宇多丸さんがTBSラジオ『ジェーン・スー相談は踊る』に出演。相談時空パトロールのコーナーで作家・北方謙三さんの『試みの地平線』の悩み相談回答を予想。その回答結果に驚いていました。
(宇多丸)ということで今宵はですね、雑誌『ホットドッグ・プレス』で連載されていたハードボイルド作家、北方謙三先生の青春人生相談『試みの地平線』から、東京都、大学1年生男性からの相談です。
(ジェーン・スー)『僕は某医学系大学生の1年生です。学費が高いので、一部をアルバイトで稼いでいます。悩みは彼女との貧富の差。彼女は金持ちの娘です。彼女は車を持っているのに、僕は免許さえ持っていません。自尊心の高い僕としては、耐えられません。が、彼女を大好きだし、どうしたらいいか、教えてください』。
(宇多丸)これ、北方先生的な、ジャジーな感じの(BGM)で。
(ジェーン・スー)葉巻っぽい感じですよね。
(宇多丸)もしくはKOKOU(孤高)のバックグラウンドミュージックですね。
(ジェーン・スー)北方謙三さん。ご存知ない方いらっしゃらないと思いますが。念のため。1947年生まれの現在68才。
(宇多丸)お若いんですね。
(ジェーン・スー)っていうか、ということは、試みの地平線をやっていた頃っておいくつだったの?問題ですよ。
(宇多丸)まだ30代だったってことじゃないですか?
(ジェーン・スー)それであのハードボイルド感だったんですね。ハードボイルド作家で、小説、ハードボイルド系以外では『三国志』とか『水滸伝』などの歴史小説が有名で。試みの地平線とは、講談社発行の『ホットドッグ・プレス』に1986年から2002年まで掲載されていたものなんですが。これ、当時の大学生はどうやって読んでたんですか?
リアルタイムで読んでいた世代の宇多丸
(宇多丸)はい。1986年からということなんで、僕、当時17才で。本当にジャスト、『ホットドッグ・プレス』。だから要は、試みの地平線が始まった瞬間の『ホットドッグ・プレス』をリアルタイムで買い続けている世代です。
(ジェーン・スー)おうおうおう。
(宇多丸)なのに、ソープには行かなかった。
(ジェーン・スー)なぜ?
(宇多丸)やっぱそのね、その・・・やっぱ試みの地平線はさ、たとえば『ソープに行け』で有名じゃないですか?
(ジェーン・スー)そうですね。
(宇多丸)やっぱね、そういうある種のアイコン化が当時からありましたよ。つまり、当時読んでいた大学生が北方先生の言うことを聞いてそのままを実行していたとか、そういうものじゃなく。あれは試みの地平線だから・・・っていう。
(ジェーン・スー)ああー、当時からそういうのがあった。
(宇多丸)当時からそのぐらいの距離感はあったというのはあると思いますね。
(ジェーン・スー)なるほど。だとしたら、まあたくさん読んでらっしゃるわけですから。このコーナーは北方謙三先生が何と答えたか?を当てるコーナーです。そりゃあね、あの当時を知っている宇多丸さんだったら、ドンズバで・・・
(宇多丸)(笑)。ちょっと待って。待って。北方先生が答えそうなことを言うの?ここは。
(ジェーン・スー)そうです。そうです。
(宇多丸)そりゃ、『ソープに行け!』じゃないんですか?(笑)。
(ジェーン・スー)いやいや、ちょっと待って(笑)。
(宇多丸)つながんない(笑)。『ソープに行け』に至る論理が必要だもんね(笑)。
(ジェーン・スー)そうそう。だってお金がない人に『ソープに行け』って、結構酷ですよ。
(宇多丸)ただこれ、僕単純に思うのは、やっぱ大学1年でしょ?で、医学部に通ってて、がんばって勉強してると。つまり、稼ぐのはあなたが大人になって、一丁前の男になってからの話じゃないですか。いま、金がないのなんて当たり前だし。で、逆に彼女は金持ちの娘だけど、あなたと付き合っているといいうことは、ある意味あなたのこれから、将来とかのあれを見込んでさ。これから伸びる男だと、そこを見込んで付き合っているわけで。金持ちの女性だから、逆に小金持っているとか、そんなの気にしてないですよ。
(ジェーン・スー)うん。たしかにそうかもしれないですね。金なら自分が持ってるんですよね(笑)。
(宇多丸)そうそうそう。だから、要するにいまはこうだけども、見てろよ!っていう。そのバネにすりゃいいってことじゃないですか?
(ジェーン・スー)ねえ。それで、稼いでソープに行けっていう(笑)。そこでつながる(笑)。
(宇多丸)いや、違う違う。北方先生の論理があるとしたら、自尊心が強いというのが耐えられないっていうのは、要は自分が男としてまだまだ彼女に見合ってないのではないのか?っていう件でしょ?自信をつけるには・・・?
(宇多丸・スー)ソープに行け!
(宇多丸)っていう(笑)。そういう論理はあるかもしれない。
(ジェーン・スー)すごい。ソープメソッドっていうか。どんな論理にでもソープにつなげる。全ての道はソープに続くっていう。それができるんですね。
(宇多丸)あの、行ったことがない私が言うのもあれですけども。でもね、性的なものに関しては僕はちょっとそれは理があると思っていて。ソープに行くのがどうか?はわからないですけど。その、『僕、童貞なんです』という子がいたら、やっぱりそこをどう自分で、たとえば女の子を口説いて、そういうことまで持っていって・・・っていう。要は、親とか保護者の庇護を受けずに。性的なことですから。いかにそれを自力で持っていくか?っていうのをやるのは通過儀礼として。性的なこと。たとえば自慰行為もひとつそうですし、性行為もそうですし。それは結構、意外と大事だぞと。
(ジェーン・スー)うん。
(宇多丸)それは男関係なくですよ。人として。そこをどう、個人で処理するか?っていう。はじめての1人の個人としての。っていう意味で大事だと思うんで、そういう意味でのソープに行け感みたいなものは僕も共有しているという感じでございますね。
(ジェーン・スー)なるほど。さあ、北方先生は何と答えたのでしょうか?回答を見てみましょう。
北方謙三の回答結果
(宇多丸)どうなんだろうね?・・・回答(笑)。
(ジェーン・スー)(笑)
(宇多丸)ちょっ、ちょっと待って(笑)。行きますよ?これ、北方先生の言ってることですからね?『たかりまくれ!女に!とにかく、たかりまくれ!アルバイトもしない方がいい。車があるなら、助手席に座って「○○に行きたい」とタクシー代わりに使え!』(笑)。
(ジェーン・スー)ひどい(笑)。
(宇多丸)『世の中には、そうやって使っていい相手というのがたまにはいるものだ。そういう相手なら、おとなしく言うことを聞くだろうし、そういう相手でなければ、ふられるだろう。そういう女を好きになったら、そういう覚悟が必要だ。もし相手が素直に言うことを聞く女だったら、いつの日か、100倍にして返してやればいいだろう』。
(ジェーン・スー)『抱いてー!』みたいなことですよね、これね(笑)。
(宇多丸)だからこれ、一瞬ね、あれですよ。前半、『最低!』って思うかもしれないけど、着地はやっぱり似てるんですよ。僕の。要はお前はまだ真の男になる前の修行段階なんだから。真の男になった時に返せばいいんだっていう意味で、『いつの日か、100倍にして返してやればいい』。これは、いいじゃないですか。
(ジェーン・スー)いいと思います(笑)。
(宇多丸)ただその、手間のフレーズが(笑)。
(宇多丸・スー)『たかりまくれ!』。
(宇多丸)『女に!とにかく、たかりまくれ!』(笑)。あのさ、この発想で行ったら、まず女、逃げますよ(笑)。
(ジェーン・スー)そうそうそう。親に相談してね、別れちゃうよ(笑)。なんだ、そりゃ?
(宇多丸)『世の中にはそうやって使っていい・・・』。つまりさ、彼女側は経済的負担はないのだからということなんですかね?
(ジェーン・スー)に、してもだよ・・・
(宇多丸)どう?でもさ、男性側がたとえばね、経済的な余裕が違くても、そこでだからってね、『お前ん家、金持ちだろ?』って言われて・・・って、どう?
(ジェーン・スー)ぶつよね。
(宇多丸)ぶつ(笑)。やっぱそこは、男なんだから。そこは貧乏デートでもいいから、少なくとも対等を。背伸びして。
(ジェーン・スー)いや、別に男女は関係ないですよ。
(宇多丸)男女は関係ないよな。
(ジェーン・スー)ぜんぜん関係ない。だからその、どっちがおごってもいいし、なんでもいいですけど。
(宇多丸)女の子でも、『えっ?だって佐々木くん家、文京区で医者の家で金持ち何でしょ?』って。
(ジェーン・スー)『おごって、おごってー!』。
(宇多丸)『○○買ってー!』っつったらね、それはちょっと、すいませんねっていうことになりますからね。
(ジェーン・スー)とにかくね、40すぎたらね、友達が言ってました。すごいなと思ったんですよ。『稼ぐ男より、使わない男』だそうです。
(宇多丸)ああー、それはその、生活観念がやっぱりビシッとしてるっていうことなんだね。
(ジェーン・スー)だから、たかっちゃダメだ!
(宇多丸)これは、どう?北方先生。ちょっとこれ・・・ふられている可能性、ありますよ。この彼。ねえ。ただその、いずれ・・・お前はまだ成長期間なのだからっていうのはありますよ。僕はかつて、高校の時にですね、集団デートしている相手。まだ彼女とかいませんでしたから、集団デートしている相手に言ったのは、『俺みたいなタイプは30すぎてからがヤバいぞ。わかってんのか?』と。
(ジェーン・スー)16、7の時に言ってるんですよね?(笑)。
(宇多丸)『わかってんのか?いまはたしかに、諸々冴えない感じがするかもしれないけど。30越えたらマジで』って。でもこれ、マジですよ。
(ジェーン・スー)結果、そうなってますよね。
(宇多丸)ああ、あん時!聞いてるか、おい!
(ジェーン・スー)覚えてないよ、もう!どこの女子校の子だか知らないけど。
(宇多丸)本当に!
(ジェーン・スー)以上、お悩み時空パトロールでした。
(宇多丸)大妻だよ、大妻。
<書き起こしおわり>