小袋成彬「カルチャー顔」炎上騒動を振り返る

小袋成彬「カルチャー顔」炎上騒動を振り返る MUSIC HUB

小袋成彬さんがJ-WAVE『MUSIC HUB』の中で「カルチャー顔」炎上騒動について振り返り。騒動の経緯、キレた理由、問題点、学び、個人的な感想などについて話していました。

(小袋成彬)J-WAVE『MUSIC HUB』、ナビゲーターの小袋成彬です。この番組は音楽を軸(ハブ)にしながら、その音楽が生まれたバックグラウンドやそうした音楽を作る最新の機材、時にはミュージシャン本人、そしてリスナーの皆さんと繋がっていく、ハブしていく30分でございます。もう皆さん、わかっちゃってるかもしれないですけど、めちゃくちゃ面白いことがありまして。いわゆる「炎上」ってやつですね。

まあ厳密に言うと僕が悪いことをしたというよりは、僕を中心にちょっと火が広がってしまったということなので。まあせっかくラジオやってますし、いろんな知見と今回の件で学んだことを交えながら、ちょっと前半はその話をしようかなと思います。まあ、さすがにこれに触れられずにはいられないので。というか、もしかするとリスナーの人で待っていた人もいるかもしれないので、ちょっと話しますね。ということでまず1曲目、聞いていただきましょう。Marie Davidson『Work It (Soulwax Remix)』。

Marie Davidson『Work It (Soulwax Remix)』

お聞きいただいたのはMarie Davidson『Work It (Soulwax Remix)』でした。はい、ということで前半は1曲だけかけつつ、カルチャー顔事件についてしゃべろうと思います。トピックに関しては主に5つ。どんなことがあったか、経緯。キレた理由。本件の問題点。そして学び。それから僕の個人的な感想。この5点についてゆるく話していこうかなと思うんですが。

まず、どんなことがあったか。4月末ぐらいにですね、あるカルチャーメディア『DON’CRY』というメディアから「カルチャー顔について提唱したい」という記事が出ました。で、「カルチャー顔とはなんぞや?」ということをいろいろなモデルさんとか音楽家の写真を出して、そういうのを引き合いにしながら説明していたんですけど、これがかなりひどい記事だったんですよ。

で、「なんでこんなに怒ってるの?」って思う人もいると思うんですけど、まあ週刊誌レベル。本当に過去に見た中では最悪のネット記事でした。これちょっとね、Mars89くんっていう僕の知り合いのDJの人のツイートから拝借するんですけど。どんなことを書いていたかっていうと……たとえばモデルさんの顔を写真で出して、それを「標準的なハーフ顔とはちょっと離れている」と。まず「標準的なハーフ顔」っていうのがもう完全にレイシズムですね。

あとは他の人の写真……KID FRESINOくんのだったかな? その写真を出して、「8割の人はいいとは思わない顔だ」って。大きなお世話だっていう。あとは「そのカルチャー顔っていうのがアーティストや役者から探した方が意外と早く見つかる」という記述もあって。顔のおかげで成功したわけじゃないだろ?っていう。「皆が南向きをしなくても自分はそれを理解できる」という記述もありました。まあ何様のつもりだ?っていう。

で、僕に関しては「弱そう」っていうすごい単純なグーパンチと、あとは「EXILE ATSUSHIと決闘したら1ラウンドで負けそう」っていうのがありまして。で、向こうの歌詞と僕の歌詞を引き合いに出した。しかも、その歌詞も間違ってるんですけどね。なんだったらATSUSHIさんのスペルも間違っているっていう。もうこれはなかなか酷い状況で。で、まあ友人から教えてもらって、「これはちょっとキレないとな!」っていうか、うん。キレました。

「カルチャー顔」記事にキレた理由

ちなみに言うと正義感からやってません。ただただキレただけです。ムカついただけです。で、ですね、その記事を書いた……驚くことにそれが編集長だったんですけど。その編集長に直接Twitterを通じて返信をしました。「変なカテゴライズをするな! ロンドンに来て街を歩いてそれがあまりにも稚拙だということを理解しろ! 全員がもれなく美しいんだということを実感しろ! 来たら水に流して許してやる」という旨を伝えまして。で、結果、記事は取り下げられて、まあちょいちょい燃えつつも一件落着という経緯でございます。

ちなみにですね、編集長に「ロンドンに来い」って言ったのは割と本気だったんですけど。本当に来てくれるらしくって。まあまあ、酒でも酌み交わそうかなっていう思いでおります。まあ、これが今回の経緯ですね。2つ目。キレた理由。3点あるんですけど、1つ目はね、人の容姿を稚拙に表現したこと。2つ目はそれを作品物に絡めて論考したこと。「この歌詞は弱いやつが書く歌詞みたいだ」みたいなね。3つ目。自称「カルチャーメディア」だった。まあ、個人ブログなら別にどうでもいいなと思うけど、メディアを自称してこれはないだろうと。

つまりですね、その「バカみたいな内容の居酒屋談義をおおっぴらにやった」っていうことがちょっと僕には許せなくて。1つでも欠けていたらたぶん怒らなかったと思うんですけ。まあ、三重苦。ヤバいの連チャンで揃っていたんで怒ったということです。だからね、まあ稚拙な容姿の表現でカルチャーメディアとかだったら別に僕はよかったんですよ。それでその人の性格……たとえば「クラスの端にいそう」とかね、「何か悲しげな、幸せになれなさそう」っていう記述もありました。そういうことも絡めちゃうと、さすがに良くないだろうということで、僕がキレた理由はその3つでございます。

3点目の問題の本質です。実は「カルチャー顔」という言葉自体は、なんだろう。そんなにかっこいい表現ではないのは承前なんですけど、実はそんなにね、問題ではない。たとえば「塩顔が好き」とかね、「ソース顔が好き」っていうのはそれ自体の……それはただ、個人の性的嗜好ですからね。それ自体はもう、結構です。そうではなくて、その顔の形而上の問題で「弱そう」だの「クラスの端にいそう」だの、そういうことを言ってはいけないということですね。

だからカテゴライズするっていうことは個人の、人の個性を単一の枠組みに入れるということですから、そこには理路整然とした論理が必要なんですけど、それがあまりにも稚拙だったので、これはカルチャーメディアでカルチャー顔などというものを提唱するほどの強さはない。居酒屋談義にとどめておくべきだったというところです。だから、カルチャー顔自体が問題ではなくて、その容姿、形而上の問題で個人を枠組みに押し込んだ。個性、あるいはその人が一生懸命作った作品を評論したというのがかなり良くなかったということでございます。

経緯、理由、問題点について話しました。4つ目。学び。さて、ここから何を学ぶべきか? 僕は2つあると思っていて。1個目は、「時代はかなり変化している。それもドラスティックに変化している」ということが言えると思います。僕は特にロンドンにいるからなんですけど、いろんな多種多様な人たちがもう密接に関わりある時代なので。日本はね、その変化にちょっと鈍感になってしまうんですよ。たとえば、昔だったらあり得た「女の子らしさ、男の子らしさ」。あるいはたとえば「外国人風」とかね。

もしかすると3年前だったらよかったかもしれないけど、もう時代はそういう時代ではないので。その急激な変化にみんな、(今回の件で)気付けた。だから常に時代を捉えていかないといけないってのは大きな学びだったと思います。僕も含めてですけどね。本当にね、「何が正しいか」っていうのは土地土地とか文脈の変化によって毎回変わっていきます。本当、毎日変わります。で、今回もその変化が顕著に現れた一例なのではないかなと思っています。

もうひとつ、学べたことがありました。僕らはね、矢面に立つ職業なので本当に個人ブログとかTwitterでもそうですけど。結構ね、誹謗中傷ってめちゃくちゃあるんですよ。「この顔がいけ好かないな」とか、「あれ、ちょっと太った?」とかね。そんなのって本当にいっぱいあって。で、僕は正直あんまり気になんない方なんですけど。だからこそ、今回はあまりにもひどすぎてブチギレたっていうのもあります。ただ、いままで止められなかったそういう問題に対して、ちゃんと一石を投じられたっていうのは、僕はやってよかったなと思います。

今回、それができて。まあ少なくとも平成の炎上事例とは違った形でなんかうまく着地できそうな感じになってるの。奇しくも。そういうなんかひとつの好例となるように、これからこの問題を処理していきたいなと思っています。これが学ぶべきことですね。まあ、あとはね、編集長がロンドンまで来て謝るんですけど、それはキレる前からちゃんと考えていて。何かユーモアによって世界が前進するような形で終わらせたいなっていうのはあったので。まだちょっと着地してないですけど、なんか好例になればいいなという思いです。

炎上の当事者になってわかったこと

最後、ここからは僕の個人的な感想です。わかったこととしては、炎上の中心になることってもちろんいままではなかったので。来てみて初めてわかったことってあるんですよ。いままでの炎上って僕は基本的に無視してたんですけど。自分がやってみると、もう本当にね、街中でケンカを見かけるのと一緒なんですよ。だから喧嘩してる本人はもう2人しかいないんだけど、たとえば僕らが街中でケンカを見ると「うわっ……」って思って遠目で見たり、見ないふりをしたり。あとはまあ仲裁に入ったりということもありますよね。

で、そういう周りの人たちの思考が可視化されているっていうのがきっと炎上なんだなと思います。だから見ないふり。あとはたとえば友達と2人で歩いてたら、遠目でヒソヒソ話すとかね。2人で「あれ? どうしたのかな?」みたいなことはありますよね。そういう状況なんだと思います。じゃあ、そういう実際にケンカを目の当たりにしたという状況を想像して、いちばんヤバいのって、その野次馬たちを見て知った顔でね、解説してる人たちというのがいちばんヤバいんですよ。

インターネットの炎上って止めにくるやつはね、まず1人もいないですよ。「みんな、やめようよ! ケンカはやめて!」みたいなね。だからね、その野次馬を見て評論してるっていうのがね、いちばん世界への無責任な関わり方だと。もし僕がインターネットでボヤ騒ぎを見つけたら、無視するか、全力で止めに行くか、どっちかの二択にしたいなっていうのは自分が渦中にいて思いました。まあ、止めにくるやつなんていないんだけどね。正直言うと。

あとはまあ、「口が悪い」って言われて……そうです。口は悪いです。僕は同世代のミュージシャンでいちばん口が悪いと思います(笑)。たぶんリアルで会った人はよくわかってると思う。結構、正直が故に口が悪いんで、そこはご勘弁ということで。まあまあ、あの良いぶりが僕の全てではないので、それだけで判断してもらうのは勘弁してくれって感じなんですけど。すいませんでしたね。いろいろとご迷惑をおかけしました。

ということです。まあ、こんな感じで経緯、理由、問題点、学び、そして僕の個人的な感想をお伝えしました。これでもう成仏したので、あとは編集長と直接会って、いい着地点を見つけたいなと。乞うご期待! ということで(笑)。じゃあ『MUSIC HUB』、まだまだ続きます(笑)。

(CM明け)

(小袋成彬)J-WAVE『MUSIC HUB』、小袋成彬がナビゲートしております。もう今日はミュージック、関係ないですが。ちょっとね、曲をかけようと思います。Rasharn Powell『Warm In These Blue Jeans』。

Rasharn Powell『Warm In These Blue Jeans』

お聞きいただいたのはRasharn Powell『Warm In These Blue Jeans』でした。ロンドンのアップカミングなシンガーでございます。まだ1曲ぐらいしか出してないのかな? Rasharn Powellさんです。3曲目、行きます。Los Retros『Someone To Spend Time With』。

Los Retros『Someone To Spend Time With』

お聞きいただいたのはLos Retros『Someone To Spend Time With』でした。ストーンズ・スローの新人です。カリフォルニアの19歳のシンガーソングライターだそうです。4曲目、行きます。Young Nudy & Pi’erre Bourne『Mister feat. 21 Savage』。

Young Nudy & Pi’erre Bourne『Mister feat. 21 Savage』

お聞きいただいたのはYoung Nudy & Pi’erre Bourne『Mister feat. 21 Savage』でした。「なんで21 Savageが?」って思うと思うんですけども、このYoung NudyとPi’erre Bourne……2人の連名なんですけど、Young Nudyって実は21 Savageのいとこなんですね。まあ、彼はラッパーで新譜が出たところです。で、Pi’erre Bourneは93年生まれのプロデューサー、ラッパー。ニューヨークベースです。プレイボーイ・カーティとかリル・ウージー・ヴァートとかカニエ・ウェストとか、いろんなビッグなヒップホップの人たちとコラボというかプロデュースをしてます。

いちばん有名なのは6ix9ineの『GUMMO』っていうやつ。砂漠で歌っているやつ。あれが彼の代表作ですね。はい。ということで、ちょっと駆け足になってしまいましたが『MUSIC HUB』、今日は終わります(笑)。ちょっとね最近、面白い友達に会ったので。ファッション系の友達なんですけど。ハイファッションってなんぞやと。ファッションの僕、アート的な側面を全く知らないので。それをちょっとね、教えてもらったら面白くって。今度、彼はいま学生なんですけど。卒業制作が終わったらちょっと呼ぼうかなと思っております。もう少しかかるかな? あと1ヶ月くらいかかるかもしれないけど。まあ面白い人がいたら、また捕まえてきていろいろしゃべってもらおうかなと思っております。

ということでこんな感じかな? ということで、もうほぼ炎上の件について話しちゃっただけですが、平和に行きましょう。俺が怒っといてなんだよ?っていう話ですけど。でも僕、キレれないとたぶん一生後悔してた気がするな。結果、いい方に行ったか悪い方に行ったかはわかんないですけど。僕がやらなきゃいけないことは作品を作ることですから。ちょっともう1回ね、そこに立ち返って。ちゃんと自分の作品を紡いでいこうかなと思っております。では、『MUSIC HUB』、小袋成彬でした。また来週。

ロンドンに来た編集長との和解

騒動から数週間後の放送の最後に小袋さんが編集長とロンドンで出会い、和解した話をしていしました。

(小袋成彬)ええと、ということで今日はそんな感じですかね。最近……ああ、そうだ。もう誰も話題にしてないから軽く流しますけど。炎上した編集長の人がね、謝りに来てくださって。菓子折りを持ってね。で、いろいろと話しました。いろいろ学び多き事例だったということで。向こう側はなにかお詫び記事というか、なにかしらの記事が出るそうなんで。まあまあ僕はそれは引き続きね、応援していきたいなとは思うので。まあ、「ご期待」とは言わないけど、一件落着したのでもう話題にしないでくれっていう話ですね(笑)。

自分で振っておいてなんですけどね。まあ俺、今回の一件で全然知らない人から連絡来ることがあって。それは同じ業種、業者の人でですね。で、1人、僕は前から一方的に知ってたんだけど、もちろん面識もないし。共通の友達も何人かいるかな? ぐらいの人から本当に……もう勝手にずっと追っていた人から連絡が突然ピーンと来て。なんか「頑張って」みたいなメールが来て。それがね、俺はめちゃくちゃ嬉しかったんで。

もうそれだけで結構、救われたというか、もう十分なんすよね(笑)。あんまり僕、発信する方じゃないし、むしろラジオだけが唯一、社会と繋がっている。日本の社会と繋がっているところなので。「あの人、喋るんだ」とか「あんな感じなんだ。意外と怖いな」なんていう意見も聞きましたが。まあ、SNSに触ってるとロクなことないから、僕はこのラジオを軸に発信をして行こうとかなとは思ってます。なので引き続きご愛聴をよろしくお願いします。

<書き起こしおわり>

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