町山智浩 全米に広がる人種差別抗議デモの状況を語る

町山智浩 全米に広がる人種差別抗議デモの状況を語る たまむすび

町山智浩さんが2020年6月2日放送のTBSラジオ『たまむすび』TBSラジオ『たまむすび』の中でミネアポリスで景観によってジョージ・フロイドさんが殺害された事件を発端にして全米に広がった人種差別抗議デモについてトーク。事態がひどくなった背景について話していました。

(山里亮太)町山さん、みんなこのスタジオ中全員が前回ご紹介いただいた『37 Seconds』を見て、町山さんのおっしゃる通り、主人公ユマちゃんのか細い声での演技に心がガンガンに……もう切なくなって見ていました。

町山智浩『37 Seconds』を語る
町山智浩さんが2020年5月26日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で映画『37 Seconds』を紹介していました。 (町山智浩)ということで、またNetflixを話を今回もさせていただきたいんですが。 (山里亮太)今、映画が公開されて...

(町山智浩)そうなんですよね。でもだんだん、少しずつ少しずつ外の世界に出てくるところがね、いいんですよ。

(山里亮太)ちょっと声の感じも最初の時よりも力強く感じれるようになってくるんですよね。徐々に。

(町山智浩)そうそうそう。だからあれ、演技なんですよ。

(山里亮太)で、演技は初めてだったんですよね。

(町山智浩)そうそう。演技経験ゼロなんですよね。

(山里亮太)もう本当に我々がみんな、話していたのはあの大東駿介さんがいい人すぎるっていう。

(外山惠理)そう。かっこよかったー!

(町山智浩)ちょっといい人すぎるね。

(外山惠理)いい人すぎる。「そこまで行くんだ」って思ってね。でも、あのユマちゃんの笑顔がね。

(町山智浩)そう。でも最初は本当に笑顔がないんですよね。

(山里亮太)いやー、あれはみんな見てね、心を掴まれて。「ああ、すごかったな」っていう。そうですね。Netflixで見られるということです。

(町山智浩)はい。まあコロナのせいで劇場が公開してすぐに閉まっちゃってね。すごく運が悪かった映画ですけどね。まあNetflixで見れますのでね。

(外山惠理)だんだんと、小さい映画館も昨日から。6月1日から、ポレポレ東中野とかも開き始めました。人数制限はあっても。

(町山智浩)でも、大変ですよね。

(外山惠理)そうですね。ちょっと狭いからね。

(町山智浩)そう。ただでさえ狭いのにね。それで、半分もお客さんを入れられないんだからもう、いくらやっても赤字ですよ、これは。

(外山惠理)なかなか大変ですよね。

(町山智浩)もう大変……アメリカの方もね、まだうちの近くの方は劇場、映画館は開いてないですけどね。もう映画産業全体がね、どうなるかわからないっていう。アカデミー賞もちゃんとやるかどうかわかんないですよ。

(山里亮太)そうか。だって映画館がやっていないんですもんね。

(町山智浩)そうそう。新作映画がないから。「誰に賞をあげるんだ?」っていう話になっていますけども。まあ、前代未聞ですよ。だから、今の不況って今まで、人類史上、初めて体験する不況ですよ、これ。今までの不況って「不景気」っていうもので。要するに金融的な問題だったんですよ。金融市場とか株式のバブルが弾けたりとか、実体経済じゃない部分が落ち込むっていうことだったんで。その自動車を作ったりとか、飲食店とかホテルとか服を作って売ったりとかっていうのは普通に動いてたんですよね。ずっとね。それが今、全部止まってますから。

(山里亮太)そうですね。

(町山智浩)だってこの3ヶ月間、ほとんど誰も服を買ってないですよ。アメリカ人って。それでレストランも動いてないし。もう自動車も作っていないですよ。自動車工場が動いてないですからね。すごいですよ。あと、だから農業の方もずっと普通に作ってたんですけど。レストランが閉まっちゃうと、レストラン大量に料理を作るんですよ。アメリカは。食べる切れないぐらいね。それを全部ストップしたんで、野菜とかが余って腐っちゃっているんですよ。

(山里亮太)ああ、そうか……。

(町山智浩)まあ、すごいことになっていて。実体経済自体がここまで縮小するっていうのは資本主義社会になってから初めてじゃないのかなと思いますね。で、たとえば戦争とか災害があるとね、実は生産が増えるから。修理をしたりするから、経済は良くなるんですよ。だって復興をしなきゃなんないから。それで武器を作ったりしなきゃなんないから。だからそういう経験しかしてないんで、「縮小する」っていうのはこれ、誰も経験していないから。どうするのかわからないですよね。

(山里亮太)全くわからないですもんね。この先、どうなっていくのか全然。

新型コロナウイルスのアメリカ経済への影響

(町山智浩)これは全然わからないです。だからみんな、試行錯誤しながらやってるっていう感じですけどね。まあ、その意味も含めて今、アメリカは失業者が国全体で7人に1人ぐらいになっちゃったんですよ。

(山里亮太)うわっ、すごい!

(町山智浩)すごいですよ。都市部だと飲食業がの人が多いですからもっと多いですね。6人に1人とか5人に1人とかになってますよ。都市部は。それだけじゃなくて、今まではトランプ大統領が給付をちゃんとしてたんですね。お金をね。最初、大人1人あたり13万円を一律で配って、その後に失業手当金を週6万5000円ぐらい出していたんですけども。ただ、もう3ヶ月目なんですよ。今、ロックダウンしていて。で、3ヶ月間収入がない状態で、今言ったお金を全部合計しても家賃がもう払えないんですよ。で、6月ぐらいから結構暮らせなくなっちゃう人が出てくる状態になっていて。

(山里亮太)じゃあ、これからだ……。

(町山智浩)だから、第2弾の給付をするかどうかみたいな感じになってますけどね。だからこんな感じになってます。今、アメリカは。

(山里亮太)今、アメリカは大変ですもんね。

(外山惠理)デモで……。

(町山智浩)デモというか……ああ、はい。今、曲がかかっていますが。これはパブリック・エナミーの『Fight The Power』という歌なんですけども。1989年の曲です。

(町山智浩)これは1980年代にあったロサンゼルス暴動。それからヒントを得た映画『ドゥ・ザ・ライト・シング』という作品の主題歌なんですけども。これとほとんど同じことが起こってしまったんですね。アメリカでは。この映画、あるもめごとの中で黒人の若者が警察官に首を絞められて窒息死させられることから大暴動に発展していくっていう映画なんですよ。

(山里亮太)ああ、まさに……。

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(町山智浩)今、アメリカで起こっていることは全く同じことなんですよ。だからこの映画を作ったスパイク・リー監督は全くアメリカは変わってないなって言ってますけども。で、きっかけはミネアポリスという街で1人の40代の男性がコンビニで偽札を使ったらしいということで警察官に取り押さえられて。その警官の1人に首の上に乗っかられて窒息死したんですけども。その後、警察の対応が悪かったんですよね。その警察官を逮捕したり起訴したりしないまま、何日間か過ぎてしまった。

だから、「その警察官を罰しろ!」っていうことで、だんだんとエスカレートしていって暴動になっていったんですけども。ただ、それだけじゃないですよ。実はものすごい、こういうことがずっと続いているんですよ。もう2009年からずっと、その10年以上に渡って警察官が無抵抗の人を射殺していく事件がアメリカ中で次々と起こっていて。それでどの位の人が死んでいるかっていうと、その数は2013年から2017年の4年間に、いい人も悪い人も含めて、警察官が殺した人の数ってアメリカでは7600人以上なんですよ。

(外山惠理)ええっ!

(山里亮太)「いい人も悪い人を含めて」っていうのが怖いですね。

毎年1000人以上が警察官によって殺される

(町山智浩)そう。これ、だから2013年から2017年っていう4年間しかないんですよ。だから毎年、1000人以上殺されているんですよ。警察官によって。そのうち、どのくらい悪くない人が殺されてるか?っていうのはかなりわからなかったんですけども、今、問題になったり表面に出てくるのはその瞬間がスマホで撮影されちゃったものなんですよ。すると、もう全員無抵抗だったり、それこそ銃を持ってなかったり。本当にね、ここ何年かで起こっている事件でひどいのはね、自分の自宅に入ろうとしているのに……その要するに他の人の家に入ろうしていると思われて、射殺されるとかね。

(外山惠理)ええっ!

(町山智浩)そう。これ、サクラメントで起こったんですけど。

(外山惠理)自分の家なのに?

(町山智浩)そう。結構、中産階級の家だったので「ここに黒人がいるのはおかしい」ということで撃たれた。あとは自分の家でゲームをしていて射殺されたっていう人もいました。黒人女性が。

(山里亮太)えっ、なんでまた?

(町山智浩)これはね、警察が別のアパートと間違えたらしいんですよ。で、入ってきて、黒人女性が自分の自宅で座っていたのにもかかわらず、それを射殺しているんですよ。

(外山惠理)ひどい!

(町山智浩)そういうことがずっと続いているんですよ。ずーっと続いていて。もう毎年、3件とか4件とか現場が全部撮影されていて……これはオバマ大統領が警察官に胸にちっちゃいカメラを装着させることを義務付けたんですね。それでもう現場がどんどん撮影されていく。そこで、2015年ぐらいにあまりにもひどいってことで「Black Lives Matter」という運動が始まりまして。

そのBlack Lives Matterっていうのは「黒人の命も大切だ」運動というものなんですけど。で、NFLのアメフト選手のコリン・キャパニック選手が国歌斉唱時にひざまずいて。その警察官に殺された黒人を追悼するということをしたんですよ。で、そこからですね、もういろんなスポーツ選手とかがそれ参加するという事態になって、デモとかも広がって、Black Lives Matterという運動になっていったんですけども。

Black Lives Matter運動

(町山智浩)その後、大統領がトランプ大統領になっちゃったんですよね。で、トランプ大統領はまず、「国歌斉唱時にひざまずいてるやつらは全員クビにしろ!」と言って。全然、その黒人の人たちが殺されているってことに関してはそれを解決しようとしないまま、「デモを起こしたりするやつらが悪い」「ひざまずいたりするやつが悪い」ということを続けてきたんですよ。ずっと大統領として。で、今回それが爆発した形になってるんですよね。だからずっと蓄積があったんで。

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