渡辺志保 Eminem『Music to Be Murdered By』を語る

渡辺志保 Eminem『Music to Be Murdered By』を語る INSIDE OUT

渡辺志保さんが2020年1月20日放送のblock.fm『INSIDE OUT』の中でエミネムの最新アルバム『Music to Be Murdered By』を紹介していました。

(渡辺志保)それでは今日のオープニングチューンをお届けしたいと思うんですが。いやー、もう大変よ、本当にヒップホップシーンは。先週の金曜日ももういろんなね、新譜が……マック・ミラーとかね、ドリームヴィルのアルバムのディレクターズカット版とか。あとフューチャーと2チェインズがね、一緒に新譜を出したりとかしていて大騒ぎだったんですけど。一番大騒ぎだったのはやっぱりエミネムさんが『Music to Be Murdered By』というすごいタイトルのアルバムを出しまして。サプライズリリースよね。

で、私は最初、その「ドロップしました」みたいなツイートを見て。最初はさ、ニック・キャノンがここ最近、ちょいちょいエミネムをさ、すごい不毛なディスをさ。「勝てるわけねえじゃん?」っていうようなディスをさ、ポンポンポンポンとね、フリースタイルとかやっていたから。私はてっきりそれのアンサーとして1曲だけポロッと出したのかなって思ったんですよ。

そしたら、ちょっとレーベルの方から「出ました」みたいな連絡をいただいて。「ああ、ニック・キャノンへのアンサーですかね?」って私が返したら「いや、アルバムです」って言われて「ええっ!?」みたいな(笑)。で、こういうエミネムのサプライズリリースと言えば、2018年に『Kamikaze』をリリースして。その時もね、本当に前触れなく、いきなりリリースされたアルバムということで。で、まあその時、そのタイミングでこの『INSIDE OUT』でも取り扱いましたけれども。

渡辺志保 Eminem『Kamikaze』を語る
渡辺志保さんがblock.fm『INSIDE OUT』の中でエミネムがサプライズリリースした新作アルバム『Kamikaze』について話していました。

で、私はあのアルバムもさ、最初の1ターン、2ターン、3ターン目ぐらいまでは「ああ、面白い、面白い」と思って聞いてたの。実名でやっぱりね、エミネムならではですけれども。いろんな人をディスったりとか。で、その前のアルバムの『Revival』がいかに商業的に失敗してしまったかっていうこともすごいネチネチネチネチとラップしていて。面白いなと思って。エミネムっぽいっていうか、スリム・シェイディっぽいなと思ってちょっと好意的に聞いてたんだけど。でも繰り返し聞くうちにさ、やっぱりそのあえてテイ・キースにビートを作らせてブロックボーイ・JBを耶輸したりとか、ミーゴスのことをちょっとおちょくったりとか。タイラー・ザ・クリエイターとか。

で、ラップゴッドっていう風に自分で自分のことを言っているのに、なんで若者のさ、ちっちゃいところを気にするんだろう?って思って。それでコンセプト的にもね、なんかちょっと大人気ないんじゃないかな? ラップゴッドらしからぬアルバムなんじゃないかな?ってちょっと自分の中で……その、セカンド・インプレッション、サード・インプレッションがどんどん変わっていったんですね。で、まああんまりスマートじゃないなっていう風に実は思ってしまったのね。聞き込むうちに。

なんだけど、今回のこの『Music to Be Murdered By』に関しては、本当にね、一番いやらしい時のスリム・シェイディカラーがすごい濃く出ていて非常に面白い……まあ前作『Kamikaze』をはるかに超える出来なのじゃないかなっていう風に思いました。で、作品の大きな元ネタになっているのは映画海の巨匠であるアルフレッド・ヒッチコック。私、全然知らなかっただけど、同じ名前のアルバムを1950年代にリリースしていらっしゃったんですね。で、「ヒッチコックに捧げる」っていうのをエミネムはツイートでも言ってるし。

前作『Kamikaze』をはるかに超える出来

しかもこのアルバムの中でも、実際にそのアルフレッド・ヒッチコックの肉声を用いてとか。あとは『Alfred』っていう名前のイントロ、アウトロなんかを差し込んで、それで構築しているんですけれども。で、あとはアルバムのジャケ写もね、ヒッチコックへのオマージュとなっているという。それで、まあ「Be Murdered」だから「殺されるべき音楽」っていう。なので『Music to Be Murdered By』は「誰かによって殺されるべき音楽」っていうタイトル。それは誰かっていうと、もちろんエミネムによって殺されるべき……お前ら、キルキルキルだぜ!っていう、そういうメッセージのアルバムだし。

それで全20曲入ってるんですけれども、前編・後編に分かれているみたいな。なのでイントロが2個、入ってるんですね。なので1曲目から10曲目までがまず前半。それで11曲目から20曲目が後半という感じで分かれてるという。いやー、聞き応えがありますね。まあ、まだまだ私もリリック一行一行を丁寧に紐解いているわけではないんですけれども。それで、このアルバムは既にもう35万枚ぐらいのセールスが見込まれているみたいで。ビルボード1位はほぼ確実という風に言われていると。

となると、このアルバムがエミネムにとっての10枚目のナンバーワンアルバムになるらしいんですね。で、それってアメリカ史上初なんですって。10枚連続アルバムがチャート1位になるのは、たぶんこのエミネムがアメリカ史上初で。なんと去年ね、カニエが9枚連続の記録を打ち立てたですけど、それをエミネムが抜くということで。

(DJ YANATAKE)ああ、じゃあカニエもまだチャンスは継続中なんですか?

(渡辺志保)でももうこれがほぼほぼ1位確定だから。カニエは9枚連続だけどエミネムは今度10枚連続になっちゃうから。エミネムがカニエの記録を抜くという……。

(DJ YANATAKE)いや、だからカニエがまた次に出せば……パンパンッと出せばね。可能性はまだ残っているよね。じゃあ、カニエとエミネムが争っているんだ。その記録をね。

(渡辺志保)あと、ちょっと珍しいのはこのストリーミング時代、普通のCDとかデジタルの販売のセールスとストリーミングのバランスがやっぱり他のヒップホップのアルバムよりはそのセールスもヘルシーなバランスらしくて。他の……たとえばマネーバック・ヨーのアルバムだとストリーミングが98%でその他が2%みたいな感じになるかもしれないんだけども、これはね、たしか7:3とか、それぐらいのバランスを保っているそうです。あとはね、アリアナ・グランデについてちょっと揶揄するラインが炎上したりとか。

あとは銃規制に対するメッセージを発している曲が話題になったりっていうね、いろんな話題がもう既にあるアルバムだけど、ちょっとここでかけたいのはやはり、ジュース・ワールドをフィーチャーしている『Godzilla』という曲がありますので。ちょっとこちらを今日のオープニングチューンにしたいと思います。それでは聴いていただきましょう。エミネム feat. ジュース・ワールドで『Godzilla』。

Eminem feat. Juice WRLD『Godzilla』

(渡辺志保)今、お届けした曲はエミネムのサプライズリリースされました最新アルバム『Music to Be Murdered By』から『Godzilla feat. Juice WRLD』でした。ちなみにジュース・ワールドは彼が亡くなってから初めて世に出たレコーディング音源がこれということで。この曲、元々エミネムとジュースくんで曲を作ろうってなっていたらしいんですけど。でもフックしかレコーディングしてないという。

それでバースを……この曲はfeat. ジュース・ワールドという表記ながら、ジュースのバースはないんですよ。だからジュースのバースを聞いてみたかったなって思うけど、ジュース・ワールドはそのフックしかレコーディングせずにちょっとね、先にこの世を去ってしまったということで、そういう構成の曲になってますっていう感じです。まあ本当にね、聞き応えがあるアルバムには間違わないので、ぜひぜひチェックしてみてください。

<書き起こしおわり>

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