ジェーン・スーさんが2025年3月19日配信のTBSラジオ『大吉ポッドキャスト いったん、ここにいます!』に出演。博多大吉さんとフリーランスの人間がプロレスを見るべき理由について話していました。
(ジェーン・スー)でもなんか、全日を見に行った時にいろんなフリーの選手がいて。なんかやっぱりね、マジでフリーランスで仕事をしてる人は本当にプロレスを見た方がいいと思う。働き方見本市なので。どうやったら自分の個性を出しながら全体の利益を考えられるか? その動きを売れているフリーランスの選手は全員、やってるんで。なぜこの人が引っ張りだこなのか?っていうのがはっきりわかるんですよ。だからもう、フリーランスは全員、プロレス必須!
(博多大吉)僕、だから若い後輩にもね、実はプロレスを見てほしくて。僕らの後輩世代は格闘技世代なんですよね。
(ジェーン・スー)そうですよね。PRIDEとか。
(博多大吉)K-1とか。で、別に格闘技はどうのっていうわけじゃなくて。プロレスってほら、1日の興行の中で6試合あったら、同じ試合ってまあ、ないじゃないですか。技はかぶるけど。それぞれテイストが違うやつが6個あるから「面白かった」ってなるじゃないですか。だから逆に言うと、自分が出る1試合を作るためには残りの5試合がどんなことをするかをだいたい想像して。どこともかぶらないように、どの選手ともかぶらないようにやる。これって寄席と一緒なんですよね。
(ジェーン・スー)ああ、そうか! なるほど、なるほど。
「プロレスの1日の興行は寄席と一緒」(大吉)
(博多大吉)だから正直、芸人として、人間として、千鳥とかかまいたちみたいな漫才、めっちゃ憧れます。令和ロマンみたいなことをやりたい。けど、我々が求められてるのはたぶん「博多のおじさん」なんですよ。だからこのスタイルは僕、絶対崩しちゃいけないし。それこそ、僕らみたいなもんがこんな同じことばっかりしてっていうのはおかしいですね。応援してくれる人がいるんだから、もっとそこは自信を持ってやらなきゃいけない。うちの若い子、M-1に出てるようなキャリアの子は特にそうなんすけど。前年度チャンピオンになった子らの真似をみんなしちゃうんですよ。
(ジェーン・スー)ああ、そうか。
(博多大吉)だからそれはM-1だけで考えたら正しいかもしれんけど。やっぱりプロレスを見ていたら、まずそんな発想にならないはずなんですよ。うん。
(ジェーン・スー)なんか、そういうところで共通点があるから。本当、全日を見に来てほしい。全日で何をやってるか?っていうのを……佐藤光留を見てほしい。阿部史典を見てほしい。
(博多大吉)阿部、いい選手ですね!
(ジェーン・スー)土井成樹を見てほしい。
(博多大吉)土井ちゃん!
(ジェーン・スー)で、帰ってくるサイラスを見てほしい。たまに出てくるイケメンを見てほしい。この人たちが大きな歴史ある団体っていうのをより活性化させて楽しくするため、それでいて自分の個性を潰さずにやりたいことをやるために何をやってるか?っていうのを見れば……これ、全部仕事と同じだから!
(博多大吉)ねえ。本当。もうあらゆるお仕事……特にエンタメの全てがね、詰まっていますよね。
(ジェーン・スー)いや、もう必修にした方がいい! 本当に。
(博多大吉)「まずは見なさい」と(笑)。
(ジェーン・スー)今、一番それがわかりやすいのは全日だと私は思います。
(博多大吉)キャラクター見本市みたいなもんですよね。
(ジェーン・スー)それでいて、いわゆるその正社員……今の人たちは業務委託、もしくは契約社員なわけじゃないですか。でもいわゆる俗に言う正社員である宮原健斗や青柳優馬がどういうものを背負ってるのかを見れば……会社員はこの2人を見なさい!
(博多大吉)フリーランスはこっちを見て。会社員はそっちを見ると(笑)。
(ジェーン・スー)会社員はこっちを見なさい。
(博多大吉)いろんな楽しみ方がね、ありますし。いろんな教科書がね、本当に会場中に転がってるんで。リング上からも学べるし。本当、マナーという観点では会場のね、隣の席からもわかるし。
(ジェーン・スー)本当に。でも女の人でどういう人がはまるのか?って周りの人で見ていると、やっぱりそのOZAWAショックじゃないですけど。一生懸命、日常生活を生きていて。でも「ちょっとこんなはずじゃないのにな……」とか、「もうちょっとこうなってもいいな。でも、しょうがないか」って自分を騙し騙し生きてたりとか。みんな、だいたいそうじゃないですか。
で、みんな大人になると感情が大きくぶれないように、自分を安定させることを意識するじゃないですか。そうすると、上にも下にもぶれなくなってくるんですよね。気持ちって。だけどプロレスって見に行くと、もう情緒増幅装置みたいな感じで。ボーン!ってスイッチを入れて「行けー!」とか、「やったー!」とか。感情のストレッチをすごいしてくれるんで。「悔しいー!」とか。そういう意味でも情緒教育にもすごくいいなと思うんですけどね。
プロレスは感情をストレッチしてくれる
(博多大吉)なんかね、「プロレスの魅力って何ですか?」とか言われた時に多くのプロレスファンが「勇気をもらってます」とかおっしゃるんですね。もちろん、そういう見方もあるんでしょうけど僕はもうこの40年ぐらい、それがあんまりピンと来てなくて。「俺、勇気をもらったかな?」とかって思っていて。「立ち上がる姿勢を」とか、あんまり……僕はシンプルに面白いんですよ。たぶんスーさんのさっき言ったことに繋がる、本当に面白い時は「やったー!」ってなるし。悔しい時は「もう! 何やってんだよ!」っつって。そのまま居酒屋に行ってね、3時間くらいプロレスファン同士で語り合ったりとか。それが僕は面白さだと思うんで。
(ジェーン・スー)解釈がいかようにもできることをファンに許してくれるっていう意味では、こんなに自由なエンタメはないと思うし。「あそことあそこはこうなってるんだ。こうなんだ」って信じて、そうじゃなくて。それで気持ち良く裏切られた時のカタルシスも大きいですし。
(博多大吉)だから今、プロレスが好きになって4年でしょう? もうここから先、どんどんどんどん面白くなるんですよ。この貯金というか。
(ジェーン・スー)嬉しい! なくならないでほしい。私、(格闘技イベントの)『DREAM』が途中でなくなっちゃったので。あれすごいショックだったんで。
(博多大吉)総合ファンの皆さんはね、あんだけ盛り上がってたのに今、なんだよってね。ひょっとしたらなっているでしょうしね。でも本当、プロレスはなくならないですよね。
(ジェーン・スー)すごいですね。
(博多大吉)なくなりそうでなくならずに、盛り返してきて。アメリカの方じゃもうね、大人気だしね。
(ジェーン・スー)なんかものすごいみんなが見る、テレビでも流れるみたいな状況を見たことが子供の頃にしかないので。今後、どうなるのかはわかんないですけど。ライブエンターテイメントとしてはこれが好きな時に見られるっていう……だから東京生まれ、東京育ちのアドバンテージを初めて感じたんですよ。
(博多大吉)ああ、そうですね。
東京生まれ、東京育ちのアドバンテージを初めて感じた
(ジェーン・スー)今まで全然、そんなの言われてもポカンだったんですけど。「いや、東京に住んでます! いつでも行こうと思ったら、毎日プロレス行けます!」っていう。
(博多大吉)これは昔に比べたらもう、なくなりましたもん。プロレスの全国ツアーは。団体、いろいろねあるんでしょうけど。
(ジェーン・スー)プオタスケジュールを見て。プオスケのアプリを入れて、いつも見ていて。「今日、ちょっと時間ができたな。行くところ、あるかな?」と思って見て。それで行けるっていうのはすごい嬉しい。
(博多大吉)だからもしお近くに来られた際はね、ちょっと騙されたと思って。いろんなものをね感じてほしいし。
零細フリーランスとして細々と生きている人間として沁みまくるスーさんのお言葉。フリーランスのプロレスラーがその日の興行と自分のできること、求められることを理解して立ち振る舞っているというご指摘はまさにその通り。博多大吉さんの「1日のプロレス興行は寄席と同じ」という説にも膝を打ちました。素晴らしい!
