プチ鹿島『クリード 炎の宿敵』と北方領土交渉を語る

プチ鹿島『クリード 炎の宿敵』と北方領土交渉を語る YBSキックス

プチ鹿島さんがYBS『キックス』の中でロッキーシリーズ最新作『クリード 炎の宿敵』についてトーク。さらには日露北方領土交渉についても話していました。

(プチ鹿島)塩ちゃん、『ロッキー』って知ってます?

(塩澤未佳子)『ロッキー』? 「♪♪♪♪」って?

(プチ鹿島)そうそう。ロッキー羽田じゃなくてね。あの映画のシリーズというかスピンオフというか、また公開されているんですよ。まず『クリード』っていうのがあって。2015年、いまから4年前の作品。どういう映画か?っていうと、ロッキーに昔、アポロっていう宿敵がいたんですね。で、宿敵だからこそ、戦いを終えてわかりあえる。いいライバルであり友になって……っていう、そういう関係性だったんですよ。ところが1985年『ロッキー4』っていうのがあって。当時のソ連から来たドラゴっていうボクサーがロッキーに挑戦状を叩きつけてきて。で、アポロが「俺は引退したけども、ロッキーの前に俺がやる!」っていうことで。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)それで戦った。そしたらそのドラゴっていうのがとんでもないサイボーグみたいな鍛えられ方で。強くて。それでアポロはリング上でめった打ちにされて死んじゃうんですよ。それが、『ロッキー4』ね。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)で、まあいろいろとあって、その『クリード』っていうのはどういう話かっていうと、2015年。アポロに息子がいたっていう。これがアドニスっていうんですけども。で、そのアドニスがロッキーに最初は全然プロでもなかったんですけど、ボクシングの教えを請うて。で、ロッキーがリング下でセコンドについて……っていう。物語はこれ、続いていくわけですね。で、それが4年前にあって、今回は『クリード2 炎の宿敵』っていうのがいま、公開されているんです。僕、この前にやっと見に行けたんですけどね。

(塩澤未佳子)ああ、そうですか。

(プチ鹿島)それがどういう物語か?っていうと、今度はドラゴの息子がいるんです。

(塩澤未佳子)おおーっ! こっちもいた(笑)。

(プチ鹿島)ドラゴの息子がやっぱり……だって1985年っていうことは34年前ですよね。ドラゴが自分の国、当時のソ連、モスクワにロッキーを呼び寄せて、そこでアポロに続いて返り討ちにしようとした。だけど、ロッキーが勝っちゃうわけです。それでめちゃくちゃ恥をかいて、ドラゴはすべてを失ってしまう。それまでは国家の威信を背負ってサイボーグのように鍛えられて、それで地元で負けちゃったもんだから。

(塩澤未佳子)大変だったんだ。

(プチ鹿島)だからずーっとこの30数年間、息子を育てて。もう怨念ですよね。実際にこのドラゴを演じているドルフ・ラングレンさんっていう方の人生も、どうやらそれに似ているらしいんですよね。だから全部が入り組んでるの。てんこ盛りなんですよ。

(塩澤未佳子)はい(笑)。

(プチ鹿島)で、僕ね、正直に言うと『ロッキー4』。1985年。日本公開は86年。僕は高校1年生だった。いまでも覚えているんですけども、『ロッキー4』には当時、乗れなかったんですよね。高校1年生の生意気さと言いましょうか。なんかこう、だってソ連が悪の帝国。でも、アメリカも似たようなもんじゃない?っていうのも……当時、冷戦時代でしたからね。ところが、ソ連・モスクワにロッキー、乗り込んでいって。最後はなんかお説教をするんですよ。書記長も見に来ているんですよ。ゴルバチョフみたいな。

(塩澤未佳子)はい(笑)。

ロッキーの説教

(プチ鹿島)で、「俺はがんばった。お前らはどうだ?」みたいな。それで「なんだ、これ? アメリカも似たようなもんだろ?」みたいな、そういう風に思ったんです。

(塩澤未佳子)まあ、高校生としては。

(プチ鹿島)だからなんか乗れねえなあって。ドラゴもドラゴで地元に呼び寄せているのに、最後は観衆もソ連なんだけど、モスクワなんだけど、ロッキーコールが起きちゃうわけです。「ドラゴ、かわいそう……」って思っちゃったんですよ。高校1年の時に。「どうするんだ、これから?」って。ところがですよ、これ、30数年たって2019年。ドラゴが、もう息子を鍛えて!

(塩澤未佳子)ええ。

(プチ鹿島)で、今度はロッキーが育てたアポロの息子にチャレンジしてくるっていうので。またこのドラゴというかドルフ・ラングレンさん。30数年たってもういい。苦労がにじみ出てね。ちょうどわかりやすく言うと、元新日本プロレスの北沢幹之さんみたいな、そういう味わいのある顔なんですね。わかりにくかったですか?

(塩澤未佳子)ちょっと、わからない。ごめんなさい……(笑)。

(プチ鹿島)魁勝司さんって言えばわかりやすいんですけども。UWFとかリングスでレフリーをやられた。ああいういいおじさんの味わいなんですよね。

(塩澤未佳子)ふーん!

(プチ鹿島)だからもう全部が乗っかっちゃって。もう永遠に続くんですよ。

(塩澤未佳子)これはたまらないですね!

(プチ鹿島)ちなみに、今回もロシアに乗り込んでいくっていう。まあ、続きは見てください。

(塩澤未佳子)わかりました。

(プチ鹿島)だから、どちら側にも人生があるし、この30数年っていう歳月があるっていう、そういうお話だったんですよ。だから、たまらなかったです。ただ『ロッキー4』を高校1年生の時に見た時はなんかアメリカの国威発揚というか。「ソ連が悪の帝国、まあまあ、そうだろう。でも、アメリカも似たようなもんだろ?」ってちょっと、わかりやすい善悪っていうのには乗れなかったんですよね。でも、ドラゴはこうして見ると、かならずしも悪ではなかったということが今回……だからもう僕にとっても34年ぶりに回収してくれたというか。だからすごくそういう意味でもよかったんですよ。

(塩澤未佳子)へー!

(プチ鹿島)いまから見ると『ロッキー4』も面白いです。僕、やっぱりこの『クリード2』を見るにあたってもう1回、見直して行きましたから。いま、便利です。Amazonとかですぐに見れるから。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)だからこれ、やっとロシアに乗り込んでいって回収できた面白さっていうのもあるんですけど、一方で先週のオープニングにも続くんですけど。芸能っていうかエンタメはそれでいいんだけど、政治がそれにつながっちゃう場合はどうなんだろう?っていうのがありまして。たとえば今日の読売新聞。「平和条約の進展焦点 日露首脳今日会談」っていう。だから安倍さんとプーチンさんがまさに今日、会談するわけですよ。これ、どこで行われるか知ってます?

(塩澤未佳子)えっ?

(プチ鹿島)モスクワです。安倍さんからすれば、もうドラゴを……ロシアに乗り込んでいくみたいな。たぶんロッキーのテーマが頭の中で鳴っていると思うんですよね。

(塩澤未佳子)アハハハハハハッ!

(プチ鹿島)で、完全アウェーの中でじゃあ北方領土を返してもらって……「返してもらう」っていうか、あれは日本のものですよ。ちゃんと戻してもらって。で、平和条約を結ぶっていう。ロッキーのテーマが鳴っていると思うんです。ところがですよ、これ、そんな簡単なものじゃないよっていうのは1週間にもお話しましたし、その翌日からの新聞を見てもロシアのしたたかさっていうのがわかるわけです。で、これは読売新聞で先週なんですけども。「安倍さんが掲げる戦後日本外交の総決算には岸信介元首相が憲法改正とともにやり残した」って……岸信介さんは安倍首相のおじいちゃんですよね。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)だから安倍一族ですよ。「北方領土問題の解決は欠かせない」という。だから、安倍さんにとってはおじいちゃんの時代からの宿題だし、これを片付けたい。もっと言えば、安倍さんの残りの任期3年。政治的なレガシーですよね。遺産。そのために……っていうことで張り切ってらっしゃるんですが、前にもお話しました通り、今年の参院選の前にG20っていうのの日程を入れたんですよね。これ、本来はサミットがあって、その後にG20っていう日程になっているんですけど、大阪に決まったG20を参院選の前に開催するため、サミットよりも開催するように日程を変えてもらったんです。

(塩澤未佳子)日にちをずらした。

(プチ鹿島)思惑としてはプーチンさんと今日、会談をして。6月に開催されるG20でなんらかの発表をしたい。それで選挙に行きたいっていう、そういう解説を読売新聞も書いていまいたよね。ということはもう、完全にプーチンの方にアドバンテージがあるじゃないですか。だって日本はしたくてしょうがないんですから。前のめりなんですから。で、これを読んでみるとそのプーチンさんが出てくる前にロシア、ラブロフっていうやつが……。

(塩澤未佳子)「やつが」(笑)。

(プチ鹿島)やつがいるんですよ。もう、上田馬之助、タイガー・ジェット・シンみたいなコンビで。このラブロフ&プーチンっていうのはとんでもない役割分担をしているんですよ。っていうのはラブロフさんは河野外相とかにすっごい強気で強硬に出ていましたよね。「そもそも『北方領土』という呼び方は受け入れられない」って。これ、先週の水曜日だから『キックス』の翌日の読売新聞なんですけども。こう書いてある。専門家の意見としてね。「ラブロフ氏が悪玉となり、プーチン氏が善玉と見せる戦略だ」と。つまり、ラブロフさんがすごい強硬に出て揺さぶりをかけて「どうする、どうする?」っていう時にプーチンさんがちょっとこう、甘いささやきを言ったら、もうフッと。プーチンが善玉に見えてそこに全乗りしちゃうわけですよね。

(塩澤未佳子)ああーっ!

(プチ鹿島)ただ、その「甘いささやき」っていうのはどうなんだ?っていう。たとえばここにも書いてあります。「安倍首相は焦る必要はない。日本は条件をすぐに飲まないようにすべきだ」って専門家は語っているわけです。でもこれ、G20で参院選の手土産にするためにはもう乗っちゃう可能性はあるわけですね。だから産経新聞はこんなことを言っているんですよ。あの産経新聞が。いわゆる保守派の安倍さんをバックアップする、大好きな産経新聞も社説で1月16日(水)に「ロシアがかくも強気に出ているのは安倍首相が四島返還の原則から離れ、日ソ共同宣言重視を打ち出したためだ」という。だから「まず二島」っていうね。

(塩澤未佳子)うんうん。

あの産経新聞が……

(プチ鹿島)「これは二島返還への方針転換だと受け取られた。日ロ間でこれ以降に積み上げられた交渉や文書を軽視するのはロシアへの迎合である」という。つまり、もう「焦るなよ、安倍さん!」って言ってるわけですよね。産経もですよ。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)で、実際にこれ、ロシア側もどんな……面白いですよ。1月21日の朝日新聞。「北方領土引き渡し 強まる反発」っていう。実はモスクワでも市民集会で「島のかわりにプーチンを日本に引き渡せ!」っていうプラカードとかが出ている。だから「北方領土はソ連のものだ。二島を返す? なに言ってるんだ、プーチン!」っていう。そういう集会がある。「こうした情勢にだから政権側は神経質になっている」っていう。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)だから佐藤優さんが産経新聞で書いているコラムを読むと、たとえば河野大臣。「北方領土という呼び名はロシアには受け入れがたい」ということを言われたあの会見。それが実はロシアの国営テレビで生中継されたことに注目をする必要があるんじゃないか? 国内に「ほら、全然譲ってませんよ」っていうアピールでもあるという。だからロシアはロシアで弱みもあるのかな?って思うんですが……まあ、実際にあるんでしょう。一方でその朝日新聞を読むと、「その北方領土返還に反対をする集会などをロシア政府は強く抑え込む構えは見せていない」という。だからある程度泳がせておいて。「国内がこうだから、二島も返せません」っていう、そういう駆け引きにも使っているんじゃないかって。

(塩澤未佳子)じゃないかと。うん。

(プチ鹿島)で、日刊ゲンダイはわかりやすいですね(笑)。「安倍首相が狡猾プーチンに食わされる毒まんじゅう」っていう(笑)。

(塩澤未佳子)ちょっと(笑)。

(プチ鹿島)毒まんじゅう、来ましたよ、これ(笑)。つまり、まあラブロフさんがさんざん揺さぶりをかけて、「もうダメだ!」って思った時に、22日の会談ではプーチンがこうつぶやく可能性があるんじゃないかって。「シンゾー、平和条約の条文作成作業を始めようじゃないか」って。つまり、安倍さんからすれば外務大臣同士の露払いの決裂を受けて、進展を諦めかけていたところに、プーチンにそっとこう優しく言われればすぐに乗っちゃう、食いつくんじゃないか?って。でも、それにどれだけお金がかかるの?っていうことですよね。

(塩澤未佳子)ほう!

(プチ鹿島)だからこれ、今回産経新聞が面白いんですよ。それは当然です。だって保守派にとっての一大事ですよ。だって「北方領土は日本のものだ。四島、早く返せ!」って言っていたのが、安倍さんはどうやら「二島返還でいい」っていう風に舵を切ったって、いちばん実は保守派が揺さぶられている。なんだったら怒らなくちゃいけないことなんですよ。日本にもロシアにも。

(塩澤未佳子)うんうん。

保守派が揺さぶられる

(プチ鹿島)だから産経新聞は揺れている。怒っているんですよね。で、実際に「なるほどな」と思ったところもあって。たとえば二島返還とかをロシアと容易に結ぶ、OKをするのであれば、じゃあ竹島とかはどうなるんだ?っていう話ですよね。

(塩澤未佳子)あら、そちらもね。

(プチ鹿島)尖閣諸島とか。あれ、他の国もこの日露交渉を見ていますよ。これがOKであれば「ああ、日本ってそういうの、譲るんだ」って思われるということを産経新聞は書いているわけです。そうですよね? だからこれ、容易には……。

(塩澤未佳子)うん。そうか。だからその島だけの話ではないってことですよね。

(プチ鹿島)そう。世界中が見ているんですよ。日本がどういう風に……あえて「目先の利益」って言いましょう。もし参院選のお土産にしたい、レガシーにしたいっていうのであれば。ねえ。

(塩澤未佳子)そうか……。

(プチ鹿島)だからこれ、まあロッキーはいいですよ。ロシアに乗り込んでいって最後はロシア国民に説教をして拍手されてましたけど(笑)。これ、そんなに上手くいくとは思わないんですよね。

(塩澤未佳子)こちらはね。

(プチ鹿島)それはたしかにロッキーみたいな、一族の悲願みたいな。お互いの、あるとは思うよ。だけどそんなに上手くは行かないし、逆に焦れば焦るほど毒まんじゅうが……っていうね。それを思いました。だから今日、なにを話してなにが発表されるのか。もしくはなにが表に出てこないのか。だから一見、いい報道というかお知らせの陰に、どれだけのお金が動いたのか?っていう。

(塩澤未佳子)ええっ?

(プチ鹿島)たとえば産経新聞、ありますよ。もう1回読みますよ。「この歴史的事実を曲げるロシアの主張を受け入れれば、国際社会で「法の支配」を重視してきた日本の信頼は失墜する。尖閣諸島(沖縄県石垣市)を自国の領土と主張する中国を利することにもなる」っていう。そうですよね。

(プチ鹿島)で、これから読み取れるプーチンの戦略、4つ書いてあるんです。「可能であれば領土問題を棚上げにしたまま平和条約を結ぶ。領土を引き渡す場合には最大でも二島まで」。二番目に、これに続いた条件でしょうね。「経済協力をより多く引き出す」という。二島を引き渡すんだとしたらですよ。で、3つ目。「島への米軍配備を防ぎ、日米関係にくさびを打ち込む」。4つ目。「交渉はロシアが主導し、日本の不法占拠主張は認めない」っていう。どうするの?

(塩澤未佳子)いろいろなものがついてくる。

(プチ鹿島)っていうことですよね。うーん。

(塩澤未佳子)どうなるんだろう?

(プチ鹿島)ということで、読み比べをやらせていただきました。

<書き起こしおわり>
https://miyearnzzlabo.com/archives/54574

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