対馬芳昭 音楽関係者たちへの自己資金2000万円寄付を語る

対馬芳昭 音楽関係者たちへの自己資金2000万円寄付を語る INSIDE OUT

(対馬芳昭)そうですね。まず、noteっていうサイトに全文があるんですけど。そこにもいろいろと僕の思いと、それから具体的にどんなことをするのかとか、どういう風に皆さんに分配、支援をするのかみたいなことも書いていって。基本的にはこの12、13年の中で本当にタダだ同然で手伝ってくれたアーティストがいっぱいいて。そういう人が今、困っているっていうところで、どうしてもやっぱりそういう人たちから……僕の個人資金だからこそ、僕自身のそのバイアスで配っていこうというのがあって。なかなかその見ず知らずの人までは難しいなとは思ってたんですね。

(DJ YANATAKE)まあまあ、もちろんそうですよね。

(対馬芳昭)ただ、すごい長い文章だったんで全部読み切れないと思いますし。可能性として、「全然知らないですけど、面識もないですけど、どうにかなんないですか?」っていうのがもう数百件、メールがバーッと来て。

(DJ YANATAKE)ああ、やっぱりでも、そうですよ。うんうん。

(対馬芳昭)そうですね。結構追いきれなかったんですけど。ただ、どんな音楽をやってたのかとか、そういう履歴とかを全部送ってくれっていうのを話したら、結構返してくれる人もいて。中には返ってこない人ももちろんいるんですけど。まあそういう人は正直僕も本当に音楽をやってたのか、どんな活動歴があるのかとか分からないので、今のところちょっとどうしようもできない状態なんですけど。ある程度、活動歴が見えた人とか、そういう人に関しては本当に少額ですけど、そういう方にもできる限りは今、分配するようにはしてますね。

(DJ YANATAKE)うわー、そうなんですね。まあご自身のね、自己資金なんでジャッジもご自身になるとは思うんですけども。でも、正直すごい難しくないですか? なんか、その話が本当なのかな、とか。

(対馬芳昭)はいはいはいはい。そうですね(笑)。

(DJ YANATAKE)なんて言うんだろうな? もちろん……人を疑うためにやってるわけじゃないし。すごい難しいなと思って。

(対馬芳昭)そうですね。まあこれも本当にSNSとかだと「そんなものを発表しないで勝手にやればいい」とか、「本当にやるんですか?」とか、そういうネガティブなものもいっぱい来るのはたしかに来るんですね。ただ、僕はそれも含めて今、必要なことだと思っていて。要するに、これからお金がどんどん価値が変わっていく中で、じゃあみんな、それぞれで抱え込んでいくのか、それかもうここまで来ちゃったらその平均を取っていかなきゃいけないというか。

今までのものをある種、なかったことにしなきゃいけない部分もどうしても出てきちゃうと思うんですよね。だからある種、プラスもマイナスも含めて今、SNS上ぐらいでしかできないですけど、かき回していかないと。みんなの意識みたいなものが……まあ、きっかけになってくれればいいなっていう風には思っていて。だから本当にネガティブなものもあえて、SNSでは拾うようにしていて。という感じですかね。今は。

(DJ YANATAKE)そうか。なんかね、自ら……もちろんいいことなんだけども、自らその茨の道を歩かなくてはいけない瞬間があるっていうか。それでも、それをやることに意味があるっていう風に思われたってことですよね?

(対馬芳昭)僕個人としてはこれを今、やらないとちょっとダメだと思っていて。結局、その音楽って普段僕らも……たとえば僕はnoteにボブ・マーリーの「One Love」という言葉を出したんですけども。

(DJ YANATAKE)今、対馬さんには聞こえてないんですけど、実はBGMで『One Love』をずっとかけているんですよ(笑)。

『One Love』

(対馬芳昭)ああ、本当ですか? 嬉しいです(笑)。そうなんですよ。「One Love」とか「Unitiy」って音楽でよく使う言葉じゃないですか。それをね、生業にして。その「One Love」なんだよっていうことを商売にしている人間がここで逃げてしまったら、説得力ゼロになっちゃうと思うんですよ。で、やっぱりその医療とかの方がね、今すごい最前線で病気と闘ってたり。

あとは食べ物とかもお腹を満たしたりとかできるんですけど、僕らはそういう……逆に言うと「One Love」しかできないというか。だから、そのひとつにまとまっていくとか、音楽……要は娯楽なんで。だからそれを楽しむ時間っていうのが今、家にいる時間としては大事だし。やれることを何かひとつでもやらなきゃなと思った時に、僕ができるのはこれかな?っていう判断だったんですよね。

(DJ YANATAKE)なるほど。それでですね、じゃあ実際に今回の件でどういう事例があったのか?っていうのも言える範囲で……相手の方も匿名で構わないんですが。なんか融資した先にはこういうところがあったとか、たとえばこういうことがあったとか。もし、そういう話で聞けるものがあれば、教えていただきたいなと思うんですけども。

(対馬芳昭)そうですね。今、一連の流れを話していると、ミュージシャンとかアーティストが多いんじゃないか?っていうイメージがたぶんあると思うんですけど。それで僕も実際、そういう書き方はしてたんですけど。ただ、実は「音楽関係者に向けて」っていう風にしていて。たとえば、僕らがいつも出てる本当に大きいフェス。誰でも知ってるようなフェスのステージで舞台監督をやっていてた方とか。そういうこう裏方の人ですよね。ライブのエンジニアさんとか。

(DJ YANATAKE)いや、本当ですよね。今、仕事が全部ないだろうしな。

(対馬芳昭)そうなんですよ。結局、エンジニアさんなんてまさに現場に行ってナンボなので。現場がなしって言われちゃうと、もうどうしようもないんですよね。何もできないっていう。

(DJ YANATAKE)僕も知り合いですごい有名なVJの方がいらっしゃって。それで売れっ子ほど大きい会場でやるじゃないですか。だけど大きい会場からどんどんイベントが中止になっていったじゃないですか。だからいち早く、その大きい会場でやっていた裏方さんみたいな人とかが、もういきなり「2ヶ月、仕事が全部飛んじゃったわ」とか言ってて。それがたぶんまだ続いているし。まあ、もちろん小さいところも今、閉まってるんですけども。やっぱり大きいところの人たちの仕事がバーッとなくなるのが早かったなと思って。

(対馬芳昭)そうなんですよね。それで結局、お店とかライブハウスとかそういうフリーでやっていらっしゃる現場の方って、構造的にはすごくシンプルで。たとえばお店とかもそうですよね。食べ物を1年分仕入れて一気に売るとかじゃなくて、仕入れて売って、仕入れて売って……の繰り返しじゃないですか。それでたとえば僕ら、レーベルをやってると何ヶ月かかけてレコーディングをして。

それをリリースしてヒットすると2年、3年ずっとお金が回っていくみたいなヒット曲とかあるじゃないですか。でも、現場の方ってそういうのはないんですよね。システムが違うんで。結局毎日現場に行って、それをずっと繰り返していくという、そういう業務形態なんで。それが止められちゃったってことになると、やっぱり本当にいつか終わりは来る中で、結局そのクラスターの発信源というか象徴みたいな形で最初に「ライブハウス」っていうのが出ちゃったんで。

(DJ YANATAKE)ねえ。あれも本当に……。

いち早く自粛を強いられた業界

(対馬芳昭)そうなんですよ。まあそれは本当に条件が揃ってたし、仕方がないことなんですけど。ただ、やっぱりいち早く自粛を強いられた業界で。それで今でもなんとなくまだ、フワッとやっている業界もあると言えばあるじゃないですか。異業種の方々も。別にそれは悪く言うつもりは全くないんですけど。ただ、僕らがああいう風になった時に、じゃあそのお客さんの命を軽視してでもやるのか?ってなった時に、やっぱりもう99%というかほとんどの音楽関係者がストップをしたんですよね。

で、それはすごい勇気のある決断だったと僕は思っていて。それなのに補償がないっていう状況がずっと続いて。国に「補償してほしい」って言うと、「音楽ばっかり」とか「娯楽は……」とかってまた言われて、みたいな感じで。いや、僕らは娯楽じゃなくて仕事でやってる側なんで。楽しむ側が娯楽であって。僕は仕事なので。仕事って、内容は関係ないじゃないですか。一生懸命、人に奉仕する仕事なので。その「音楽は後回し」っていう言葉も僕はすごく嫌だったので。

だからこそ、じゃあ自分たちの中からそうやって助けていこうっていうのがより、人に注目されるべきだと思って。まあ「売名行為」って言われても構わないし。そう。やっぱり「じゃあ僕ら、自分で身内で助けるよ」っていうのを見せたかったっていうのがあって。やっぱり僕からするとライブハウスの人が一番不憫で。そういうのが多かったですかね。

(DJ YANATAKE)そうですね。いや、おっしゃる通りでございます。ちょっと、だいぶ時間もたってきたので、1曲ね、せっかく出演していただいてるで。なにかorigami PRODUCTIONS関連の曲も休憩がてらはさみながら、みんなに番組を楽しんでもらいたいと思いますので。それで次の議題に行きたいと思いますので。なにか1曲、行きたいなと思いますので。何にしましょうか?

(対馬芳昭)じゃあ、関口シンゴの曲を。

(DJ YANATAKE)はい。関口さんはどういうアーティストなんですか?

(対馬芳昭)Ovallっていうバンドのギタリストなんですけど。ソロで今回、リリースしたんですけど。これはいわゆる最近よく言われるLo-Fiヒップホップというカテゴリーに入るんですけど。

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(DJ YANATAKE)はい。

(対馬芳昭)コロナの前の話なんですけどね、オーストラリアの火事があったじゃないですか。

(DJ YANATAKE)あのずっと長い間鎮火しなかったやつですよね?

(対馬芳昭)そうです。あれに対して僕ら、ドネーションしようっていうのでアルバムを出したんですよ。そこの中の1曲なんですけど、それがこんなことになって、自分たちも大変なことにはなってるんですけど。でもそこに対するドネーションの楽曲ですね。

(DJ YANATAKE)もうずっとなんかそういうことやっていらっしゃるプロダクション、レーベルっていうことですね。

(対馬芳昭)そうですね、比較的やってるかもしれないですね。

(DJ YANATAKE)じゃあ改めて曲紹介をお願いします。

(対馬芳昭)関口シンゴで『North Wing』という曲を聞いてください。

関口シンゴ『North Wing』

(DJ YANATAKE)お送りしましたのはorigami PRODUCTIONS、関口シンゴさんで『North Wing』でございました。対馬さん、というわけでLo-Fiヒップホップ、たしかに今、結構流行ってますよね。

(対馬芳昭)そうですね。なんか巡って巡ってきたみたいな感じですよね。

(DJ YANATAKE)YouTubeチャンネルとか、すごい盛り上がってるの、ありますよね。ありがとうございます。本日はorigami PRODUCTIONSの対馬さんをお迎えして『INSIDE OUT』をお送りしています。先ほどから2000万円の音楽支援の融資の話をいろいろ聞かせていただいているんですけれども。「実際に融資してみてよかったな」みたいなのはどういうものがありますか? 言える範囲で……。

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