トミヤマユキコさんがNHKラジオ第一『すっぴん!』に出演。サンキュータツオさん、藤井彩子さんと胸キュン系漫画『花より男子』『娚の一生』『モブ子の恋』について話していました。
11時台は、【#サブカル用語の基礎知識】
担当は、ライターで東北芸術工科大学芸術学部講師のトミヤマユキコさん。
テーマは、「夏休み直前!トキメキ恋愛マンガ」です!
#nhk_suppin pic.twitter.com/SOC701V5tG— すっぴん! (@nhk_suppin) 2019年7月1日
(藤井彩子)サブカル用語の基礎知識。アニメ、漫画、SFなどを中心に旬な情報を専門家とともに深めていくコーナーです。今日のご担当はこのコーナーの漫画担当。ライターで東北芸術工科大学芸術学部の講師、トミヤマユキコさんとともにお送りします。改めましてよろしくお願いします。
(トミヤマユキコ)よろしくお願いします。
(藤井彩子)今日のテーマをお願いします。
(トミヤマユキコ)本日のテーマは夏休み直前。ときめき恋愛漫画でございます。
(サンキュータツオ)いいね! ときめきたいね!
(トミヤマユキコ)今日はね、雨が降ってちょっとジメジメしていますけども。もうすぐ夏休みが来ますから。あと1月ぐらいがんばれば……ということで、ときめいて行きましょう。夏は恋の恋の季節なんじゃないかということです。社会人で仕事に追われている方。恋も夏休みも関係ねえという方もいらっしゃるかもしれませんが、まあせめて、漫画を読むことで実生活のときめきにしていただきたいと。
(サンキュータツオ)本当、そう! ビタミンを摂るみたいな感じでね。
(トミヤマユキコ)そうなんですよ。実体験じゃなくてもいいんですよ。フィクションでもいいんですよ。
(サンキュータツオ)「実体験」ってなんだよ?(笑)。
(藤井彩子)ちょっと確認だけしておきたいんですけども、いまの漫画。少女漫画の世界でも、やっぱり夏は恋の季節みたいな概念はあるんですか?
(トミヤマユキコ)ありますね!
(藤井彩子)ありますか。よかった。
(トミヤマユキコ)イベント&恋じゃないですか。
(藤井彩子)フェスに行ったりとか。……違う?
(サンキュータツオ)お祭りじゃない?
(トミヤマユキコ)お祭りが多い。あと、林間学校的なものがあってそこでなにかが起きるとか。
(藤井彩子)バイトをするとか?
(トミヤマユキコ)バイトもあります。
(サンキュータツオ)あとは海もそうだよな。
(トミヤマユキコ)海もあります。花火もあります。
(サンキュータツオ)一切、関わってこなかったからな、俺……。
(トミヤマユキコ)フフフ(笑)。
(サンキュータツオ)花火大会とか、一度も行ったことないわ。
(トミヤマユキコ)私もです(笑)。
(藤井彩子)そんなタツオさんとともにお送りしていきます。胸キュン漫画。
(サンキュータツオ)漫画で供給しますから。
(藤井彩子)胸キュン漫画そのものはお好きですか?
(サンキュータツオ)大好きですよ! だから僕、少女漫画は大好きですから。やっぱり姉の2人いるからね。もう家に少女漫画だらけでした。ときめいてましたよ。
(トミヤマユキコ)ああ、本当ですか? やっぱりそうですよね。実体験がなくてもときめきますよね?
(サンキュータツオ)そうですよ。僕はもうオスカル、最高の男だと思っていましたから! 「やっぱり男はオスカルみたいじゃないとな!」っていう風に思っていましたよ。
(藤井彩子)女性なんだって!(笑)。
(サンキュータツオ)ええ、びっくりしました。
(藤井彩子)メッセージが来ています。山形県の50代女性の方。「山形は久々に雨の心配がない蒸し暑い日になっています。トミヤマさまには息子が芸術工科大学でお世話になっております」。
(サンキュータツオ)ええっ? 「トミヤマさま」?
(藤井彩子)教え子のお母様ということですね。
(トミヤマユキコ)あら! すいません、なんか。
(藤井彩子)「あまり少女漫画を読むような青春時代ではありませんでしたが、気に入ったものは何回も読みました。『キャンディ・キャンディ』『あさきゆめみし』『エースをねらえ!』『はいからさんが通る』『MARS』『王家の紋章』『ベルばら』『イタズラなKiss』『花より男子』などなど。ドキドキしますよね」。
(サンキュータツオ)全部うちにあったわ!
(藤井彩子)「でも、アニメやドラマになってしまうと、どうしても自分が思い描いていたのとはギャップが出てしまい、やっぱり漫画の世界で勝手に想像してときめいている方が好きです」。
(サンキュータツオ)なるほど。わかります、わかります。
(トミヤマユキコ)自由度がね、原作にはある。こちらの解釈の可能性みたいなものはありますもんね。わかります。
(サンキュータツオ)教え子のお母さん。すごい!
(トミヤマユキコ)誰だろう?(笑)。
(藤井彩子)では、最初の漫画はなんでしょうか?
(トミヤマユキコ)はい。非現実感を味わうジェットコースター級ときめきとしまして、いまお便りの中にも出てきていたんですが、『花より男子』。神尾葉子先生の作品です。
『花より男子』
(サンキュータツオ)古典ですね。
(トミヤマユキコ)古典です。王道! ときめき恋愛漫画です。では藤井さん、簡単に漫画の紹介をお願いします。
(藤井彩子)1992年から2004年にかけて連載されていたんですけども。娘さんの玉の輿を願うお母さんのすすめで名門が通うセレブ学校に入学した一般庶民の牧野つくしと財閥の御曹司である道明寺司との恋愛模様を描いた漫画です。司を含むセレブ四人組のF4に目をつけられていじめのターゲットにされたりするんですけども、主人公のつくしは正義感が強いので、彼らの性根を叩き直さんとばかりに立ち向かっていくんですね。そこから恋愛になっちゃうみたいな、そんな話ですね。
(トミヤマユキコ)そうです、そうです。もう最高。何回も映画化、ドラマ化されて。そのたびにまた原作ファンが増えていくという、幸せなサイクルができています。
(サンキュータツオ)まあ実生活には生かせないやつですよね?
(トミヤマユキコ)そうなんですよ。このF4っていうのがもう超ド級のお坊ちゃまで。もう何て言うんですか? 世界中に別荘があって、自家用のジェットがあり、クルーザーがあり……みたいな感じで。物語の中ではその夏休みに熱海に行くっていうエピソードがあるんですけど、熱海は完全に妥協なんですよ。ハワイに行くのが当たり前なので。まあ、ちょっと話の流れで熱海に行くことになるんですけど。もうみんな、イタリアの海岸で過ごすみたいな感じで過ごしていると……。
(サンキュータツオ)地中海感ただよう人たち。
(トミヤマユキコ)そうすると、周りが「なんかの撮影なの?」みたいな感じで寄ってきちゃって、「やりづらいな……」みたいになるっていうような、超ド級のゴージャスな生活をしているF4のところに庶民。一般ピープル代表みたいなつくしちゃんというのが入っていって、そのギャップを感じ取りながらも、なんかF4の夢のような世界観みたいなものを束の間、味あわせてもらうみたいなね。
(藤井彩子)90年代の連載というのが納得するのは、昔ってやっぱりシンデレラストーリーとか玉の輿に乗るみたいなことがわかりやすい憧れの形としてあったでしょう? その感じは匂いますよね。
(トミヤマユキコ)ありますよね。あとはやっぱり、そのバブルの残り香みたいなものもあるので。この世のどこかにはそういう世界がある……かもしれないとちょっと思いながら、ひょんなことでそっち側に行けるかもしれないというか。そういう期待感みたいなのは牧野つくしに託している人はいたんじゃないかなって。
(サンキュータツオ)結構、だから階級みたいなものは日本には存在しないですけど。まあ格差みたいなものは存在していて。ものすごい上の人から寵愛を受けるみたいなものに対する憧れはありますよね。
(トミヤマユキコ)あったと思いますね。
(サンキュータツオ)いわゆるだから、もうちょっとハーレクイン的に言うと「スーパーダーリン」に近い……まあ、いわゆる「スパダリ」って言われる一群ですけども。本当に王家の跡継ぎから愛されるみたいな感じの物語にもちょっと近い。
(藤井彩子)そうですね。ハーレクイン的ですよね。
(トミヤマユキコ)しかもこの作品の場合は主人公がただ愛される、受け身系女子じゃなくて、「あんたらおぼっちゃんの性根を叩き直してやる!」みたいなね。
(サンキュータツオ)その気持ちよさ、カタルシスがあるよね。
(藤井彩子)そこが新しいんだと思うんですよ。いままでは最初、嫌われてる感じで険悪なんだけど……ぐらいの感じで。あとは恋愛になだれ込んでいくのが、女子が行動してやっぱりひとつ、何か世界を切り開くみたいなところを描いているっていう。
(サンキュータツオ)対等、あるいはそれ以上の関係性を築いてそれに向き合っていくということですもんね。
(トミヤマユキコ)それを最後まで崩さなかったっていうのはそれはそれで夢があるっていうか、女の子の自立ということでいえばめちゃくちゃ夢がある話で。そういう女の子を男の側も嫌わないわけじゃないですか。最終的にそういういしっかりした女の子、好き!っていう話なんで。まあ、最高の漫画ですよね。ときめき。
(藤井彩子)さあ、続いては?
(トミヤマユキコ)次の作品は恋に年齢は関係ない。大人がときめく胸キュンということで、タツオ先生大好きでしょう? 西炯子先生の『娚の一生』でございます。
(サンキュータツオ)大好物でございます。
『娚の一生』
(藤井彩子)私も読みました。これは2008年から2010年にかけて連載されていました。東京の大手電機メーカーに勤める堂薗つぐみさん。長期休暇を田舎の祖母の家ですごすことになったんですね。そしたら、間もなく入院していた祖母が亡くなってしまって、つぐみは仕事を在宅勤務に切り替え、祖母の家で暮らします。で、朝起きたら家にいたのが見知らぬおじさまですよね。
(サンキュータツオ)そうですね。ちょっとグレーなヘアーで。いわゆる「枯れ専」っていうやつですね。
(藤井彩子)年齢差倍ぐらいある感じですよね? そのおじさまがいて。
(サンキュータツオ)主人公は30ぐらいの設定ですよね?
(トミヤマユキコ)30代。おじさまは50代ぐらいです。
(藤井彩子)「親子」って言っても「そうだよね」って思えるぐらいの年齢差。その2人で奇妙な同居生活が始まるのですが……っていう。
(サンキュータツオ)「奇妙な同居生活」なんてみんな好きだから! そんなの。
(トミヤマユキコ)フフフ、そうなんですよ(笑)。
(藤井彩子)都合がいい理由で保護者がいなくなるみたいなね。そういうの、みんな大好き!
(トミヤマユキコ)だからまあ、ティーン向けの少女漫画でやられているようなことを大人の世界でやってみたらどうなるか?っていうのがこの『娚の一生』のひとつの実験だったっていう風には思うんですよ。
(サンキュータツオ)たしかに! キャリアウーマンだもんね。主人公は。
(トミヤマユキコ)バリバリのキャリアウーマンで、東京ではもう課長だかなんか、偉いんですよ。とにかく。
(サンキュータツオ)で、パソコンをカタカタやっているようなね。
(トミヤマユキコ)それがひょんなことからおばあさまの家で生活をするようになりですよ、そこになんか大学のね、哲学科の教授がね……。
(サンキュータツオ)哲学だからモテるんだよ、これ。哲学っていうのがいいじゃん。また謎で(笑)。
(トミヤマユキコ)そうですね(笑)。
(藤井彩子)ミステリアスさが二重になっているんですよね。「歳が非常に上」っていうこととプラスして、ミステリアスな哲学の世界に生きてらっしゃるという。
(トミヤマユキコ)その先生がなんだか知らないけど、同居をすることになり。そこにはそのつぐみちゃんのおばあちゃんという鍵を握る人物がいるようなのであるが、このおばあさんが亡くなっているので、本当のところっていうのが気になりながら……。
(サンキュータツオ)おばあちゃんと海江田さんの関係がよくわからないんだけどね。
(トミヤマユキコ)そう! そこもいいわけですよ。
(サンキュータツオ)そうか。だからいわゆる夏だとね、少女漫画だとお祭りとか浴衣みたいなのがありますけど、そういう文法ではなくて。大人向けの恋愛漫画。
(トミヤマユキコ)と、思いきや……夏休み、浴衣、あるんすよ、これ!(笑)。
(藤井彩子)フハハハハハハッ!
(サンキュータツオ)しっかりあるんだよ、これ!
(トミヤマユキコ)だって海江田先生のことが気になってる他の女性を振り切って、つぐみと2人で祭りを抜け出して自転車二人乗りするんですよ!
(藤井彩子)結構ね、やっていることが若いんですよね。そこのギャップもいいんですよ。大人の恋愛なのに、やっていることはティーンエージャーとほぼ一緒っていう。あの感じがいいんじゃないかなっていうね。
(サンキュータツオ)まあ最後ね、本当に馬車に乗って迎えに来る的な感じ、ありますもんね。
(トミヤマユキコ)そうなんですよ。だから「年甲斐もなく」と言ってしまえばそれまでなんですけども、それをそのストーリーの力と画力で一瞬、忘れさせてくれて。
(藤井彩子)画力がね、素晴らしい!
(トミヤマユキコ)画力もデカいです。これは。
(サンキュータツオ)でもたしかに読者年齢が上がってきたっていうのも、ここ最近のことだと思うんで。まあ「ここ最近」って言っても何十年にもなりますけど。そういう人たちが共感しやすい主人公にして。なおかつ年上のおじさまを素敵に描いてくれてるっていうね。やっぱりスーツが似合うおじさまみたいな。
(トミヤマユキコ)そう。こんなことは起こりえないんですけど。『花男』と一緒で。でも、まあすごいすごい極上のファンタジーっていうか、「夢見させてくれて、マジありがとう!」っていう作品ではあると思います(笑)。
(藤井彩子)こんなおじさま、いたらみんな行くよ!
(サンキュータツオ)藤井さんも楽しく読めましたか?
(藤井彩子)いやいやいや! だってね、海江田さんが魅力的すぎますよね、これはね。
(トミヤマユキコ)で、映画だとトヨエツさんがやるわけですよ! ドンズバです!
(サンキュータツオ)これさ、でも「こんな人、いない」って思うわけ? 「もしかしたらいるかも?」って思っちゃう人、多くない?
(藤井彩子)いや、見たことはないよ。会ったことはない。
(トミヤマユキコ)大学にいないじゃん(笑)。
(サンキュータツオ)まあ、大学にはいないね。たしかに(笑)。
(藤井彩子)大学にいなきゃ、どこにいるんですか?
(サンキュータツオ)「大学関係者以外はいるかも?」って思っちゃうよ。
(トミヤマユキコ)そうか。大学で長く勤めているから、ファンタジーだなって思って読んでいます(笑)。
(サンキュータツオ)まあ海江田さんみたいな体型の人はいるけど。3日ぐらいお風呂に入っていない可能性はあるからね。その先生はね。
(トミヤマユキコ)言えてる(笑)。
(藤井彩子)という作品のあとで、最後。どんな作品でしょうか? いちばん今回では新しい作品ですね。
(トミヤマユキコ)そうですね。ドキドキの大きさは主役も脇役も同じということで、田村茜先生の『モブ子の恋』という作品です。
『モブ子の恋』
(藤井彩子)はい。20年間ずっと片隅で脇役として過ごしてきた田中信子さんに芽生えた初めての恋心。積極的な行動が苦手なんですけど勇気を振り絞って一歩ずつ距離を縮めようと努力する、そのドキドキの大きさに主役も脇役も関係ない。ささやかで爽やかな恋物語ですよという説明がつけられております。
(トミヤマユキコ)いわゆる「モブキャラ」と呼ばれる人物の……。
(藤井彩子)モブキャラってなんですか?
(トミヤマユキコ)「モブ(Mob)」っていうのはからもともと「群衆」みたいやな意味だったんですけど、それが日本のアニメカルチャー、オタクカルチャー、漫画カルチャーの中では「脇役」「その他大勢」みたいな意味になってきて。このモブ子っていうのは自分はその世界の中ではモブキャラの方だ、脇の方だということで。
(藤井彩子)だから「信子」から「モブ子」なんですね。
(トミヤマユキコ)そこがかかっています。
(サンキュータツオ)オンリーワンの主人公にしている時代っていうのはもう終わっているということなんですよね。
(トミヤマユキコ)あと、この作品がいいのはほら、地味な女の子が恋をすることでだんだんキラキラしていって主役級になるみたいなのはたくさんあるんですけども、モブがモブのままでときめき輝くみたいな。モブであること否定してない。どこまでもモブでいいじゃないみたいな強さがあるのは私は大好きですね。これは。
(サンキュータツオ)モブキャラあるあるみたいなのも面白いですよね。
(トミヤマユキコ)で、最新刊でこれまた夏祭り、浴衣、ありますので!
(サンキュータツオ)フハハハハハハッ!
(藤井彩子)夏祭り、浴衣はやっぱり、なんだろうね?(笑)。
(サンキュータツオ)浴衣、着る? 浴衣着て夏祭りとか、行く?
(トミヤマユキコ)行かない(笑)。
(サンキュータツオ)行かないよね? 行くのかな? 行ったこと、ある?
(藤井彩子)うん、ある(笑)。
(サンキュータツオ)やっぱり藤井さん、ベタを経験してんな!
(藤井彩子)そこは一応、やっとかないと。
(サンキュータツオ)藤井さん、一通りそこやってるから。僕なんか、落語協会の寄り合いでしか着ないからね、浴衣なんて。
(藤井彩子)フハハハハハハッ! あれ、全然その文脈の浴衣とは全く別のもので。職業着なんで(笑)。
(サンキュータツオ)おじさんたちで浴衣を着て、大行列で歩くっていう。なんなんだ、あれ?(笑)。
(藤井彩子)こういう流れが最近の胸キュンなんですかね?
(トミヤマユキコ)だと思うんですよね。昔ながらのシンデレラストーリーの胸キュンっていうのは伝統芸能的にもちろん残ってるし、これからもあると思うんですけど。そことはまた違う流れの胸キュンってなんだろう?っていうことをやっぱりクリエイターの方々は常に考えていて。『モブ子の恋』なんかはモブ子とモブ男の恋ですからね。しかも。クラス一のイケメンとの恋とかじゃない、もうモブ子とモブ男の地味なときめきを描くっていうことなので。やっぱりその胸キュンも王道系、伝統芸能系と新しい作品が常に競合してる状況だとは思います。
(サンキュータツオ)でもね、そうですよね。世の中のほとんどの人がモブ男でありモブ子だし。要は、エースを描いたスポーツ漫画じゃなくて、ベンチを暖めてる人を主人公にしたっていうような感じですよね。結構だから漫画カルチャーの中でもそのモブって言われてるキャラクターたちを主人公にしたものが、たとえば同人界隈とかでも盛り上がったりとかしてるし。名前がついてないキャラクターですら、「こういう子なんじゃないか」とか妄想する人とか結構いっぱいいるんでね。なんか最近は本当にモブに光が当たり始めてるなっていう感じがありますよね。
(トミヤマユキコ)面白くなってまいりました。
(藤井彩子)そうですね。アイドルもあれだけ大勢いるんですもんね。
(サンキュータツオ)そうですよ! トップ何人とかじゃなくて、50何番目の子がいいみたいなのはあるかもしれない。
(藤井彩子)さあ、トミヤマさん。今日覚えたい言葉はなんでしょうか?
(トミヤマユキコ)いま、話していた「モブ」でございます。
(サンキュータツオ)モブ。なんて定義しよう? やっぱりその他大勢のキャラクター……やっぱりオンリーワンじゃないように思われているキャラクターでも、ちゃんとオンリーワンが描けるっていうことなのかな?
(トミヤマユキコ)うんうん。だからあまりネガティブな意味じゃなくなってきているかなって思います。脇役で日が当たらなくてどうでもいいっていうことじゃなくて、モブにはモブの輝きが……みたいな。そのままでいいというのを地で行くというか。変化しなくても、そのままでも素敵っていうのが最近のモブの意味合いなんじゃないかなと思いますけどね。
(サンキュータツオ)わかりました。そうですよ。最近のアイドルアニメとかでもアイドル自体が好きなんじゃなくて、アイドルを応援しているお客さんたちがとっても素敵とかっていって。お客さんたちに結構萌えてる人が大勢いるんですよね。そういうところもいまのトレンドなのかもしれない。モブ。みなさんも是非ね、覚えてもらいたい言葉だと思います。
(藤井彩子)サブカル用語の基礎知識。今日はライターで東北芸術工科大学講師のトミヤマユキコさんにお話を聞きました。トミヤマさん、今日もありがとうございました!
(トミヤマユキコ)ありがとうございました!
(サンキュータツオ)ありがとう!
<書き起こしおわり>