塚田桂子と渡辺志保 ロサンゼルスのギャング事情を語る

塚田桂子と渡辺志保 ロサンゼルスのギャング事情を語る MUSIC GARAGE:ROOM 101

塚田桂子さんがbayfm『MUSIC GARAGE ROOM 101』に出演。自身が翻訳を手掛けた『ギャングスター・ラップの歴史』の話をする中で、実際に住んでいるロサンゼルスのギャング事情についても紹介していました。

(渡辺志保)引き続きこの『ギャングスター・ラップの歴史 スクーリー・Dからケンドリック・ラマーまで』という著書についてうかがっていきたいと思うオンですけども。

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(渡辺志保)やっぱり私もギャングスタ・ラップ、好きで聞いているわけですけども。やっぱり日本に住んでいると、なかなかこうギャングの暮らしって当たり前ですけどちょっと距離を感じるというか。自分にとってはちょっとファンタジーと言ったら変ですけども。ちょっと現実とは違う世界だと。そういう世界のことを生々しく楽曲で感じることができるから、そこに私も醍醐味とか面白さを感じてあれやこれやと……ノーリミットの曲とか、それこそN.W.A.の曲、2パックの曲とかを聞いているわけなんですけども。実際に塚田さんがLAに住まわれて、ギャングとの関わりを身近に感じることっていうのはあるんですか?

(塚田桂子)実際には、普段の生活では全くありません。正直。住んでるところとかも全く違うので。ないんですけれども、唯一間接的ではありますけれども関わったというか……初めてそういう体験談を聞いたのが私のLAの親友の男の子。LA生まれ、LA育ちなんですけども。その彼が生まれ育ったところがもうクリップスのある派閥の地域で。彼はギャングに入る意志は全くなかったけども、もう住んだところで割り振られる。地区の自治会みたいな感じで、「ここに住んでいるから、これ」みたいな。割り振りみたいな感じで彼も自動的にメンバーになっていて。

(渡辺志保)そうなんだ。じゃあ、「今度お祭りがあるからあなたはお神輿担当ね」みたいな感じで?

住んでいるエリアで自動的に割り振られる

(塚田桂子)私たちのノリではそんな感じですよね。で、実際に彼はギャングバンギングとかには直接参加してなかったけれども……彼、ヒップホップ文化的にはグラフィティをやっていたので、彼はそっちの方をどっちかと言えば一所懸命やっていた方なんですけども。

(渡辺志保)じゃあ、アートの方向に行ってらっしゃったんですね。

(塚田桂子)だけども、実際の彼の近所の友達とかはもう本当に積極的にギャングバンギングに参加していて。最初会った頃にその話を聞いた時は全く実感がわかなかったんですけども。この本を訳してみて改めてびっくりしたのが、彼がそのティーンエージャーの頃とかにつるんでいた、ギャングに所属していた友達はもうみんな死んでしまっていないという。だいたい銃で撃たれたり、抗争で……ケンカとかで死んでしまって。1人残らず死んでしまうって普通、私たちの感覚ではちょっと考えられないですよね。

(渡辺志保)考えられないですよね。で、やっぱりこういうギャングスタ・ラップ系の曲を聞いていると歌詞の中にも「25歳までは生きられない」とか「成人することができず命を落としてしまう」みたいな歌詞もあって。でもそれはじゃあ、誇張ではないっていうことなんですね。

(塚田桂子)ないんですよね。びっくりしますよね。そういう話を近い友達から聞いて、すごくびっくりしました。

(渡辺志保)そうなんですね。でもスクールボーイ・Qやジェイ・ロックとかのリリックもそうですけども。やっぱり番地とかストリートの名前がすごい出てくるじゃないですか。やっぱりその、区画によって分かれているものなんですね。本当に。

(塚田桂子)そうみたいですね。

(渡辺志保)で、だいたい青をテーマカラーにしているクリップスと赤をテーマカラーにしているブラッズに分かれていると思うんですけども。私もちょっと前、いま6ix9ineっていう若いラッパー。彼もいま、ギャング絡みの犯罪で逮捕されているわけですけども。それで彼の親しい人のインタビューをPodcastで聞いてたら、ニューヨークってやっぱり狭いから。LAほど赤と青がはっきり分かれてないっていう。

「ここのアパートには青の人も住んでるけど、隣のアパートには赤のやつも住んでいるみたいな。だからそこがちょっとLAのギャング事情とは違うから、LAの常識でギャングのことを語られても困るんだよね」みたいなことをそのインタビューでは言っていて。「ああ、なるほどね」って思ったんですけども。まさにいま、塚田さんがおっしゃっていたみたいにエリアによって細かく分かれているという。

で、あとはそのギャング同士、ブラッズとクリップスの対立ということで言うと、私が印象的だったのが今年、ニプシー・ハッスルが3月に銃で撃たれて亡くなるという事件がありましたけども。その直後、YGが非常にニプシーの追悼というか、そういうアクションを非常にも積極的に起こしていて。で、ニプシー・ハッスルって元々はその青をテーマにしたクリップスのメンバーで知られていましたけども。で、逆にYGはブラッズの一員として知られている。

派閥を超えたニプシー・ハッスルへの追悼

ただ、彼もラップのリリックとか自分のスピーチでも「もう赤・青関係なくブラザーたちが手を取り合おうぜ」みたいなことを盛んに言ってるの見て、本当に美談ですけれども。そういう激しい対立っていうのが今後、もしかして徐々に薄まっていくのかな?っていう風に海の向こうで見てる側としては思ったことではあるんですけれども。塚田さんも、もちろん普段そういう環境にどっぷりいらっしゃるわけではないにしろ、そういった空気感っていうものを感じることはありますか?

(塚田桂子)直接その地域に住んでるわけではないので、普段感じることではないんですけれども。話では、ニプシーが生前、赤・青関係なく友情を育んでいる存在であるっていうのは聞いていたんですけども。それを唯一実感したと言えるとしたら、彼の告別式がLAのステイプルズ・センターっていう大きいところで……。

(渡辺志保)NBAのレイカーズの試合をやるような大きなところで。

(塚田桂子)楽しい場所のはずなのに、ステージに棺が置かれていて。すごい悲しかったんですけれども。そこに集まってきて、スピーチをした人たちが本当にそういう派閥とか全く関係なく追悼の言葉をスピーチしていたんですけども。スヌープは青い服を着てやってきて、YGは赤い服ではなかったと思うんですけども。もう全然派閥に関係なく、ニプシーへの親愛の情を表現していて。その場でもYGが言っていたんですけども。

「ニプシーは本当に派閥の違いとかも何も関係なく友情を育むこと教えてくれた人だ」っていうことを強調していて。もうすごくエモーショナルなスピーチを……スヌープも本当にエモーショナルなスピーチをしていて。ユーモアを交えながらもニプシーへの親愛の情を。本当に辛い思いをユーモアも加えながら表現していたっていうところにニプシーの大きさを感じましたよね。

(渡辺志保)そうですよね。なんか亡くなってからこういうことを言うのも本当に惜しいっていう感じがしますけども。やっぱり彼の死をもって、なにかしら我々が学ぶことというか、そのレガシーを引き継ぐことの重要さみたいなものを改めて私も……遠くで聞いている一リスナーですけども、感じたなというところがありますね。いや、いまお話をうかがっているだけでも勝手にエモーショナルな気持ちになってしまいましたが。

<書き起こしおわり>

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