星野源と松重豊 影響を受けた人を語る

星野源と松重豊 食事と演技のコンディション作りを語る 星野源のオールナイトニッポン

松重豊さんがニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』に出演。星野源さんと影響を受けた人について話していました。

(星野源)これは茨城県の方。「松重さんが『この方に影響を受けた』と思われる方はいますか? ちなみにどんなところに影響を受けたと思われますか」という。たしかにあんま聞いたことないですね。影響を受けたっていうのは。

(松重豊)影響を受けた……。

(星野源)僕だったらたとえば細野晴臣さんとか。音楽だったら。お芝居だったら松尾スズキさん、宮藤官九郎さんとかっていうのはありますけど。松重さんはありますか?

(松重豊)影響ね……いろんな人を瞬間的に「すごい素敵だな」と思って吸収しようとかって思うんだけど、本当に長続きしないんだよね。だから瞬間的にヒュッとちょっと盗んで……っていう感じでズルく生きてきたから。なんだろう? 心酔する人もそんなにいないし。俺、師匠が蜷川幸雄っていう恐ろしく芝居の下手な演出家だったから。

(星野源)フハハハハハハハハッ!

(松重豊)いや、本当にそうなんだよ。もうこれはね、有名な話で。太地喜和子さんが「私、こんな人に演出されてると思ったら恥ずかしいから。テレビに出ないでくれます?」って言われた人ですよ、あの人は。

(星野源)そうなんですね!

(松重豊)そうそうそう。

(星野源)僕、蜷川さんお会いしたことないんですよ。なので……そうなんですね。蜷川さんのお芝居も僕、見たことないんです。

(松重豊)あのね、時々ね、昔の水戸黄門とかにね、弱い町人みたいなやつで出てくるんだけど、もう下手なのよ。もう自意識の塊で。で、その師匠がさ、時々芝居をさ、「お前、こんな風にやるんだよ!」ってやるんだけども、それでもう著しく下手なのね。それを見てるから。で、その師匠から教わったから。だからその師匠に演技を学んでないんだよね。

(星野源)なるほど。そうか。じゃあそのコピーみたいなことはやれないわけですね。自分で考えるしかない。言われたことは。

(松重豊)その時、主役やってたのが平幹二朗さんで。平さんのマネはやってたの。

(星野源)なるほど。その時は学生の時ですか?

(松重豊)いや、俺は大学をすぐやめて蜷川スタジオっていうところに入ったから。23、4、5とかの頃かな? だから、うん。なんかね、いいな。そうやって誰か……その細野さんみたいにさ、この人に憧れてなりたいとかっていうものがあればさ。なんか指針があるなと思って、いいなと思うんですよ。

(星野源)そうですよね。でもなんか、僕の場合は高校生の時に細野さんも松尾さんも知って。

(松重豊)すごいね。細野さんと松尾さん。

(星野源)だから、本当に友達がいなかったです。誰も知らないから。その当時の高校生は細野さんもそのいわゆる再ブームみたいなのの全然前でしたし。あとは松尾さんのことも知ってる人は当時はいなかったんで。

(松重豊)「大人計画?」なんてね。

(星野源)そう。まだテレビに出る全然前なんで。小劇場界では有名でしたけど。だからその……でも、目指そうとは思うけど、どうやってもなれない2人なんですよ。いわゆる、盗めないっていうか。盗むとかじゃないみたいな。なんて言うんですかね? オリジネイターすぎて。だからその、そうそうに「なろう」と思うことを諦める2人だったんで。それはすごいよかったです。

(松重豊)そういうのってさ、やっぱりその生き方だったりするの? 音楽性だったり演劇性だったり……どっちが「なりたい」っていうベクトルが向くの?

(星野源)でも、どっちかっていうと作品ですね。

(松重豊)作品なんだ。「こういう作品を残したい」って。だから細野さんだったらそういう音楽をやりたい。松尾さんだったら……。

(星野源)芝居とかエッセイとかっていうのを。「いや、すごい素敵だ。こうなりたい」って一生思うんですけど、自分でやればやるほどそうならないっていうことが分かるっていうか。で、そうなっちゃダメだっていうことが分かるようなタイプの人っていうか。

(松重豊)それはでも分かる。蜷川さんっていうのも生き方というか、そういうところでの方程式はすごい、ものすごくいいもんを教えてもらったなっていう気がするけど。じゃあ逆にさ、星野くんが演者として。役者としてとかっていうのはある?

(星野源)ああ、何だろう? お芝居……演技みたいなことですか?

(松重豊)演技っていうか、うん。「この人の芝居の組み立て方ってすごいな」とか。

(星野源)僕は……そうですね。宮藤さんのお芝居が大好きなんです。

(松重豊)ああ、やっぱり自分の劇団のというか。

(星野源)そうですね。宮藤さんのお芝居ってたぶん誰もできないと思うんですよ。あのお芝居の仕方って。立ち方っていうんですかね? なんて言えばいいんでしょう? だからいわゆる演劇的な基礎をやってる人じゃないですし、その演出もしながら演技する人じゃないですか。

(松重豊)だからそこがズルいんだよね。みんなさ。みんなズルいんだよ。ほら、他のこともできるけども、なんか立ってますみたいなさ。

独特の立ち方

(星野源)独特の立ち方。細野さんもそうですよね。細野さんも音楽をプロデュースしている人だけども、歌うじゃないですか。だからその、細野さんしかない歌であって、いわゆる歌手じゃないっていう。だからそれは僕もそうなので。僕もそうありたいので。歌手じゃないから、僕は。音楽を作りたい人なので。だからその独特さみたいなのはやっぱりすごく憧れるというか、なんというか。それの魅力がやっぱり好きっすね。

(松重豊)まさにいまの星野くんがやってることがまず、そこなんだけどね。そこにやっぱり……そういう立脚点があるっていうのが羨ましいし。そういう人の立ち方の強さっていうのがやっぱりあるなとは思うんですよね。

(星野源)そうですね。でも松重さんのお芝居を見てると、本当に……そのいままで話してきた人と同じなんですけど。松重さんはいわゆる役者のみというか。そのお仕事じゃないですか。いわゆる、演出もやって……みたいなことじゃないけど。なのに、松重さんしかできない立ち方をされてて。

それが他の役者さんにはない要素だと思うんですよ。やっぱりなんか、その学びからスタートしてる人とか。あとは先輩後輩の流れからスタートしている人とかがすごい多いので。そういう人たちってやっぱり「その人しかできない」というよりも、方法の中で表現していく人って多いと思うんですけど。やっぱりそのご自身の人間で立っている部分がやっぱりあって。それはちょっと他にない立ち方なんだと思うんですよね。

(松重豊)いや、長いことやってるだけですよ、本当に。長いことたまたまやっていってたんでね、そういう風に見える時もあるかもしれないっていうぐらいですよ。本当に。

(星野源)それが僕は大好きですし。しかもその、前も話しましたけど。その、無になったりっていうことが目標であるということが、やっぱりそこなのかなという感じがしますね。

(松重豊)「何者にもならないようにしよう」と思ってるだけですけどね。うん。

(星野源)素晴らしいです。こんなに話が進むとは思ってませんでしたけども。もう、このままずっと話すっていうのも面白いですね。

(松重豊)いやもう話すのも、音楽の話をする……これ、第二部の人たちにちょっと今回、やめてもらう?

(星野源)フハハハハハハハハッ!

(松重豊)一応これで、延長線で……。

(星野源)じゃあ、Creepy Nutsの2人にはやめてもらおうかって言いつつね。

(松重豊)5時以降はどこかの居酒屋でも何でも押さえてやることはやぶさかではないと言っておきましょう。

(星野源)じゃあ、今日は4時間収録っていう感じですかね?(笑)。

(松重豊)ですかね。うまくエッセンスを編集していただいてね。

(星野源)いや、いいですね。ちょっと芝居のお話も……じゃあ、「この方に影響受けたという方はいない」ということですね。

(松重豊)いないですね。残念ながら。

(星野源)各所でいろんな人に会って触れていったという?

(松重豊)そうそう。星野源にも僕は影響を受けましたよ。もちろん。

(星野源)本当ですか?

(松重豊)もちろん。そりゃそうですよ。もう『引っ越し大名!』の時もやっぱりいろんなもんを盗んでますからね。他所でこのテクニックを出そうって。

(星野源)フハハハハハハハハッ! すごい! なんか、それ嬉しいですよ。

(松重豊)もうそれはね、自分の中に全部ストックしているんですよ。

(星野源)すごいなー!

(松重豊)意地の汚い俳優なんでね。

(星野源)僕は『引っ越し大名!』の時に本当に好きだったのが、於蘭さんっていう高畑充希ちゃんの子供の役の子がいたじゃないですか。その子が淡路島の砂浜の撮影の時に、なんか寿司を急に握り出したの覚えてます? あのちっちゃい子が。

(松重豊)なんかやっていたね。

(星野源)「トロ!」とかって言って。「なにをたのみますかっ!?」みたいに言われて。「じゃあ、マグロください」「わかりました!」みたいな。

(松重豊)やってた、やってた。かわいい子ね。

(星野源)で、松重さんもそこで注文して。

(松重豊)ああ、なごんだね。あの殺伐とした雰囲気が。

(星野源)フハハハハハハハハッ! あまりに過酷すぎてね、大変だった。

(松重豊)もう淡路島、嫌な思い出しかない。いやいや、いまだから言えますよ。それはね。

(星野源)フハハハハハハハハッ! 本当に……もう本っ当に大変でしたね!

(松重豊)何回も行かされたもんね。本当に。雨が降って。

過酷すぎた淡路島ロケ

(星野源)本当は1日とか2日で終わるはずだったんですけどね、もう何日も何日もね、大変でしたね。その大変な中、エアー寿司を握って。その寿司を松重さんがたのんで。なんだったかは忘れたけど。アジだったかな? わからない。忘れたけども。たのんで、それをエアーで食べるわけですよ。それがあまりにもうまそうで。その寿司が。見えないのに。「ちょっと、もう1回見せてくださいよ!」って言ったら「いや、企業秘密なんで」って断られたのが僕は……「この技術は企業秘密なんで」っていうね。

(松重豊)もう往年の落語家のような風情ですよね。「蕎麦が見えた!」みたいな感じでね。

(星野源)いや、本当です。ネタが見えましたよ。寿司が見えましたよ。

(松重豊)ありがとうございます。

<書き起こしおわり>

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