星野源と宇多丸『Same Thing』EPとワールドツアーを語る

星野源と宇多丸『Same Thing』EPとワールドツアーを語る アフター6ジャンクション

(宇多丸)そうだよ、そんぐらいだよ。「私は星野源だ」という。その「私は星野源」っていうのをすごく受け入れて……それこそセラピーかもしれないけど、受け入れるプロセスを経ての『私』っていう。なんかその……いい流れなんですよね。だからこの『私』が最後に来ることで「ああ、これはたぶん次の星野くん仕切りの、また再び星野くんが1人で立ってる星野くんとしての作品というところにまた出口ができたんだな」っていう感じがするんですね。

(星野源)まさにその通りですね。

(宇多丸)いやー、それは僕としては「なんだよ、出ちゃったのかよ……」みたいな。

(星野源)フハハハハハハハハッ! もっと迷ってもらってほしかったみたいな?(笑)。

(宇多丸)「なんだよ、早えな。4曲かよ……」みたいな。「なに、迷ってんの4曲なんだよ?」みたいな。

(星野源)でも僕も、もっとこういうのを何枚も出すつもりだったんですよ。そうじゃないとセラピーは完了しないだろうなって思ったんですけど、意外と1枚でいけちゃったっていう。

(宇多丸)ねえ。それはでも、すごくいい出会いもあって……みたいなことかな?

(星野源)そうですね。本当にまず、Superorganismとやった作業が本当に楽しくて。もう、あの曲って会議室で作ったんですよ。

(宇多丸)会議室で何かすごいダラダラ……。

(星野源)ダラダラとお菓子を並べてテレビにMacをつなげてNetflixとかYouTubeとか見ながら……(笑)。

会議室でダラダラしながら制作

(宇多丸)「真面目にやれ!」っていう(笑)。

(星野源)で、僕はあのギターと歌詞、Aメロ、サビまでは全部作って持ってはいったんですけども。

(宇多丸)歌詞っていうのはそれ、英語詞をもうすでに書いてたっていうこと?

(星野源)その時は日本詞なんですよ。で、その場でオロノとエミリーっていうあのキーボードを弾くメンバー。編曲とかもいろいろやっていて。まあ、みんなやってるんですけれど中心としてやってるメンバーがいて、そのエミリーが来てくれて。で、その場でオロノが訳してくれて。その訳している間に「じゃあ、俺ちょっと組んでるね」って。もうパソコンでパチパチやりながら、キーボードを弾きながら。ヘッドホンでやってるからこっちには音は聞こえないんですけど、こっちでは英語訳をしていて。それをその場で僕は練習して。

(宇多丸)ああ、オロノさんは日本語ができる?

(星野源)日本人です。そうなんです。10代の時には向こうに行っているんですけど、どっちもしゃべれるというか。英語もいわゆるネイティブで。で、僕もそれを練習しながら。で、エミリーが「できたよ」って言って聞いて、「ああ、最高だね!」って言って。「もうちょっとじゃあ、ここに歌を入れて、コーラスも入れよう!」っつってコーラス入れて「最高だね!」ってなって。「なんか大サビがほしいな」って思って。

(宇多丸)それは会議室ですか?

(星野源)会議室です。本当にこういうマイクで。普通のハンドマイクでやって。その中で「もうちょっと展開ほしいから大サビを考えるわ」っつって端っこでギターを弾きながら大サビを考えて。「Wabi Sabi♪」のところを考えて。「じゃあ、これを今作ったからやろう」「じゃあ俺、今組むわ」って言って組んで。それで上がってきて「うわっ、最高だね!」みたいになって。「じゃあ、みんなで『Wabi Sabi♪』って言おう!」みたいな。なんかそういう感じで1日でできたんですよ。

(宇多丸)それって会議室でハンドマイクで……っていう、それって出来上がりバージョン?

(星野源)音は……いろいろ混ざってるんですけども。他のメンバーはその時はいろんな国にいたので。彼ら帰ってからメンバーと合流した時にまた重なって……みたいな。

(宇多丸)ああ、それがパーツとしてあるっていうことだ。へー! すごいね! 会議室って一番煮詰まる場所なんですけどね?

軽音部の部室みたいな感じ

(星野源)そうなんですよ。だから部室だったんですよね。軽音部の部室みたいな感じで音楽が作れて。で、そのいわゆるそれまではやっぱりどうしてもスタジオに入って「じゃあ、何かやりましょう」っていうと1時間ごとになんかお金の音がするっていうか(笑)。

(宇多丸)そりゃそうだよね(笑)。

(星野源)煮詰まって「うーん……」とかって言っていて1時間経つと「ああ、◯万円、◯十万円……」みたいな。

(宇多丸)星野くんがそんなこと気にしなくていいはずなんですよ、それは?

(星野源)で、みんなもちろんそんなことプレッシャーをかけないし、みんな優しいんで。「いや、全然もうゆっくりやりましょうよ」って言ってくれるんですけど、やっぱりどうしても気になるはなるじゃないですか。でもそんな中で、リリースも決まってない。で、売るかどうかも決まってない。そんな中で友達が海外から来てくれて、ご飯を食べながらYouTubeを見て。で、海外のなんか面白いコメディを見てゲラゲラ笑って「ああ、曲をやらなきゃ」って言ってやって。それで1日であれができて「いやー、もう最高!」みたいな。「音楽って楽しい!」みたいな。

(宇多丸)そうだよね、それはね!

(星野源)その体験がもう本当に楽しくて。なのでPUNPEEくんとの『さらしもの』もスタジオというよりも個室みたいな、もう本当に会議室みたいなところでずっと2人でリリックのやり取りをして。で、ラップも練習したのをPくんに聞いてもらって。「じゃあ、もうちょっとこうしましょう、源さん」みたいな。

(宇多丸)なんかPくんも割とね、プロデュースっていうか。仕切りみたいなのもちゃんと出ててっていうことですよね。

(日比麻音子)「原点に返る」というか、解き放たれた作り方だったっていう。

(星野源)そうなんですよ。本当にピュアっていうか、アホに音楽を楽しむっていうか。なんかあの頃の感じっていうんですかね?

(宇多丸)初期衝動だね。

(星野源)いろいろと覚え始めた……楽器を持ってちょっと弾けるようになってきたみたいな。で、オリジナルを作ってみて友達から「おお、いいじゃん!」とか言われて超嬉しいみたいな。なんか「その感じにこの歳でもう1回、やれるとは!」みたいな。

(宇多丸)へー! じゃあ、やっぱりすげえ重要EPですね、『Same Thing』はね。特に星野くんにとっては。

(星野源)はい。僕にとってだから本当に。

(宇多丸)じゃあ、ちょっとここらでもう1曲、行きましょう。やはり『さらしもの』、行ってみようかね。Pさまね。では、曲紹介をお願いします。

(星野源)はい。じゃあEP『Same Thing』の中に入っております。PUNPEEくんと一緒に作りました。星野源で『さらしもの feat. PUNPEE』。

星野源『さらしもの feat. PUNPEE』

(宇多丸)はい。『さらしもの feat. PUNPEE』を聞いていただいております。これ、ちなみに……まあまだね、作ってもいないし、聞くのもあれだけど。このEPを作った後でやっぱりモードは変わったっていうことですよね?

(星野源)そうですね。あの、変わったんだと思います。あとは、ちょっと普通な言葉ですけども、自由な気持ちになれたというか。

(宇多丸)じゃあいよいよ次もね。まあまあ……。

(星野源)あと、ツアーを経たことで。すっごいいろんなことがありました。

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