町山智浩『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』を語る

町山智浩『ロング・ショット』を語る たまむすび

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中でシャーリーズ・セロンとセス・ローゲンの映画『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』について話していました。

(町山智浩)今日はですね、非常に素敵なシンデレラ・ストーリー。ロマンティック・コメディーです。

(赤江珠緒)あら、ひさしぶり。

(町山智浩)シンデレラ・ストーリーですよ。今日、紹介する映画は『ロング・ショット』というタイトルの映画です。音楽、どうぞ。

(町山智浩)これ、わかります? これは90年代はじめに大ヒットした曲なんですよ。ボーイズIIメンっていうグループがあったんですよ。その『Motownphilly』っていう曲。当時大大大ヒットですよ。で、これが主題歌みたいな感じでこの『ロング・ショット』という映画で使われているんですけども。まあ90年代のはじめに青春時代をすごした2人のラブストーリーなんですね。で、この映画はシンデレラ・ストーリーで、シンデレラ・ストーリーっていうと白馬に乗った王子様が現れるという話ですよね?

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)白馬に乗った王子様はシャーリーズ・セロンです。

(赤江珠緒)えっ? 女性?

(山里亮太)王子様が?

(町山智浩)そう。シャーリーズ・セロンです。で、シンデレラはセス・ローゲンという俳優さんです。写真を見てください。

(山里亮太)あれ? お姫様みたいな感じじゃない……。

(赤江珠緒)冴えない感じの、割とおじさんな感じですけども。

(町山智浩)おじさんですよね。まあ、ぽっちゃり型のヒゲクマ親父ですけども。そういう話なんです。

(赤江珠緒)ほう。

(町山智浩)これね、この映画でシャーリーズ・セロンは製作もやっているんですけども。シャーリーズ・セロンといえば、『マッドマックス/怒りのデス・ロード』ですよね?

(山里亮太)ですね。かっこよかった!

(町山智浩)ねえ。で、この人はアカデミー賞も取っていますし。プロデューサーとしても大成功をしていて。『アトミック・ブロンド』ではほとんどスタントマンなしでものすごいハードアクションをやっていた女優さんですけども。

(赤江珠緒)うん!

(町山智浩)とにかく身長も高くてモデルさんみたいな感じで。しかもプロデューサーとしても非常に優秀なんですが。この映画『ロング・ショット』での役は、なんとアメリカの国務長官です。

(赤江珠緒)ほー! まあ、たしかにキリッとされてますもんね。

(町山智浩)そう。で、彼女自身も非常に政治的な発言をよくされる人なんですけども。しかも彼女ね、英語がネイティブじゃないんですよ。

(赤江珠緒)ああ、そうなんですか?

(町山智浩)この人、英語は後から勉強したんです。アメリカに来てから。

(山里亮太)ということは……?

(町山智浩)この人、南アフリカの出身なんですよ。だからアフリカーンスっていう非常に特集なオランダ語と英語が混じったような言葉で育った人なんですね。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)だからすごい勉強家なんですけども。で、彼女はヒラリーさんみたいに国務長官なんですよ。で、ところがこの映画、コメディーですから。大統領がものすごいバカな大統領で。人気だけはあるんですけど、頭は空っぽなんですよ。で、もともと俳優でずっとテレビで大統領役をやっていて人気があったんで、そのままその人気で大統領に選ばれてしまったという、いわゆるポピュリスト大統領なんですね。

(赤江珠緒)あれっ?

(町山智浩)で、大統領をやってみたら非常に難しいことがいっぱいあって、勉強ができなくてよくわからないから、「俺、もう大統領を辞めるわ」って辞めちゃうんですよ。で、この国務長官のシャーリーズ・セロンがその次の大統領選挙に出ることになるんですね。大統領選挙の候補になる。で、そうすると国務長官を辞めなきゃいけないわけですよ。で、全世界を回って引き継ぎといままでやってきたことの総ざらいみたいなことをしなくちゃいけないので、全世界ツアーに出るんですね。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)その時、このセス・ローゲンと会うんですよ。このセス・ローゲンのおっちゃん、この人は政治的な、なおかつユーモアもあるコラムを書いているライターなんですね。だから、俺と似たようなもんですよ。ねえ(笑)。で、この2人がこのボーイズIIメンのパーティーで偶然出会うんですよ。2人とも、若い頃に聞いていたから。で、実は2人は近所の幼馴染だったんです。

(山里亮太)ほう!

(町山智浩)で、彼女の方が年上なんで、ベビーシッターとして彼の面倒も見たことがあったんですよ。で、セス・ローゲンにとっては彼女が初恋の人なんです。でも、その後も別に恋もないみたいなんですけど(笑)。それで2人が出会って、実はセス・ローゲンがライターとして非常にユーモアがあって、政治的に辛辣なことも書けるということがわかる。で、シャーリーズ・セロンは国務長官なんですけども、この映画の中ではトランプ大統領はいないことになっているんですね。で、彼女は「環境保全を自分のいちばん大事な政策として打ち出していきたい」ということでその彼をスピーチライターとして雇うんですよ。

(赤江珠緒)ふーん。

(町山智浩)で、自分の演説にユーモアを入れようとして、その彼を雇って。それで突然、「これから世界ツアーに出るから、一緒に旅に出ようよ!」っていうことで、全世界一周の旅をしているうちにだんだんと恋に落ちていくっていう話なんですよ。

(山里亮太)ほー! 面白い!

下ネタ・ロマンティック・コメディー

(町山智浩)これね、ただギャグがいっぱい入っているんですけど、全編下ネタです。

(山里亮太)おおっ、ありがとうございます!

(赤江珠緒)ロマンティックコメディーに? 下ネタなの?

(町山智浩)すごい下ネタなんですよ。

(山里亮太)どんな下ネタなのか、想像もつかない……。

(町山智浩)どんな下ネタかっていうと、あのね、『メリーに首ったけ』っていう映画をご覧になったこと、ありますか?

(赤江珠緒)はいはい。

(町山智浩)あの、男汁が飛び散ったりとかするんですけども。そういうネタですよ。

(赤江珠緒)へー!

(山里亮太)ええっ、この感じで?

(町山智浩)この感じで。非常に直接的なネタが次々と出てきますよ。これね、アメリカの映画館で見た時にね、おばちゃんたちがもゲラゲラゲラゲラ笑っていて、大変だったですよ。

(赤江珠緒)女性も見て、面白い?

(町山智浩)そう。おばちゃんたちがもうね……あの毒蝮三太夫さんのギャグにゲラゲラ笑っているおばちゃんたち、いるじゃないですか。あとはケーシー高峰さんの下ネタにゲラゲラ笑っているおばちゃん。そういう人たちでしたよ(笑)。

(赤江珠緒)フフフ(笑)。

(山里亮太)ああ、なるほど!

(町山智浩)もう死ぬほどおかしいみたいな。そういうね、すごい映画だったんですけども。ただね、これがすごいのは、昔『プリティ・ウーマン』っていう映画があったのを覚えていますか?

(赤江珠緒)はい。もちろん。

(町山智浩)それはご覧になっていますね。それはリチャード・ギア扮するすごいスーパービジネスマンがいて。結構歳なんだけども、彼女も奥さんもいなくて。で、寂しい男なんだけども、大金持ちである。それがたまたまハリウッドの道端でいわゆるスプリング(春)を売っているジュリア・ロバーツを拾って……本当にあの映画では拾うんですよね。それで寂しいから1週間、一緒にすごすっていう話でしたよね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、そのうちに本当に恋に落ちていく。この映画ね、それの逆なんですよ。

(赤江珠緒)はー! そう言われると……。

(町山智浩)ねえ。というのは、セス・ローゲンはまあ俺みたいなやつだから、普段は汚いジーパンを履いて、ロックTシャツを着ているような人なんですよ。

(赤江珠緒)フフフ(笑)。

(町山智浩)髪の毛もボサボサで、いつもメガネが油で汚れていて……っていうような人なんですよ。で、その彼を連れて世界ツアーに行くんですけど、国務長官だから会う人はそれこそ各国の大統領や総理大臣とか、そういう人たちばっかりなんですよ。

(赤江珠緒)そうですね。

(町山智浩)ところがそのままでは彼を連れていけないんですよ。セス・ローゲンはスタッフとしてついていくわけだから。だから、彼をきれいにしてあげなきゃならないわけですよ。で、マナーとかしゃべり方とか立ち振舞いも教えていかなくちゃいけない。これ、『マイ・フェア・レディ』ですよ。

(赤江珠緒)そうですね。自分好みに仕立てていくみたいな。

(町山智浩)まあ、自分好みかどうかはわからないですけども、『マイ・フェア・レディ』はロンドンの非常に貧しい花売りの娘を言語学者のおじさんが拾ってすごいレディ、貴婦人にしていくという話ですけども。それの男女逆転版なんですよ。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)だから、すごいいままで、いつ作られてもよかった話なのに、はじめてなんですよね。こういうのって。

(山里亮太)そうか。男女逆のバージョンは。

男女逆転版『マイ・フェア・レディ』

(町山智浩)そう。いつあってもおかしくなかったんですよ。これ、『アメリカン・プレジデント』っていう映画もありまして。それがね、たぶんこの映画の元にもなっていて。それはマイケル・ダグラス扮する大統領が奥さんとかもいなくて。で、アネット・ベニング扮する、その頃は若かったんですけども、政治的なジャーナリストと恋に落ちていくっていう話だったんですよね。それの男女逆にもなっているんですよ。この映画は。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)で、いままでの映画はとにかく男の方が金があって、社会的な地位も高くて。で、女性の方は全然そうじゃなくて、歳も若くて。で、男性が白馬に乗った王子様として彼女を救う、拾うみたいな。で、彼女をすごい上流社会に入れるように変えていくみたいな話が多かったんですね。あと、『愛と青春の旅だち』はご覧になっていますか?

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)あれはいわゆる海軍の士官になる士官候補生のリチャード・ギアがハワイの地元のウェイトレスの女の子とできちゃって。で、彼は彼女をちゃんとするかどうか?っていう話でしたよね。みんな同じじゃないですか。男性の立場に対して女性の立場は徹底的に低いわけですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)これね、はじめての逆転バージョンなんですよね。

(赤江珠緒)はー、そうか! 町山さんがね、いまずっとセス・ローゲンに似ているんだっておっしゃってましたけども。町山さんだったらこういう風に女性から言われたら、どんどん変わっていきますか?

(町山智浩)変わっていくかどうかは知らないけど、似たようなもんでしたね、僕は(笑)。

(赤江珠緒)似たようなもんだった?

(町山智浩)収入差とかがね(笑)。

(赤江珠緒)でもシャーリーズ・セロンに言われたら、いろいろと服装も変えていっても?

(町山智浩)ああ、それはあるでしょうね。

(赤江珠緒)それはある?

(町山智浩)あの、TBSの橋Pとか、そうですよね?

(赤江・山里)フハハハハハハッ!

(町山智浩)具体的な名前を出していいのか?(笑)。俺、見ながらずっと橋Pのことを思い出してたんですよ(笑)。

(山里亮太)フフフ、嫁に変えられていってるんだ(笑)。

(町山智浩)そうそうそう(笑)。

(赤江珠緒)結婚して、おきれいになっていきましたもんね(笑)。

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