松尾潔と林剛 2018年のR&Bシーンを振り返る

松尾潔 Vedo『Boo’d Up』・Jacquees『Special』を語る 松尾潔のメロウな夜

(松尾潔)ただやっぱりこれからちょっと、アルバムの話をしてみたいんですけど。まあ、この時代にアルバムっていう形にこだわってない方も多いかと思いますが、それでもまあアルバムの話というのを、だからこそしてみたいのですが。昨年2018年のアルバムトップ5をまず、林さんから挙げていただけますか?

(林剛)はい。トップ5。5位から……5位はマライア・キャリーの『Caution』。4位がネイオの『Saturn』。

(松尾潔)なるほど。

(林剛)イギリスのシンガーですね。で、3位がロイドの『Tru』、LPバージョン。で、2位がエラ・メイの『Ella Mai』。そして1位はいま散々話したジャクイーズの『4275』。

(松尾潔)なるほど。マライア、ネイオ、ロイド、エラ・メイ、ジャクイーズということですね。じゃあ、僕ももったいぶらずに言いますけども、僕はなんと3枚重なっておりますが(笑)。5位がロイドですね。4位がエラ・メイ。3位がキース・スウェット。先週のトップ20ではキース・スウェットはトップ10から脱落しているんですけども(笑)。

(林剛)『Red Negligee』(笑)。

(松尾潔)『Red Negligee』がね。出せばトップ10に入る感じだったのが。ただ、アルバムとしてやっぱり聞きたいなっていう、僕はいまそういうモードなのかな?っていうことで3位はキース・スウェットの『Playing For Keeps』。2位がティアナ・テイラーの『K.T.S.E.』。カニエの仕切りで。

(林剛)これは曲も2位でしたもんね。

(松尾潔)そうでしたね。で、1位がジャクイーズですね。ということは、やっぱり1位のジャクイーズはもう2人とも文句なしっていうことですね。

(林剛)去年のナンバーワンアルバムでいいんじゃないですか? 僕と松尾さんが2人とも1位に挙げてるっていうことはね。

(松尾潔)このランキングから見えてくるものは……っていうか、まあ自分たちで作ったトップ5だから(笑)。まあ、なにを感じます? ちょっといま一旦、自分が並べた5枚と僕が並べた5枚っていうのをかぶりも含めて7枚っていうことなんですけども。

(林剛)まあでも、松尾さんも僕もやっぱり歌を軸にしてというか、重点を置いて聞いているんだなっていうことがわかりますね。

(松尾潔)一時に比べるとね、よく「ヒップホップ以降の」っていう言い方をするけども。もちろんそれは間違いないし、ジャクイーズなんていうのはアティテュードがヒップホップアーティストなんかに近いと思うんですが。けど、やっぱりこれは厳然たる歌物。歌の形がはっきりしている。もっと言うとメロディーが強いものが復権してきているんだなっていう印象は強いですね。

(林剛)それは本当にそうで、もうエラ・メイの『Boo’d Up』でダメ押しされたというか、したというか。そんな感じなんじゃないですかね。

(松尾潔)それで、その予兆っていうのがその前の年にあったかっていうと、ここに2017年のトップテン……僕が番組で発表したものが手元にあるんですけど。その時に1位に選んでいたのかセヴン・ストリーターの『Before I Do』だったんですね。

(林剛)はい。

(松尾潔)で、2位がジェレマイとクリス・ブラウン、ビッグ・ショーン。男の人3人っていう形はまあ翌年の『When We』の男3人っていうところでまた再現されるわけですけど。で、まあ3位がブルーノ・マーズ『That’s What I Like』という風に続いたわけなんですけども。まあ、1年だからそんなに変化がないのはもちろんとは言えますけど、やっぱりメロディーが強い曲っていうのがちゃんとここ数年、コンスタントに出てるんだなっていう。すごく「頼もしい」っていう言い方は変ですけど、心強い印象も受けるんですよね。

(林剛)そうですよね。で、じゃあそのセヴン・ストリーター、2017年に1位だった人が2018年に1曲も入ってないじゃないかっていう、そういうお叱りはいまんところないですけども。実は林さんが、どっこい生きてるセヴン・ストリーターを2018年の名曲っていうものに選んで下さったのですが。

(林剛)松尾さんもいま、アルバムのトップ5で5位。僕が3位に挙げていたロイドの『Tru』というアルバム。これ、EPが2016年に出て、松尾さんも2016年のメロウ・オブ2016でこれを9位に選ばれていたんですね。この表題曲を。

(松尾潔)ああ、そうか。『Tru』ね。

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(林剛)で、それをバージョンアップしたアルバムというのが去年、出て。それがまあ、松尾さんと僕がトップ5に選んでいるっていうことなんですけども。

(松尾潔)まあ、その間にも『Caramel』とか『Excited』とか、やっぱり常に高得点の曲を出してきた印象がありますよね。ロイドはね。

(林剛)結構いろいろとと、リル・ウェインとかリック・ロスとかと共演しているんですけども、その中にセヴン・ストリーターを迎えたスイートな曲が入っているんですよ。

(松尾潔)これね、僕は「ああ、林さんらしいピックアップだな」と思って。で、メロ夜でいつご紹介したっけ?って思ったら、メロ夜でかけてないんですよ、これ。

(林剛)ああ、そうですか。意外ですね。

(松尾潔)なんとね、かけたつもりになっちゃっていた典型的な例ですね。だからちょうどいいタイミングでもあるんで、今日。セヴン・ストリーターとのデュエットを。では、これは林さんにご紹介していただいてもよろしいでしょうか?

(林剛)はい。ロイド feat. セヴン・ストリーターで『My Bestie』。

Lloyd『My Bestie ft. Sevyn Streeter』

Keith Sweat『Boomerang ft. Candace Price』

(松尾潔)2曲続けてスイートな男女デュエットをお聞きいただきました。まずは林さんの一押し男女デュエット、ロイド feat. セヴン・ストリーターで『My Bestie』。これ、「Bestie』っていうのは総称ですね。「私のいちばんの人」ということ。甘い言葉をささやきあうわけですね。ロイドの甘~い甘いね。まあ、セヴン・ストリーターの声質っていうのも本当にかつての、まあ古いところで言うとシリータとか、シェレールとか。男の人と歌った時にすごく映える声ですよ。言われてみればね。これ、本当にいいデュエットだな。

そして、まあメロ夜的にはもう超定番アーティスト、キース・スウェット。キャンディス・プライスをフィーチャーしての『Boomerang』。まあ、ロイド feat. セヴン・ストリーター、キース・スウェット feat. キャンディス・プライス、形は違えど男女デュエット。で、男女デュエットっていうのがね、たとえばダニエル・シーザーとH.E.R.もそうですし、実はカリードがすごく男女デュエットを量産しているとか。

(林剛)多いですね。

(松尾潔)ノーマニとやったりだとかも含めてですけども。

これ、なんでいまこんなに男女デュエットが……まあ、男女デュエット好きって昔からR&Bファンの中にいるじゃないですか。もういま、ヨダレものの数年間になっているかと思うんですけども。

(林剛)一時期はね、シンガーがラッパーをフィーチャーして……っていうパターンが多かったですけども、いまはシンガーとシンガーがデュエットするっていうね、こういう時代になったっていうのはやっぱりさっきの話でね、メロディーが復権というか、いいメロディーの曲が生まれているからこそ、こういうデュエットが生まれるのかなと。

(松尾潔)いまの「コ・ライト(Co-Write)」っていうシステムがもう定着をして、1人の天才が生み出す曲っていうのはやっぱり、それこそR.ケリーとかベイビー・フェイスとかみたいにスーパーマンみたいな人が1人でメロディーを作るということがだいぶ減ってきましたよね。天才扱いを受けているブルーノ・マーズでさえ、何人ものチームで曲を作っているから。だからあの大ホームランがあるかどうかは別として、すごく長打は多い。コンスタントに長打は放ってるという感じがしますね。このメロディーメイキングという分野においてね。

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