(藤井彩子)どんな夫婦だと思います? そういう風に、この『薔薇だって書けるよ』の夫婦もとても個性的で独自な関係性ですけど、お二人の関係っていうのは?
(MOBY)よく言うのは、ちょっと性別が男同士になってしまいますけども、「磯野と中島」ですよね。うちは。
(サンキュータツオ)ああー、なるほど! サザエさんのね。
(MOBY)僕が中島で、いっつも「磯野! 野球やろうぜ!」って言っているみたいな。
サザエさんのカツオと中島的な関係
(サンキュータツオ)フフフ、中島孤独なんだよ。俺、すげえ中島に感情移入してっから!(笑)。俺、中島はカツオがいなかったらどうしているんだろう?って思って。いつも心配している。「カツオ、今日も野球に行ってあげて!」って思っている。
(藤井彩子)ああ、「野球やろうぜ」的な?
(MOBY)まさに野球を見ながら「野球やろうぜ」って言っている感じですね。
(トミヤマユキコ)うん。常に私に働きかけがあって、私はそれに応えるということの方が多い気がしますね。
現在のサザエさんで、カツオが年上の女教師に憧れてる話をやっていますが、ここで中島が駅前の女子大生相手に失恋した話のオチを見てみましょう。 #sazae pic.twitter.com/zUWdPEndE6
— 天塚 臥文????️???? (@amaduka) October 18, 2015
(サンキュータツオ)なるほど。関係の修復はどうしているの? 衝突はあるの?
(トミヤマユキコ)あります、あります。ケンカですよね。
(MOBY)でもそれはトミヤマさんのマナーというか、議論をするっていう。ケンカじゃなくて、徹底的に議論をして、全部言い合ってそこからどうするか?っていう。
ケンカの際はちゃんと議論する
(サンキュータツオ)わかる。わかるんだけど……僕もね、トミヤマさんもだけども研究者の議論ってケンカしているように聞こえちゃうんですよね。
(トミヤマユキコ)うんうん。
(MOBY)それは最初はそうでしたけど。
(サンキュータツオ)すげえ詰将棋されてる感じにならないですか?
(藤井彩子)追い詰められません?
(MOBY)でもその詰めが「ああ、これはだからそういう風に……なんか教えてくれているんだな」って思って。最近は「学びがあるな」と思って。
(サンキュータツオ)フフフ(笑)。
(藤井彩子)MOBYさん、心広いわ。普通、それを不愉快だって思うパターン、多いよ。
(MOBY)それを逆に身に着けたら、自分もいいんじゃないかなっていう。
(藤井彩子)すごい! MOBYさん、心広い!
(サンキュータツオ)まあ、何と比べてなのかはわからないですけども(笑)。
(藤井彩子)いやいや(笑)。議論を好まない人の方が、何だろうな? 日本人の国民性なのか、多い気がするんですよね。
(MOBY)そうですよね。僕も実家では姉、僕、妹っていう感じで。しかもその姉と妹が日体大出身っていう。その体育会系の中に文系が1人っていう形だったので。もう生きていくにはそこで理詰めじゃない勝てなかったっていうのもありますよね。
(サンキュータツオ)ああ、なるほどね。俺と同じパターンだ(笑)。権利を主張しない生きていけないっていう(笑)。
(MOBY)全く一緒です(笑)。なので、でも学びがあります。
(藤井彩子)ちなみにタツオさんは独身でいらっしゃいますけども、結婚したいとか、理想の夫婦の形はこうだとか、あるんですか?
(サンキュータツオ)理想の夫婦はやっぱり……そうですね。話し合えるっていうのがいいですよね。議論ができるというか、対話ができる。だけどやっぱり俺、詰め将棋になっちゃうから。やっぱり追いつめちゃうのかな? わかんないけど。
(トミヤマユキコ)でも私も追い詰めてますよ、彼のことを。
(サンキュータツオ)フフフ、だから同じ話し方ができる人だったらいいんだけど、やっぱり感情を振りかざされちゃうと「そっすね……」しか言えないっていうのはあるよね。「問題の論点がどこにあるか?」とか言うと、「うるせえ!」みたいな感じになるから。「そりゃそうだよな」って思って。
(藤井彩子)フフフ(笑)。では、そろそろトミヤマさん、今日覚えたい言葉の発表をお願いいたします。
「友達夫婦と恋人夫婦」
(トミヤマユキコ)はい、分かりました。本日は「友達夫婦と恋人夫婦」です。まあ夫婦物のフィクションとかね、見たり読んだりしてると友達系の夫婦なのか、恋人系の夫婦なのかってだいたい、その2つに分かれてるような感じがしていて。で、やっぱり「夫婦は夫婦である。夫婦は夫婦でしかない」みたいな時代はもう終わって、漫画の中でも現実世界でも、夫婦像の多様化っていうのが進んでいて。「夫婦は夫婦でしかない」じゃなくて「友達みたいな夫婦」だっているし、「恋人みたいな夫婦」もいるし。その2つに当てはまらない何か新しい夫婦像もあるかもしれないし……っていう風なことになっていく。それをフィクションの方から現実に働きかけていくと、その「夫婦らしさ」という名の呪縛から自由になる人も増えていくのではないかと。
(サンキュータツオ)実際に夫婦になってからの方が時間が長いもんね。それはもう、関係は常に変化していくと思うんだけど。藤井さんはどうですか? その、理想の夫婦像は?
(藤井彩子)理想の夫婦像というか、もう今、夫婦をやってますからね。理想も何もないんですよ(笑)。
(トミヤマユキコ)生活ですよね。
(藤井彩子)生活ですね。日常なので。その、なんか理想の夫婦像みたいなものに縛られすぎちゃうと、やっぱり継続は難しい。だから、なんだろう? 私は1回、離婚もしてるので、継続することに結構力を使うようになったかなって気がしますね。
(サンキュータツオ)努力をするということですね。
(藤井彩子)そうですね。もちろん努力も必要だし、相手のリスペクトも必要だし。その自分が思う理想みたいなことを押し付けないみたいなことが結構大事かな?
(サンキュータツオ)維持をする。だから、そう。やっぱりメンテナンスも努力のうちだから。
(トミヤマユキコ)ああ、それは本当にそうだと思います。
(サンキュータツオ)だいたい、なんでもそうなんだけども。手に入れただけでも、あとのメンテナンスはほったらかしっていうのを男の子はやりがちだからね。そこからのメンテナンスが必要だよっていうことですよね。何でもね。関係の意地もそうですけど。
(トミヤマユキコ)そう。だからそれの面倒くささを引き受けられるか、とか面倒くさいけど楽しいとか、面倒くさいけどやめられないみたいなところに落ち着けるといいのかなとは思いますけどね。
(藤井彩子)ここまではサブカル用語の基礎知識、最終回スペシャルバージョンと題してお送りしました。今日は夫婦がテーマの漫画についてでした。ではここでMOBYさんの曲を1曲お届けしましょう。紹介をお願いします。
(MOBY)2019年7月にリリースしました我々SCOOBIE DO最新作からタイトルチューンです。『Have A Nice Day!』。
SCOOBIE DO『Have A Nice Day!』
<書き起こしおわり>