澤田大樹さんが2021年2月12日放送のTBSラジオ『アシタノカレッジ』YouTubeアフタートークの中で森喜朗氏の女性差別発言に対する小池百合子都知事の立ち回り方について武田砂鉄さんと話していました。
(澤田大樹)もうひとつ、いいですか? 本当はね、高校演劇の話とかしたいんですけども……。
(武田砂鉄)それはアトロクでやってください(笑)。
(澤田大樹)もうひとつは小池知事の話をしたくて。
(武田砂鉄)小池知事。なんか今週1週間を見てると……やっぱりね、去年『女帝 小池百合子』で話題になりまして。『ACTION』でもその著者に出てもらいましたけれども。小池さんの特徴としてはやっぱり空気を読んで自分がどこのポジションにいるのが一番ベストだろうか?っていうことを考える。今週であれば、これから行われるはずだった4者会議に「私は出ませんよ」という風に言ったのがいかにも彼女らしい読み方だなという風に思いましたけどね。
(澤田大樹)ということで、森差別発言の中で分かった時流を読む百合子力と題しましてちょっと話をしたいんですけども。
(武田砂鉄)僕は川淵三郎『独裁力』を読んでいましたからね。百合子力ということで。
(澤田大樹)いろいろと言う人はいるんですけど。やっぱりいい・悪いは別にして、小池さんって発信力のある知事ではあるなとは思うんですよね。
(武田砂鉄)まあ、それはこの1年、ずっと感じてきたところでしょう。
(澤田大樹)たとえば去年の3月末の緊急事態宣言の直前に「感染爆発重大局面」というフリップ芸が炸裂して。
(武田砂鉄)最近、フリップ芸を見ないですね。
(澤田大樹)ただ、あの一発目の時は相当インパクトがあって。あのシーンってめちゃめちゃ使われてたと思うんですね。で、やっぱりあの強いメッセージを出したことが外出の減少に繋がったとされていて、これは感染症の専門家もあのこと自体はすごく評価しているんですね。あれを出した直後に、やっぱり実際の感染状況はピークアウトしているっていうのがあって。で、やっぱり小池さんが優れてるのは時流とか時代を読む力には関しては、男女を問わずトップクラスだと思うんです。「読む」っていうことに関しては。
(武田砂鉄)とにかく読むんだよね。
(澤田大樹)で、森さんの差別発言騒動以降の小池さんのコメントを見ていると、それがよく分かるので。それをちょっと今日、振り返りたいんですけども。森さんの発言の翌日、今月の4日。登庁した時のぶら下がりの中で「森さんがこんなことを言ってますよ」っていうことで女性の反応を聞かれて。「女性の声を生かすというのはもう当たり前の話であって、話が長いのは人によるんじゃないでしょうか?」と一言。一般論に終始して批判はしませんでした。
(武田砂鉄)ほう。あんまり踏み込まなかった。まずは。
(澤田大樹)それで同じ日。森さんの例の会見の後です。「こういう重要な時期にこの発言で私も困惑し、多くの苦言も頂戴している」という。
(武田砂鉄)まだちょっと距離がありますね。
(澤田大樹)まだ「困惑」ぐらいなんですね。「苦言が来ている」という事実ベースで、批判のトーンはちょっと弱い。で、会見の翌日です。ボランティア辞退の話とか、あとは抗議の電話に触れながら、「そもそもあの発言について私自身も絶句しましたし、あってはならない発言だった」と批判のトーンを上げます。
(武田砂鉄)徐々に強まってきましたね。言葉がね。
(澤田大樹)ところが同じ日。この数時間後に行われた記者会見の中では「森会長から謝罪の電話を受けた」とした上で、「世界にしっかりと日本における女性の活動・活躍などについても伝えていきたい」と一気に批判トーンが収まります。
(武田砂鉄)その日なのに?
(澤田大樹)その日。ほぼ数時間……5時間ぐらいだと思います。まあ、ここまで意見が変わるんですよ。「これ、どっちなのよ?」っていう。
(武田砂鉄)当日だからね。
(澤田大樹)で、「辞めろ」っていう風に言うのか思って会見で問われたら「大会の開催をどのように可能にしていくか、そこのところを最大のポイントとして進めていきたい」とまで言っていましたね。で、この流れを見ていて先週、オンエアーに至ったので「森さんは辞めないんだろうな」と思ったんです。ところが事態が変わるのは水曜日、10日です。朝の登庁のぶら下がりの中で「4者会談が開かれると報道が流れておりましたが、今ここで4者会談をやってもポジティブな発信にはならないのではないかと思いますので、私は出席することはない」と一気に突き放します。
「4者会談に出席しない」
(武田砂鉄)これ、かなり踏み込んだ……要するにそれって「4者でちゃんと協議してくれよ」っていう場なわけだから。そこを蹴るっていうのはかなり、その残りの3者に対して強烈なキックになるわけですよね。
(澤田大樹)で、この発言を聞いて「ああ、これは森さん、辞めるわ」って思ったんです。小池さんが「もう、ここまでだ」と見切ったという。で、小池さんってここまで見てわかるように、当初の段階では批判のトーンはかならずしも高くなくて。だけど、これはなんでかな?って思ったら、小池さんって森さんの横をずっと見てるんですよ。この25年以上、政界の中で。
で、森さんって同様の発言をしても過去には不問にされてきたっていうのを全部見てるんですよね。たぶん。それで、「大事にならない可能性もある」という風に踏んでいるところもあって。その一方で女性知事として一般論の延長であるものの「絶句した」という言葉を使ったりとかしながら、批判のトーンというのも同時に、どっちに振れても行けるように……。
(武田砂鉄)つまり、後でこういう風に振り返られるとしても、「いや、私はキチッと言ってましたよ」っていうことがその言葉の選び方でわかっちゃうという。
(澤田大樹)だから朝と夜で変えたりとか。朝と昼で変えるとか。そういう両にらみ作戦なんですね。で、今週一気に局面が変わったわけですよ。その中で4者会談の欠席っていうのをぶち上げたということなんですよね。たぶんその間には要するに海外の反応だとか、NBCの件があったりとか、IOCが「やっぱり問題だ」っていう発言を出したりだとかっていうところのファクトをどんどん積まれていった状態で「これはもう、こっちに戻ることはない。森さん擁護してもいいことは無い」となって。そこで一気に「蹴る」っていう方に振っていった。
そう考えるとやっぱり「時流を読む力」かなって。これは小池さん、すごいなって。だから小池さんのぶら下がりとかを積み上げtいくと、その一流の読みというものがわかってくるという話なんですね。で、これはなんで小池さんがこういう能力を持っているのか?って考えるんですけども。そうすると、やっぱり永田町って小池さんが来たころから今も変わらないんですけども。女性議員ってめちゃめちゃ少なくて。そんな男性社会にいたっていうこととは無縁じゃないのかな?って思うんですね。初当選の時は細川護熙さんについて日本新党で始まって。その後は小沢一郎さんの新進党に行き、最終的には小泉純一郎さんの自民党に入る。時の権力者を完全に見切る力を自分自身が生き残るために身につけたんだろうなと。
(武田砂鉄)まあでも本当に小池さんのキャリアを見ていると、「この人はもう賞味期限切れだな」と思った時の立ち去り方、離れ方っていうのはすごいですよ。タイミングはね。うん。
(澤田大樹)だからそれはやっぱり男性社会の中で信頼できるは仲間ではなくて自分しかいないっていうことの証左というか。やっぱり孤立、孤独にならざるをえないんだなっていう風に思いましたね。
(武田砂鉄)まあ、でもその孤立した中で自分の権力をどう最大化するか?っていうことがすごく計算されているから。あんまりその小池さんの言動を見ていても、その人自身があんまりこの、それこそジェンダー平等とか男女平等みたいなものをそこまで考えてないんじゃないかなと思ってしまいますよね。
ジェンダー平等や男女平等にはあまり興味がない?
(澤田大樹)思っちゃいますね。だから本当に考えてたら、たぶん最初から言ってるはずなんですよね。でも、そうじゃないっていうことが今回の発言の移り変わりから見えてきたという。
(武田砂鉄)僕も一応、川淵三郎さんの『独裁力』を読んだので言わせていただくと、やっぱりすごく小池さん批判が多かったですね。猪瀬さんってすごく川淵さんと強かったから。「小池さんになってからオリンピックの動きが悪くなった」っていうことを結構何中ページも書いているんですよ。だからこれ、川淵さんになっていたらきっとものすごくぶつかってね、またあらぬ方向に行ったんじゃないかなと思って。だけどまあ、そういう権力者からは常に警戒されてる人なんでしょうね。
<書き起こしおわり>