で。基本的に……そうですね。塾長にもそれでめちゃめちゃ怒られましたし(笑)。

(渡辺志保)リリックの中にも「めちゃくちゃに怒った塾長」っていうラインが入ってますけど。でも『I Used to Love H.E.R.』ってもちろんコモンの超超代表曲で。そしてこの「her」……「彼女のことを愛していた」っていうことなんですが、この「her」は実は○○だったっていう。これはまたすごい仕掛けのある曲ですけども。その曲をあえて紹介した、その意図っていうのは当時、あったんですか?

Common『I Used to Love H.E.R.』

(crystal-z)当時の意図としては、やっぱり自分がそうだったように……「みんな、ラッパーのイメージってどう?」っていう。「喧嘩自慢とか悪さ自慢をして、頭が悪くて、ヨーヨー言っているダジャレが好きな人たち」みたいな、そういうのってまだまだあると思うんですよね。宇多丸先生とかが「まだそこですか?」ってよく言ってると思うんですけど。本当にまだあると思っていて。

そういうのを考えるきっかけになると思うんですよね。自分がそういう日本語ラップの偉大な人たちから、その考えを改めさせられたみたいに。そういう正の循環というか、そういうのがそこで繋がっていけばいいなと思って紹介したのはあるんですけど。でもまあ今、考えるとその最後の曲のどんでん返しとかっていうところがこの曲とリンクしてたりっていうところで。そこは意図して入れたんですけど。でも、自分の人生で本当にあったところのエピソードでもあるということで。この曲に関しては自分の人生のピースがカチッとはまった1曲に仕上げられたかな?っていうところありますね。

(渡辺志保)すごい! ちなみにその『I Used to Love H.E.R』をcrystal-z先生から教えてもらった生徒さんの反応っていうのはどんな感じだったんですか?

(crystal-z)フフフ(笑)。まあ、どうだったんでしょうね?

(渡辺志保)「ポカーン」みたいな?

(crystal-z)「ポカーン」だったかもしれないし。でも結構、「面白い先生」っていう印象はあったと思うんで。「最後まで、またなんか言ってるよ」っていう感じで。結構進学塾だったんで、みんなよくも悪くも大人で。付き合ってくれてた感じじゃないですかね?

(渡辺志保)うんうん。なるほど。

(crystal-z)いつかこの曲がその子たちに届いたらすげえいいと思いますね。

(渡辺志保)ありがとうございます。じゃあ、ここでさっきね、触りだけリスナーの方には聞いていただいたですけれども。改めてこのcrystal-zさんの『Sai no Kawara』を聞いていただきたいと思います。crystal-zさんから曲紹介をお願いできますでしょうか?

(crystal-z)はい。crystal-zで『Sai no Kawara』。

crystal-z『Sai no Kawara』(YouTubeバージョン)

crystal-z『Sai no Kawara』(サブスクリプションバージョン)

(渡辺志保)今、お聞きいただいたのはcrystal-zさんの『Sai no Kawara』でした。フルサイズでお聞きいただきました。この楽曲なんですけれども今、各種サブスクリプションサービスとあとはYouTube上で公開されている楽曲なんですけれども。それぞれエンディングが異なる仕上がりになっているんですよね。で、ちなみにそのエンディングを別々に用意したっていう意図はどこにあったんでしょうか?

(crystal-z)まあサンプリングの権利の関係で、今はクリアランスが取れたような状況にはなってるんですけど。YouTube版からサブスク版へのディレイが1ヶ月ぐらい、インターバルがあったので。せっかくだったら変えようっていうのと。あとは、まああんまりこれでお金儲けをしたくなかったってのもあるんですよね。この曲のトピックもありますし。なんかネットでは結構「ワニ」って言われていて。まあ、なんというか「100日後に……」みたいな(笑)。

(渡辺志保)たしかに。『100日後に死ぬワニ』のあんな話やこんな話がありましたけど。なるほど。

(crystal-z)まあ、そう言っていただけるのはすごくありがたいんですけど。お金儲けをすべき曲ではないよな、みたいな風にも思うし。直後にああいう展開をされると、思うところがいろいろある人もいると思うんで。1ヶ月たったところで、エンディングを別のパターンで用意して。一応その自分の希望としては、YouTube版を見てからサブスク版を聞いてもらうと、そこが繋がるというか。

ラストのところが特にこう応答するような形でサブスク版を作ったので。そういう順番で聞いていただけると自分としてはありがたいですし。まあ、そういうちょっと、多少ですけどもお金は後から入ってきて。それをまあ裁判費用の足しにしようかな、ぐらいな感じですかね。

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