プチ鹿島 新型コロナウイルスで見えた自民党内の人間関係の変化を語る

プチ鹿島 新型コロナウイルスで見えた自民党内の人間関係の変化を語る YBSキックス

プチ鹿島さんが2020年4月21日放送のYBS『キックス』の中で新型コロナウイルス感染拡大の影響で見えてきた自民党内の人間関係の変化について話していました。

(プチ鹿島)さあ、こんな状況ですけども、ちょっと人間関係から見てみるっていうのもね。やってみようかなと思って。私の大好きな野次馬方面、下世話方面から政治を見てみようと思うんですが。今日の日経新聞なんかですね。もう大好物の見出しが出てましたよ。「危機管理対応、変化の兆し 菅氏の関与、見えにくく」っていう。菅官房長官が政権の危機管理の対応……今まで安倍さんと一緒にやってたものが、あんまり関与した気配が見られないというのを日経新聞が書いてあるわけですね。

実はこれ、先週だと他の新聞もいろいろ書いてましてですね。これ、朝日新聞なんか4月18日。「危機管理、菅氏蚊帳の外」っていう。「蚊帳の外」っていうのはだいたい新聞でこういう時にしか使いませんけどね。日常生活で「蚊帳の外」って使いませんけど。「政権支える力学、変容か」ということで。まあ今回のコロナ対応ですよね。「従来、政権の危機管理というのは菅官房長官。あと杉田官房副長官が政官の双方から担ってきた」っていう風に書いてあるんですね。

ところが、2月にほら、安倍さんが全国一斉の休校要請を決断した時がありましたでしょう? あの時は、首相の側近である首相補佐官が中心となっていて。それで実際、休校……学校の案件だったのに、萩生田さん。文部科学大臣でしょう? それからその杉田さんが蚊帳の外に置かれた。菅さんの直前にどうやら知ったらしいっていうんですよね。

蚊帳の外の菅官房長官

(海野紀恵)うん。

(プチ鹿島)じゃあこれ、どういう変化があったんだろうな?って見てみると、皆さん思い出してください。ちょうど1年前……皆さん、1年前の今頃、何に注目しました? やっぱり平成から令和になるっていうね。4月1日に菅さんが新元号の令和を発表して。「令和おじさん」って言われて。それで5月1日に元号が変わりました。あれでやっぱりちょっと菅さんの人気が高まってね。「令和おじさん、令和おじさん」なんてね。その後、秋に内閣改造がありましてね。菅原一秀さんとか、河井克行さんとか。あれ、全部菅さん周りの、菅さんの影響力が強い人が内閣に入ったんですけど……結構すぐにスキャンダルが出ましたよね?

(海野紀恵)そうでしたね。

(プチ鹿島)だからやっぱり戦国絵巻じゃないですけど。そもそもだって河井克行さんの奥様、河井案里さんなんてね、ど素人だったのが去年行われた参院選、広島の選挙区で担がれて。あれ、なぜか?って言ったら菅さんとかに近いから官邸が担いだ案件なんですよね。元々、広島には溝手さんっていう自民党の方がいるんですよ。だから表向きには「溝手さんだけじゃなく、もうひとつ議席を取るんだ!」っていう。まあまあ党としてはイケイケなんですけど、実はこれ、過去の因縁を洗ってみると溝手さんっていう人が安倍さんのことを強烈に批判していた人で。

それどうやらこれがちょっと……むしろ「2人、当選すればいい」っていうことではなくて、河井案里さんは実は刺客だったんじゃないか?っていうのでね。だから選挙のお金も1億5000万と、すごくふんだんに投入して。だからこそ河井さん、今またそれがいろいろと裏目に出てるじゃないですか。逆に言えばそこまでは菅さんはイケイケだったんですが、秋以降からどんどんと裏目になっている。それでもっと言えば、やっぱり権力者……安倍さんからすれば面白くないですよね。やっぱりね。だって自分の任期はまだあるわけですから。だからそこでちょっと隙間風が吹いたんじゃないか?っていうのはもう政局のオヤジジャーナルが得意とする見方で。

でもやっぱり、こういう朝刊紙が改めて、「コロナでやっぱり変わったんだ」っていう風に書かれてくると、本当にそうなのかなと。それで実際二階さん、じゃあ具体的にコロナの何が変わったかっていうのは危機管理の面でもそうなんですけども。あの「1人あたり現金10万円を一律で給付」っていうのも、最初に出たのは「一世帯で30万円」っていう。でも、それが給付の条件がややこしいっていうので、また「一律10万円」というのに変わりましたよね。それをやっぱり人間同士の関係から見てみると、これもやはり、あえてこういう言い方するんですが、「面白い」んですよ。

人間関係から見た「10万円一律給付」

だってあれ、最初を思い出してくださいよ。「30万円」になったのは元々の20万円に10万円をプラスしたっていう……あれ、岸田さんなんですよね。「岸田さんが30万円ということで安倍さんと決着をつけた」っていうことで。当時、書かれた記事からすると、「ポスト安倍として、安倍さんは岸田さんに期待をしている。だから岸田さんに花を持たせたんだ」という記事が多くなっていた。

ところがその30万……やっぱり「一世帯あたり」とか、あとは「受給の条件がすごくややこしくて難しくて、多くの人に給付金が行かないじゃないか」という批判が殺到しましたよね? それで面白いのが、二階さんが言い出したんですよ。先週ね。二階さん、何であれを突然言い出したか?っていうのは記事を洗っていくと、本当は「北朝鮮の飛翔体が飛んだことに対して記者を集めてコメントする」っていうのが、それがいつの間にか「一律10万円の方がいいんじゃないか?」っていう話を言い出したんですよ。それが「所得制限付きで……」っていう。そしたら、もう皆さんもご存知だと思いますが、翌日ですよ。

公明党の山口代表が「いや、ちょっと待て。一律10万円、しかも所得制限なしでいこうよ」っていうので、一気にその流れになりましたよね? だから公明党としてはずっと前から言ってたわけですよ。だけど岸田さんに花を持たせる形で「一世帯あたり30万」っていうので決着をしたんでで黙っていた。まあ、我慢してたんでしょね。ところが、二階さんが言い出したから、「いやいやいや、二階さんが言い出したけど、それはもともとうちの案だし……」っていう。それで「二階さんが『所得制限あり』と言うのだったら、うちは元々言っていた所得制限なし……つまり国民全員に」っていう。そういうのをもうやるんだ!っていうのでアピールし始めたんですが。

これが……興味深い、味わいがあるなと思うのが、二階さんの思惑ですよね。自民党の若手からもそういう案が出てたから、そのガス抜きとして二階さんは「10万円にした方がいいんじゃないか?」っていう。たとえば「30万円、一世帯あたり配った後にさらに10万円を……」とか、そういう含みもあったと思うんですが。「10万円をですね……ただ、所得制限はあります」みたいなことを観測気球で上げたんですよ。そしたら公明党が「いや、もう所得制限なしで全員に配りましょう!」って。これ、結果的に公明党の山口さんとかは二階さんに背中を押されたわけですね。

新聞報道を読み比べてみると、「いやいや、ちょっと待ってよ、二階さん!」っていうので公明党が言い出したってことになると、これは二階さんのタヌキぶりを考えるとね……政治家ってやっぱり貸し借りじゃないですか。あえて「所得制限あり。でも、一律で」っていう風に口火を切ってですね、それで公明党が乗ってくるのを実は期待していたんじゃないか? だからこれ、もっと深読みしすぎると、「公明党と二階さんで話ができていたんじゃないか?」っていう風に。まあ、そういうパターン1も考えられるけど。

僕はそうじゃなくて、実はもう二階さんから勝手にパスを出してきていて、そのパスを出せば公明党が乗ってくるんじゃないか?っていう。それで公明党に花を持たせて。それででも「ああ、二階さんが言ってくれたから。ありがとう!」って最終的に感謝されるっていうのも計算済みなんじゃないか?っていう。それで元はといえば、「岸田さん・安倍さんで決まったこの30万円っていうのは不評だから動くしかない」っていうのもあるし。それでもっと言うと、この二階さんっていうのは最近、菅さんと近いようなんですよね。

(海野紀恵)へー!

(プチ鹿島)だから岸田・安倍ラインにちょっと、党内のガス抜きのために一矢報いたっていう見方もできるし。そうなると今度、誰が恥をかいちゃうか?っていうと、当然また岸田さんですね。岸田さん、ひっくり返されちゃわけだから。なので今日の産経新聞なんかを見ると、やっぱり人間関係から記事にしてて。「ポスト安倍、コロナ浮沈」っていう。で、「岸田さんはメンツが潰れた。菅氏は菅氏で最近調整中心でかすむ姿だ」というので。こういう人間関係から見てみるのもね、よく「政局なんか下らないよ」なんて言う人もいるんですけど、少なくとも自民党も野党も人間がやってるものですから・人間関係の争いっていうのも見えてくると思うんですよね。

(海野紀恵)そうですよね。

(プチ鹿島)それで実際、安倍さんが首相補佐官とかと……まあ星野源さんの動画もそうですよね。布マスク2枚もそうですよね。あれ、やっぱりブレーンの方の「不安はパッと消えますから」っていう進言だけを聞いて……もし、本当はそこでもっと菅さんとかの意見を聞いていたら、違う案も出たかもしれないしっていう。そのもっと遠くで二階さんは党の方から見ていて、ちょっとしびれを切らして牽制球を投げたというのがこの今回の一件なのかもしれないし……っていうのも。いろいろとありますよね。

(海野紀恵)いやー、本当に面白いですよね。

安倍首相の立場で考えてみると……

(プチ鹿島)それでね、じゃあ安倍さんの気持ちになってみましょうよ。安倍さんからすると、もう7年間ですか。総理大臣をやってるわけですから。「強いか、弱いか」って言ったら「強いリーダー」ですよね。もう長期政権を築いているから。だから当然、もう自分の後のことも考える権利はあると自分では思ってると思うんですよ。「できるだけ影響力を残したい」っていう。じゃあ、皆さんも安倍さんになったつもりで想像してほしいんですけども。強いリーダーの後にその後釜は、強い人を推しますか?っていうことですよね。ちょっと自分がある程度、影響力を行使できる、フニャっとした人の方がよくないですか?

(海野紀恵)そうですね。

(プチ鹿島)だから「岸田さん」っていう。安倍さんと岸田さんってそもそも考え方は全然違うんですよ。宏池会とね、清和会ですから。だけど「岸田さん、岸田さん」っていう風に思っているらしいのは「岸田さんがトップになったら俺が総理を辞めても影響力を保てるかも?」っていう、そういう計算は当然、あると思うんですよ。ところがあんまりにもフニャフニャした人を立てすぎると、もう二階さんからすぐに牽制球が来たり、ひっくり返されて。また岸田さん、今回大恥をかいているわけですよ。それで今度、そうなるとじゃあ誰が得するか?っていうと、密かに虎視眈々と狙っている「強いリーダー」を装っている人ですよね。

たとえばそういう人、東京都あたりにいませんか? 東京都あたりに。いませんか? 最近、急にはしゃぎだしてきた人。あの人、今年の都知事選にも出ると思うんですが……僕は、わかんないと思いますよ。

(海野紀恵)おおっ、本当ですか。

虎視眈々と狙っている東京方面の人

(プチ鹿島)だから、来年どっちみち衆議院の解散総選挙があるわけでしょう? 都知事を1年ぐらいやって国政に復帰して。それで岸田さんがウロウロウロウロしているその間隙を突いて、仕掛けてくるんじゃないですか? それで、小池さんは二階さんとも仲がいいですからね。もう、こういう下世話なことを考えたらもうたまんないんですよ、私!

(海野紀恵)フフフ、でもたしかに小池さんってそういう空気を読んで、嗅ぎわけるっていうのが得意そうですよね。

(プチ鹿島)そこに菅さんが乗っかってきちゃったら、どうします? ねえ。だからあえてちょっと今日はそういう下世話な方面から見て考えたんですけど。だいたいでも、政局から見るのも僕、大事だと思うんですよ。だって同じ政策を言ってても、この人とこの人、どっちが信用できるのか?っていうのはやっぱり「人」じゃないですか。こういうコロナとか非常時、緊急時にこそ、政治の器とか器量とかも見れてしまうしね。どういう風に振る舞うかっていうのもね。やっぱり僕は人だと思ってて。ちょっとそういう人の流れから最近の読み比べをしてみました。ちょっと注目でございます。

<書き起こしおわり>

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