(宇多丸)じゃあぜひ、ツアーの話もうかがっていきましょう。やっぱりちょっと目を引いたのは、その海外ツアーという。上海、ニューヨーク、横浜、台北と回ってきて……という。これ、いかがでしたか?っていうか、まず何でこれをやろうということになったのか?
(星野源)いろいろ思っていて、「次、どうしようか? 休もうか?」なんて思っていた時に、マーク・ロンソンから「もう1回、ライブをやろうよ」みたいな話が来たんですよ。で、1年前に幕張で2人でライブをやったんですけど。「もう1回、やりたい」みたいな話が出てきて。で、その中で、トム・ミッシュとも知り合ったりとか。それで「一緒に曲を作ろう」みたいになったりとか。Superorganismともそういう風になったりとかっていう中で、前からその海外ライブみたいな話もあったんですけど、なんとなく機会がなくてやってなかったのを「ああ、ちょっとやってみようかな?」と思って。
で、そのいわゆる「今までやっていなかったこと」っていうのが、その「フィーチャリング」っていうことと、あとは「海外でライブをやる」っていうような。あとは「英語で歌を作り始めた」っていうのとか、なんかそれがいろいろ重ねて、「じゃあもう行こうよ!」みたいな感じでワーッと動き出したですね。自然と。なので、前々から「この時期に!」っていうよりかは「行ってみようか! やってみよう!」みたいな。あと、普通のツアーでも別にいいんだけども、「なんか『ワールドツアー』って言ってみたい」みたいな(笑)。
(宇多丸)割と無邪気な?
(星野源)「『ワールドツアー』って言ったら何かかっこいい」みたいな。そういう感じでやってみたっていう。
(宇多丸)これはだから、いわゆる海外とかを回り出すとほら、「海外進出」みたいな言葉、あるじゃないですか。そういうこととは違うというか?
(星野源)そうなんです。その意識が全然なくて。もう今って「進出」とかっていうことじゃないじゃないですか。
(宇多丸)たとえばその海外アーティストとのコラボとかっていうのも、それこそ若いアーティストだと「もう普通にめっちゃつながってるんですけど?」みたいな。やり取りも簡単だし。音源もデータでやり取りし合って。で、「会ってもないけど、コラボを作っちゃいました」とかも全然あるもんね。
(星野源)そうなんです。だからそれも、いわゆるビジネス的なつながりからそういうことが生まれるとたぶんハードルがいろいろ高いのかもしれないですけど、いわゆる友達になって「じゃあ、やろうよ」からの、直で連絡先を交換して、トラックを送り合って……みたいなので今回のEPは作っているので。で、そのライブに関しても、「海外進出で行くんじゃ!」ではなくて。それってすごくやっぱり前の話で。今はそのサブスクリプションというものが生まれて、日本で出たものがすぐに海外で、同じ環境で聞けるっていうことは今までCDとかレコードではあり得ないわけじゃないですか。
(宇多丸)たしかに。流通を確保しなきゃいけなかったから。
(星野源)流通を確保しないといけないというのがあったんで。で、今ではその壁はないんですけど、みんな今は見えない壁を感じているような状態っていうか。
(宇多丸)内面化された壁っていうこと?
(星野源)そうですね。で、「海外でライブをする」っていうと何か「海外進出するんだ」みたいな。「いやいや、もうすぐそこだから! 数時間で行けるから!」みたいな。「東京・福岡間みたいな感じで台湾にも行けるし……」みたいな。だからなんかそれってもう「近所」だと思うんですよね。本当に「ワールド」とはいえ。
(宇多丸)「でも普通にみんな行ってるじゃん?」っていうことですよね。
(星野源)そうなんですよ。普通に行ってるし、やってるし。だから本当に「近所ライブみたいな感じでライブをやりたい」っていうテーマでやってみようっていう感じなんですね。
「若手のインディーバンドみたいなことをやっている」
(宇多丸)なんかその『Same Thing』を聞いた時にね、それこそ若手のインディーバンドみたいな……いい意味でよ。若手のインディーバンドみたいなことをやるなというか。だから、その感じかな? それでさ、「この間、ちょっと台湾でライブしてきました」みたいな。この番組もね、いろんな方を呼ぶんだけども。やっぱり若いバンドほどシレッと。「この間、台湾でやってきまして。みんなすごい僕らの歌を知っていて……」みたいな。
(日比麻音子)「友達、増えました!」みたいな。
(宇多丸)「ちょっと向こうに友達がいたんで」みたいな。なんかそのノリね。
(星野源)そうですね。もうまさにそうですね。
(宇多丸)まあ、規模はデカいけど。
(星野源)いや、でもそうですね。本当に向こうで友達できたりとか普通に買い物をしたりとか。で、その前にライブをやって、みたいな。あと、そのお客さんの熱みたいなのがもう異様にすごくて。いや、ちょっと本当にびっくりしました。
(宇多丸)それはたとえば現地のお客さんとか?
(星野源)そうですね。各国というか各会場、8割ぐらいは現地の人だったんです。で、あとは日本とか別の国から来たっていう人が残り2割だったんですね。どこも。でも、みんな歌うし、みんな踊るし。最初の上海からまずすごかったんですけど。上海ってずっと公安の人が見てて、ライブ中に立っちゃいけないんですよ。
(宇多丸)ああ、立っちゃいけないの?
(星野源)厳しいんですよ。でも、バーン!って立つわけです。それで「座れ!」ってやるんですけど、座らないんですよ。で、日本人のライブで「座らない」っていうことはあんまりないみたいで。やっぱりだんだんと座っていくらしいんですけど、最後まで座らないで「うわーっ!」ってやってくれてたんで。それの熱はニューヨークでもそうだったし、横浜ももちろんそうだったし。で、台湾もすごくて。台湾はお客さんが2000人だったんですよ。なんですけど耳が、鼓膜が破れるかと思うほどの声援で、その量はマジで誇張なしで東京ドームの5万人と一緒だったんですよ。
「ドシャーッ!」みたいな。その熱量で待ってくれてる人がいるっていうことを知った時に、本当に自分のやってることとか音楽っていうものがここまで届いていて。で、日本だとやっぱりどうしても会場が大きくなっちゃうので、個々にまでフォーカスしにくいけれども、そこもこのぐらいの熱量でみんなに迎えてくれてるだろうなっていう。なんか日本のこともいろいろ知れた、感じることができたっていうのはすごく大きなことだったなっていう。
(宇多丸)うんうん。表出の仕方が違うだけでっていうのはあるかもしれないしね。
(日比麻音子)海外ってアウェイっていう感覚は全くなく?
(星野源)なかったですね。ホームって感じでしたね。それが嬉しかったです。
アウェイではなくホーム
(宇多丸)逆にその星野くんが、特に『YELLOW DANCER』以降でやってきたような試み……まあのブラックミュージックからのの影響というのを落とし込んでいくというか、自分なりのものにしていくみたいなところがむしろ、意図がダイレクトに伝わりやすいのかもしれないなっていう気模するんだけども。その、「座らない」っていう。要するにダンスミュージックとしての側面っていうのを割とダイレクトに捉えてるっていうことなのかな?っていう気もするんだよね。まあ、僕は現場を見てないのであれですけど。そういうのって感じます?
(星野源)踊ってくれてましたし。あと、やっぱり僕はMCでもよく「踊って」とか「好きに踊ってくれ。自分の踊り方をしてくれ」ってよく言っているのもあって。それも全部チェックしてくれているんですよね。エッセイも読んでるし。あとはNetflixで僕のライブが今、ドーム公演が全部見れるので、それを見てくれてるっていうのもあると思うんですけど。だからいろいろ伝わっていて。
(宇多丸)そうか。となると、だから割とさ、そのJ-POPという枠組み。さっきの歌詞のサビの話が僕は本当に印象的だったけど。というところが、割と別にそのままでも?
(星野源)今、ちょっとその国内でも変わりつつあるんじゃないかなっていうのは思います。
(宇多丸)突破しちゃってるっていうか。気付いたら突破しちゃってるっていう感じもあるのかな? ひょっとしたら。
(星野源)そうかもしれないですね。今回のEPは全くそれを考えないで作ったので。だから、なんか次はどうしようかな?っていうのは思っていますけど。どういう感じで作ろうかな?っていうのは。
(宇多丸)でも、それっていうのはその『POP VIRUS』のツアーの後の燃え尽き症候群というよりは、むしろ選択肢が広がった後の「さあ、どうするか?」っていう感じ?
(星野源)そうですね。まさにそんな感じです。
(宇多丸)なんだよ……。
(星野源)フハハハハハハハハッ!
(宇多丸)フフフ、俺は星野くんに何を求めているんだ?っていう(笑)。
(日比麻音子)先輩!(笑)。
(星野源)「行き詰まっていてほしかった」みたいな(笑)。
(宇多丸)ねえ。いやいや、よかった、よかった。そうかそうか。
(星野源)ありがとうございます。
(宇多丸)というあたりであっという間にお時間が……曲を聞いてお別れみたいな感じなんですけども。まあ、先に今後決まっているあたりで活動の話を聞いちゃおうかな?
(星野源)そうですね。紅白歌合戦に『Same Thing』で出ます。
(宇多丸)ええっ?(笑)。『Same Thing』で出るの? マジで!
(星野源)『Same Thing』、やります(笑)。
(宇多丸)『Same Thing』でやるの? えっ、サビとかはNHK的処理とかはあるの?
(星野源)いわゆる、ちょっといろいろ……歌詞がそもそも違うバージョンもあるので。
(宇多丸)なるほどね。そうか。大人な……。
(星野源)全然大人じゃないんですけど(笑)。でも、そういういろいろなやり方はあるので。そういうのをやろかなと。
(宇多丸)そんな番組があるんですねー。
(星野源)あとおげんさんでも紅白に出るというのも今日発表になりましたので。
(宇多丸)いいですねー。そして?
(星野源)あとはイエローパスという僕が年イチで出してるイヤーブックがあるんですけども。それの一番後ろにコードが書いてあって、それを入力すると入れるウェブページみたいなのがあるんですけど、そこで優先予約とかができるんですけど。その入った人だけが参加できるライブみたいなのを来年3月に横浜アリーナと大阪城ホールでやります。あとはオールナイトニッポンもぜひ聞いてください。
(宇多丸)そちらもまたちょっとね、お邪魔をしたいなと……。
(星野源)ああ、そうですね。ぜひぜひ。
(宇多丸)で、最後に曲をもう1曲、かけたいんですけど。すいません。4曲全部かけきれずに。まあ『Same Thing』から……どっちにしましょうか。『Ain’t Nobody Know』か『私』だけども……。
(星野源)宇多丸さんにお任せします。
(宇多丸)うーん、やっぱりね、残念ながら出口の方じゃないですかね?
(星野源)そうですね。話も盛り上がりました死ね。
(宇多丸)ですかね。出口……ねえ。今、舌打ちしてしまいましたね。はっきりとした舌打ちを……。
(日比麻音子)「チッ」って言った(笑)。
(星野源)目の前舌打ちをされるって結構なかなかないですよ(笑)。
(宇多丸)フハハハハハハハハッ!
(星野源)もう、さすがです(笑)。
(宇多丸)アンビバレントな気持ちが……(笑)。うん。じゃあ、最後に曲紹介をお願いします。
(星野源)はい。EP『Same Thing』の一番最後の曲でございます。星野源で『私』。
(宇多丸)星野源さん、ありがとうございました。
(星野源)ありがとうございました!
星野源『私』
<書き起こしおわり>
星野源、宇多丸と2019年の音楽活動を振り返る【SameThing制作秘話も】 https://t.co/4WJf4OkIvr
— みやーんZZ (@miyearnzz) January 1, 2020