トミヤマユキコとMOBY「夫婦」がテーマの漫画を語る

トミヤマユキコとMOBY「夫婦」がテーマの漫画を語る NHKすっぴん!

トミヤマユキコさんとMOBYが2020年3月2日放送のNHK第一『すっぴん!』に出演。サンキュータツオさん、藤井彩子さんと「夫婦」がテーマの漫画についてトーク。売野機子先生の『薔薇だって書けるよ』などに触れながら夫婦について話していました。

(藤井彩子)そんなお二方をお招きしてお送りします。ここからはサブカル用語の基礎知識最終回スペシャルバージョン! では参りましょう。トミヤマさん、今日のテーマは何でしょうか?

(トミヤマユキコ)本日のテーマは「夫婦」です。

(藤井彩子)トミヤマさんには漫画を毎回ご紹介いただいていたんですが、今回はどんな漫画なのでしょうか?

(トミヤマユキコ)はい。本日ご紹介しますのは売野機子先生の『薔薇だって書けるよ』という作品です。

売野機子『薔薇だって書けるよ』

(トミヤマユキコ)点子ちゃんというヒロインが出てきます。16歳の天涯孤独っていうんでしょうかね? 親戚がおばさんしかいないというちょっと寂しい女の子が出てきます。で、この点子ちゃんに一目ぼれをしてしまった八朔という名の男子がいるんですが。一目ぼれして結婚を申し込んで、まあ一応結婚自体はできるんですね。するするとうまく行きまして。しかし、その結婚生活っていうのがあんまりうまく行かない。なぜならば点子ちゃんが結構奇想天外な女の子で。まあ普通の人であればできることができないとかね。お茶を淹れるためにヤカンを火をかけたままどこかへ行ってしまうみたいなことがあったりとか。

(サンキュータツオ)怖い怖い怖い!

(藤井彩子)お茶っ葉を買いに行っちゃうんですよね。

(トミヤマユキコ)そうそう。ちょっと危ういところがある女の子なので普通の夫婦生活みたいなものがどんどん壊れていって、さてどうするかという時に、まあフィクションなので。逆転ホームランのようなことがあり、夫婦関係が修復に向かっていくというお話です。

(サンキュータツオ)つまり、お互いがちょっとよくわかんないところから結婚生活をスタートさせてしまうということなの?

(トミヤマユキコ)そうですね。

(藤井彩子)割と一方的な「好き」っていう気持ちだけで結婚生活を始めてる感じがあるのですが。

(サンキュータツオ)なるほど。まあでもそういう夫婦もいるかもしれないよね。

(トミヤマユキコ)そうなんですよね。やっぱり一目ぼれで、恋愛のモードがかなり強い状態でそのまま結婚に突入していくという。

(サンキュータツオ)でも、マズいパターンですよね。基本的には。

(トミヤマユキコ)そうですね。だからこの2人も結婚してから生活の中でいろいろな問題が見つかって。

(藤井彩子)結構な歳の差婚でもありますしね。奥さんの方が16歳。

(サンキュータツオ)16歳!?

(トミヤマユキコ)そう幼妻です。

(サンキュータツオ)そうか。よく結婚してくれたね。でもそういうちょっとファンタジーな存在だから「ああ、この人だったら結婚するかも」みたいな説得力もあるってことですよね?

(トミヤマユキコ)そうですね。なんかポヤーッとした女の子で、こう不思議なところで「じゃあ結婚してもいいわ」って決めるみたいな。その相手の地位とか名誉とか、そういうことではないところで結婚はポンと決まるんだけど、生活自体がなかなかうまくいかないし、元々幼い女の子なのでいろいろ教えなきゃいけないと思って八朔さんがまあ焦り出すみたいな。それでギクシャクするんだけど……でもね、点子ちゃんにものすごい大きい個性があるってことに後で八朔さんは気が付く。記憶力がめちゃくちゃいいんですよ。

(サンキュータツオ)へー!

(藤井彩子)あれはなー、でもなー。あれで解決するの、どうだと思います? 「天才だから全てよし」みたいなそういう感じってどうなんだろう?っていう気がして。

(トミヤマユキコ)フフフ(笑)。

(サンキュータツオ)急にリアリスト彩子が……(笑)。

(藤井彩子)MOBYさんはこれ、お読みになりました?

(MOBY)僕はね、読んでないですよね。すいません。僕は漫画を……妻は漫画の研究をしてるのに僕は漫画をほとんど家で読まないんですよ。

(藤井彩子)ああ、そうなんですか。

(MOBY)で、音楽は僕、生業にしているんですけども……。

(トミヤマユキコ)私は聞かないんですよ。

(藤井彩子)ああ、そういう意味での接点っていうのはないわけですね。お仕事の中の、自分の専門分野に相手が関心を持ってないっていう?

お互いの専門分野にあまり関心を持たない

(トミヤマユキコ)うん。ごくたまにですね。私が勧めたもので「面白い!」とかってなるのは。

(MOBY)もう今は『映像研』にハマりまくってますね!

(サンキュータツオ)ああ、『映像研には手を出すな!』。NHKのあれ、最高ですよね!

(MOBY)最近、ライブのメンバー紹介の時に金森氏のあのポーズを決めてますもん。

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(サンキュータツオ)フフフ(笑)。なるほど。

(トミヤマユキコ)ということはたまにありますけど、基本的には自分の持ち場は自分で守るみたいな感じなので。

(サンキュータツオ)まあでも、そうだね。一時期は結婚がゴールみたいな恋愛漫画のあり方がほとんどだったけど、今は結婚してからもずっとその関係は続くんだみたいなね。どうやって関係を維持して修復していくか、みたいな漫画も結構ありますよね。

(トミヤマユキコ)この物語の中ではその点子ちゃんがものすごく記憶力がいいっていうところに彼、八朔さんは「この子の個性がある。見どころがある」ってことに気が付いて。なぜか、そのそのことをきっかけに夫婦関係が修復に向かっていくっていう。だから「かわいい」とか「好き」とか「愛してる」とかっていうことじゃなくて、相手にどういう特別な個性があるかっていうのを見抜いて、そこに寄り添っていくっていうことで何か夫婦が新しく再生していくっていうような話になっているので。なんか夫婦関係を考える時のひとつの参考になるかなっていう。愛だの恋だのではないところで相手のことを尊重するみたいな。なんかね、ちょっと不思議な話なんですけど、私はすごくすごく好きで。せっかく出番が最終回なので。

(サンキュータツオ)そうだね。「夫婦とは何か」みたいなことも考えさせてくれる漫画っていうことですね。

(トミヤマユキコ)だと思いますね。

(藤井彩子)夫婦テーマの作品って少女漫画でもいっぱいありますよね。その中で「これ!」っていう風になったのはどうしてだったんですか?

「夫婦らしさ」から逃れようとする作品が好き

(トミヤマユキコ)やっぱりその……「夫婦らしさ」みたいなものからいかに逃れよとしてるかっていうか。そういう作品が好きなんですよ。「やっぱり夫婦っていいね」とか「やっぱり夫婦ってこうだよね。こうでなくちゃ!」みたいなところに落ち着く作品よりは、なんか世間から見た時にはこの人たちはおよそ夫婦らしくないかもしれないけど、彼ら自身はすごくこの関係性に納得している。こういう形の夫婦もあっていいんじゃないか?っていう作品の方が私は少女漫画としては前進してるっていう風に思いがちなので。

(藤井彩子)すごい突き抜けた形の個性的な夫婦ですよね。

(トミヤマユキコ)うんうん。そうだと思います。

(藤井彩子)妻のありようもそうですし、夫の愛の表現とかも突き抜けている感じがありますよね。

(トミヤマユキコ)そうですね。最終的には毎日ね、「おお、点子。お前のことが好きだ」みたいな。

(藤井彩子)毎日、毎朝プロポーズするんですよ。結婚してからも。

(サンキュータツオ)なるほどね。それはそれで面白いですね。でもたしかに、なんというか内田裕也さんと樹木希林さんの夫婦とかも、まあ傍から見てると「どういう関係なんだろう?」とか思いながらも、2人が納得していればまあ、それはそれでその人たちらしい夫婦像みたいなのもありますからね。いろんな夫婦像があるということですよね。

(トミヤマユキコ)そうですね。だから少女漫画ってどうしてもシンデレラストーリー的な話の流れを作ると結構、読者サービスにもなるし。読者はそこで満足してしまうんですけど、やっぱり優れたクリエイターっていうのはその一歩先、二歩先に行った時にどういう恋愛関係があるかとか、結婚関係があり得るかっていうことを書いてくれるので。ぜひこういう作品も読んでもらいたいなっていう。

(サンキュータツオ)2人は夫婦何年目なの?

(MOBY)7年ですね。ええと、2014年の元日に入籍して。丸6年で7年目という。

(トミヤマユキコ)はい。

(サンキュータツオ)あ、すごい僕、危険な質問を今、しちゃったんだね(笑)。これ、もし旦那さん側が覚えてなかったら大失態ですよね?

(藤井彩子)フフフ、往々にしてありがちなことですよね(笑)。

(MOBY)僕、クイズとかも好きなんで。

(サンキュータツオ)記憶力があるんですね。

(トミヤマユキコ)私の方が覚えてないかもしれない。

(サンキュータツオ)なるほど。

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