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町山智浩と宇多丸『THE GUILTY ギルティ』を語る

町山智浩と宇多丸『THE GUILTY ギルティ』を語る アフター6ジャンクション
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町山智浩さんがTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で映画『THE GUILTY ギルティ』についてトーク。宇多丸さんとワンシチュエーションで電話だけで話した進むタイプの映画の系譜について話していました。

(宇多丸)ということで、いろいろとお世話になっている町山さんですが本日は金曜日、2月22日から公開される映画『THE GUILTY ギルティ』についてお話をうかがいたいということで。『ギルティ』に関しては1回、アニメーションの音響監督という、その音響面の演出ということでプロの方にお話をうかがったんですけども。まあ、映画評論家として町山智浩さんに『ギルティ』の話をうかがいたいのですが。

(町山智浩)そうですね。だから今日はワンシチュエーションで電話だけで話が進む映画で、しかも相手がほとんど画面に登場しないという映画の歴史の中でね、この映画は置かれるべきかなと思ったんですよ。

(宇多丸)『ギルティ』はそもそもデンマーク映画で、アカデミー賞の外国語映画賞の候補、8本ぐらいのところに残っていましたよね? 結局いまのノミニーには入らなかったけど。という感じで世界的にも高く評価されているということでいいですかね。町山さん的にはどうご覧になりましたか? 『ギルティ』は。まあ、なかなかネタバレしづらいというか……。

(町山智浩)すごい言いにくいんだよね。とにかく、エマージェンシーコールセンターがあって。救急電話センターですね。だから救急車とか呼んだり、警察を呼ぶところ。日本だと110番。で、そこにいる電話番をやらされてる、まあちょっとね、「なんで俺、こんなことやんなきゃいけねえんだよ?」みたいな気持ちになっている警察官のところに電話かかってくる。そうすると……そこは言っていいのかな?

(宇多丸)そこまではいいんじゃないですか?

(町山智浩)「私は携帯からかけている。いま、男に無理やりトランクに詰め込まれた。このままだと殺される」という女性からの電話がかかってきて。で、どうやってその彼女助けるか?っていう話になってくるんですけども。まあ、話がどんどん二転三転していって。ちょっと説明するとネタバレになっちゃうんで。ものすごく難しいんですけども。

(宇多丸)そこはちょっと避けつつも……というね。

(町山智浩)ただ、そのコールセンターからカメラは一歩も出ないんですよ。で、映画の中の時間経過と……だからリアルタイム映画なんですね。完全に一致している映画なんですけども。で、とにかく出演者はコールセンターにいる警察官とその同僚の人とあと何人かしかない。それ以外の人はみんな電話の向こうの声しか聞こえないという、まあ超低予算企画(笑)。

(宇多丸)うんうん。低予算でありながら、やっぱり見るものに想像させることでいろいろと展開させていくっていう。

(町山智浩)そう。だからホラー的な展開になっていったりするんですけども……って、いいのかな?(笑)。

(宇多丸)まあまあ、手前で。でも、要はそれを上映時間中に飽きさせず、その異常に限られた条件下なのに見せきるっていうところで、あれは演出も相当ですよね。

(町山智浩)はい。そうですよね。だから次から次に状況が変わっていくから、まあ飽きさせるその隙を与えないっていうところですね。

(宇多丸)で、今日町山さんに中心的に……まあ、中の話をしているとどんどんネタバレになっちゃうんで。映画史的にそういうその電話の先の音声とかそういう間接的な音声というのを使った表現というか、映画作品の系譜みたいなもの。それに対して『ギルティ』がどういう位置付けか、みたいな。そういう話を……。

(町山智浩)そうですね。まあ、それしかできないんだけど。この映画に関しては。で、僕が思っているのは、この手の映画でいちばん最初にそれをやったのは黒澤明の『天国と地獄』だと思ってるんですよ。

(宇多丸)おおーっ、やはり誘拐事件があって。

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黒澤明『天国と地獄』

(町山智浩)はい。て脅迫電話かかってくる。それで誘拐をされたお金持ちの家で警察官たちがそこに入って、その誘拐犯と電話でやり取りするのをずっと見せていくんですけども。映画始まって1時間、その家から一歩も出ないんですよ。

(宇多丸)ああ、そうですよね。ずっと、そうかそうか。

(町山智浩)電話の向こうの犯人の声は聞こえるんだけど、犯人の身分も素性もなにもわからないし、どんな顔をしているのかもまったくわからない。で、完全な密室劇として1時間進行するっていうのを黒澤明がやっていて。あれがやっぱり画期的だったんで、他の以後の作品は結構それの変形になってくるっていう感じなんですよね。

(宇多丸)おおー、なるほど。

(町山智浩)で、黒澤明も自分でそれを思いついたわけじゃなくて、原作だとその犯人側の描写があって、警察側の描写があって、行ったり来たりするんですよ。で、最初にシナリオではそういう風に書いていて……。

(宇多丸)『キングの身代金』。

(町山智浩)はい。『キングの身代金』というアメリカの小説がありまして。でも、それをやるとどうもサスペンスが全然盛り上がらない。犯人側が見えちゃうと、結局犯人の規模とかが見えてくるし、彼の人間性とかも見えてきちゃうから怖くない。子供を誘拐されて誰に囚われているのかわからない、どこにいるかもわからないっていう怖さを出すためには犯人側を一切描かない。声しか聞こえないという風にシナリオを書き換えたんですね。

(宇多丸)なるほど。

(町山智浩)で、1時間まったく部屋から出なくて、その緊迫感とかどこにも行き場がない感じとか、ものすごい観客自身がヘロヘロに疲れてくる感じっていうのを出すために、そういう風な選択にしたことが画期的だったんですね。

(宇多丸)なるほど。それがあるから、しかも中盤の有名な身代金受け渡しのシーンのダイナミックさも活きるし。さらに終盤になってくると犯人の実像に迫っていくところがまた、全然違う展開になって。「ああ、こうなっていくの?」みたいなのが面白かったりするっていう。

(町山智浩)そうなんですね。だから普通の文法でやると両方を並行して見せていく感じでやろうとしちゃうんだけど。

(宇多丸)それが映画的って思っちゃいそうですけどね。

(町山智浩)思っちゃうわけですね。行ったり来たりさせて、いわゆるクロスカッティングっていう、グリフィス以来のカットバックさせるっていう。でも、それをやらないというところで成功をしたんで。あれはでも、上手くいかないからやってみたら成功したっていう話なんですけども。そこから来ているんだと思うんですよ。それで、このエマージェンシーコールセンターっていうのに絞って、そこに電話がかかってきて、それをなんとか助けなきゃいけないっていう映画って全然、たくさんあるんですよ。

(宇多丸)あ、結構ある? それ自体はある?

(町山智浩)たくさんあるんですよ。で、今回の「車のトランクに入れられて……」って携帯からかけてくるっていう展開というのは、すでについこの間、2013年に公開された映画で『ザ・コール 緊急通報指令室』っていう映画がありまして。それはまったく同じで、そこに勤めているハル・ベリーさん扮するヒロインが電話をキャッチすると、「いま私、誘拐されて車のトランクに入れられているの」っていう少女の声が聞こえるという話なんですよね。発端はほとんど同じですよ。

(宇多丸)発端はほとんど同じだけど、やっぱりハリウッド映画っぽい演出っていう感じですか、これは?

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『ザ・コール 緊急通報指令室』

(町山智浩)そう。アクション映画みたいな感じになっていくんですよ。『ザ・コール』の方は展開として。ただ、『ギルティ』の方はなにをやりたいのか?っていうと、サスペンスをやりたいんじゃあないんだよね。あれは。ただ、その電話で聞いた声であるとか、その……まあ言えないな(笑)。

(宇多丸)アハハハハハハッ!

(町山智浩)偏見とか、要するに情報が限られた状態で持って知ったものから、その人が悪であると決めつけたり、この人が正しいって決めつけることの恐ろしさなんですよ。それをやりたいんだよね。

(宇多丸)たしかにそうですね。で、最終的に……これもあれなのか? 最終的に向かうのは結局自分の問題に……。うーん……。

(宇垣美里)難しい(笑)。

(町山智浩)だから『ギルティ』ってタイトルが何を示すのか?っていうことで。ギルティっていうのは「有罪」っていう意味なんですよ。で、このタイトルは誰が有罪だって言ってるかというのは非常に大きくて。なんでこのタイトルになっているのかな?って見ながらだんだんわかってきて、最後にやっとわかるという。そのやりたいことっていうのは電話を使ったサスペンスっていうよりもむしろ、人間がいかにその人の立場であったり犯罪歴であったり性別であったりしゃべり方であったり。そういうことで偏見を持って相手を決めつけていくかっていうことがテーマだよね。こっちの『ギルティ』は。それがハリウッド的なのとは違うんですよ。

(宇多丸)うんうん。

(町山智浩)で、たぶんこれハリウッドでリメイクされる……ハリウッドのリメイク権ってかならず片っ端から……。

(宇多丸)いったん抑えられちゃうんですよね。

(町山智浩)いったん安い値段で抑えちゃうんですよ。とりあえず、どこにも持っていかれないようにしておいてから、それを映画化できるかどうかを考えるんですけど。とりあえず抑えるんで、たぶんこれも抑えられているんだけど。ハリウッドでやるとたぶん、これは人種問題になってくると思います。

(宇多丸)ああ、なるほど。

(町山智浩)絶対に。声を聞いて訛りが……たとえばラテン系のメキシコ訛りだったり、黒人的な声だったりした場合、もうそれだけで決めつけちゃうんですよ。電話を受けた人が。だからそういう人種的要素が入ってきたりして、もっと複雑なものにたぶんハリウッドではなって。もしかしたらすごい映画になるかもしれないなって思っていますよ。

(宇多丸)なるほど、そうか。ある意味、各社会でいろんな置き換えができるわけですね。

(町山智浩)そうそう。日本だったら日本でたとえば電話がかかってきたら、だからすごい外国人の訛りがあった場合とか。

(宇多丸)カタコトだったりとかね。

(町山智浩)そう。カタコトでしゃべっているような人だった場合、それに対して警察官はどのような対応をするか?っていうことだったりするので。だから本当に偏見の問題だなって思いますよ。もうすぐ『ブラック・クランズマン』っていう映画がもうすぐ公開されるんだけど。スパイク・リーの。

町山智浩『ブラック・クランズマン』を語る
町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中でスパイク・リー監督の最新作『ブラック・クランズマン』を紹介していました。

(宇多丸)めちゃくちゃ見たい!

(町山智浩)ああ、ねえ。で、それっていちばんの発端部分がKKKという白人至上主義団体のところに黒人の警官が電話をかけて。その時に非常に礼儀正しいしゃべり方でしゃべったら、「そのしゃべり方だとたぶん君は白人だろう」っていうことで入会を許されるというシーンがあるんですけど。で、それは実話なんですけど。「黒人の人のしゃべり方はこういうものなんだ」っていう風に決めつけているから、電話の言葉の選び方だけで勝手に人種まで決めてくるという実態を描いていますよね。

(宇多丸)なるほど。でも『ブラック・クランズマン』もめちゃめちゃ見たくてしょうがないですね(笑)。

(町山智浩)フフフ、まだ見ていないんですね(笑)。

(宇多丸)気持ちが盛り上がってまいりました(笑)。あとは電話口ものというのでなにかありますか?

(町山智浩)やっぱりいちばん有名なのは『いのちの紐』っていう映画なんですよ。

(宇多丸)これね、シドニー・ポラックの監督デビュー作?

(町山智浩)監督デビュー作ですね。

(宇多丸)1966年。

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『いのちの紐』

(町山智浩)アメリカ公開は65年かな? これは実際にあった事件で自殺予防センターっていうのがあるんですね。日本だといのちの電話っていうところで。そこに電話がかかってきて「私、睡眠薬をもう致死量飲んじゃったから」って。それで電話をかけてきて。で、その人の居場所を突き止めなくてはならない。そこに救急隊を向かわせなければならないんだけど、もう睡眠薬を飲んじゃっているからなにを言っているのかわからないんですよ。その人が。で、しかも電話を切らないでずっとしゃべり続けて起こしておかないと、そのまま眠ったら死んじゃうんで。覚醒させた状態にさせなきゃいけない。

(宇多丸)うんうん。

(町山智浩)しかも、電話を切れないから電話を切らないまま、その自殺予防センターの人は救急車を送ったりするのを空いている手でメモを書いて周りの人に渡したりして、その救急車を配車したりしなきゃいけないっていう、もう大変なサスペンスになっているんですけども。それはまあ、すごくよくできているんですよ。

(宇多丸)シドニー・ポワチエが主演で。

(町山智浩)シドニー・ポワチエが主演でやっているんですけども。まあ、これは結構元祖中の元相ですね。

(宇多丸)これも相当、お話をうかがっていると――僕はまだ未見なんですけども――本当にワンシチュエーションでずっと進むっていう?

(町山智浩)ああ、でもその薬を飲んでいる方の女性はアン・バンクロフトっていう名女優がいるんで。その寝室だけは映ったりするんですけど。ただ、居場所はわからないんですよ。で、正しいところに警察が向かうかどうかもわからないんです。だからこのトリックって結構、『羊たちの沈黙』とかでも使われるような感じで。

(宇多丸)「踏み込むぞ、踏み込むぞ、踏み込むぞ!」って。

(町山智浩)本当にそこに向かって警官が行っているのかどうかもわからない。そういう意味でよくできた映画なんですけども。あと、最近だとアカデミー賞映画でアカデミー短編実写部門賞で2015年にノミネートされた『一本の電話』っていう映画がまったく同じシチュエーションなんだけども、その電話をキャッチするのはサリー・ホーキンスっていう『シェイプ・オブ・ウォーター』の女優さんで。やる気がなかったんだけども、その自殺志願者の人を説得している間に自分自身もその生きるという希望を見つけ出していくみたいな話があったりね。

(宇多丸)へー! ふんふん。

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