音楽評論家の田中宗一郎さんがInterFM『Oh Wow, Very Cool!』に出演。SuperorganismのOronoさんと過去の作品をさかのぼって掘ることの重要性について話していました。
11pm, Thu 8/22 ▶ Oh Wow, Very Cool!
DJ: #orono
先週に引き続き、音楽評論家 #田中宗一郎 @soichiro_tanaka さんが登場、日本の好きな点、嫌いな点をoronoと語り合います
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(田中宗一郎)(キャンディーズ『夏が来た!』を聞いて)伊藤蘭。わかる? いま、水谷豊の奥さん。それが初めてコンサートをやるっていう。
(Orono)ふーん。
(田中宗一郎)で、キャンディーズが好きだったの。俺が中学生に。でも高校受験の時だったから、東京で後楽園球場で解散コンサートっていうのがあったんだけど、当然行けないじゃん。それ以来のリベンジ。
(Orono)ふーん。
(田中宗一郎)ご両親が好きな……ここ10年、20年じゃなくて、日本のカルチャーだったり、2000年分さかのぼるなかで、みたいな話をご両親としたりしないの?
(Orono)彼ら、あんまり好きじゃないから。日本。
(田中宗一郎)ご両親ともに日本が好きじゃないんだよね?
(Orono)そう。でももう2人とも、もう日本の生活に慣れてるからいるけど。全然、自分とかには「日本には留まるな」みたいな教育をされてきたから。
(田中宗一郎)俺なんか、去年ぐらいからずっと任侠映画を見てたって言ったじゃん? で、その後にだからだんだんとさかのぼってきたわけ。60年代の任侠映画を見ていたんだけど、その後に50年代の時代劇を見るようになって。その後に30年代……要するに戦前のトーキーになったぐらいの時代劇とかを見るようになったんだけど。時代がさかのぼるほど面白くて。そこにちょっとアクセスできるの。そこに、「この日本好きかも」みたいなところをね、発見していて。
(Orono)うんうん、なるほど。そういえば、あるわ。伊丹十三が好き。そういうのが好き。やっぱりさかのぼるんだ。さかのぼって面白いものを見つけて、それをパクればいいんだ。
過去にさかのぼって面白いものを探す
(田中宗一郎)で、それも紛れもない日本だから。俺も、やっぱり戦後の冷戦時代に育ったわけですよ。いまの若い人みたいにベルリンの壁が壊れてグローバル社会になる以前。いつソ連とアメリカが戦争するんだろう? みたいな。なおかつ、60年代、70年代に育ってくるでしょう? 世の中にクールなものは全部、フロム・USAなの。「日本のものは全部ダサい」っていうのが当たり前だったの。
そこで育ったから、なかなか日本の自分が生まれる前とか戦前とか。いわんや江戸時代だなんだになってくると、全く興味がないまま育ったんだけど。改めてちゃんと歴史を勉強し直して。高校、大学と。それでいまの歳になっていろんなものを振り返ると、面白いものはたくさんある。
(Orono)そうだな。明治時代とか好きだった。勉強するの(笑)。
(田中宗一郎)明治の最初の十数年間もね、数年ごとでいろいろ違うわけよ。その違いを見るの。俺、だから映画を300本ぐらい、30年間ぐらいのを見ていたから。1年ごとに変わってくる、作家ごとに変わってくる。「こんなに違いがあるんだ!」っていうのもわかるし。「1年ごとでこんなに変化があるんだ!」みたいなのもわかるから。
その中にもやっぱり「クソだな」みたいなものと、「これはちょっと受け入れづらいんだけど、蠱惑的な魅力がある」みたいなものと、いろんなものが見えてきて。ちょっとね、もしかすると生まれてからいま、いちばん日本好きかも(笑)。
(Orono)マジで? ほー、面白い!
(田中宗一郎)だから生まれる前の日本に対する興味がすごい出てきてる。
(Orono)うーん。自分はなんか、その後に日本がもっと嫌いになったのと同時に、もっと好きになってる。だからちょっとどうすればいいか、いま分かんなくなっている。
(田中宗一郎)もっと好きになってる部分はどういう部分なの?
(Orono)たとえば、その伊丹十三のこととか。あと、その日本に来る機会が増えてきたから、なんか日本の好きなものってなんなんだろう? みたいなのを考えだして。小学生の時、宮沢賢治が大好きだったりとか、そういうのをいろいろ思い出してきた。あと、なんだろう? 普通に江戸時代の浮世絵とかすごい好きだし。そういう古いのは好きなんだよな、やっぱり。
(田中宗一郎)じゃあそれはね、もう少し極めて、もう少し掘った方がいい。
(Orono)だからいまの日本の嫌いなのは嫌いなままでいいんだ。
(田中宗一郎)そうだよ。そこを好きになる必要はない。
(Orono)でもなんか、そういうプレッシャーを感じるの。そのファンタジーになってもらいたいっていうプレッシャーをいつも感じている。でも、なりたくないし、なれないから、どうすればいいの? みたいなさ。金はほしいしさ。もっと有名になりたいしさ。どうすればいい? みたいに。自分は一体どんなブランドなんだろう?っていうのを最近、すごく考える。
(田中宗一郎)そこはね、もう自分のアイデンティティーを、だから本当に日本っていう過去にさかのぼることで再構築すればいいんだよ。
(Orono)そうか。なんか一緒に図書館行ったら面白くなりそう(笑)。
(田中宗一郎)フフフ、でも図書館とか天国よ。
(Orono)天国だよね! 図書館、行かなきゃ。
(田中宗一郎)えっ、伊丹十三は映画が好きなの? 小説が好きなの?
(Orono)映画が好き。あと、あの人の書くのも好きだ。
(田中宗一郎)うんうん。それはね、一気に掘り下げた方がいい。だって全部見てないでしょう?
(Orono)見ていない。
(田中宗一郎)映画だったら伊丹十三の映画、とりあえず全部見た方がいい。それで全然変わる。
(Orono)でもな、やっぱりこれもがんばんなきゃいけないんだ。だから。でも、がんばりじゃないんだよな。楽しみになるんだよな、これは結局。
(田中宗一郎)楽しくなるぜ。だって俺、去年の秋は週4本ぐらい……ストリーミングとかDVDを借りてきても含めて4本ぐらい見ていたのが、今年の春ぐらいから週8本ペースだから。1日にかならず1本見ているから。寝る前の2時間で映画1本見ますみたいな。止まらないよ。1回スイッチが入ると。
でもアメリカとかでもさ、アメリカの図書館で日本関係の本を見てみるとかも面白いと思うよ。だって私たちがいちばんわからないのは海外の人間がどういう風に日本を見ているのか。やっぱり翻訳されたもの以外は分からないから。そこって本当にだから、ねえ。アクセスできるじゃない? そこからいろいろ感じるところもあると思うな。外側たからこそ、勘違いしてる人たちの見方も含めて確認しながら。
(Orono)勉強しなきゃ。
(田中宗一郎)楽しいことだらけだよ(笑)。
荒井由実『やさしさに包まれたなら (single version)』
(田中宗一郎)『やさしさに包まれたなら』ってあるじゃん? あれのシングルバージョンね。でもね、70年代のニューミュージックはいくらでも掘れる。で、リアルタイムで通ってたから。それで先に海外のロックに入っちゃったのでどこか小馬鹿にしてるところあったんだけど。やっぱり大学生になってハタチになってみたいなところで聞き直してみると、結構特殊なの。全部西洋の要素でできているはずなのに、なんか日本特有のシグネチャーがあるの。ただ、それが途切れちゃうのが80年代で入ってからなんだよね。
(Orono)そうなの?
(田中宗一郎)頭ぐらいから俺、ちょっと……。たぶんその作家ごと、たとえば岡村ちゃんとかオロノ、好きでしょう? その作家性のある部分はあるんだけど、たぶん80年代の頭までは演奏家とかアレンジャーとかスタジオの人間とか、ソングライターでフロントマン以外の人たちの土台みたいなのがあったんだよ。それがだんだん失われていく感じ。
(Orono)そういうこと? ふーん。
(田中宗一郎)映画もそうなの。戦前にはすごいスタジオとか美術とか、そういう基盤みたいなものがあるんだけど、それが戦後になって50年代になって60年代になって70年代になっちゃうと、もうなにもなくなっちゃいますみたいな。だから1人の人間がアウトプットするアートの力みたいなものと、ある程度複数の人間がシステムになるような。つながりあって……みたいな環境を保つこともやっぱりアートの内容とかクオリティーを担保する重要な部分でっていうのは特に70年代とか60年代の日本の音楽を聞くと感じる。
(Orono)うんうん。ありがとうございました。めっちゃ面白かったです!
(田中宗一郎)リスナーがそう思ってくれてるといいけどね。
(Orono)思ってると思う。頭のいい人たちはすごいいい回だと思う。まあ別に頭が悪くてもいいんだけどね。頭悪くても面白いよね。だって意味わかんないよね、この話(笑)。
(田中宗一郎)アハハハハハハハッ!
(Orono)いいよ。そんな感じでいいんだ。ありがとうございます。
(田中宗一郎)ありがとうございます。じゃあ今度は逆にSpotifyのPodcastに遊びに来てください。
(Orono)ぜひ! いつ行けるんだろう?
(田中宗一郎)スケジュール、調整しないとね。
(Orono)決めないとな。よし!
(田中宗一郎)もうめんどくさがっている(笑)。
(Orono)めんどくさがってないよ! 普通に行きたいなって。だって、めっちゃ楽しいもん。タナソーさんと話すの。
(田中宗一郎)だってね、5時間ぐらい収録するんだよ。
(Orono)えっ、そうなの? それで……編集するの?
(田中宗一郎)ほぼほぼ編集しない。ヤバいところだけちょっとつまむぐらい。5時間ぐらいがたぶん4時間ぐらいになる。
(Orono)面白そう。いいね。行かせてください。
仕事と思ってない仕事、終わた
配信まだ先ですがお楽しみにっ#poplifethepodcast pic.twitter.com/3RN2o5RUn8— 三原勇希 (@yuki_mihara) September 6, 2019
<書き起こしおわり>