渡辺志保とDJ YANATAKE ヒップホップ業界の裏方の仕事への就き方を語る

渡辺志保とDJ YANATAKE ヒップホップ業界の裏方の仕事への就き方を語る INSIDE OUT

渡辺志保さんとDJ YANATAKEさんが2023年10月30日放送のblock.fm『INSIDE OUT』の中でヒップホップ業界の裏方の仕事についてトーク。裏方の仕事に就くための方法などについて話していました。

(DJ YANATAKE)じゃあ、次の質問に行きますけど。これ、なかなか深い話にもなっちゃうんですけども。「A&Rやマネージャーという職種の方はどういった経緯でそのアーティストについたのか、気になります」っていう。

(渡辺志保)おお、なかなかユニークな目の付け所ですね。

(DJ YANATAKE)A&Rって「Artist & Relation」だっけ?

(渡辺志保)そう。でも何パターンかあるんですよね。

(DJ YANATAKE)とにかく、レコード会社のの人でアーティストに一番近い人みたいなイメージかな?

(渡辺志保)私も実際、レーベルのA&Rをずっとやっていたんであれなんですけど。結構、何でも屋的な感じではありますね。本当、身の回りのお世話というか。リリースの時にちょこまか動くみたいな。

(DJ YANATAKE)これ、なんか今いろいろな形ができちゃったから。A&Rとかマネージャーっていう言葉とかもなかなか難しいんですけども。基本的にはマネージメントの方がアーティストにさらに近くて、強いよね。その意見を通すっていう意味では。

(渡辺志保)うーん。まあね。ケースバイケースだけどね。

(DJ YANATAKE)で、A&Rっていうのはレコード会社の人って感じかな?

(渡辺志保)そうね。こと、ヒップホップ業界はまたちょっと複雑っていうか。たぶん一般的なJ-POPとかのメジャーのシーンとはまた違う構造があると思うんですけど。ヒップホップ業界においてだと、ヤナさんがおっしゃる通りマネージャーの方が常にアーティストと一緒にいるみたいな感じかもね。

(DJ YANATAKE)で、ここからがポイントで。特にヒップホップを聞いていると、この質問もなるほどなって思ったりするんですけども。要するに、なんかの拍子に一発、バッコリ売れちゃったりする時代じゃん? いきなり注目を集めて、めちゃくちゃバズったりすると、急に仕事がいっぱい、ライブのオファーとかがガーッて入ってくる子もたくさんいる。で、そうなった時にその「友達・仲間と上がっていくぜ!」みたいな。よくラップのリリックでもみんな、聞くと思うけど。そうなった時に「ラッパーの自分はもうラップに専念したいから、ちょっとスケジュール管理をお前、やってくれよ?」っていうので、近くにいるそういう整理ができそうなやつにね、「じゃあお前がマネージャーになって」っていうことで。それでその子も仕事を辞めたりとかして、一緒にやっていこうみたいな、そういうのはまあ、よくあるケースで。

(渡辺志保)よくあるね。はい。

(DJ YANATAKE)でも、ここがなかなか今、正直難しいなって思っているところで。1回転目はいいと思うんだよね。いろんな意味で。1曲、めちゃくちゃ当たったり、めちゃくちゃ話題になったりしたら。だけど、そのマネージャーの子もさ、いきなり……友達・仲間なんだけどさ、そもそも素人なわけじゃん? 元々は。

(渡辺志保)そうね。

(DJ YANATAKE)でも最初は、勝手にいっぱい来るスケジュールをさばくっていうか。そういうことはできると思うんだけど。でも、マネージャーっていうたぶん、それだけじゃダメで。もっと他に仕事を広げていったり、アイディアを作っていったり……。

(渡辺志保)そうね。あとはギャラの交渉とかね。

(DJ YANATAKE)そうそうそう。そういうのも、ある段階に行くとやっぱりある程度、経験値がある人がそこのポジションにいるのか、いないかでアーティストがまた、さらにその上に行けるか、行けないかっていうのも実は決まってるような気もしていて。

さらに上にいくためには経験値のあるマネージャーが必要

(渡辺志保)そうですよね。で、なんかデカい、本当にめちゃめちゃ日本で誰もが知ってるようなロックバンドとか、俳優さんとかだったりすると、まず大きな事務所とかに入ると、そこからマネージャーが割り当てられるわけじゃないですか。A&Rにしても、そこそこの大きさのインディーズレーベルだったり、もしくはメジャーレーベルだと……特にメジャーレーベルだと、組織なので。「僕はこの人を担当したいです」って言って担当できる場合もあるかもしれないけども、人事異動みたいな感じで。「じゃあ次は渡辺志保さん、このアーティストさんをこの春からお願いね」みたいな感じで、結構自動的に割り当てられることが多いんですよね。

でも結構、ヒップホップで「ゼロから一緒にやってきました」みたいな感じだと、今ヤナさんがおっしゃったみたいに仲がいい友達とか、地元の先輩とかが自動的にマネージャーになることが多くって。もう本当にこれは結構リアルに今の日本のヒップホップシーンの裏方が直面してる問題なのかな?って思いますね。いいマネージャーがちゃんとついているかどうかっていうかっていうのは。なんかそこそこ売れてる人気のアーティストでも、レーベルの担当者はいるけど、マネージャーがいないっていうケースは本当にたくさんあって。ゆえに、結構いっぱいいっぱいになっちゃって、いろいろ手が回らなくなっちゃって……みたいなこともあるわけで。そこはもし、興味ある方はぜひ。「僕も・私もなりたいな」みたいな人がいたら、そのへんをディグってみてもいいかなとも思いますね。

(DJ YANATAKE)じゃあ、志保さん、他にはなにかありますか?

(渡辺志保)でも、同じようなご質問がヤナタケさんのところにも来ていて。「ヒップホップ業界で働くとなると、どんな職種がありますか?」っていう質問もいただいていて。で、私もたまにDMで「何かしらヒップホップに関わる仕事をしたいんですけど」みたいに相談いただくことがあるんですけれども。これは本当に、探せば無数にありますっていうことをお伝えしたくて。で、私も音楽ライターもやりつつ、こうやってラジオでしゃべりつつ。で、たとえばイベントとか、何かしらのメディアの企画の間に入って。私がそのラッパーの方とか、ヒップホップ系のアーティストの方をブッキングする仕事……コーディネーターとか、そんな仕事もしているし。あとはPRの仕事も個人で請け負ってやってるんですよね。

なので、とあるアーティストの方から相談いただいて「◯◯が今度、こういうアルバムを△△に出します」とか「※※にこういうツアーをやります」みたいな情報を吸い上げて、それをメディアの人に情報として配信するみたいな。

(DJ YANATAKE)志保さんからよくメール、来ますよね。

(渡辺志保)そうなんですよね。「ニュース掲載をお願いします」みたいな感じで。そういう風に個人でPRの仕事もやっている。あと、私の夫は服のスタイリストなんですけども。うちの夫も「ヒップホップアーティストのスタイリスト」っていう感じで。特にそれを看板掲げてめっちゃ営業してるっていうわけではないんだけど、うちの夫もやっぱり「ヒップホップの仕事をしたい。ファッションの仕事をしたい」っていうので、結構そこで切磋琢磨して今の仕事に就いてるわけなんですけども。そういうファッション面からのアプローチもあるし。で、今言ったみたいなそういうザ・裏方ですよね。マネジメントとかレコード会社のA&Rだったり、そうした職種もありますし。ヤナタケさんみたいにDJという、立派な職業もあるし。

(DJ YANATAKE)でも僕は、あれですよ。はっきり言いますけど、DJだけじゃ全然食べれないっすよ。だけど、自分の中で四つぐらい、柱。食い扶持があって。その1個、DJはもちろん入ってるし、ラジオの仕事も入ってるんですけど。なんて言ったらいいんだろうな? もちろん、音楽業界ですけど、サラリーマンをしていた時もあって。それ1本でやってきたりしたこともあったんですけど。でもそれが……今って何の仕事していても、その仕事が明日にはなくなっちゃうかもしれないっていうことは、あるじゃないですか。どの仕事をしていたとしても。たとえば銀行マンの人でも働いている銀行が倒産するかもしれないし。そうなったら「明日から、どうするんだ?」みたいな。だから俺、今は四つぐらいあって。そのうちの1個がなくなっても大丈夫みたいな。わからないけども。

(渡辺志保)うんうん、そうね。そのインカムポケットはたくさんあればあるほどね。

(DJ YANATAKE)だから1個1個……どれも俺は1個だけじゃ食べれないけども。なんかそれが四つぐらい、できるようになったというかな。だから「裏方でこれに絞る!」っていうのもね、もちろんありなんだけど。なんか俺みたいな考え方もありなんじゃないかなって最近、時代的に思いますね。

(渡辺志保)いや、めちゃめちゃありだと思います。私もその細くて短い柱が8個ぐらいあって(笑)。そこから月々……。

(DJ YANATAKE)志保さん、本当にいろいろとやっているもんね。

(渡辺志保)そうそう。本当にね、なんというかヒップホップ何でも屋さんみたいな感じに、ありがたいんですけど、なっていて。それは、どうしてそうなったか?っていうと、ずっとずっと学生時代からこの界隈で遊んできたからこそっていうのがあるんですけど。でも本当にいろんな職種があるし。今、たくさんね、ライブにしろMCバトルにしろ、たくさんイベントもあるから。やっぱりそのイベントをひとつ開催するのにも、やっぱり裏側には何十人の方が裏方というか、スタッフとして入ってらっしゃるっていう。そういう関わり方もあると思いますし、メディア的な関わり方もあると思うので。本当にちょっと調べれば全然、その裏側にどんな人がいるのかを知ることができるんじゃないかなと思うし。

(DJ YANATAKE)逆に、ほら。これだけ「裏方不足、裏方不足」って言っているわけだから、アイディアとやる気があったら、マジでチャンスな分野ですよ。今、これだけヒップホップが盛り上がっていて。

(渡辺志保)本当、そうだと思います。長続きするかはもう、あなた次第という感じなんですけど。飛び込む価値はあるというか、飛び込める穴は本当にいくらでもあるので。

裏方不足なヒップホップ業界

(DJ YANATAKE)実際、たとえばそういうエンジニア系……その舞台の音を作る人がさ、大きい制作会社にいたんだけど最近、辞めて独立したらもう、売れっ子になって。いろんなアーティストのツアーについていって、めちゃくちゃ忙しくなっちゃってる人もいるし。たとえばそういうクラブのコーディネーターみたいな人も最近、独立したらもう、いきなり全然回らないぐらい仕事が入っちゃって……みたいな人も全然いるんで。

(渡辺志保)そうね。フォトグラファーのcherry chill will.さんみたいにこれから腕を磨いて1本、手に職をつけてやっていくみたいなケースもあるだろうし。たぶん、ちょっと調べれば……たとえばMusicmanっていうサイトがありますけど。それって音楽業界に特化した求人サイトなんですよ。なんで、そういうところに求人を出してるまともなレーベルとか事務所とかもたぶんあるはずだし。そういうところから探していけばいいのかなとも思うしね。レコード屋さんとか、CDストアとかも今も全然ありますから。人気の職種でございますから。そういうところから入っていくのもいいのかなとも思いますし。何かしら、もう職種は本当にたくさん、多岐にわたってあるかなという風に思いますね。

(DJ YANATAKE)そうですね。でも何にしてもこれ、共通になってくるけど。志保さんも本当にそうでしたけど。「こいつ、いつもいるな」みたいな。

(渡辺志保)本当、そうなんだよね(笑)。「この女、いつもいるな。何してんの?」みたいなね。

(DJ YANATAKE)僕も今はね、なかなか……年も重ねてきたってのもあるし。子供が産まれたってのもあるし。いろんな仕事をやらせてもらっていて、それをやりに家にちゃんと帰るっていうのももちろんあるんですけども。でも俺、ハーレムに通うために渋谷に引っ越したからね。

(渡辺志保)だってヤナタケさん、ハーレムの真裏に住んでましたもんね(笑)。

(DJ YANATAKE)そうそう。それで週5とか行っていたからさ。わかんないけど。だからやっぱり結局、インターネットの時代ですけど。やっぱり顔が見えない人に仕事は振らないと思うんで。みんな。

(渡辺志保)うんうん。たしかに。それは言えてますね。

(DJ YANATAKE)なんで、とにかくやっぱり知り合いというか、人脈を増やすことっていうのがやっぱり、一番大事かな?

積極的に現場に顔を出して人脈を広げる

(渡辺志保)そうね。まあ職種っていうことに限って言えば本当にいろんな職種がありますという、薄っぺらい答えになっちゃうんですけど。でもちょっと、ペロッとめくるとね、いろんな職種が見てくると思うんで。

(DJ YANATAKE)あとだから、ただクラブに行くにしてもクラブに行くだけじゃなくて、ライブを見るにしてもただライブを見るだけじゃなくて、ライブの後ろ側にいる人を見て。「あの人、何をやってるんだろう?」とかね。そういうのにももっと注目して見ても面白いかもしれないね。

(渡辺志保)そうかもしれないですね。

<書き起こしおわり>

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