宇多丸とジェーン・スー『私がオバさんになったよ』を語る

爆笑問題・太田光とジェーン・スー『私がオバさんになったよ』を語る アフター6ジャンクション

ジェーン・スーさんがTBSラジオ『アトロク』に出演。宇多丸さんと著書『私がオバさんになったよ』と2人が出会った早稲田大学のサークルGALAXY時代の思い出話などをしていました。

私がオバさんになったよ

(宇多丸)私とスーさん、大学時代のサークルの先輩・後輩という関係がありますが。

(ジェーン・スー)ええ、ええ。

(宇多丸)ちなみに私が先輩でございます。もういま、こうなるとさっぱりね……。

(ジェーン・スー)なぜか私が1年生の時に6年生の宇多丸さんがいらっしゃってですね(笑)。

(宇多丸)院政を敷いておりまして(笑)。大変なことでございます。ということで、先にスーさんの大事なお知らせを。まずは新刊。これが売れて売れてしょうがないという情報を。

(熊崎風斗)先月14日に幻冬舎より新刊『私がオバさんになったよ』をジェーン・スーさん、発売されております。初の対談集で対談相手は光浦靖子さん、山内マリコさん、中野信子さん、田中俊之さん、海野つなみさん、酒井順子さん、能町みね子さん。そして我らが宇多丸さんということで。

(宇多丸)はい。お邪魔しております。

(ジェーン・スー)ありがとうございます。ウダウダと大学時代のサークル(GALAXY)の話を。

(宇多丸)ねえ。他の方が興味深い突っ込んだ話をされている中で、俺たちだけただの昔話じゃねえか!っていう(笑)。懐かし話じゃねえかって思って。

(熊崎風斗)その院政を敷いていた時代の話も。

(ジェーン・スー)それを入れたかったんですよ。

(宇多丸)まあ、それはそれでバリューが……ジェーン・スーさんの学生時代ってどうだったの?っていう、それを知りたいという需要もきっとあると思いますよ。

(ジェーン・スー)いやいや、学生時代の宇多丸さんがどんなだったの?っていうのを知りたい方のために。

(熊崎風斗)お二方の当時が知れる内容になっていますね。

(宇多丸)ということで、これがかなり実際に売れておりまして。めでたいことに。重版がもう決まったということで。

(ジェーン・スー)今日、三刷りが決まりました。ありがとうございます! もう対談しているみなさんのおかげでございます。

(宇多丸)出版不況なんて言われて久しい中、これはさすがなことでございます。ジェーン・スーパワー、さすがです。「読んだ」という方からもメールをいただいておりまして。(メールを読む)「宇多丸さん、ジェーン・スーさん、クマス、こんばんは。『私がオバさんになったよ』、とても面白く拝読しました。宇多丸さんとの学生時代のエピソードも面白かったですが、個人的には中野信子さんとの脳と意識の話が面白すぎて、膝を打ちすぎて膝が砕けました。その他の方とのお話もとにかく名言、金言だらけで、自分の心の中でもモヤモヤしていたものが晴れた気がします。これからを生きていくのが楽しみになりました。本当に読んでよかったなと思います。これからも『アトロク』『生活は踊る』、どちらも応援しております」。嬉しいですね。これね。

(ジェーン・スー)ありがとうございます。嬉しいですね。

(宇多丸)中野信子さんとのこの脳と意識の話っていうね。

脳と意識の話

(ジェーン・スー)これは、いわゆる「心ってどこにあるの?」っていう心脳問題にもかかわるんですけど。そもそも中野さんが「生まれた時点で80点。生まれた後の『悲しい、嬉しい、楽しい、悔しい』は全部ボーナスステージだからそれを愉しめばいいんだ」っていう話をしていて。その「苦しい、悲しい、辛い」っていう感情みたいなものは中野さんと私が話している中で言っていたんですけども、それは「体が機能している」ということの証拠、産業廃棄物みたいなものなので、その産廃のせいで体の機能が悪くなってしまうのはおかしい。体の機能を動かすことをメインにして、その他のことは「なるほど、いま私は『悲しい』などという贅沢な感情を感じられているぞ。これはなかなか他の動物ではできないぞ」っていう風な形で行こうよというような話とか。

(宇多丸)これ、まさにあれですよ。大学時代のサークル、GALAXYで……ちなみにそのGALAXYっていうのは「ソウルミュージック研究会」。そう言うと「なに?」っていう風に思うかもしれませんが、早い話がレコードを買ってきて、それを聞きながらああだこうだと言うサークルです。活動は地味です(笑)。

(ジェーン・スー)聞かせる人がそのサークル内にしかいないという(笑)。

(宇多丸)話を聞いてくれる人が他にはいない人たちが集まっている(笑)。

(熊崎風斗)フフフ、同じ趣味を持った(笑)。

(宇多丸)小冊子を作って「この曲を聞いた僕の主張を聞いてほしい!」っていう(笑)。あれですよ。そのGALAXYで、彼もラップをしていましたけど、メローイエローのK.I.Nちゃんとよく話していたことなんですけど。「宇宙で知的生物がここまで育つ可能性というのは、ある学者のたとえによるとコップに箸をグサッとさして、分子と分子が避けあってグッと偶然にも通り過ぎちゃったぐらいの確率らしいねえ、士郎さん!」なんて話をK.I.Nちゃんがしていて。

(ジェーン・スー)フハハハハハハッ!

(宇多丸)それで「ああ、そうかい。ということは俺たちはここにいるというだけで宇宙の奇跡なんだねえ、K.I.Nちゃん」なんて(笑)。

(ジェーン・スー)フフフ、なんの落語だ?っていう話ですよ(笑)。

(宇多丸)「ということは何かい? いま俺が感じているこの苦しみや悲しみは、宇宙初の苦しみや悲しみっていうことかい?」なんて……(笑)。

(ジェーン・スー)フハハハハハハッ! まあでもそういうことですよ。おっしゃる通り。

(熊崎風斗)そう考えると気持ちは楽になるかもしれないですね。

(宇多丸)楽っていうか、「宇宙史上誰も味わったことのない苦しみを俺は感じているのか、うわああーっ! 助けてくれ!」なんて(笑)。

(ジェーン・スー)結局人に助けを求める(笑)。

(宇多丸)なんてね。まあまあ、そういう中野さんとのお話があったりとか。ちなみに改めてこの対談集はなんで出そうと思ったんですか?

(ジェーン・スー)そもそもですね、小説幻冬という雑誌で対談の連載をやっていたんですけど、対談って先にテーマが決まっているんですよ。雑誌にしろ、ウェブにしろ。で、そのテーマを話すならばこいつとこいつに声をかけようってなるわけですよ。だけど、実際に会ってその話をたっぷりできて、もう大満足!っていう時もあれば、その話はできたけど、その他の話をもうちょっと聞きたいなっていうのが結構残る。なので、その残った人たちに「すいません。もうちょっと話してもらっていいですか?」って言って連絡をして対談として載せてもらう。だからあえてテーマとかを決めないで「最近どうですか?」ぐらいの話とか、私がある質問を突然ぶつけるとか、そういう形でやったんですけど。

(宇多丸)うんうん。

(ジェーン・スー)でも意外と年齢もばらけている割に1本筋が通ったというか。

(宇多丸)この間ね、『ラジ(コ)フェス』の時に爆笑問題の太田さんがお読みになっていて。すごいしっかり話されていて、僕もさすが!って思ったんだけども。

(ジェーン・スー)そう! すっごい読んでくれていたんですよ。びっくりした。

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(宇多丸)いろんな、要するに全く違う文脈、違う立場の人が話している話が、でもなぜかシンクロしてくるところが面白いっていうのがありますよね。でもそこは、ジェーン・スーさんがなにか触媒として問題意識を引き出しているんでしょうね。

(ジェーン・スー)いや、思ったのはやっぱりこの正解はないっていう話をずっとしているだけだなっていうのがあって。昔は、それこそ親の世代とかだと結婚をして、子供を産んで、家を買って、車を買って……っていうわかりやすいゴールがいっぱいあったんですけど、それがいまははっきりしていない。全部、なにか出てくるたびにそのカウンターが出てきて、「じゃあそれはダメだ」って。みんなどうしていいかわからないっていうところに「おやっ?」っていう。本当にお呼びしておいてこんなことを言うのもなんなんですけど、結構「外れ値」の人たちが集まっていて(笑)。

(宇多丸)フフフ、すいません(笑)。

(ジェーン・スー)「こういうやり方もあるよ」っていう話をして、模索しながら自分の価値というものを決めていくっていう話ができたかなって。

(宇多丸)うんうん。あと、僕のところで言っているのはまさにその話でもあるけど。その「ああでもない、こうでもない」っていうことが楽しいんだっていう。特にラジオはその「ああでもない、こうでもない」こそがラジオだっていうか、そういうのが楽しいのがラジオでもあるよね、みたいな話をさせていただきましたね。かと思えば、まあしょうもない。我々のところは本当にしょうもない思い出話なんていうのもあってね。

(ジェーン・スー)いやいや、ただすごいありがたかったのは、昔のGALAXY時代の話を徹底的にするっていう本当にただの昔話をしたことによって、私はすごい感謝があって。というのも、自己認識と他者から見ていた自分ということのズレがものすごいあったんですよね。自己認識と客観的に宇多丸さんが見ていた私っていうのはだいぶ違っていて。

(宇多丸)そうかねえ?

(ジェーン・スー)なんかかわいくて小さい子がいっぱいいるサークルだったんですよ。めっちゃめちゃかわいい……だから全員、つみきみほみたいな感じだったんですよ。

(宇多丸)それもちょっと……?

(ジェーン・スー)まあだいたいざっくり。7割がつみきみほみたいな。で、その中で私が(野太い声で)「こんにちはー」みたいな感じでいるわけじゃないですか。という自意識があって……。

(熊崎風斗)まあ、スーさんの中ではそうだったと。

(ジェーン・スー)だからものすごい楽しかったけど、やっぱり外れていたなとか、あんまり中心にはいなかったなっていうようなイメージだったのが、なんか「仕切っていたよね?」みたいなことを言われて。

(宇多丸)あなたは中心人物でしょう?っていうね。

(ジェーン・スー)全然そんな記憶はなかったんですけど、言われたことによって「ああ、なんか私、結構ちゃんとあの頃楽しめてたんだ」って思って。そんなに悲観することもなかったんだなって。

(宇多丸)まあ、そういう着地にしていただけるといいけど、同時に僕はヒヤヒヤするところでもあって。やっぱりね、30年近く前になるような話だから、やっぱりあとから振り返ったらたとえば女性のサークル員に対してそういう態度はよくないんじゃないか? みたいなことがボロボロ出てくるのでは?って思って。まあ、出てきても当然おかしくない時代でもあるし。だからね、どう見られていたのかな?っていうか。

(ジェーン・スー)いや、変わらないですよ。

(熊崎風斗)このまんまですか?

約30年前の宇多丸話

(ジェーン・スー)全然変わらないです。いまの方がもちろん大人になった分、思慮深いとかそういうところはあるけれども。面白さみたいなところは全然変わらない。本当に面白くもなんともないことをどうやってウダウダ話すだけのコンテンツにするか、みたいなことを……。

(宇多丸)それね、おっしゃっていましたね。それをね、「ああ、そうなんだ。そこを見ていたんだ」みたいな感じだね。

(ジェーン・スー)それが楽しくてしょうがなかったですね。

(宇多丸)なんかね、たしかにしょうもないことを膨らませたり。あとは「独自のゲームとか作っていましたよね」っていう。でも独自のゲームって言っても、そんな立派な知的なゲームじゃないですよ?

(ジェーン・スー)違います(笑)。

(宇多丸)波打ち際に体育座りして。で、波が来た瞬間に腰をパッと上げたりとか、そういう……。で、それを一列に並んでやって、人数が多ければ多いほど見た目のバカさが半端ないっていう。パッと、こうね、「波よけ」って言われる我々の競技をね。

(熊崎風斗)だから大学時代からいろいろと生み出していっている方だったっていうことなんですね。

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