松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中で毎年恒例のホリデーソング(クリスマスソング)の特集第二弾。2018年のいま聞きたい曲を選曲し、紹介していました。
(松尾潔)改めまして、こんばんは。『松尾潔のメロウな夜』、今夜はメロウなホリデーソングPart 2をお届けします。まあ「ホリデーソング、ホリデーソング」と言ってまいりました。これはまあ、いろんな宗教に対応しうる表現として、ここ最近よく使われるようになりましたけれども。いわゆる「クリスマスソング」と我々が言ってきたものとニアリーイコールなんですが。ホリデーソング、今週もお楽しみいただきたいと思います。
ええとね、今週はメールをいただいてまして、ご紹介したいのですが。以前にこのラジオネームで僕、大ウケしたんですけども。埼玉県にお住まいの50歳の男性リスナー「悲哀 Go Again」さん。「松尾さん、こんばんは。ホリデーアルバムを聞く習慣がない自分ですが……」という書き出しで始まるこのメール、ちょっとご紹介したいのはね、ここの部分なんですよね。「……初恋の人がいつまでも忘れられないように、自分にとってのホリデーアルバムはアレクサンダー・オニールの『My Gift to You』だったと思い返し、その中でも最も好きな『Thank You For A Good Year』をリクエストします」っていうことなんですが。
はい。いまバックに流れているのがアレクサンダー・オニールの『My Gift to You』ですね。ごめんなさいね。『Thank You For A Good Year』じゃないんですけども。
これは1988年ですか。ちょうど30年前になるんだなと思いますけどもね。で、この『My Gift to You』という曲にインスピレーションを受けて、そのままいじらずに同じタイトルで作り上げた曲が『My Gift to You』なんですね。それは2002年のことなんですが。で、このアレクサンダー・オニールの『My Gift to You』っていうのは山下達郎さんがカバーしていることでも有名ですよね。あの時期にリリースされたホリデーアルバムとしてはやっぱり大変よくできた1枚だったんだなというのを30年後のいま、よく感じるのですが。
もちろん、仕掛け人だったのはジャム&ルイスですね。アレクサンダー・オニールといえばジャム&ルイスでした。そのジャム&ルイス、アレクサンダー・オニール以外にもホリデーソングの世界で「これは後世に残るな」という曲をいくつかものにしております。これから聞いていただく曲はジ・アイズレー・ブラザーズですね。アイズレー・ブラザーズ feat. ロナルド・アイズレー。時代によってメンバーの数は増減を繰り返してきましたけども、2007年当時。この時点ではメンバーは2名になっておりましたが。まあボーカルは一貫してロナルド・アイズレーが取ってきたので。
となると、アイズレー・ブラザーズの場合は誰が音作りの要になるかという、そこだけが問われるんですが、ジャム&ルイスがやったこれから聞いていただく曲。これはたまりませんねえ。『I’m In Love』という曲をご紹介したいと思います。以前にも一度、この番組でご紹介した曲なのですが、この頃のジャム&ルイスチームの番頭さんだったビッグ・ジム・ライトがね、先ごろ亡くなりましたので。何度かビッグ・ジム・ライトのことをね、亡くなってからどんどんどんどんじわじわ来る、そういうタイプの存在感だったんだなと思いますけども。ビッグ・ジム・ライト追悼という、そういう意味も込めて。今日は聞いてみたいと思います。ジ・アイズレー・ブラザーズ feat. ロナルド・アイズレーで『I’m In Love』。
The Isley Brothers『I’m In Love』
Aretha Franklin『Christmas Ain’t Christmas (Without The One You Love)』
(松尾潔)ジ・アイズレー・ブラザーズ feat. ロナルド・アイズレーで『I’m In Love』。これは2007年にリリースされたアイズレー・ブラザーズのウィンターアルバム、ホリデーアルバム、クリスマスアルバム。まあ、どんな言い方でもいいんですが。『I’ll Be Home for Christmas』に収録されていました。まあこれ、アルバムのタイトルで「クリスマス」って言っているからクリスマスアルバムって言えばいいんですよね。まあどうしてもね、こういう時に繊細さが求められる時代ですね。まあ、多様性を認めるといういまの時代のあり方から音楽も無縁ではないということかと思いますが。
本当に脇道にそれるようですけども、ネットで音楽を買い求めたりする人たちからするとお馴染みかもしれませんけれども、少なくともアメリカとかイギリスとかのサイトとかだと「クリスマス」って書いてるジャンルはほぼないですね。「ホリデー」って書いてありますね。だいたいね。まあそういう事情もあって今日は「メロウなホリデーソング」という風に言ってるわけなんですが。とはいえね、アフリカンアメリカンのアーティストの作品を取り上げることがほとんどですから、となってくるとやっぱりその中のメインっていうのはクリスマスということになってしまいますね。
『Christmas Ain’t Christmas (Without The One You Love)』。アレサ・フランクリンをお届けしました。これはオリジナルはオージェイズですね。フィラデルフィア時代、ギャンブル&ハフが作った曲ですが、そのカバーです。まあいろんな人たちがこれを取り上げてますね。ドラマティックスも歌ってましたよね、たしか。僕はここでなぜアイズレーに続けてご紹介したかっていうと、まあこのアレサがアイズレーと近い時期、2008年にリリースした『This Christmas, Aretha』っていうのに入っていたということもありますが。
それ以上にね、先ほど名前を出しましたビッグ・ジム・ライトがここで鍵盤を弾いてるんですね。しかもね、ジャム&ルイス仕事ではないんですよ。あくまで鍵盤奏者としての腕を買われての客演でございます。アレサ・フランクリン『Christmas Ain’t Christmas (Without The One You Love)』でございました。ねえ。今年はアレサもいなくなってしまいました。アレサがいなくなってはじめて迎えるクリスマスですよ。僕、本当に音楽聞き出した時点でアレサはもういまのアレサの名声がありましたから。
ねえ。この事実に正面から向き合うとちょっと耐えられない感じもあるんですが。まあ、これ以上はセンチメンタルになるのはやめておきましょうか。