Oronoと田中宗一郎 2000年代以降の音楽産業の変化を語る

Oronoと田中宗一郎 音楽評論家という仕事を語る Inter FM

音楽評論家の田中宗一郎さんがInterFM『Oh Wow, Very Cool!』に出演。SuperorganismのOronoさんと2000年代以降の音楽産業の変化について話していました。

(Orono)その、ロキノンが下がってきた時って、いつぐらい?

(田中宗一郎)たぶんね、俺はスヌーザー(snoozer)っていう雑誌を対抗誌でやってたわけ。それが終わったのが2010年で。それが終わった直後に急激に落ちた。

(Orono)急激に落ちたの? なんで?

(田中宗一郎)ひとつには、俺がスヌーザーっていう雑誌を2010年にやめたんだけど、やっぱりその前の2年間ぐらいすごい作りにくくなったのよ。というのは、ゼロ年代の後半って北米のシーンだとインディーがドカンと来たじゃん? ヴァンパイア・ウィークエンドのデビューが2008年でしょう? で、あのインディーがドカンと来た時に、いわゆるそれまでのメジャー……ソニー、ワーナー、ユニバーサルみたいなところよりも、ベガーズ・バンケットみたいなインディーのレーベルが集まったコングロマリットみたいなものの力の方が強くなった。

すると、スヌーザーとかロッキング・オンっていうのはずっと10年、20年間、五大メジャーとか三大メジャーとこういう形でやり取りをするみたいな。たとえば「広告を出したら、これだけの記事はがんばるよ」みたいなことのWin-Winなシステムがあったんだけども。それがインディーレーベルに面白いものが移っちゃったことで、要はそこでうまくやれなくなったわけ。でもだからインディーがが大きくなって……っていう時期に日本の業界とかが上手くそれをピックアップできなくなったっていうのもちょっとデカかったんじゃないかな?

ビジネスの話になるとね、結構でもいろんなエレメントがある。やっぱり2010年代ってたとえばストリーミングの話もそうだし、コーチェラみたいなライブ・エージェンシーの形も全部変わったし。北米なんかは音楽業界のシステムが全部変わったのよ。

(Orono)どう変わったの? いつ変わったの? 

音楽業界のシステムが全部変わった

(田中宗一郎)たぶんね、ミレニアムをまたぐぐらいから。「クリアチャンネル」ってわかる?

(Orono)わかんない。

(田中宗一郎)クリアチャンネルっていうのは要するに、90年代の後半とか2000年ぐらいにレディオヘッドのトム・ヨークと会うとずっと起こっているわけ。とにかくずっと、その「クリアチャンネル」っていうものの悪口を言っているわけ。で、そのクリアチャンネルって何か?っていうと、アメリカのFM局って全部で1800局とかあるわけ。それがアメリカのミュージックシーンの面白かったのは、その1800局というのが全部DIYだったわけ。

で、それぞれの局がかけたい曲をかけます。あるいはそれぞれの番組のDJがかけたい曲をかけますみたいなことで、ローカルのカラーがあったりとか。あるいはバンドがツアーをしていくじゃない? 全米40ヶ所とか。すると、そのツアーの前にそのバンドの曲をかけてくれて、ライブのプロモーションもしてくれるし……みたいなこととかがいろいろあったんだけど。そのクリアチャンネルっていうのが2000年ぐらいに、その1800局ぐらいのラジオ局を全部、買収したのよ。

で、要するにクリアチャンネルっていう会社がトップダウンで1800局全部のラジオ曲で「まず、この曲をかけなさい。その次はこの曲をかけなさい」みたいなことで。トップダウンで編成にかかわってくるみたいな状況になったの。そうなるとだから、ビジネスでしかなくなったわけ。昔は「とにかくこの音楽が好きだ!」みたいな。頭の悪いDJが「これは最高だぜ!」みたいにやっていたのが、それができなくなったりとか。

(Orono)なるほど。クリアチャンネルっていう名前なの?

(田中宗一郎)クリアチャンネルはクリアチャンネルだと思う。ただ、そのクリアチャンネルとかっていうのがiHeartRadioってあるじゃん? あれに変わったりとか。

(Orono)ああ、はいはい。ああー。

(田中宗一郎)あとはジェイ・Zがやっているロック・ネイション。あとは今、世界中でブイブイいわせているLive Nationとかチケットマスターとか。そういうのが90年代にはなかったもの。だからチケットを売るとか、あるいはAEGっていうLive Nationと並ぶライブエージェンシーとかあるじゃない? あれなんかはライブ会場をバンバン買っていったの。

そうなると、たとえばロンドンにO2アリーナってあるでしょう? あれとかもAEGの持ち物だから。あとはニューヨークの800とか2000キャパぐらいのヴェニューがやっぱり2、3年前にそのAEGが買収をしたのかな? そうなると、割とその800とか2000ぐらいのニューヨークのヴェニューっていうことになると、そこはインディーアーティストの登竜門じゃん? イギリスのアーティストとかもその800とか2000とかでやれると……それで東海岸のお客さんの方がさ、いけ好かないけどセンスはよかったりするじゃん?

だから、そこでライブやるとワンランクUPするみたいな会場がもう、そのAEGっていうそのライブエージェンシーの持ち物になっちゃったから。インディーレーベルのインディーのブッキングエージェンシーと契約をしているバンドだと、もうそこでライブができなくなったの。

(Orono)うんうん。

(田中宗一郎)みたいなこともあって、インディーアーティストが90年代とかだとそのエリアでさ、レーベルごとのネットワークがあって。「お前、ツアー5ヶ所組んでやるよ」みたいなのがあったのが、そういうようなことができなくなったりとか。みたいなことで興行の世界でも変わったし、当然そのフィジカルとストリーミングみたいな変化もあったし。なによりもライブのチケット……チケットマスターを通さないと買えないとか、チケットが売れないとかみたいなことで、いろんなお金の流れが全部変わった。そういうことが全部、音楽の内容とか……なにが受けてなにが受けないみたいなこととかかわったの。

(Orono)面白い! それ、ちょっとバンドをやって気づいたの。「いま、いい感じで乗ってきているバンドに入っているからってお前、何そんな軽く言うんだよ?」って言われるかもしれないけど。なんか、思ってたよりも簡単なんだなって思った。うまくやれば、売れるのは。すごくちゃんと考えてやれば、いくらでも売れるんだなってことに気付いたの。だよね?

(田中宗一郎)うん。間違っていない。

(Orono)だよね! やっぱりそうだよね!?

(田中宗一郎)だから、「いいアートを作る」っていうことと、「自分たちのプロダクトをポピュラーにする」っていうこととはまた別だから。なおかつ、いまは割とその自分たちをポピュラーにするっていうゲームの規則みたいなもの。Aバターン、Bパターン、Cパターン、Dパターン……みたいなものが出来上がったんだよね。

(Orono)あるよね?

(田中宗一郎)ある。

ポピュラーになるためのゲームの規則が出来上がる

(Orono)でもさ、これを聞いてる人たちはみんなさ、「いや、これはそのもの自体がいいからすごい売れてるんだ」とかさ、それしか思ってないじゃん? だからそこで、なんかちょっと引いちゃって。「いやー、でも自分はそういういいものを作れないから、そういうのは無理だ」とか思ってやらない人とかいるじゃん? そういう人たちに言いたいのは、「そんなことないよ。いいビジネスマンを見つけて、うまくちゃんと考えてやれば、いくらでも売れられるよ。がんばれば」と言いたかった。

(田中宗一郎)そうだね。

(Orono)だよね?

(田中宗一郎)だから昔よりも……たとえば70年代から90年代くらいまでだと、本当に力のあるレーベルのA&R。それは限られていたわけ。北米に10人いないみたいな。その連中が見つけてくれてサインしてくれなきゃ鳴かず飛ばずだったんだけど、いまはもっとその中間にいる人たち……。

(Orono)入り口が多くない?

(田中宗一郎)そう。特に前までだったらレーベルしかなかったのが、いまだとディストリビューターとかがいろんな種類でいくらでもいるわけ。で、そのディストリビューターが以前だったらレーベルがやっていたようなことをやってくれる世の中になったから。入り口は本当に増えた。

(Orono)うん。でもそれって、どうなんだろう? なんか去年、ツアーをやりまくって、インタビューとかも毎日のようにやらされて。もういろんなラジオ局を回って。「この人は重要な人で。ちょっといい感じで対応してね」とかマネージャーに先に言われたりしてやってきて、なんかいま、「つまんねえな、音楽」って。でも一応売れたいから。でもその「売れたい」っていうのは本当に……よくエミリーと話すのが、「いまは別にいいものを作っているけど、本当にクリエイティブ・フリーダムを手に入れるためには、もっとがんばらないといけない。サード・アルバムを本当に売れさせなければいけない」みたいな。だからいつも、バンドとしてのキャリアをビルドアップしてくのですごく参考にしているのはヴァンパイア・ウィークエンド。あいつらはすごく上手くやったと思う。でも違うじゃん? ちょっと。いまはもう本当にソーシャルメディアの時代になっちゃっているじゃん?

ソーシャルメディア中心の時代

(田中宗一郎)そうだね。でも本当にね、ソーシャル中心に全てがなったから。そうなってくると、バンドよりもソロのアイコンになるアーティスト……ラッパーだったりとか、ポップシンガーだったり。

(Orono)やっぱり、そうなるよね?

(田中宗一郎)なる。だからSuperorganismをさらにソーシャルを使って……ってなると、オロノが矢面に立ってソーシャルからガンガン発信をするみたいなことにならざるを得ない。

(Orono)うーん。面白いなー。

(田中宗一郎)フフフ(笑)。

(Orono)ちょっと、ヤバいな。普通の相談になってきたけど(笑)。じゃあ来週もタナソーさんに来てもらいます。いろんなことを普通に相談をします。

(田中宗一郎)大丈夫かな、これ? リスナーの人は面白いのかな?

(Orono)どうでもいい。もう、どうでもいい。

(田中宗一郎)フハハハハハハッ!

(Orono)っていうか、もうリスナーにひとつ言いたいのは、本当にタナソーのことをいちばんリスペクトしてるのは、本当に知識でいっぱいなの。こんなに知識持っている人に会ったことがないっていうぐらい、持っているよ。

(田中宗一郎)そんなこと、ないよ。

(Orono)でも、日本ではいちばん知識のある人だと思うから。

(田中宗一郎)「オロノの知り合いで」ね(笑)。

(Orono)でも、本当にそうだよ。だから、みんなもタナソーみたいになってほしい。タナソーの書くものをみんな、みんな読みまくってほしい。みんなも頭良くなってほしい。タナソーみたいに。以上。はい。なんか告知したいこと、ありますか?(笑)。

(田中宗一郎)今日も呼んでもらったからさ、逆に……みなさんね、あのSpotifyっていうアプリがあるんですけど。ポッドキャストの番組っていくのがあるんですよ。それを春ぐらいから始めたの。それにスケジュール合わせてオロノに出てほしいんだけど、今回全然そこのスタジオがうまく出なくて。逆にここに出してもらっちゃったみたいな。なので近々、なんとかスケジュールを合わせて来てもらうようにするので、そっちもぜひ聞いてください。

(Orono)こういう感じのが、もう音楽のすごいいろんなことを教えてくれる、めっちゃ面白いポッドキャストがあるから、聞いてください。以上。また来週も来てください。フフフ(笑)。

(田中宗一郎)来ます!(笑)。

<書き起こしおわり>

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