プチ鹿島 緊急事態宣言全国拡大と10万円一律給付、アサヒノマスク問題を語る

プチ鹿島 緊急事態宣言全国拡大と10万円一律給付、アサヒノマスク問題を語る くにまるジャパン極

プチ鹿島さんが2020年4月23日放送の文化放送『くにまるジャパン極』に出演。野村邦丸さんと全国に拡大された緊急事態宣言と一律10万円の給付金、アサヒノマスク問題などについて話していました。

(野村邦丸)前回、プチ鹿島さんにお越しいただいたのは4月1日でした。緊急事態宣言がいつ出るかに注目が集まっていた時期だったんですが。政府は7日にまず7都府県に緊急事態宣言を出しました。それで16日にはこれを全国に拡大ということになりまして。この緊急事態宣言前から緊急事態宣言後、拡大宣言後、新聞はどんなことを報じていたか?っていうのを鹿島さんにうかがいたいと思うのですが。

(プチ鹿島)はい。今日はまさにそのお話をしようと思うんですが。まず最初に読み比べた結果、浮き上がってきたキーワードが「抱合せ」というものなんですね。これをちょっと頭に覚えておいていただいて、今日の新聞をまず紹介しましょうか。読売新聞なんですが。「中小企業、個性派マスク」という記事があるんです。マスク産業に参入する中小企業が相次いでいて、かわいらしい絵柄を入れたり、肌触りのいい生地を用いたりという。

キーワードは「抱合せ」

(プチ鹿島)たとえば、ここで紹介されている墨田区の会社はですね、元々は独自の和紙の生地でいろいろなものを作っていた。その商品を開発していたんですが、こういった感染拡大の影響で計画は中断。ただ、やっぱりお客さんから「じゃあマスクを作って」っていう要望を受けて、マスクを作り出したと。様々な企業がそういった特性を生かして各自、それぞれマスクを作っているということなんですね。

それでこの「マスク」でちょっと気になった方、いらっしゃると思うんですが。今日のスポーツ報知を見てみますとこんなに大きく乗っているんですが。「安倍首相が攻撃。2枚3300円、アサヒノマスク」っていう。これ、皆さんもご存知かと思いますが、17日の首相会見で全国に一斉配布する「アベノマスク」という風にも言われてますが。

「配布する布マスク2枚とか、あとは星野源さんの「#うちで踊ろう」の動画……あれも賛否がありましたが、どうですか?」っていう風に朝日新聞の記者の方が総括を求める質問をしたんですよね。そうしたところ、安倍さんが「御社も2枚3300円で販売をしていたと承知しております」という風におっしゃったわけですね。

「この『高すぎる値段でマスクを売っている』という風に揶揄をするような回答に対してSNSなどで論議が巻き起こった」という風に今日の記事で書かれているわけです。この発言を受けて、SNS上では「ボッタクリ」などという声も上がったりとか、いろいろとそういう論争になったわけですよね。

(野村邦丸)朝日の通販ですよね?

(プチ鹿島)ショップサイトですね。

(野村邦丸)「朝日新聞SHOP」ですね。

(プチ鹿島)それで昨日なんかはマスクの製造元の泉大津市……繊維の街なんですよね。「これは職人さんが丁寧に4層構造で作っているんだ」という説明をしに官邸まで行ったという。そういう騒ぎになったんですが。

(プチ鹿島)ここで注目すべきはですね、このマスクの性能とか値段論争、揶揄をした・してないとか、そういうのも大事だとは思うんですが……首相がわざわざこの会見で朝日に対して当てこすったという点はですよね。というのはこの手法、安倍さんにとってはかなり大事な手法で、得意技なんですよ。「布マスク2枚」というその税金の使い方……466億円でしたっけ? その是非について考えて「どうですか?」という話をする代わりに、安倍さんは朝日新聞に対して「御社も布マスクの販売をやってますよね?」っていう風にちょっといじって相殺……プラスマイナスゼロにしようとしたんですよね。

(野村邦丸)あの会見、後でテレビで見たら、今までだったら国会ではまさに揶揄するように、鼻で笑うように言っていた安倍さんが、すごく真剣に言っていたんで。「あれ? ちょっと……?」って思って。

(プチ鹿島)「3300円」っていうのも頭に入っていてスラスラ言っていて。だから、あの時に実は僕、生で見ていて。「安倍さん、なにをおっしゃっているのかな?」ってピンと来なかったわけですよ。あれ、わかりましたか? 「3300円で……」っていうの?

(野村邦丸)「御社の」って言ってましたよね?

(プチ鹿島)そうそうそう。実は、そこもポイントで。要は「感情に訴えやすい点を入れてきた」っていうことなんですね。そもそも、あの会見を見ている多くの人は「えっ、『アサヒノマスク、3300円』ってなんのこと?」っていう風に「?」だったんですよ。しかし一方で「よく言ってくれた! そうなんだよ、朝日も売っていたよな!」っていう風に響いて、それを痛快に思う層も一定数いたわけですよね。それでこれ、後から調べてみると普段、そういう方たち。熱心なコアな層が見ている「まとめサイト」というのにこのアサヒノマスクを揶揄する記事が載っていたらしいんですよ。それで首相。もしくは首相サイドはそのまとめサイトの記事を見ていた。

だから、ほとんどの人は意味がわからなかったんだけど、あの会見でわざわざそういうことを言うことによって、一定の層はすごく心地良くなったわけですよね。こういう言葉、ご存知ですか? モスキート音っていう。「大人には聞こえない音」とか、わかりやすく言えば、「ある一定の年代とか層の人たちにしか聞こえない音」っていうのがあるわけですよ。だから今回、あの会見で安倍さんはアサヒノマスクのことをわざわざ取り上げることで、一定の人にしか聞こえないモスキート音を発していたわけですよね。

(野村邦丸)ああ、なるほど!

一定の層だけにわかる「モスキート音」を発する

(プチ鹿島)当然、一定のコアな層の人々の感情は刺激されて、彼らは喜んで「安倍さん、よく言った!」っていう風に盛り上がりますよね? でも、考えてみてください。あの会見というものは「一律10万円の給付金を給付します」という全国民に対する会見なわけですよ。だから一定の層の人々の感情を高ぶらせて喜ばせるだけのことを言っていたらダメなんですよね。ほとんどの人が「朝日の3300円のマスクってあれ、何のことを言ってるの?」っていう風にポカンとしちゃったわけで。

だから、あそこの会見でわざわざ言うことなのか?っていうのと、そう考えると首相がこれまでのコロナ対応で何回か行なってきた会見、結構感情論に訴える、精神論に訴える、ポエム的なものが多かったですよね? だからそういうものの延長線上にあるのかな?っていうのが改めて……感情に訴える精神論。それでプラマイゼロにしようかっていう。その手法が具体的に見えたのがあのアサヒノマスクっていうことなんでしょうね。

(野村邦丸)なるほどね。モスキート音か!

(プチ鹿島)一定の人にしか分からない音を発して話をずらすっていう。

(野村邦丸)何年か前にほら、コンビニに夜、若者たちが集まってきちゃってたむろしたりするので、若者にしか聞こえない蚊の音を出したらそれで若者が来なくなったっていう。そういうことで言うと今回は安倍さんを支持する一定の方々にとっては心地よい言葉を会見に挟み込んでいたっていう?

(プチ鹿島)だから実際、その布マスク2枚を466億円かけて配布するというその是非、税金の使い方については論点をちょっとずらしてしまったっていう。それで「あれは揶揄だ、揶揄ではない」とか「価格はいいんだ。安いんだ」っていう、そういう論争の土俵にまんまと引きずり込むことに成功をしているっていうことなんですね。だから、重要なのはあの時にモスキート音の陰でなにがきちんと話されなかったのか?っていうことですね。つまり、税金の使い方の話ですよね。

それで実は、ここ最近のその政府のキーワードというのはこの会見にもアサヒノマスクにも象徴されるように「抱き合わせ」なんです。まさにその緊急事態宣言の対象区域……全都道府県に拡大されましたよね? それで緊急事態宣言が発令されてから、あの拡大をされた時点でわずか9日だったんですよ。じゃあ、「なんで急に?」っていうのが気になりますよね。それでいろいろと新聞を読んでみたんですが……たとえば「1人一律10万円を給付するという形に変更したことに関係ある」という報道がもう各紙にまんべんなく書いてあったわけです。

東京新聞なんかは4月18日に「首相は政策変更のため、緊急事態宣言の対象区域を全国拡大するタイミングを利用」と書いていて。読売も同じ日に「『公明党に押し切られた』では理屈にならないというので官邸には苦悩があった。現金給付と全国への緊急事態宣言発令という2つの流れがひとつになった」という風に読売も書いてるわけですよ。抱き合わせなんですよね。だから。

それでさらに読売の大事な論点は次なんですよ。「17日に予定していた専門家による諮問委員会をあの日、16日夕方に前倒しで招集した。専門家からは『開催の連絡が唐突だ』と不満が漏れた」っていう。今まで重大な局面で「科学的なデータを重視する」としてきたのに、今回の対応でそうした方針……まあ「政治的判断」が優先される結果となったという。科学的データよりもやっぱり政治的判断の方が勝ってしまったんだっていうことが読売とか東京新聞も書いてるわけですよ。

科学的データよりもやっぱり政治的判断の方が勝る

(野村邦丸)「給付金を10万円に変更した」っていうのは安倍政権にとっては一旦、30万円で閣議決定をしていたわけで。その済んだことをまた覆して、新たに閣議決定をしなければいけない。これ、俺もよくはわかっていないんだけども、政治家にとって、特に為政者にとってはめっちゃくた屈辱的なことで。それを隠すために、全国一律の緊急事態宣言を出したっていう?

(プチ鹿島)そういう流れになったということを読売にも書いてあるわけですよね。それで党の内部からも「そういう政治利用だろう」っていう声が載っているんですよ。だからこれも抱き合わせなんですよね。それで実際、じゃあ科学的データはどうなんだ? その専門家会議を前倒ししちゃったのか?っていう風に不満が漏れてるわけですよね。専門家たちから。その読みどころがあった。

それでさらに読売には「安倍首相が『もう政策論じゃない』と周囲に語っていた」と載っているんですよね。もう政策論じゃない。だから先ほどの伊藤惇夫さんのお話じゃないですけども。もう目の前の支持率、自身の人気が落ちるかどうかでどんどんどんどん、後から後から矢継ぎ早にやっていくという体制になってるということです。

それで面白いのがこの2日前、4月16日なんですが。じゃあなんで「一律10万円」っていうものに変更しようという風に総理は決めたのか? 布マスク2枚配布と星野源動画の不評について、まず読売は書いて。「首相は一律給付を低下傾向にある内閣支持率を反転させる起爆剤としたのではないかという見方が出ている」と読売が書いているわけです。

その流れで拡大宣言が出たわけです。だから拡大先に出すのはいいじゃないですか。じゃあ、それがなんでそうなったか?っていうのがきちんとあの会見で説明されたのか? 「朝日、お前も布マスクを売っているよね?」っていう、その反撃で一部がブワーッと燃え上がって、なんか今では議論がごちゃごちゃになっているという。だからおあつらえ向きの流れにはなっているというのがここ1週間、10日の読み比べだと見えてきますね。

(野村邦丸)でもこれ、前にもね、プチ鹿島さんにうかがったんですけども。どちらかと言うと安倍政権に対しては親安倍政権と言われるような感じの報道が多かった産経新聞、読売新聞。いずれも、ひょっとすると朝日以上にかなり辛辣に書くようになりましたよね?

産経新聞、読売新聞も辛辣な論調になる

(プチ鹿島)はい。でも僕、それは保守派の新聞としてはすごく真っ当なことだと思いますね。じゃあ今、なにが保守なのか?っていうと、政権をただ闇雲に支持するのが保守というわけではないですよね? この国が本当にどうなってしまうのか?っていうのを心配する人ほど本当の保守だと思うので。

じゃあ、たまたま今、政権を担っている人に対して「全力でやってるんだから批判するな」と言うのではなく、その人たちが全力で間違ったことをやってる可能性もあるわけだから、そこをチェックする、叱ってあげるというのが保守派の論調だと僕は思うので。ここ最近の読売、産経の論調は当然、書くべきことを書いているので。僕はいい流れだと思いますね。

(野村邦丸)ある一定の方向に世論を持っていこうという、そういうような……まあこの問題が起きる前だと朝日派もいたり、読売派・産経派っていうのがいたんだけれども。今、おしなべてにま日本の五大新聞と言われてる各紙っていうのはかなり冷静に書いてますね。

(プチ鹿島)そうですね。まあ、逆に言えばそれだけの問題点が次々に浮かんでくるから指摘をしなくちゃいけないっていう状況なので。だからやはりチェックは必要だと思いますね。うん。

(野村邦丸)恐らく……まあ実際に新聞紙を持って読まれる方もそうだし、デジタルでご覧になるのかもしれませんけども。これだけ新聞が読まれるのもちょっと珍しいぐらい……。

(プチ鹿島)珍しいですよね。ですからこれは海外の話なんですが今、やっぱり新聞の売れ行きが紙もデジタルも良くなっているという。ただ、記者さんはやっぱり在宅ワークも多いので、その要望にいかに応えるか? あとはもうコロナ関係に関しては記事は無料公開した方がいいんじゃないか?っていう流れも世界的にあるようですね。

(野村邦丸)さあ、この10万円のお話、今度ゴールデンウィーク明けにもまたいろいろ出てくると思います。それからその今のアベノマスクのお金の使われ方がどうも腑に落ちないっていうか。明らかに数字的にもおかしいっていう話もこの後、新聞の追求が出ると思いますので。プチ鹿島さん、ゴールデンウイーク明けになると思いますけど、またご登場いただきたいと思います。お互い、気をつけましょうね。プチ鹿島さんでした。ありがとうございました。

(プチ鹿島)ありがとうございました。

<書き起こしおわり>

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