(佐藤満春)逆に言うとさ、よくここまでの仕事でさ、今のような情報量を1ミリも出さずにやってきたよね? こんだけ好きだったらはみ出そうなもんだけども。抑えていたね?
(若林正恭)フフフ、だって好きすぎて変な感じに……だから飲み屋とかで「日本語ラップで……」とかってしゃべってくる人とかいると、ちょっとイライラしてきちゃうから黙っているんだよね。「ああ、そうっすね」とか言って。
(佐藤満春)でもこのレベルで好きな人ってあんまりいないでしょう?
(若林正恭)まあ、いるにはいるけど。そうだね。「珍しい」とは言ってもらったかもしれない。
(佐藤満春)そうね。生き方に入り込んでいるっていう。じゃあ、ちょっとこのANARCHYさんの予備で入れていた曲(ANARCHY『Drama King feat.Tina』)も。
ANARCHY『Drama King feat.Tina』
(若林正恭)これはたぶんM-1の敗者復活する年ぐらいの、そのM-1の前とかにすっげー聞いていたんだよな。ANARCHYさんはやっぱりちょっとギャングスタっていうか、悪いイメージで。悪じゃなくて筋は通っているんだけど。で、自分自身は悪じゃないからそこはあんまり感情移入はできないじゃん。だけどこの曲は「なんかこういまいち上手くいかねえな」っていう曲なのよ。で、それがその時の自分とすごく合って。だからこれを舞台袖で聞いてから漫才、出て行ってたもんね(笑)。
(佐藤満春)怖いですね!(笑)。
(若林正恭)でも俺、ずっとケイダッシュステージ入ってからそうよ。ニトロとか楽屋で聞いて……。
(佐藤満春)そうね。よく聞いていたよね。
(若林正恭)で、みんななんかちょっとラバーソール履いてロックとかさ、ぺちゃんこのオールスターとか履いてロックの人って多いじゃん? 全然ヒップホップ好きな人、いなかったもんね。
(佐藤満春)いないよね。見なかった。
(若林正恭)だから1人で螺旋階段でニトロとかを聞いてから漫才をやっていたもん。
(佐藤満春)自分を奮い立たせて(笑)。
漫才前にANARCHYやNITROを聞く
(若林正恭)そうそう。これ、たしかANARCHYさん、聞いていたような気がするな。敗者復活の時とか。たぶんね。ちょっと時系列があれだけども。たしかそうだと思う。
(佐藤満春)自分の歴史に深く入り込んでいるね。そう考えたらね。刻まれているんだね。
(若林正恭)この曲はめちゃくちゃ好きだったね。
(佐藤満春)じゃあいろいろと思い出すんだね。
(若林正恭)いや、すっごい思い出す。この曲は。「一発行きたいけども、うーん……」って。そういう気持ちってエモーショナルじゃん。それをANARCHYさんがラップしてくれるから。で、ANARCHYさんのオーラってすごかったね。うん。
(佐藤満春)それってさ、いわゆるM-1があってさ、割と一旦その時は自分の願いを果たすわけじゃない? それで生活もできるようになるわけじゃない? 曲の印象って変わるの? 苦しい時に聞いていた曲って、どうなの? 後から聞くとまた印象が違うのか……。
(若林正恭)でも印象は変わらないで、その時に気持ちがもどるね。
(佐藤満春)ああ、そういうことか!
(若林正恭)だからムカついていた人とか、思い出しちゃうよね(笑)。金がないからさ。で、これはたしか「ベンチでやることもなくて、お金がなくて……」っていうようなリリックが入っていると思うんだよね。これ、聞いていたな。めちゃめちゃ聞いていたな、これ。
(佐藤満春)そういうところに重ね合わせてっていうことですね。
<書き起こしおわり>