奥田翔と渡辺志保 車関係のヒップホップスラングを語る

奥田翔と渡辺志保 車関係のヒップホップスラングを語る MUSIC GARAGE:ROOM 101

(奥田翔)そうですね。まあ日本でも車のことを愛称で呼んだりすることってあると思うんですけども。まあ、日本だと聞き慣れないような車の愛称みたいなのも英語でありまして。たとえば「Double R(ダブルR)」。

(渡辺志保)「ダブルR」?

(奥田翔)これ、「ローススロイス(Rolls-Royce)」のことだったりとか。で、「Double R」で調べたらドレイクの曲が3つぐらい出てきて。

(渡辺志保)フフフ、彼はね、「ローススロイスを乗り回しているんだぜ」みたいな?

(奥田翔)あとは「Chevy」。

(渡辺志保)ああ、よく聞きますね。

(奥田翔)これは「シボレー(Chevrolet)」ですね。あとはロイド・バンクスの有名な曲で『Beamer Benz Or Bentley』っていうのがありましたけども。

『Beamer Benz Or Bentley』

(渡辺志保)懐かしい! クラシックですね。めちゃ流行ったよね。世代だよね。みんなかけていたし。で、日本でもビートジャックがめちゃめちゃ流行りましたよね。サイモンさんの『Tequila, Gin Or Henny』とか。あとは『SHOCHU,ROOBEE,SAKE』なんていうのを鎮座DOPENESSさんとかが作っていたり。DABOさんもポルノ女優の名前でビートジャックしてたりしていて。すごい思い出深いですね。で、『Beamer Benz Or Bentley』。

(奥田翔)まあ「ベンツ(Benz)」と「ベントレー(Bentley)」はわかると思うんですけども。「Beamer」。これは「BMW」のことなんですね。あんまり日本で「俺、ビーマー買ったんだ」みたいな感じでは言わないですよね?

(渡辺志保)たしかに(笑)。「なにそれ?」ってなりますよね。でもやっぱり車文化もひとつ、ヒップホップの要素として大事な部分だと思うし。私も「LAC」っていうのがよくリリックに出てきていて。「なんだろう?」って思って調べたら「キャデラック(Cadillac)」だったし。あとはインパラも数字で表したりするっていう。それ、本当にわからないのよ。

車を数字で表す

(奥田翔)その数字で表すっていうのをまさに今、しゃべろうと思っていたんですけども。たとえばイージー・Eの……映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』をご覧になった方も多いとは思うんですけども。あの中でイージー・Eが最初にレコーディングに臨むっていうシーンがあるんですけども。彼、本当にラップが下手くそで。何回ラップをしようとしても、このラインが言えないっていうね。「Cruisin’ down the street in my ’64」っていうのがなかなか言えないっていうね。

(渡辺志保)一番最初の決めのパンチラインのところですよね。

(奥田翔)あの「’64」っていうのは「64年式のインパラ」っていうことになるんですね。

(渡辺志保)そういう言い方があるんですねっていうね。

(YOU-KID)これが通じるっていうことは結構みんな詳しいっていうか、浸透してる言葉っていうことですよね?

(奥田翔)そうじゃないですかね。一般人のその理解度合いっていうのは日本よりはちょっと上なんじゃないですかね? 車社会ってのもあるし。あと、これ、「ヒップホップで学ぶ英語」で一番最初に扱った曲がニプシー・ハッスルがドム・ケネディをフィーチャリングした『Double Up』という曲なんですけども。

(奥田翔)で、ここでドム・ケネディのリリックですね。「The rag six deuce yeah it’s mine」っていう風に言っていて。「rag」っていうのは「ボロい」みたいな意味ですね。で、「six deuce」の「deuce」って「2」を表すので。「6-2」ということでつまり62年式のインパラみたいな感じになりますね。

(渡辺志保)なるほど。深い!

(奥田翔)これ、最初僕はわからなくて。勉強会に参加してくださった方が「『six deuce』っていうのは62年式のこれらしいですよ」って教えてくれて。最初は「62番地」とかそういう意味なのかなって思っていたんですけども。

(渡辺志保)ああ、番地もよく出てきますよね。

(奥田翔)だから参加をしてくださる方からもすごい学ばせていただいている感じですね。

(渡辺志保)へー! そうね。数字系、いっつも私……まあ基本、数字に弱いっていうのもあるんですけども。この数字は車なのか……あと、拳銃もよく数字で表現するじゃないですか。

(奥田翔)「45」とか。

(渡辺志保)そうそう。「9ミリが……」とかね。あと、結構売人系のラップだとさ、みんな売っているお粉、お薬の分量とかも全部数字で表すから。わからないよね、まあでも、「64」とか「62」が出てきたら「インパラかな?」みたいな(笑)。ありがとうございます。じゃあ、そんなわけで今日も解説していただいたスラング、英語表現にまつわる1曲をご紹介してお別れということになりますが。今日は何の曲になりますか?

(奥田翔)はい。これはいろいろと迷ったんですけども、クラシックめので行こうと思います。これはドクター・ドレーの『Let Me Ride』ですね。

(渡辺志保)どクラシックやないですか!

(奥田翔)「Swing down, sweet chariot, stop, and let me ride」っていうあの部分。まあ「sweet chariot」の「chariot」っていうのが馬車のことなんですけども。まあ、それが車のことを表していて。「素敵な車、止まって。乗せて」っていう風に言っているということでして。これは元々、パーラメントの『Mothership Connection』という曲からサンプリングというか引用してるような、まあそんな感じでして。92年にサウス・セントラルでLA暴動というものが起こりましたよね? あの時に「車に乗せてくれ」みたいな。そういう時、そこにインスパイアされて生まれた歌詞だということが……。

(渡辺志保)そうかそうか。「sweet chariot」っておそらく、ゴスペルの有名なスピリチュアルソングにもよく出てくるフレーズで。なんかたぶん黒人、アフリカン・アメリカンの方たちの歌には頻出するフレーズな感じもしますよね。

(奥田翔)では、そんな感じの背景なんかもGeniusなどで調べると出てくるので。ぜひ各自、調べてみていただければと思います。

(渡辺志保)ありがとうございます。では曲紹介をお願いします。

(奥田翔)ドクター・ドレーで『Let Me Ride』です。

Dr.Dre『Let Me Ride』

<書き起こしおわり>

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