(バービー)いや、そういう……郷に入っては郷に従えじゃないですけども。そういうのはめちゃめちゃできるんですよ。「できる」って言ったらあれですけども。もういくらでも頭を下げるし、いくらでもいじられようが平気だし。もうそれこそ、昔の芸人界なんて女の絶対数も少なかったんで、無茶苦茶いじられたりとかしましたけど。なんかそれに関してはあまり抵抗はなかったですね。「ああ、こういうもんなんだ」としか思わなかったっていうか。
(武田砂鉄)でも、またその女性の芸人さんたちもいろんな方たちがいらして。たぶんそういう、「いじられる、いじられる、いじられる……」っていうことを続けてる中にいる中で、最初はあった芯みたいなものがズタボロに崩れる方もたぶんいらっしゃるとで思うし。でも、バービーさんのように「それはそれ。私はいつでも……」っていうこの両方のパターンがたぶんあるわけですよね?
(バービー)たしかに、そうですね。あの、こういう言い方をしたらあれですけども。基本的にあの、彼氏いたりとかすると……(笑)。
(武田砂鉄)1人だけで笑ってますけども(笑)。彼氏がいたりすると?
(バービー)彼氏がいたりすると、そこの最低限の自尊感情は保たれるのかな、みたいなのありますけど。はい。
(武田砂鉄)じゃあ別にそういうテレビ……たぶんとりわけ芸人さんの世界は男社会っていうのがどの社会よりも強いとは思いますけど。そこの中に入っていくことでなんかこう、動きづらいなっていう風に感じるということはあんまりなかったというか?
(バービー)いやいや、まあそれはいじられたりとかすることも、そういう社会だし。そういうエンターテイメントだし。別に私の思想と相容れなくていいやっていう風に思ってやっています。だから逆に……たぶんいま、こういう番組で今回、初めて本音でしゃべっているのかなと思うんですけど。
(武田砂鉄)ありがたいです。
「初めて本音でしゃべっている」(バービー)
(バービー)このラジオでしゃべっていると思うんですけども。まあ、そのカラクリを言ってしまうと笑いづらくもなってしまうっていうのがあるので、あんまり言うのも損だし。エンターテイメントはエンターテイメントだし……っていう感じで割り切ってるって言ったらあれですけども。はい。
(武田砂鉄)でもバービーさんのインタビューを読んでると、やっぱり「もう自虐する時代は終わった。自虐なんかしてるんじゃない。自虐をするっていうのは誰かをバカにしてる気持ちがあるからこそ、そういう気持ちが生まれてくるんだ」っていう。本当にもう、いまは美輪明宏かバービーかっていうぐらいの感じの言葉がバンバン出てくるんですけども。
(バービー)アハハハハハハハッ! 嬉しいなー!
(武田砂鉄)でも、やっぱり自分なんかもそういう風に、自虐をすることによって誰にも突っ込まれないようにまずしておこうみたいなことっていうのをやりすぎちゃうことがあって。結構、反省することもあるんですけど。その自虐っていうのは気になるというか、注意をされてるところなんですか?
(バービー)そうですね。なんか無理くりじゃないですけど、1回コメントをもらったことがあるんですよ。私がテレビでギャンギャンに「ブス」とか「デブ」とかいじられているのを見た女の子からのコメントで、「私はバービーちゃんのことそんなにブスだと思ってない。私と同じくらいだと思っていて。まるで私が「ブス、デブ」と言われてるように感じてすごくショックだった」っていうコメントをもらって。その時に「自虐はいけないな」って思ったのと、やっぱり自虐してるっていういことは、その物差しを持ってるわけじゃないですか。結果として。「ここからこうはいじっていい/ダメだ」とか。
(武田砂鉄)うんうん。
(バービー)だから、「全ての人は平等ですよ」とかって言ってる割に、その自虐の物差しは許されるっていうのはおかしいなっていう。
(武田砂鉄)たしかにそうですよね。
(バービー)そういうのは気持ち的にはあって。他の人を差別したくないなっていう気持ち。
(武田砂鉄)でもやっぱりテレビってものすごく威力があるから、そのテレビで起きていることっていうのが結構社会であったり一般生活にスライドしていくことって多いじゃないですか。
(バービー)すごく責任を感じます。
(武田砂鉄)そういうリスクとか責任っていうのはやっぱり日々、感じることは多いですか?
(バービー)めちゃめちゃ感じますね。
(武田砂鉄)でも、難しいですよね。さっきおっしゃっていたように、それをでもやっぱりエンターテインメントとして楽しんでもらいたいっていう側面と、でもそういったファンの方からのコメントが来たりすると「うん……?」ってなるわけですよね。
(バービー)そうですね。だからたと私からいちばん最初にやっていたセクハラ芸が……それは私の中ではひとつの発信だったり主張だったりしてたんですよ。私の中ではですよ。でも、それが一人歩きしていって、男性に消費されるだけの芸になってしまった時ってすごく女性を傷つけてしまうし、意に反してるなと思うから、それはやらないようにしたいなとは思っています。だからその境目をしっかり自分の中でジャッジしてやれたらなって。
(武田砂鉄)常に、誰かに言われて自分が動くんじゃなくて、自分が主体的に動いて笑いを取りに行くっていう、そこの境目。
自分で境目をジャッジするセクハラ芸
(バービー)そうです。私がただただケツ出して、おパンツを出して……ってやっているのは私の主張であって。それを、パンツをめくられたりとか、「見せてくれ」って言われて見せるっていうのはまた違うっていうラインというか。
(武田砂鉄)それはすごい大きな差ですよね。「パンツをめくられる」っていうのと「自分から見せる」っていうのは。
(バービー)「私は見てほしくて見せているんですよ」っていう。「ここに性差を持たないでほしい」っていう後ろの意味があるんですけど。まあ、そんなのは考えないで見てもらいたいんですけどね、実際は(笑)。「この人はどうやってケツを出しているのか?」っていうのは考えないでいてほしいんですけども(笑)。
(武田砂鉄)でも、たぶんそれは作る側とか、ある種そこに一緒に出てる芸能人の人たちがやっぱり本当は考えなくちゃいけない問題だとは思うけれど。まあ徐々に変わってきてるような感覚っていうのはあるんですかね?
(バービー)めちゃめちゃあります。私よりも年上の芸歴の長い方たちとかが、なんでこの新しい感覚にフィットできるんだろう?っていうぐらい変わっていっています。難しいなと思うようなこの価値観をすごい敏感に察知して、合わせていっているのがすごいなって思いますね。
(武田砂鉄)うんうん。そういう人たちの見えている視界って本当に広いものなんでしょうね。で、「いまは何をするべきなのか?」っていうのがすごくクリアに見えてる人たちなんだろうなとは思うんですけどね。
(バービー)はい。本当にすごいですね。
(武田砂鉄)でもいま、本当にそれこそ渡辺直美さんとかね、世界で活躍されてる方も増えてきてるから。そういった「自分の容姿がこうだから」とかっていうような、そのコンプレックスっていうの、自分が主体的に持つことによって、それも武器に変換できるみたいな場面っていうのが増えてきてるような感じしますよね。
(バービー)そうですね。まあ、なんか言ってしまえばそれが「武器」にさえならなくなるぐらいがベストなのかなとは思いますけども。
(武田砂鉄)ああ、なるほど。
(バービー)それさえも、まあ言ってみれば自虐と同じ構造なのかなって思うので。
(武田砂鉄)それがまだ、ある意味それが使えるっていうこと自体はどうなんだろうか?っていう。
(バービー)差別の目線が根底にあるから、それが武器になっているだけであって。
(武田砂鉄)ああ、なるほどね。いま、下着のプロデュースも始められたっていうことですけども。
(バービー)フフフ、ありがとうございます(笑)。
(武田砂鉄)僕、以前この番組に神田うのさんがいらしてくださった時に、神田うのさんがいろいろなプロデュースをされてますけれども。そのアドバイスとしては「色とか質感とかだけをプロデュースするんじゃなくて、型から作りなさい。型からプロデュースしなさい」っていうのが神田うのさんのを教えだったんで。それをちょっとお伝えしておきたいなと。
(バービー)ああ、ありがとうございます。
(武田砂鉄)とにかく型を押さえておけということで。
(バービー)今回、もうゼロからデザインを書きました。
(武田砂鉄)それは長年、たしかに中学校時代からそういうドレスを作ってみたりっていうのは、そういう興味はずっと継続してたんですかね?
(バービー)そうですね。大まかなファッション業界だとかアパレルとかもそうだったんですけども。やっぱりいちばん下着って女性のコンプレックスが現れやすいし。実際に私がいままで、合う下着に出会ったことがなかったから、余計にゼロから作りたいなっていう気持ちはあったんですけど。今回こうやって1回、インスタとかで発表したんですけど。
やっぱりまだまだ下着の悩みですら、表に言えないっていう感覚でみんながいるんだっていうことが驚きで。これはもう是非やんなきゃなって余計に思いました。コメントに載せたら誰かに見られちゃうかもしれないからDMでコメントを寄越してきたりとか。それさえも言えない。「黒ずみが……」とか、そういうことだけなんですよ。それでもやっぱり言えないっていうのがすごいみなさん、繊細っていうか大変なんだなと思いました。
(武田砂鉄)うんうん。
(幸坂理加)どんな下着を作られていくんですか?
(バービー)サイズ的にはもうあのちっちゃいサイズから大きいサイズ。いままで日本になかったサイズをカバーできればいいなと思うんですけど。まあ、キリがあるんですけど。そこで……対極なんですよ。日本のブラって。「寄せて上げる」か、もう「ダランとしておく。とりあえず乳首だけ見えないようにしておく」みたいな。その対極で。それでみんなどっちかに寄ってしまって中間がない。
でも、かならず形は崩さないでいた方がいいと思うので、形は崩れないけどリラックスができて。かつデザインも、今回何パターンか用意したんですけど。自分がセクシーでいられる気持ちになれるものとか。いままでは「隠す」っていう下着しかなくて。たとえば巨乳の人だと。だけど、ブリッとしていることに自分で高揚してほしいなっていう思いを込めて作りました。
(幸坂理加)なるほど。自分のための下着っていう感じですかね。
(バービー)そうですね。たしかに。
自分ために作る
(武田砂鉄)そこがたぶん、ずっと一貫されているところで。もちろん異性に対して云々ということよりも、やっぱり自分自身が納得できるものかどうかっていうのはお話を聞いているとその中学校時代から北海道の空と対話してきた感じっていうのがずっと持続しているんだなって思うんですよね。やっぱりこういう、割と芸能界の派手な業界とかにいると、「誰かにこういう風に言われた」とかってのはどうしても影響を受けちゃうけど。
でもバービーさんのお話を聞いていると、常に北海道の空と対話していた……それはイコール、自分と対話することであるということがなんか徹底されてるんだなって思って。本当にこれからは美輪明宏かバービーかっていうぐらいの話に……。まあ、誰も別に美輪さんに許可を取ったわけでもないですけども(笑)。
(バービー)ちょっと金髪にしようかな?(笑)。
(幸坂理加)バービーさんのファッションについて、リスナーの方からもメッセージが届いているのでご紹介します。「今日のゲストはバービーさんと聞いて、とっても嬉しいです。私はバービーさんのファッションが大好きで、すごくかわいいと思います。着こなし方をぜひ、教えてください。お願いいたします」ということです。
(バービー)着こなし方?
(幸坂理加)こだわりってありますか?
(バービー)私、大きい方ですけども、全然ピチピチのを着ます(笑)。ピチピチのを着て、この前も友達に言われたんですけども、「女芸人の方で細い方だよね」って言われて。「いやいや、細くはない。細くはないけど、ボディーラインを隠してないだけだよ」って言ってるんですけど。かならずウエストマーク、ベルトもするし、露出も二の腕をがっつり出したりとかもするので。もう服がかわいいなと思えば、もうお肉を気にせず(笑)。
(幸坂理加)「お肉気にせず」(笑)。
(武田砂鉄)それもなにかのインタビューで読みましたけど、結構そういうファッション観に影響を与えたのはオネエの方たちと知り合って、それのなんというかスパークするようなファッションに影響受けたっていうのをどこかでおっしゃられていましたけども。
(バービー)そうですね。ドラァグクイーンさんたちみたいになりたくて(笑)。そういう、過剰な演出っていうんですか? ファッションでも。そういうのが1個あると、やっぱり華やかだしモードになるし一気にオシャレになるかな、みたいな。で、結構大ぶりなのとかすることが多いですかね。
(武田砂鉄)なんかその、どんどんどんどん過剰になるんだけれど、過剰をやっぱりご自身で引き受けているっていうところが本当にかっこいいなっていう風に思いますね。
(バービー)今日なんかもう本当にボサボサに白シャツで……なんかパジャマみたいな感じで(笑)。
(幸坂理加)でもメガネもすっごいポイントになっていて、かっこいいです。
(バービー)ああ、そうですか。メガネをポイント……ありがとうございます。
(幸坂理加)ヒョウ柄ですか?
(バービー)いや、これは普通にべっ甲ですね(笑)。
(武田砂鉄)あの、踏み込んで失敗するタイプっていう(笑)。
(バービー)フフフ(笑)。
(幸坂理加)失礼しました(笑)。
「初めて本音でしゃべる…」と言ってくれた #バービー さん。テレビでふと映った硬派な本棚から、バービーさんの頭の中が気になった #武田砂鉄 さん。社会問題から、お笑いとの向き合い方…いろいろとインタビュー中。#action954https://t.co/GUjMb86p3U pic.twitter.com/aCp5O13KQR
— ACTION (@action_tbs) August 30, 2019
(武田砂鉄)いやいや、お話が尽きないんでございますが。残念ながらそろそろお時間ということで。本当に楽しかったです。
(バービー)私にとってもいい機会でした。
(武田砂鉄)バービーさん、本当にありがとうございました。
(幸坂理加)ありがとうございました。
(バービー)ありがとうございました。
<書き起こしおわり>