池尻安希と渡辺志保 アトランタヒップホップシーンを語る

池尻安希と渡辺志保 アトランタヒップホップシーンを語る INSIDE OUT

アトランタ在住のフォトジャーナリスト池尻安希さんががblock.fm『INSIDE OUT』にゲスト出演。渡辺志保さんとアトランタのヒップホップシーンについてたっぷり話していました。

(渡辺志保)さっそく今日のゲストをお呼びしたいと思います。池尻安希さんでーす。

(池尻安希)池尻安希です。こんばんは。

(渡辺志保)こんばんは! 安希さん、どうっすか? ひさしぶりのご帰国。

(池尻安希)そうですね。連日、DJ Baby Yuくんと……彼はアトランタにいてアトランタのFM V-103っていう、いちばん人気のヒップホップラジオなんですけども。そこでDJを今でもしているんですけども。で、ヤング・ジージーの元バックDJ。

(渡辺志保)そうそう。そのDJ Baby Yuさんがたまたまこの時期に……。

(池尻安希)誕生日パーティーも兼ねて彼の友達25人を引き連れて日本へ……。

(渡辺志保)ヤバいですよねー。セレブか!っていう。DJ Baby Yuさんはたしか5年ぐらい前にも日本でプレイしていて。その時、いまはELE TOKYOっていう名前になっていますけども、麻布十番にあるVILLAGEっていう箱でDJしていて。私は本当にファンだから、そこにも会いに行ってアトランタヴァイブスを感じて。で、先日そのDJ Baby Yuさんが土曜日の夜、1 OAK TOKYOでDJをやっていて。それでDJ Baby Yuさんのお友達もワッサーッて来て。もうシャンパンをパンパン! みたいな感じで。

(池尻安希)ねえ。開けまくってね。

(渡辺志保)で、アトランタにも縁のあるDJ Baby Yuさんだからそのアトランタから来たお友達とかもいらっしゃったじゃないですか。

(池尻安希)そうですね。DJ Baby Yuくんはカナダと日本のハーフの子なんで、友達もアジア人の人が多くて。

(渡辺志保)本当にだから私もこの金、土と2日続けてパーティーで。アトランタヴァイブスという感じで楽しいなと。安希さんも一緒で楽しいなという感じでね。この間のアトランタ夜会も濃かったですねー。

(池尻安希)濃かったですね。なかなか、ちょっとピーッな話ばっかりで。

(渡辺志保)ピーッな話が多かったですけども。今日も引き続きね、漏れない程度にピーッな話なども織り交ぜていただいてお届けしたいと思うんですけども。とはいえアトランタって本当にみなさん、ヤング・サグがいて、リル・ヨッティがいて、ミーゴス、フューチャー、T.I.、リュダクリスとかね。もうスターラッパーを輩出しまくっている土地なわけですよ。でも安希さんはそこでフォトジャーナリストとして活動をしていて。いままで撮ったアーティストって、ざっとどういう人がいるのか、教えてほしいです。

(池尻安希)いや、たぶんもうほとんど撮っているんじゃないですかね。わからないけど。

(渡辺志保)かっこいい! フューチャー行った。

(池尻安希)ヤング・サグ。ミーゴス。あと、まあアンダーグラウンドのアーティストとかもね。なんか、昔の人だったら……でも、ほとんど撮っているんじゃないですかね。

(渡辺志保)それでXXLのお仕事とかVH1とかBETとかそういったお仕事も。

(池尻安希)ビハインド・ザ・シーン。ビデオを後ろで回したりとか。

(渡辺志保)やってらっしゃる。いま、いちばんリアルなところに最も近い日本人の方だと私は勝手に思っていて。で、私もおアトランタに遊びに行くたびに安希さんに図々しくも連絡して、いろんなところに連れて行ってもらっているわけなんですけども。今日はそんな安希さんにアトランタがいま、どうなっているのか?っていう話を聞きながらお届けしたいと思います。で、さっきもリッチ・ザ・キッドのアルバムから1曲かけたりとかしましたけど、若手がどんどんどんどん出てくるのが本当にすごいなって。

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(池尻安希)そうですね。もう本当、星の数ほどですよね。アトランタはクラブもストリップクラブも星の数ほどあって。毎日、ホンマに月曜日から月曜日まで。

(渡辺志保)月曜日から月曜日まで(笑)。

毎日がパーティーのアトランタ

(池尻安希)毎日がすごいパーティーなんだけども。そのパーティーの中でも、オープンマイク的なものもすっごいいっぱいあって。あのね、ホンマに星の数ほどですね。アーティストは。どこから出てくるのか、わからない。

(渡辺志保)すごいね! だって私もUberに乗ると、だいたいUberの運転手すらも「俺、ビート作ってるんだよね」とかさ。

(池尻安希)そうそう。ホンマに隣の人に「なんか音楽やってる?」って聞いたら、たぶん何らかの形で絶対に関わっているはず。

(渡辺志保)すごい! いやいや、そんなところだからそりゃあミーゴスみたいなのも出てくるわっていう話な気がしますけども。そんな中で、まず安希さんにいまアトランタのストリートシーンでアップカミングなラッパーを今日は何人か教えていただこうかなと思って。さっそく1組、教えていただきたいなと思うんですけども。

(池尻安希)ええと、かなりアップカミングな子で。ファットマン・キー。

(渡辺志保)「Key!」っていう表記で。

(池尻安希)アンダーグラウンドアーティストの帝王って言っていいかな。フフフ(笑)。そのファットマン・キーがおすすめするクリスチャン・ローズです。

(渡辺志保)クリスチャン・ローズくんって会ったこと、ありますか?

(池尻安希)あります。

(渡辺志保)どんな子なんですか?

(池尻安希)あのね、ちょっとね、顔とかにもいっぱいタトゥーが入っているような(笑)。

(渡辺志保)そうなんだ。ヤンチャな感じですか?

(池尻安希)ちょっとヤンチャな感じなんだけども、服装とかはモロ、いまのアンダーグラウンドのヒッピー系のクリエイティブな感じの服を着ていて。そのメインストリーム系のBETなんかに流れているような、ああいう服装をしていない。

(渡辺志保)ちょっとジャラジャラ系じゃないっていうことですね。

(池尻安希)ではない、オーガニックだけどちょっとサグっぽい。

(渡辺志保)なんかさ、やっぱりそのメインストリームとアンダーグラウンドのシーンってどんどんどんどん、開いてきてますか?

(池尻安希)かなり両極化していて。ホンマにアンダーグラウンドの子、いわゆるヒッピー系の子なんかはBETも見ていない。

(渡辺志保)まあまあ、そうかもね。でも、地元のラジオでは両方かかるんですか? ミーゴスもかかれば?

(池尻安希)いや、FMラジオはホンマにメインストリーム。

(渡辺志保)そうかそうか。

(池尻安希)で、そのメインストリームのクラブでもメインストリーム系を中心に。

(渡辺志保)じゃあ、そういうアンダーグラウンド系の子はそういうクラブに行って、SoundCloudとかで曲を発表してプロップスを集めていくみたいな?

(池尻安希)アンダーグラウンドのクラブで。そうそう。

(渡辺志保)なるほど。わかりました。じゃあさっそくヒッピー系のアンダーグラウンドのアトランタのヒップホップシーンを騒がせている……。

(池尻安希)ヤング・バンズくんも去年、かなり注目された大型新人で。いろんなレーベルがもう彼の取り合いが始まっているというか。

(渡辺志保)じゃあ、そんな2人がコラボしたこの曲を聞いていただきたいんですが。曲紹介をお願いできますか?

(池尻安希)クリスチャン・ローズとヤング・バンズで『Alexander Mcqueen』。

Yung Bans『Alexander Mcqueen ft. Christian Rose』

(渡辺志保)はい。いまお届けしましたのはアトランタ在住の安希さん一押しの若手ラッパー、クリスチャン・ローズ&ヤング・バンズで『Alexander Mcqueen』。結構物騒なフックのリリックだったりしますけども(笑)。

(池尻安希)そうねー。

(渡辺志保)でも、このクリスチャン・ローズくんだっていつ……数ヶ月後にビッグヒットが生まれるかわからないっていう感じでしょう? ヤング・バンズにしても。

(池尻安希)そう! ホンマにね、一夜にしてっていう感じだからね。

ビッグヒットを飛ばした後、どうなるのか?

(渡辺志保)一夜にしてじゃないですか。ミーゴスとかにしてもそうだと思うんですけど。私が日本にいてわかり得ない空気感だと思うんですけど、一夜にしてビッグスターになってしまった若者はみんなどういう心境なんだろう? どうなっちゃうの?っていう。いま、安希さんはつい最近もリル・ザンくんと一緒に、リル・ザンのフォトグラファーとして他の都市に行ったりしてらっしゃったじゃないですか。リル・ザンとかもまさにここ数ヶ月でいきなり、彼の人生がすごい……。

(池尻安希)変わってしまったよね。

(渡辺志保)ねえ。だからそれをちょっと聞きたいなと思います。

(池尻安希)あのですね、別に悪口じゃないんだけど、アメリカ人はちょっと自分の感情に素直に生きているんで。たぶん向こう1年ぐらいはめちゃくちゃハッピーやと思うね。

(渡辺志保)アハハハハハッ! 「やった、やった! ラッキー!」みたいな。

(池尻安希)そう。これだけ注目されている!って。インスタグラムとかチェックしまくりで。

(渡辺志保)フフフ(笑)。「ギャルがこんだけいるぜ!」みたいなね。

(池尻安希)そうそう。ただ、だんだん病んでくると思う。

(渡辺志保)まあ、そりゃそうよね。

(池尻安希)ストレスもあるし。それを超えないとワンヒット・ワンダーになっちゃうから。

(渡辺志保)だからそれを超えてきているミーゴスとかさ、リル・ヨッティとか、どれだけ……想像もつかないような精神力っていうかさ。

(池尻安希)精神力やね。ホンマに精神力と、あとはやっぱり音楽に対してホンマの情熱がある。そういう邪な……ホンマに女の子だけが好きでとか、お金を稼ぐことだけが目的だとか。そういうのだったらたぶんすぐに消えていたかもしれない。

(渡辺志保)ああ、なるほどね。やっぱりミーゴスは違いますか? ミゴちゃんの話ばっかりになっちゃうけど。傍から見て。

(池尻安希)そうね。オフセットがやっぱりいちばん真面目やし。きっちりしているというか、仕事に真面目だからこそ、カーディ・Bと結婚できたっていうのもあるし。

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(渡辺志保)そうね。本当にそうね。あんだけプロポーズも豪華にしてね。私もこの間、ちょっと安希さんに個人的に気になって……たとえばアトランタ出身のマイク3本トリオといえば、トラビス・ポーターがいたわけじゃん。『Make It Rain』がめちゃめちゃヒットした。

彼らも3人組だったけど、まあまあ、地元でいまどれだけ活躍してらっしゃるかわからないけど、ミーゴスに比べるとそりゃあね、活躍の幅がちょっと違うよなって。だからミーゴスはなにがそうさせたのか?って聞いたら、安希さんは「彼らは血縁関係にあるからだ」って。

(池尻安希)そう。血縁関係。一応ね、わけのわからん……前後左右がちょっとおかしいね(笑)。

(渡辺志保)私もさ、安希さんが2年前かな? 『Woofin’』のミーゴスのインタビューをしてもらって。で、日本語でも書いてあるのを何度読んでもちょっとよくわからないし。ウィキペディアとか英語で書いてあるのを見てもよくわからないんだけどさ。誰が誰のおじさんで、いとこで……みたいなさ。

(池尻安希)そう。なのにもかかわらず、みんな同世代みたいなね。

(渡辺志保)ねえ。すごいよね。クエヴォがオフセットのおじさんとか、そんな感じよね?

(池尻安希)おじさん。そう。だから……。

(DJ YANATAKE)あ、DJ YANATAKEですけども。ちょっといまの話で思うんですけど、クオリティー・コントロールがマネージメントとかレーベルとしてやっぱりそういうのをすごくちゃんとしているみたいな感じはありますか?

(池尻安希)ちゃんとしているっていうか……。

(DJ YANATAKE)カーディ・Bも最近マネージメント契約したでしょう?

(池尻安希)うーん。どうかな? アトランタのシュグ・ナイトが……(笑)。

(渡辺志保)コーチ・K。

(池尻安希)フフフ(笑)。そうそう。コーチ・Kがいるんで。

(DJ YANATAKE)やっぱりさ、若くして成功してお金がバーン!って儲かっちゃうと、それをどう使っていいかもわからないっていうのもあると思うんですよ。で、僕はこれ、宇多田照實さん。宇多田ヒカルさんのお父さんとお話をさせてもらった時にそういう話になったのね。で、最初に成功をする。バーンとお金が入ってくる。とりあえず家を買って、車を買って、お母さんにプレゼントしてって一通りそれをやる。それをやって1回、お金がバーッとなくなっちゃう。それで稼いだ分を使うのは構わない。だけど翌年、税金っていうのがやってくる。

(渡辺志保)アハハハハハッ! 怖い!

(DJ YANATAKE)その税金を払うっていう発想がない。そういうのがわからない。だから、その税金を払うためにまた次のアルバムの契約をするんだけど。前借りみたいにしてお金をもらうんだけど、それで税金を払うから自分には全然残らない。で、ファーストアルバムで成功しても今度は全然お金にならないセカンドアルバムを作るモチベーションがなくなる。だからみんなセカンドアルバムでコケていくという。

(渡辺志保)ああ、そうかそうか。深い。リアル。

(DJ YANATAKE)みたいな。まあまあ、全部がそうじゃないにしろ、そういうケースはよくあるから。やっぱり最初に成功した時にどう、やっぱりちゃんと軌道修正してあげるかっていう人が近くにいるのかいないのか。というのは本当にアーティストの寿命とかに深く関わるという、ありがたいお話を……。

(渡辺志保)めちゃめちゃリアルですね。

(池尻安希)リアル。ホンマにアメリカ人はね、入ったら入っただけ絶対に使うんで。それはアーティストに限らず、どんだけ稼いでも。後先を考えずに使ってしまって、なくなって、どうしよう?っていう。T.I.なんかもね、あんだけ稼いでいてあの人、すごい借金があるんですよね。

(渡辺志保)あら! そうなんだ。だからちょっと前ですけども50セントも自己破産したみたいなニュースがあったりとか。めちゃめちゃ稼いでいるように見えて実は、稼いでいるだけ使っているっていうことだよね。

(DJ YANATAKE)でも50とかに関して言えば借金を速攻で返し終わったし、めちゃくちゃ多額の借金をできる人は逆に言えばお金持ちっていうか。

(池尻安希)そういうことね。アメリカ人はね。

(渡辺志保)でもT.I.もめっちゃ借金があると。

(池尻安希)借金があって。それも税金を払えてないっていうやつで。

(渡辺志保)すごそう。マジで。だからそれでね、コーチ・K先生なんかが財布の紐をっていうか。で、私もさっき、放送前にも話していたんですけども。ちょっと前にニューヨーク・タイムズのWEB版の記事でコーチ・Kがいろんなラッパーにあてがっている超有能な白人のおじさん弁護士がいるっていう記事があって。で、そのおじさま弁護士とオフセットの対談みたいなのがあって。そのおじさま弁護士は21サヴェージとかアトランタの若手ラップアーティストのことをすごく助けているということで。だから日本とは法の仕組みも違うしさ。1回ジェイルに入ってどうする?っていう。裁判の仕組み自体が違うじゃないですか。

(池尻安希)うんうん。

(渡辺志保)だからなかなか、こっちの世界とアトランタとかアメリカの世界を同じ標準にすることは絶対にできないと思うんですけど、それにしてもいろいろと、どういう生活をみなさん送っているんだろう?っていうね。いろいろとイマジンしちゃうことがありますけどね。

(池尻安希)まあね、弁護士選びはすごい大事ですね。ホンマに金を積めば黒を白にできるんで(笑)。

(渡辺志保)フフフ(笑)。さすが。もうOJ・シンプソンの話を聞いているような(笑)。

(池尻安希)そう。アーティストには確実な弁護士をつけないと。で、1回保護観察とかついちゃうと、本来なら他の州に行くことを許されてないんですよ。

(渡辺志保)そうね、そうね。もちろん国を出ることもね。

(池尻安希)許されていない。で、あと何百時間という恐ろしい……T.I.もかなり、何千時間やったかな?

(渡辺志保)奉仕活動。コミュニティーサービス。

(池尻安希)そうそう。それがつくんで。

(渡辺志保)あの奉仕活動っていうのは実際にどういうことをやるんですか?

(池尻安希)映画の通り。蛍光のベストを着てゴミ拾いだとか。あとは(ホームレスなどの)シェルターで給食配りとか。動物のシェルターで働いたりとか。

(渡辺志保)そうかそうか。そういうことで点数を積んで。

(池尻安希)ただ、これはアトランタに限ったことではないんだけど、そのコミュニティーサービスの時間も実はお金で買えるんですよ。

(渡辺志保)買える! さすがアメリカ。合理的ですね(笑)。

(池尻安希)そう。オフィサーか担当にちょこっとこう……。

(渡辺志保)袖の下的にちょこっと渡して。

(池尻安希)渡せば、時間をね。フフフ(笑)。

(渡辺志保)ヤバいなー。なるほどね。そういう風に世の中が回っているというところでしょうか。まあまあ、そんな感じでいろんな話を聞いていきたい。もうリアルでしかないみたいな感じですけども。ここでまた安希さんにアトランタのストリートを賑わせている若手アーティストを紹介していただきたいんですが。どんなメンツがいますかね?

(池尻安希)ちょっと今日、朝に私の友達のアーロン・リードくん。LA・リードさんの息子とちょっと……。

(渡辺志保)半端ないっすね! LA・リードの息子がずっとアトランタにいることに驚きですよ。

(池尻安希)で、話し合っていたんだけど、彼と私とで話をしてガンナがいいかなっていうことkになって。で、彼も『Drip Season 3』をドロップして。

(渡辺志保)めっちゃよかったですよ。

(池尻安希)ねえ。結構いますごい話題になっていて。しかもその中にヤング・サグ、リル・ベイビーっていうこの大物2人を。アトランタ出身の大物2人をフィーチャーした曲があるんで。それを。

(渡辺志保)じゃあ、聞いていただきましょう。

(池尻安希)ガンナ feat. ヤング・サグ&リル・ベイビーで『Oh Okay』。

Gunna『Oh Okay Ft Young Thug and Lil Baby』

(渡辺志保)はい。いまお届けしましたのは安希さんがレコメンドしてくださいました、いまアトランタのストリートを賑わせている若手ラッパー、ガンナ。私も1回、彼が『Drip Season 3』のミックステープをリリースした時にここでも曲をかけたんですけども。そのガンナ feat. ヤング・サグ&リル・ベイビーで『Oh Okay』でした。

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(渡辺志保)彼もすごいプロデューサーのマイク・ウィル・メイド・イットがめちゃめちゃかわいがっているイメージがありますけどね。ビートメイカーの豊富さっていうのもなかなかアトランタはね。

(池尻安希)そう。ホンマにもう、星の数ほどよね。

(渡辺志保)だから本当に、言ったらなんだけどめちゃめちゃ似ていたりするわけじゃん。AさんのビートとBさんのビートはめちゃめちゃゼイトーベンに似ているとかっていうのもあるわけじゃないですか。

(池尻安希)わざといま話題なところに寄せているっていうのもある。

(渡辺志保)そんな中で誰が次、一歩突き抜けることができるのかとか。ヒットが生まれる仕組みとかも本当にどうなっているのかな?って思うことも多いんですけども。

(池尻安希)やっぱりそれはアーティストの自分のプロモ力次第でもあるよね。

(渡辺志保)そうかそうか。もう自分が動いてプロモーションすることが何よりも大事っていう。

(池尻安希)それはやっぱり、チャイルディッシュ・ガンビーノのドラマ『アトランタ』で描かれているような……あれはまだ全然ゆるいけど、ホンマにアーティストは売れようと思ったら結構プロモを自分でして。

(渡辺志保)そうね。ストリップクラブを自分で回って。

(池尻安希)そう。アンダーグラウンドのクラブとかも回って。まあ、ちょっとDJにお金を渡して。これはミーゴスもそう。やっていた。お金を渡してかけてもらったりとか。

(渡辺志保)すごいよね。でもそんだけさ、ヒップホップのラジオが大きいパワーを持っているのがアメリカですからね。だからそのへんはちょっとうらやましいっていうか。我々もがんばりたいなって思いますけども。で、まあまあ今日はアトランタ在住歴10年以上を誇るフォトジャーナリストの池尻安希さんをお迎えしているわけなんですけども。本当に『INSIDE OUT』は私が常日頃からアトランタ好きだということもあり、アトランタのラップとかをいろいろたくさん紹介してはいるんですけども。アトランタってどういうところだ?っていう感じがしますが。ジョージア州アトランタ。いわゆるアメリカの南部の方に位置する都市ではあるんですけども。

で、みなさんが馴染み深いのはきっと古くからだとアウトキャストとかリュダクリスとかね。そのへんなのかなとも思うんですけども。安希さんはアトランタに行かれて13年ぐらいですか?

(池尻安希)13年ですね。

(渡辺志保)すごい! でも私もいちばん最初にアトランタに行ったのはたぶんその12年ぐらい前で。ちょうどヤング・ジージーがデビューしたぐらいなんですけども。その頃と比べれば、この10年たてばガラッとシーンは変わると思うんだけど。

(池尻安希)ホンマにアングラシーンとメインストリームシーンがパッキリと分かれてしまったっていうイメージが。

(渡辺志保)ありますが。ちなみにその、これまでに2組、アップカミングなアーティストを紹介していただいたので、安希さんが我が心のジョージアよ的な、そういうアトランタクラシックもせっかくなんで聞いてみたいなと思っていて。すごく印象に残っている曲とかありますか?

(池尻安希)そうですね。さっきちょっと志保さんから出てきたその3人組のトラビス・ポーターだとかYCだとか。ヤング・ジージーとかそういうハード系からパーティーソングに移行するちょうどその転換となったT.I.のグランドハッスルに所属していたリッチ・キッズ。

(渡辺志保)おおっ! やっぱりさ、地元のラッパーはたくさんいるわけじゃないですか。で、たとえばリュダクリスもディスタービング・ダ・ピースっていう自分のレーベルを持っていて。T.I.はT.I.でそのグランドハッスルを持っていて。やっぱりグランドハッスルってストリートでの影響力みたいなのは当時、どういう感じだったんですか?

(池尻安希)当時はね、ホンマにすごかった。とりあえずね、T.I.がパフォームするってなると、アメリカでは前座のことを「ハイプ」って言うんだけど。みんなを連れてきて。ヤング・ドローだ、ヤング・LAだ、やんちゃで巨漢だったあのアルファ・メガ(笑)。

(渡辺志保)アルファ・メガ(笑)。

(池尻安希)あれはあとでクビになっちゃったんですけども。とかいて。そのリッチ・キッズだとか。あとはね、シンガーとかもいたんですよね。彼は9才ぐらいだったかな? マイケル・ジャクソンの歌をすっごい……で、すごい勢いがあるから、ブワーッてみんなを連れてきてステージに立たせて、みんな端から順番にT.I.が出るまで、場つなぎでもないけど。

(渡辺志保)やっていくと。よくアメリカのアワードとかを見ても、とにかくステージ上にめっちゃ人がいて。「あれはなんでなんですか?」って聞かれることが私もあるんですけど。やっぱりみんなとにかく立ちたい?

(池尻安希)そう。とりあえずね、出たいし。実はフタを開けると全然関わっていない人もいたりするっていう(笑)。

(渡辺志保)いや、絶対にそうでしょう。

(池尻安希)そうそう(笑)。誰かが誰かを連れてきたみたいな。全然知らない人もいてるんだけど。やっぱりプロデューサーだとか、みんなクルーで動いているんで。たとえばレーベルのスタジオとかに行くと、そのアーティストとプロデューサーだけっていうことはまずありえない。しかも3人とか4人とかもまずありえない。やっぱり10人ぐらいとかがワッサーといて。

(渡辺志保)すごいね。はい。まあ、そういうのがアトランタのストリートシーンなわけですが。そんな中でT.I.が率いるグランドハッスルのレーベルの、いまから紹介していただくのはそのグランドハッスルの中でもかなり花形?

(池尻安希)有力株で、トラビス・ポーター、YCと続くパーティーソングに移行し、その後にニューアトランタと呼ばれるOG・マコだとか、それこそさっき出たファットマン・キーとかTwo-9とかトリニダード・ジェームズとか。その人らにもっとも影響を与えた人、グループだと思うんですね。リッチ・キッズ feat. ヤング・ドローの『My Partna Dem』。聞いてください。

Rich Kids ft Young Dro『My Partna Dem』

(渡辺志保)はい。いまお聞きいただきましたのは安希さんがアトランタを感じるこの1曲というわけでリッチ・キッズ feat. ヤング・ドロー『My Partna Dem』でした。この高い声とほどよいチャラめなバウンス感、ヤバいっすね。さっきもちょっと名前出たけど、私ヤング・LAとかも当時『Ain’t I』が大好きで。めちゃめちゃ聞いていたしね。懐かしい。

(池尻安希)やっぱりそれだけT.I.のグランドハッスルがいかに力があったかっていう話で。

(渡辺志保)でも、このリッチ・キッズのメンバーとかはいま、なにやっているんですかね?

(池尻安希)そうですね。スクーリーはね、2チェインズだとかヤング・ドルフとかが所属しているStreet Execs。で、ホセ・グワポはコーチ・Kが……。

(渡辺志保)そう。クオリティー・コントロールの本当に初期メンだったよね。ホセ・グワポね。このリッチ・キッズの後はね。

(池尻安希)そう。でもいまは離れちゃってね。

(渡辺志保)ねえ。心配です。フフフ(笑)。

(池尻安希)そうなんですよ。いろんな人が離れているからね。

(渡辺志保)スキッパ・ダ・フリッパとかジョニー・シンコとかも。

(池尻安希)OGマコも離れているしね。

(渡辺志保)なんか去年の年末にQCのコンピレーション・アルバムが出て。20曲以上バーッと。でも、その初期メンが誰もいなかったので、私はちょっとすごい寂しい気持ちに……すっごい寂しい気持ちになったし。あのQCから離れてしまったということは、もうさ、そのコーチ・Kの息のかかる場所には行けないみたいなことよね。きっとね。恐ろしい……。

(池尻安希)恐ろしい。本当に恐ろしい。

(渡辺志保)でも、本当にヤング・ドローもまだまだ現役で活動中なんですよね。

(池尻安希)まだ現役でね、活動中。

(渡辺志保)なんかおじいちゃんの話をする感じですけどね(笑)。

(池尻安希)アハハハハハッ!

(渡辺志保)彼は結構日本ではさ、あんまりその状況を逐一知られていないけど。だって……。

(池尻安希)アトランタでももう、そのグランドハッスルの勢い自体があれなんで。でも、ヤング・ドローはね、2年か3年前にヒットを1個飛ばしているんで。

(渡辺志保)リアリティーショーにも彼、出ているんですよね。

(池尻安希)だからね、まあそれで名前はね、まだ続いているかなと。

(渡辺志保)クレジットはまだストリートにあるという感じ。

(池尻安希)で、その歌が『We In Da City』やったかな? それが一応クラブで鉄板入りしたんで。

(渡辺志保)鉄板入り! おめでとうございます。

(池尻安希)まあまあ、安泰ということで(笑)。

(渡辺志保)あと10年は稼げるみたいな(笑)。いや、でもすごい。さっきのリッチ・キッズとかもいまだにクラブでかかるんですか?

(池尻安希)たまーにやね。懐かしいので……。

(渡辺志保)そうなんだ。私も何度となく『INSIDE OUT』でもお話した気がしますけども、アトランタのすごいところってホンマにアトランタの曲しかクラブでかからないのが本当にすごいし。なかなか……いまのニューヨークでもたぶんそういうこと、ニューヨークの曲しかかからないっていうことは、そういうイベントに行けばあるでしょうけども、一般的なメインストリームのクラブでそういうのってなかなかない気もしますし。そこがすごいよね。土着っていうかすごいローカルで。

(池尻安希)ただね、やっぱりアトランタもいま、開発化がすすんで。ハリウッドが引っ越ししてきちゃったんで。映画がね。

(渡辺志保)そう。DJ YANATAKEさん。『ブラックパンサー』で……これ、この間のアトランタ夜会で安希さんにお聞きしたんですけど、最初に美術館のシーンが出てくるじゃないですか。

(池尻安希)白いね。

(渡辺志保)最初にキルモンガーがキルモンガーになるようなシーンがありますけども。あれって、本当にアトランタの美術館で。しかも本当にああいうアフリカ美術、アートが有名なアトランタの美術館なんですって。

(DJ YANATAKE)っていうのを夜会で話されましたね。それを人づてに聞きました(笑)。

(池尻安希)おっ! 早い、早い(笑)。

(渡辺志保)そうそう。とかって聞いて、「うおーっ!」みたいな。「ホンマにそうだったんや!」みたいな。

(池尻安希)そういうこともあってね、いろいろと州外から人が引っ越ししてきちゃったっていうのもあるし。メインストリーム系のクラブで回しているDJなんかは結構、他の州から来ている人が多くて。そうなると、どうしてもね、自分が育ったところの曲を……。

(渡辺志保)オラが街のヒット曲を。そりゃもう、『The Next Episode』とかかけたいってなりますよ。

(池尻安希)だからね、もしホンマにアトランタのこういう土臭いのが聞きたければ、ホンマにアンダーグラウンド系とかちょっと離れたところに行くとか。そのDJの……クラブで選ぶんじゃなくて、DJで選んだ方がいいかもしれない。

(渡辺志保)そっちの方が純度の濃い、高いアトランタシットが聞けるという。そして、時間も残り少なくなってきましたので、安希さんにこれだけは外せないアトランタアンセム、1曲選ぶとしたらどれ?っていうことで。今日はこの曲を選んでいただいたんですけども。

(池尻安希)キロ・アリを。

(渡辺志保)キロ・アリなんて何年ぶりに名前をここ日本で聞いたか?っていう感じがしますけどね。

(池尻安希)やっぱり彼はダーティーサウスって呼ばれるこのアトランタの音楽の元になったと言ったらおかしいですけども。だいぶレジェンドでオリジネーターで。1990年代のアトランタでマイアミベースが流行っていたんだけど、それをエロい歌詞を付けて。で、彼はその後にちょっと放火でジェイルに行っちゃうんですけども。

(渡辺志保)でもさ、90年代の初頭、80年代後半ぐらいからまずマイアミでは2ライブクルーとかがいて。「We Want Some Pussy♪」って言っていたじゃないですか。それがアトランタに来て。で、みなさんも思っていらっしゃる方も多いと思うけど、ソーソー・デフが『Bass All-Stars』っていうコンピシリーズをバーッと出して。私もすっごい好きで集めていたんですけども。その中から『My Boo』とかがさ。

(池尻安希)そう! だからホンマにね、私にとって1曲を選んでくれっていうのがすごい地獄ですね。

(渡辺志保)地獄ですよね(笑)。でも、実際にそういうバウンシーなビートじゃないですか。サウスは。それがいろんな進化を遂げながらいまのアトランタのサウンドになっているってめっちゃめっちゃわかる~! みたいな感じがしましたので。いまからお聞きいただく曲はキロ・アリのそこまでチキチキバウンス、元祖バウンスではないんですけども。でも、キロ・アリと言えばこの曲でしょっていうのがありますので、最後に安希さんからご紹介いただきたいと思います。

(池尻安希)キロ・アリ feat. ビッグ・ボーイで『Love In Her Mouth』。

Kilo Ali feat. Big Boi『Love In Her Mouth』

(渡辺志保)いまお届けしましたのはアトランタクラシックチューン! 安希さんが選んでいただきました1曲、キロ・アリ feat. ビッグ・ボーイ『Love In Her Mouth』。すごい、湿っぽい内容の。

(池尻安希)エロエロの。

(渡辺志保)1曲でしたけども。でもすいません。駆け足で今日はアトランタ在住のフォトジャーナリストさんの池尻安希さんをお迎えしてお届けしてきたわけですけども。いろいろと話し足りないこともあるし。みなさんもいろいろと聞きたいことがあると思うので。なので、もしアトランタに行ってみたいなという方がいれば、ぜひぜひ安希さんのTwitterとかInstagramとかで連絡を取っていただいて。安希さんにみっちり濃いアトランタツアーを……。

(池尻安希)フフフ(笑)。

(渡辺志保)催行してくれると思いますので。本当にね、ガチで……本当にブラックの人しかいないストリップバーとか。「こんなところに入れるの?」みたいな、そういうゲトーなところまでご案内してくださると思いますので。そうしたちょっと一風変わったアトランタ旅行もまた乙かなと思いますし。個人的には10年前もいまもですけど、ニューヨークとかは結構DJの方とかも行ってきて現地のヴァイブスを感じて、吸収して日本に戻ってこられるような方は多くいらっしゃると思うんだけど、アトランタってあんまりそういう話は聞かないなと思って。そこまでね。だからもっと、いろんな方に。いま、これだけ流行っているっていうのもありますし。もっといろんな方にも行ってほしいなと思うし。ぜひぜひ安希さんをたずねて行っていただければと。

(池尻安希)はい。ぜひ来てください(笑)。

(渡辺志保)今日のゲストはアトランタから池尻安希さんをお迎えしました。ありがとうございました。またぜひ来てください!

(池尻安希)ありがとうございました。

(中略)

(DJ YANATAKE)アトランタね、僕は1回だけ。飛行機の乗り換えでしか行ったことがなくて。しかも94年ぐらいっていう相当昔なんで。全然わかってないですけども。でもお話をうかがっていると、俺らが子供の頃にヒップホップを好きになって憧れて、最初に「ニューヨーク行きたい!」みたいに思った感じで、いまの若い子がいまのヒップホップを聞いたら、やっぱりアトランタに行きたいって思うんじゃないかなっていうね。

(池尻安希)やっぱりね、田舎すぎて。ショッピングとかは絶対にやっぱりロサンゼルスとかニューヨークの方がいいし。

(渡辺志保)でもまあ、デカいモールはありますから。レノックスが。

(DJ YANATAKE)じゃあすごいアトランタでいちばんおいしい食べ物屋さんはどこですか?

(池尻安希)おいしい食べ物屋? 日本人的に、日本人からして? あのね……結構アトランタは韓国の人が多くて。韓国の人が作ったタコス。

(渡辺志保)そう! めっちゃ美味しかった!

(DJ YANATAKE)韓国の人がタコスをアトランタで?

(池尻安希)そうそう!

コリアンタコスが全米で人気

(渡辺志保)コリアンタコスって結構いま、アメリカで流行っているのよ。

(池尻安希)アトランタ発祥なんですよ。

(DJ YANATAKE)そうなんだ! じゃあ名古屋の台湾ラーメンみたいな感じ?

(渡辺志保)あ、そんな感じかも(笑)。ぜひ食べてほしい。たぶんいま、アメリカのいろんな州でコリアンタコスは食べれると思うんで。行ってほしい。

(DJ YANATAKE)そうなんだ! 全然知らなかった。日本で食べれるところはないの?

(渡辺志保)私が知る限り、ない。

(DJ YANATAKE)タコス、なにが違うの?

(渡辺志保)タコスのお肉がプルコギみたいなお肉だったりとか。あと、キムチチャーハンが中に入っていたり。ブリトーもライスがキムチチャーハンになっていたりしていて。美味しい。

TACO.

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(DJ YANATAKE)へー! 全然知らなかった! それをアトランタ名物として(笑)。

(池尻安希)はい。ぜひぜひ。

(渡辺志保)ご賞味ください。

<書き起こしおわり>

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