渡辺志保さんがbayfm『MUSIC GARAGE:ROOM 101』の中で急逝した映画監督ジョン・シングルトンさんを追悼していました。
(渡辺志保)4時台前半はですね、先日惜しまれつつ急逝した映画監督ジョン・シングルトンについてお話ししたいなと思います。先日、4月29日、ロサンゼルスの病院で死去ということで。ジョン・シングルトン監督は1968年カリフォルニアのロサンゼルス生まれということで享年51歳。まだ51歳だし、映画監督としてはね、まだまだこれからというところもあったんじゃないかと思うんですけれども。
その前に、重い脳卒中を患って治療を受けていらっしゃったんですけども、息子さんが発表されておりましたが生命維持装置を外す決定がなされたということで。これまたすごくね、ご遺族の方にとっても非常に辛い決断だったのではないかと思うんですけれども。去る4月29日にこの世を去ったということでございます。
ジョン・シングルトン監督なんですが、ロサンゼルスに生まれて。その後に南カリフォルニア大学を卒業後、ギャングの抗争など描いた映画『ボーイズン・ザ・フッド』で映画デビュー。そしてアカデミー監督賞に史上最年少かつアフリカン・アメリカンの監督としては初めてノミネートされたという偉業を成し遂げた映画監督でもあるということです。
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で、『ボーイズン・ザ・フッド』は1991年の映画作品なんですけれども。この翌年、1992年には『ジュース』という映画が発表されまして。ヒップホップと映画界を結びつけるような感じでしたけども。いわゆるフッドムービーというのが流行したんですよね。
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で、まさにそのきっかけを作ったのがこのジョン・シングルトン監督なんではないかと思っております。ちなみに同じ南カリフォルニア大学に在籍した映画監督といえば、あのスパイク・リーもね、大学時代から映画を学んでいたということで。スパイク・リーはご自身の故郷でもあるニューヨークを描き続けた。そしてジョン・シングルトンはLA、西海岸の方を描き続けた映画監督という印象があります。
で、『ボーイズン・ザ・フッド』、私はリアルタイムで拝見したわけではなくてですね、その後に高校生ぐらいの時かな? 先輩に勧められて『ジュース』を見て。その後にたしか『ボーイズン・ザ・フッド』を見たような気がするんですけれども。まあ「フッド(Hood)」ってよくラップの歌詞には出てきますよね。いわゆるスラングで「地元」を表す言葉ですけれども。
ラップの歌詞でしか聞いたことがないフッド、そしてその暮らしぶりというのをですね、初めて映像でバーッと見てですね、「ああ、こういうことなんだ。こういう家族がこういう風に暮らしているんだ」と。そして本当悲しいことかもしれないですけれども、まあギャングがいる暮らし。こう言うとすごくすごく変ですけれども、まあその抗争が常に絶えないということですよね。後は警察からの暴行であったりとか……なんて言っていいのかな? すぐそばで殺人事件が起こってしまうような。
で、それを子供たちも見てしまうような、そういうた生活がここにはあるんだなっていうのをありありと見せられたのがまさに『ボーイズン・ザ・フッド』という感じがしました。で、この映画といえばですね、アイス・キューブですね。当時、N.W.A.という西海岸、コンプトン出身のラップグループのリーダー格でありましたアイス・キューブが映画デビュー、俳優デビューしたのもこの『ボーイズン・ザ・フッド』なんですよね。
俳優・アイス・キューブを見出す
で、アイス・キューブもこのジョン・シングルトン監督が逝去された際にツイッターで「私はジョン・シングルトンによって見出された存在なんです。私のブラザー、友人、そしてメンターでもある彼をなくしてどんなに悲しいか、言葉も見つかりません。シングルトン監督はブラック・エクスペリエンスを世界にもたらすことを非常に愛していた監督でした」ということでツイッターでつぶやいておりまして。ジョン・シングルトン監督と一緒に1990年にカンヌで撮影した写真をですね、ツイッターでつぶやいておりまして。本当になんか歴史を感じるなという、そういった思いを抱いてしまいました。
I was discovered by a master filmmaker by the name of John Singleton. He not only made me a movie star but made me a filmmaker. There are no words to express how sad I am to lose my brother, friend & mentor. He loved bring the black experience to the world. ..Us at Cannes ‘90 pic.twitter.com/CaRKjZtjgB
— Ice Cube (@icecube) 2019年4月29日
で、アイス・キューブといえば本当にいまも、いまだにラップアルバムをリリースしておりますけれども。それ以上にやっぱりハリウッドでの活躍が目覚ましい。もしかしたら若い方はアイス・キューブがラッパーではなくて、もう俳優だと思ってらっしゃる方もたくさんいるんじゃないかと思いますけれども。元々そのアイス・キューブのハリウッドでのキャリアのきっかけになったのが、そのジョン・シングルトン監督ということで。91年に『ボーイズン・ザ・フッド』を作った、後は93年に『ポエティック・ジャスティス』という映画を作ってるんですよね。
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これ、日本語のサブタイトルも付いておりまして『ポエティック・ジャスティス/愛するということ』という……いいタイトルだと私はすごく思っていまして。この映画もですね、あるミュージシャンの映画デビューのきっかけになったんですけれども。それが、ジャネット・ジャクソンということで。もう当時のジャネット、めちゃめちゃかわいいですよね。もちろんね、マイケル・ジャクソンの妹として本当にアメリカの国民の妹みたいなキャラクター。当時、そういうイメージも強かったと思うんですけれども、『ポエティック・ジャスティス』のジャネットはどっかちょっと小悪魔的というかね。
この映画はジャネット演じるジャスティスという女の子のモノローグ。本当にポエティックなモノローグで物語が進んでいくんですけれども。そのイメージもジャネットにぴったりでしたし。あと、ルックスと言うかファッション的には90年代の黒人の女の子たちのファッションがすごく個性的でかわいいなと思うし。細く編まれたブレイズヘアとかもねすごく素敵だなと思って昔、この映画を私も拝見しておりました。
で、何と言ってもこの『ポエティック・ジャスティス』はジャネット・ジャクソン演じるジャスティスの相手役がね、あの2パックということで。2パックの方はその前年の92年の『ジュース』で俳優デビューをしてるんですけれども、『ポエティック・ジャスティス』でちょっといま考えると想像がつかない感じですよね。ジャネットと2パックが恋人役で映画に出るなんて……って感じですけれども。まあ、このジョン・シングルトン監督の訃報をきっかけにビルボードで記事が出てたんですけれども。
「彼は常にそのハリウッドとヒップホップのシーンをコネクトし続けた、つなぎ続けてきた人物でもある」という風に語られておりましたし、本当にまさにその通りだなと思います。あとは、マイケル・ジャクソンの『Remember The Time』のあのちょっとねエジプト、エジプシャンな雰囲気のミュージックビデオであるとか。
あとはフッドムービーばっかり撮っていたわけじゃないよということで、『ワイルドスピード2』。あちらもジョン・シングルトン監督ということで。本当に繰り返しますけれども、映画監督って60歳になっても70歳になってもメガホンを取り続ける方がたくさんいらっしゃるじゃないですか。ジョン・シングルトン監督も最近だとテレビドラマでね、『スノーフォール』という同じく昔の西海岸を舞台にしたテレビシリーズを撮っていたところでしたから。これがこの後にまたね、映画の銀幕の世界に戻ってくるとどんな作品になるんだろうなって思っていたところでしたので、非常にうーん……惜しむべきという感じですよね。
ちなみにいま、発売中の『ユリイカ』という文芸誌があるんですけれども。ちょうどですね、スパイク・リー監督の特集をやっておりまして。そこで私も対談の企画で参加させていただいたんですね。そこでちょうど、やっぱりブラックムービーの歴史といいますか。主に90年代以降のブラックムービーの変遷を振り返っていたところでしたので。その中でのこの訃報というのは非常にこう、いろいろとちょっと考えさせられるきっかけにもなりましたし、当時のジョン・シングルトンの監督作をまた見返す……まあ、皮肉にもですが、いいきっかけにもなったなという感じです。
『ボーイズン・ザ・フッド』は日本でもアマゾンプライムとかNetflix、もちろんiTunesのムービーでもレンタル、そして購入することができますので。ぜひぜひヒップホップ好きな方はこの機会に見てみてはいかがでしょうかという感じです。というわけで、ここのコーナーからはその『ボーイズン・ザ・フッド』のサウンドトラックから1曲、お届けしたいと思います。アイス・キューブ、『How To Survive In South Central』。
Ice Cube『How To Survive In South Central』
<書き起こしおわり>