プチ鹿島さんが2020年5月12日放送のYBS『キックス』の中でTwitter上で広がった「#検察庁法改正案に抗議します」運動について報じる新聞記事を読み比べながら話していました。
(プチ鹿島)そんな中、相変わらずコロナ関連のニュース一色なんですが。今日の朝刊を改めて読んでみますと、ちょっと他のコロナ以外の……まあ、これもある種、コロナ関連なんですが。そういう紙面が目立ちました。たとえば毎日新聞。「恣意的人事に懸念 SNSで抗議400万件 検察庁法改正案」っていう。これ、ちょっと頭に入れておいてください。
クローズアップ:検察庁法改正案 恣意的人事に懸念 SNSで抗議400万件 – 毎日新聞 https://t.co/o0uKgpcN6q
— 安東量子 (@ando_ryoko) May 11, 2020
読売新聞も4面に毎日新聞ほどではなく小さな記事なんですけども。でも「Twitterで抗議拡大 火事場泥棒」っていう。「火事場泥棒」なんて強烈な言葉ですよね。なかなか聞かない言葉ですよね。
国会論戦に取り上げられては、読売も無視できなくなったか。
記事は経緯を伝えるだけだが、見出しに「」付きとは言え「火事場泥棒」が入っていて、ちょとビックリ。検察「定年延長」 野党が攻勢…ツイッターで抗議拡大 「火事場泥棒」https://t.co/L3sF1XjTlg pic.twitter.com/d1xFYlgSew
— ナナシ=ロボ (@robo7c7c) May 11, 2020
(海野紀恵)そうですよね。
(プチ鹿島)で、朝日新聞を見ると今度は一面トップなんですよね。「検察庁法改正案 抗議ツイート急拡大」「首相 今国会成立の構え」ということで。
#検察庁法改正に抗議します
今日の主要六紙の一面。
検察庁法改正案の問題を報じたのが、朝日・東京・毎日。
自民党は反対の世論が高まると、採決を急ぐ傾向が強まる。決めてしまえば諦めると思っているからだ。それを大きく超える反対の世論を作りたい。 pic.twitter.com/upG4pKerRP— 肉球新党「猫の生活が第一」 (@cat_pad299) May 12, 2020
それで朝日新聞は予告みたいな感じ二面で「火事場泥棒 後付け」っていう。またここでも「火事場泥棒」って出ちゃっている。それで三面。「問題点はなにか」。四面。「与野党の論戦を詳しく伝える」。12面は社説という。で、25面。「芸能人も動いた」ということで。まあ結構このニュースを報じているということなんですよね。まあこれ、どういうことかというと、実は産経新聞なんかも……私は「産経師匠」と呼んでいるんですけども、産経師匠も2月24日の社説で「検事長の定年延長 『解釈変更』根拠の説明を」というタイトルで「あまりに不自然である。黒川氏の定年延長ありきで恣意的に法解釈を変更したと疑われても仕方があるまい」っていう。産経師匠もこう書いているわけですよ。
【主張】検事長の定年延長 「解釈変更」根拠の説明を
2月24日産経新聞https://t.co/59snjSrkc2
— プチ鹿島 (@pkashima) May 11, 2020
(海野紀恵)そうですね。
(プチ鹿島)「あまりにも不自然だ」っていう。じゃあ、ちょっとこれを整理しますよ。本来のルールでしたら、今年の2月8日にですね、63歳の誕生日を迎えた黒川弘務東京高検検事長……まあ、検察のナンバー2ですよね。その方が定年で退官をするはずだった。これがルールなんですよ。63歳で定年で退官っていうのが。ところが安倍内閣は今年1月31日の閣議決定で黒川さんの定年延長を決めたんですね。そこからこの騒動がすべて始まってるわけですよ。だから言ってみれば、ここ数年。近年、これほど誕生日が注目されたおっさんはいないわけですよね。
(海野紀恵)フフフ、そうですね(笑)。
(プチ鹿島)そう思いませんでした? 「なに、このおっさんの誕生日?」って。このツイートでもありましたよ。私、今日をコラム書いたんですが。「元カレの誕生日も忘れたのに、なんでこのおじさんの誕生日だけ頭に入っちゃったんだ?」みたいなね。2月8日で63歳っていう。ねえ。だからこれを延長したわけですよ。「なぜか?」って気になりますよね。
(海野紀恵)そうですね。
(プチ鹿島)これはこの火曜キックスでは散々をお伝えしてきたんですが、2月21日の読売新聞が解説を書いていたわけです。2月21日ですよ。もう3ヶ月ほど前。
(海野紀恵)そうですね。
(プチ鹿島)政府関係者によると次期検事総長……だから黒川さんは今、ナンバー2ですけども。現在、ナンバー1で稲田さんという肩がいらっしゃるんですよね。「次期検事総長の人選は昨年末から官邸と法務省との間で水面下で進められた。法務省から複数の候補者が提案されたが、安倍首相と菅官房長官は『黒川氏が望ましい』と意向を示した」という。だからよくね、「黒川さんは政権に近いとされる」という報道の仕方がありますが、「近いとされる」ではなくて「近い」んですよ。もう小池百合子さんが言うところの「密」なんですね。密な関係なんですよ。
「安倍首相と菅官房長官は黒川氏が望ましいとの意向を示した」
《政府関係者によると、次期検事総長の人選は、昨年末から官邸法務省との間で水面下で進められた。同省から複数の候補者が提案されたが、安倍首相と菅官房長官は黒川氏が望ましいとの意向を示したという。》
答えが書いてあったよ。
読売新聞オンライン https://t.co/LTiRwjC2Dc
— プチ鹿島 (@pkashima) February 21, 2020
(海野紀恵)なるほど。
(プチ鹿島)だから、まあ近い人で……もっと言うと、菅さんが官邸を回してるので。そういう時に実務的に今までずっと一緒に政権と歩んできた黒川さんがいいということで、その黒川さんの定年延長をしたんじゃないか?っていうね。だから、閣議決定ですよね。で、ここからなんです。今、いろいろ話題、騒動になってますが。この1月31日の閣議決定というものを覚えておいてください。これがあったから、じゃあたとえば「この閣議決定はおかしいんじゃないか? 今までのやり方じゃなくてなぜ、黒川さんのありきで進めるんだ?」という風な批判をされると、その後に「解釈変更」っていうのをするわけですよ。
「解釈変更をしたんだ」っていう。ただ、この解釈変更したということになると、「でもそれはその昭和50何年に言っていたことと違うじゃないか?」っていう風に国会で野党に突っ込まれて、炎上をしたわけですよ。そうすると今度は後付けで、法律そのものを変えようとしている。これが今の検察庁法改正案なんですよね。で、それを頭に入れておくと、今までのやり方……この法案の束ねて進めるという手法への疑問というのもありますけども。法案の出し方も今回、疑問を呈されてるんですね。
たとえば国家公務員の定年を65歳に引き上げる国家公務員法改正案などと今回、検察庁法改正案というものを一緒に混ぜちゃっているわけですよ。だから「国家公務員の定年を65歳に引き上げるっていうのは、まあこれはこれで論議をしようよ。それについては賛成だよ」という案はあるわけですよ。ところが、複数の法案を一緒に束ねちゃったおかげで、一本化にしたことで内閣委員会の所管になるたことで今回、この定年延長について答弁してきた森法務大臣が矢面に立つ法務委員会という場では審議されなくなった。だから森大臣が審議に出てこれないようにしたわけですよね。
で、実はこの「法案を束ねる」という手法は今までこの政権がずっとやってきた方法で、今日の記事もいろいろ書いてありますが。安保関連法とか、働き方改革関連法とか、世論の批判が強い法案で束ねたことがある。これは朝日が指摘をしていますけども。相変わらず、その手法を出してきているわけですよね。で、僕は今回これ、検察人事とかの専門的な話じゃなくて、やっぱりこれは今までの安倍政権がやってきた「手法」というのが全部ここに集約されてるんじゃないかと思うわけですよ。たとえば「解釈」。こういう解釈をしましたっていうのは今の安保法制でもありましたし、NHK人事とかでもありましたよね。お友達優遇。モリカケ、桜を見る会でもあらわになった「公私混同」ですよね。
で、これは日刊スポーツの2月24日が書いてるんですが「官邸の意向に合わせてつじつま合わせに走る大臣や役所」という。「官邸がこう言ったから、それをフォローするために今、あたふた動き回っている」っていう。これ、まさしく「忖度」ですよね。これ、ずっとここ数年、言われてきた。だから今回のこの検察庁法改正案、黒川さんの定年延長問題っていうのは、言ってみれば「姑息の集大成」なんですよね。それは僕はそう思う。
やっぱりこれが今、見えちゃってるわけですよ。だから今、批判のひとつとして「コロナで大変な今、国会でなんでわざわざこの審議をするんだ!」って怒ってる人、いるじゃないですか。でも僕に言わせれば、それは姑息だから当然やってくるわなっていう。ステイホームの中、ただそれが見えちゃったっていうことですよね。
なぜ、この人事がそんなに大事なのか?
で、もうひとつ大事なことを言うとですね、じゃあなんでこの人事がそんなに大事なんだ?っていうことで。これはNHKのニュースのウェブの記事からご紹介しますと……「1人の公務員の定年延長がなんでここまで議論を呼ぶのか? 背景には検察庁の職務や組織の特殊性がある。検察というのは捜査や公判を通じて権力の不正をチェックする役割を担っているため、当然政治から独立性や中立性が求められる」という。「準司法機関である検察だけに認められているのが被告を起訴して裁判にかける権限。過去、ロッキード事件とかリクルート事件とか、政権の中枢に切り込む汚職事件も手がけてきた」という。
「一方、検察庁は法務省に属する行政機関でもある。このため、一般の検事の任命権は法務大臣が、検事総長のほか全国に8か所ある高等検察庁のトップ検事長などの任命権は内閣が持っていますが、実際には(独立が求められるため)検察側が作成し、総長の了承を得た人事案を大臣や内閣が追認することが『慣例』とされてきた」という。これが今までの「慣例」となってきていたわけですよ。
ところが、今回は定年延長を閣議決定をして、内閣の方から……って言うことになっている。じゃあ、これでなにが問題なのか? このNHKの記事で元検事の高井さんという方が「検事は定年が来れば必ず退官する。つまり政権は人事を通じて検察にアメもムチも与えることができず『定年制』こそが政権からの介入を防ぐ『防波堤』の1つになっていた。今回のいちばん大きな問題は政治がこの『防波堤』を勝手に動かしてしまったことだ」という風におっしゃっているんですね。
揺らぐ“検察への信頼”~検事長定年延長が問うもの~ | NHKニュース https://t.co/FQvBNMCipb
— 神戸映画資料館 (@kobeplanet) May 9, 2020
で、黒川さんのことも言っておきますし、検察のこともちゃんと言っておきますけども。今日の朝日の記事にも若手検事の声が載っていまして。「(トップの)総長が誰になろうとも、現場にはあまり関係がない」という。だっていろいろ資料を集めてきて「これ」って突きつけるのは検事の役割だからあまりは関係ないという。で、黒川さんをよく知る検察幹部の言葉も載ってるんですよ。「能力的に適任だ。官邸の意向で事件を潰したことは全くない」ということで、黒川さんを擁護してるわけですよね。
ただ、「こういう閣議決定とか人事をやってると、政権と近いとみられている人物が総長になれば検察が公正とは見られなくなってしまう」。つまり、疑われてしまうということですよね。「痛くもない腹を探られてしまう。立件が見送られた場合など、疑念を持たれる懸念が出てくる。ただ単に結果的に証拠が足りなくて不起訴にしたのにもかかわらず、国民の側からすると『証拠があるのになんか政権と近いから不起訴にしたんじゃない?』という風に想う場合がある」っていう。これは高井さんが昨日、『ニュース23』でおっしゃっていましたね。