DJ松永と渡辺志保 アメリカ・人種差別抗議デモとプロテストソングを語る

DJ松永と渡辺志保 アメリカ・人種差別抗議デモとプロテストソングを語る ACTION

(渡辺志保)まあ「N.W.A.の」って言っただけでみんな「ああ、あれか!」って思う方もいると思うんですが。まあまあ、『Fuk Da Police』という曲がありまして。定番といえば定番なんですけども。これも当時……この曲がリリースされたのは西海岸のロサンゼルスだったんですけれども。そのロサンゼルスをはじめ、全米で問題になっていたのが「警察による暴行」なんですよね。

で、これは「Police Brutality」っていうフレーズがあって。本当にアメリカのニュースとか記事では頻発するフレーズではあるんですけれども。その警官が何の罪もない……本当にさっき言った話と一緒ですけども。何の罪もない市民に向けていきなりこう暴行を働いたりとか。もう本当にいちゃもんを付けて。「お前、今こっちを見てたろ?」みたいな感じでいちゃもんを付けて。「ちょっとお前、手を後ろにしてそこの壁に立て!」みたいな。

(DJ松永)えっ、それを警官がやるっていうことですか? 田舎のヤンキー?

(渡辺志保)あ、そう。結構ノリはね。いちゃもん付けて、無理くり力でねじ伏せるみたいな。それが「Police Brutality」なんですけど。その様子を皮肉って抗議した曲がこの『Fuk Da Police』で。ついさっき、CNNの記事を見たんですけど。調査結果が出ていて。「自分自身が警察に守られていると感じるかどうか?」というアンケートを取ったらしいんですね。そうすると白人の77パーセントは「守られているという感じる」と答えていて。しかし黒人においては36パーセントしか「守られている」と答えた人がいなかったという。そういった結果が出てるみたいなんですね。なのでもう一部の人にとっては警察って……まあ日本でもやっぱりお巡りさんって自分たちの暮らしを守ってくれる善人というイメージだと思うんですけれども。逆に「いや、あいつらには何をされるかわかんないから」って思ってる人もアメリカには悲しいですけれども、たくさんいるっていう事実がございます。

(DJ松永)守ってくれる人がいないどころか、攻撃対象にもなるなんて……俺、そんな国は絶望しちゃいますよ。

(渡辺志保)だからこそ、本当に今回みたいな事件が何度も何度も起こってしまって……ということがあるんですよね。

(DJ松永)では、N.W.A.の『Fuk Da Police』を聞いてもらいましょう。

N.W.A.『Fuk Da Police』

(渡辺志保)はい。今、お届けしたのはN.W.A.の名曲『Fuk Da Police』でした。

(DJ松永)はい。たしかに曲調はガラッと変わりました。ヒップホップに戻りました。じゃあ、続いては?

(渡辺志保)はい。まだまだ紹介させていただきましょう。こちら、続いても定番の1曲という感じなんですけども。今はなき2パックがリリースしました『Changes』という曲ですね。これも結構定番のサンプリングのネタなんですけども。かなりこの曲も社会問題について2パックという、彼も銃殺をされてしまったんですけども。2パックというラッパーが語るというラップソングになってます。人種差別とか戦争、後は当時結構問題だったのがクラックというドラッグの蔓延があって。麻薬汚染みたいなことがストリートでも問題になっていたので。そういった社会問題をラップしているという。

「俺たちが変わらなきゃいけない」っていうことをとうとうとラップしている1曲になります。で、たとえばこの歌詞の中にも「警官は黒人のことなんて気にしちゃいない。引き金を引いて黒人を殺そうものなら、その警官はヒーロー扱いなんだ」とか。あとはですね、「俺たちはまだ黒人大統領を迎える準備ができていない」というような歌詞もあって。

これは1992年にレコーディングされた曲なんですけれども。それで2パックは96年に亡くなりまして。もしも2010年代まで生きていて、オバマ大統領の誕生を見届ていたら、どんな風に2パックはラップしてたのかなとか、ちょっと考えてしまうところがありますね。なので、これも非常に美しいフレーズが耳に残る曲なので、ぜひに聞いていただきたいと思います。では2パックで『Changes』を聞いてください。

2Pac『Changes』

(DJ松永)はい。お送りしたのは2パックで『Changes』でした。では、続いてまいりましょう。

(渡辺志保)これがたぶん最後の曲になるんですけれど。最後は昨年、2019年に発表された1曲を紹介したいと思います。ジャミラ・ウッズというシカゴを拠点に活動している詩人かつ歌手の女の子ですね。女性アーティストなんですけれども。彼女が去年『Legacy! Legacy!』というアルバムを出したんですよ。そのアルバムがちょっとユニークで、今からかける曲は『BALDWIN』という曲なんですけれども。この『BALDWIN』ってどういう意味かと言いますと、黒人作家であるジェイムズ・ボールドウィンの名前なんですね。

で、この『Legacy! Legacy!』というアルバムは曲のタイトルが全部、彼女が影響を受けた黒人のヒーローたちの名前なんですよ。なのでたとえばCreepy Nutsさんがアルバムを出して全曲の曲名が『ZEEBRA』とか『RHYMESTER』とか『K DUB SHINE』みたいな、そういうアルバムを作るみたいな。『MICROPHONE PAGER』とかね。

(DJ松永)『雷家族』みたいな(笑)。

(渡辺志保)そう。『LAMP EYE』みたいな。そういうアルバムを去年、出して。なので歌詞の内容も「いかに私が過去の黒人のヒーロー、ヒロインに助けられたのか?」っていうアルバムになっているんですね。

(DJ松永)いやー、熱いですね!

(渡辺志保)そう。すごい熱いんですよ。で、彼女はもともと結構啓蒙的っていうか。地元でも女の子たちを集めて詩の教室であるとか読書会みたいな、そういったことを主催しているような活動家としての動きもあるんですけれども。今から紹介する『BALDWIN』という曲も「私の友達はトニ・モリスンとコーネル・ウェストの本を読んでいるわ」っていうようなラインがあって。これ、実際にトニ・モリスンもコーネル・ウェストも黒人作家。そして黒人の博士というか、権威ある方の名前なんですけれども。なので「そういった本を読んで知識をつけているから強いのよ」っていうことを暗に示しているような歌なんですよね。それでは、ジャミラ・ウッズで『BALDWIN』です。

Jamila Woods『BALDWIN』

(渡辺志保)はい。今、聞いていただきましたのはジャミラ・ウッズ『BALDWIN』という曲でした。ありがとうございました。

(幸坂)そろそろ、すいません。お時間になってしまいました。今日のゲストは音楽ライターの渡辺志保さんでした。ありがとうございました。

(渡辺志保)本当、差別とかプロテストって海の向こうだけの出来事ではないので。こうした曲をきっかけにして皆さんにもいろいろと身の回りの環境のこととかを考えてほしいなって。私も考えていきたいなという風に思っているところです。

(DJ松永)ありがとうございます。勉強になりました。

(渡辺志保)ありがとうございました!

<書き起こしおわり>

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