町山智浩 全米に広がる人種差別抗議デモの状況を語る

町山智浩 全米に広がる人種差別抗議デモの状況を語る たまむすび

(町山智浩)特にこの3ヶ月ぐらい、ちょっとひどくて。自宅で殺されたいとか、白人の住宅地があって、そこを歩いてた黒人の男の子が「白人の住宅地を歩いているんだから泥棒に来たんだろう」っていうことでいきなり射殺されたりして。それで、それを殺したやつが捕まらなかったりとかして。もうずっと続いていたんですよ。そこに来て、その窒息死の事件があったんで、とうとう爆発して。

なぜ、事件はミネアポリスで起きたのに全米で爆発してるのか?っていうのはわからないと思うんですけど……それは、各都市でもう既にあったことだからなんですよ。で、たとえばうちの近くはオークランドというところなんですけれども。オークランドでは2009年に映画にもなったフルートベールという駅で何もしていない若者が地べたに伏せさせられて警察官にそのまま背中を撃ち抜かれるっていう事件があって。

(外山惠理)ええっ!

(町山智浩)それもその現場がスマホで撮られていたんですよ。

(外山惠理)ひどい……。

(町山智浩)そういうことがずっと起こっていて。で、アメリカで警官もたしかに殺されたりはしているんですけど、1年間で警官が殺される人数というのはだいたい80人ぐらいなんですよ。まあ、それでも結構多いんですけど。でも、警官に殺される人は1年間に1000人超えてますから。ケタ違いなんですよ。それで爆発したという形なので。まあ黒人が特に殺される率が白人に比べて2.5倍ぐらい多いことは多いんですけれども。

ただ、警察官の暴力というのは非常に大きな問題となっていて、それが全都市で広がっていたというのがあります。で、その原因というのは2001年の9.11テロからですね、当時はブッシュ政権だったんですけど、アメリカン政府が警察の武器をすごく増強したんですよ。ものすごく重武装化していったんですよ。国内のテロに備えて。で、すごく警察官全員が過激に軍事化していったという事情があります。

で、すごく普通の人たちと警官の人との対立が非常に進んでいたというのが背景にあるんですよね。もうひとつはですね、コロナのことがありますね。大きいのは。3ヶ月間、みんな外へ出れずに……。

(外山惠理)ああー、たしかにね、それでちょっと鬱憤がたまっちゃうっていうのは……。

(町山智浩)そう。パーティーもできないでしょう? スポーツ全部中止でやっていないから、見るものがないんですよ。まあテレビゲームぐらいしかなくて。しかも収入はどんどんどんどん減っていくんですよ、みんな。収入が減っていくというか、収入がゼロになって貯金が減っていくわけですよ。それで払わなくちゃいけない家賃もたまっていくんですよ。これはかなり精神的に限界に達していた人たちが多いですよね。で、いろんな悪い条件が重なってこういう事態になったんだと思います。あと、やっぱりトランプ大統領が事態を収拾しようとしなかったというのもひとつ、大きくて。

最初はミネアポリスだけのことだったんですよ。そこで事態を収拾していけばよかったんですけど、トランプ大統領はこれに対してTwitterで「こういうことが起こって略奪などに発展したら、ぶち殺せ!」って言っちゃったんですよね。で、そいつらは「THUG」だっていう……これ、「黒人のチンピラ」みたいな意味なんですよ。だからもうそういう言葉を使って、非常に……本来なら事態を収拾しなくてはならなくて。

特にその時は犯人の警察官がまだ捕まっていない状態だったから、メッセージとしてはトランプ大統領はちゃんとした記者会見を開いて。「この事件に関しては、ミネアポリス警察がちゃんとした正義を執行することを望むのでちゃんと調査をしてほしい。怒っている黒人の人たちも私がちゃんと監視をして、この事件に関して解決するから落ち着いてください」というメッセージを出すべきだったんですけど、記者会見すらしないでTwitterで「黒人をぶっ殺せ」ってやっちゃったんですよ。

(外山惠理)嘘みたい……。

波紋を呼ぶトランプ大統領のツイート

(町山智浩)信じられないんですよ。これに関しては、あまりにもひどいツイートだったので、Twitter本社がそのツイートがあまりにも暴力的だからという理由で検閲というか、警告文で隠したんですよ。そのぐらい、危険なツイートだったんですよ。本来はそんなこと、できないんですよ。でも、Twitter社はそれをすることにしたんですよ。

(山里亮太)なるほど。あまりにも……っていうことで。

(外山惠理)大統領ですもんね。

(町山智浩)大統領が要するに「Shooting」っていう……「射殺」っていうことを言ってきたので。それはTwitter本社として「これは危険だ」っていうことで隠したんですよ。そういうことをやってトランプ大統領は煽ってしまったんですよ。で、先週の金曜日にトランプ大統領に煽られた状態でアメリカ全土でこの黒人に対する警官の暴力へのデモが始まったんですけど。僕、家の近くのオークランドの警察のところでそれがあるので、普通に行ってきたんですけども。最初はですね、非常にみんな自分たちの主張をはっきりとプラカードとかシュプレヒコールで言って。「黒人の人権を守ってください」って言っていたんですけども。警察がですね、その時に強行突破して潰しにかかったんですよ。

(外山惠理)えっ? そこのデモは言葉を掲げているだけだったのにっていうことですか?

(町山智浩)そうなんです。

(外山惠理)静かにデモしてたってことですよね?

(町山智浩)静かじゃないですけども。だからずっと訴えてるだけで。物を破壊したりとかはしていなかったんですけれども。

(外山惠理)暴動という感じではなくて。

(町山智浩)全然暴動じゃないですよ。だからそこの現場を僕、ビデオで撮ってますけど。完全に警官側の一方的な……スタングレネードっていう衝撃手榴弾を乱射して催涙ガスを撃ち込んでガーッとそこで突破しているんですよ。それでブワーッと散った人たちがいるんですけども。その人たちは基本的にはね、自分たちの主張を訴えて、警察に対してちゃんとした形の行動を求める人たちなんですね。その人たちのことを「プロテスター(Protester)」っていうですよ。Protestするから。

(外山惠理)うんうん。

(町山智浩)ただ、そこに関係ない人たちも集まっていて。メッセージのない人たちですね。その人たちは「Looter(略奪者)」っていうんですけども。その人たちはね、警察署に行かないで、お店に行っちゃったんですね。

(山里亮太)ああ、その映像もニュースとかでこっちに届いています。

(町山智浩)そう。あれを見るとね、白人の人がかなり多いんですけど。だからやっぱり失業してる人も相当多いと思いますよ。その人たちは別に黒人の人権は関係ない人たちだから。騒ぎに乗じて欲しいものを取りに行った人たちですよ。

(外山惠理)そういう便乗しちゃっている人たちもいるってことなんですね。

(町山智浩)います。それはね、見ただけですぐ分かります。

(外山惠理)ああ、分かるんですか!

(町山智浩)分かります。だからまず、来るところが警察署に来ている人はみんな、プラカードを掲げて自分たちの主張を言ってるんですね。でも略奪に来る人はまず、プラカードを持ってないですから。

(外山惠理)そうか! 分かりやすいですね。

抗議者と略奪者の見分け方

(町山智浩)そう。それで警察署には来ないですから。警察署には何も高いものを置いてないから。彼らはまっすぐ泥棒に行くんですよ。そういう人たちも出てきてしまった。あと、もうひとつはただ単に破壊する人たちっていうのもいるんですよ。3つ目なんですけど。その人たちはね、「アナキスト(Anarchist)」って言われてる全身黒ずくめの人たちで。この人たちはね、銀行とかあとは世界的な企業のスターバックスとか、あと連邦政府ビルとかを狙う無政府主義者なんですよ。彼らはただ、壊すだけなんです。

(外山惠理)壊すだけ?

(町山智浩)壊すだけ。そういう人たちが入り乱れているんだけど、日本だと「暴動が起きた。じゃあ、黒人が起こしているんだ」みたいな感じで全部一緒くたに考えちゃうんですけど、実は全部バラバラなんですよ。全部バラバラの人たちが来てやってるんで、それはその日本から見えてこない点だと思うんですけど。で、結局トランプ大統領のすぐ近くまでデモ隊が迫ってですね、ホワイトハウスの地下シェルターにトランプ大統領は逃げ込んだんですよね。

(町山智浩)それで翌日っていうか、今日の朝にですね、全米のその州知事たちに一斉に電話して。全員が会話できる電話でね。それで、こう言ったんですよ。「お前らは弱虫どもだ。なぜ軍隊を使って徹底的に制圧しないんだ? あのデモ隊のやつら、10年ぐらい刑務所にぶち込んでやれ」って言ったんですよ。自分は地下シェルターにいたのにね。で、それに対してイリノイ州のプリツカー州知事が反論しているんですよ。これ、トランプ大統領の音声が流出してしまったんです。

(外山惠理)漏れちゃったということですか?

(町山智浩)流出したんです。「大統領、今あなたが言ってることは事態を悪化させるだけです。今、大統領に必要なのは国民をなだめることです。そしてその平和的なプロテスターの意見もちゃんと聞くという姿勢をはっきり見せてください」って言ったんですよ。そしたらトランプ大統領が「ああ? そんなこと知ったことじゃねえな」っていうね……。

(外山惠理)なんなの? 大統領……本当にトランプさんの声なんですか?

たまむすび
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